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プロツアー『ドミナリア』

戦略記事

注目のカード:ウルザの後継、カーン

Tobi Henke
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2018年6月1日

 

「カーンは……本当にヤバイよ」

 スタンダード・プレイヤーに大人気の最新プレインズウォーカー・カードについて尋ねると、マシュー・ナス/Matthew Nassはそう言った。《ウルザの後継、カーン》の強さを適切に表現する言葉を見つけられず言いよどむ彼だが、その後すぐに続ける。「忠誠度マイナスの能力をうまく使えていないうちはまだ並だ。それができたら、スタンダードにおけるベスト・カードだね」

 「スタンダードにおけるベスト・カード」の座は複数のカードが争っている。しかしその中でも《ウルザの後継、カーン》は、さまざまな理由で「ベスト・カード」の評価を得ており、存在感を見せている。このカードは色を問わずデッキに採用でき、ときにカード・アドバンテージを生み出し、ときにボード・アドバンテージを生み出す。60枚のデッキが織りなすゲーム・プランの中心にもなり、優れたサイドボード要員にもなり、どのマッチアップにおいても足りない部分を補ってくれる。

 その汎用性の高さゆえか、今大会での採用枚数を集計してみるとメイン、サイド合わせて422枚は下らないという結果が出た。これは全参加者数に迫るほどだ。

 ナスは《ウルザの後継、カーン》が持つふたつの忠誠度マイナス能力の重要性を繰り返し強調する。「特に軽いアーティファクトと合わさると最強だね。これに対応するのは難しいよ。[+1]能力でゆっくりドローしているだけなら、攻撃的なデッキはこれを無視することもできるだろう。だがどんどん大きくなる構築物は到底無視できない」

 今大会を迎えるにあたり、《ウルザの後継、カーン》が生み出す構築物を駆使するデッキで最も知られていたのは、《模範的な造り手》や《キランの真意号》、《屑鉄場のたかり屋》、そしてこの最新のプレインズウォーカーが採用された「白黒機体」だった。例えば、こちらのリストには《ウルザの後継、カーン》が4枚フル投入されている。

Chris Vincent - 「白黒機体」
グランプリ・バーミンガム2018(スタンダード) 14位 / スタンダード (2018年5月12~13日)[MO] [ARENA]
8 《平地
3 《
4 《孤立した礼拝堂
4 《秘密の中庭
1 《シェフェトの砂丘
3 《イフニルの死界
1 《屍肉あさりの地
-土地(24)-

4 《模範的な造り手
4 《悪意の騎士
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《黎明をもたらす者ライラ
2 《歩行バリスタ
-クリーチャー(16)-
3 《致命的な一押し
4 《ベナリア史
1 《飛行機械による拘束
2 《排斥
4 《キランの真意号
2 《試練に臨むギデオン
4 《ウルザの後継、カーン
-呪文(20)-
1 《陽光鞭の勇者
2 《賞罰の天使
2 《強迫
1 《断片化
1 《宝物の地図
2 《大災厄
2 《黄金の死
1 《神聖の発動
1 《残骸の漂着
2 《燻蒸
-サイドボード(15)-

 ここから《ウルザの後継、カーン》の新たな使い方が見つからないはずがない。それでこそプロツアーだ。事実、ナスを含む「ChannelFireball」のプロ・プレイヤーたちは、《獰猛器具》や《屑鉄さらい》を採用した緑青の刺激的なデッキを組み上げた。直近のモダン・グランプリで「アイアンワークス」を用いてトップ8入賞と優勝を果たしたナスは、おそらく世界で最も有名な《屑鉄さらい》使いと言えるだろう。

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(《クラーク族の鉄工所》の達人)マシュー・ナスもまた、《ウルザの後継、カーン》を称える歌を口ずさむ。

「最初は《アンティキティー戦争》を使うことを主軸に、青黒から始めた。だがその後、《ラノワールのエルフ》がデッキにすごく噛み合うことと、大型アーティファクトの脅威として《領事の旗艦、スカイソブリン》より《新緑の機械巨人》の方が良いことに気づいたんだ」

 殿堂顕彰者ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasも、次のように言い添える。「《ウルザの後継、カーン》をうまく使えるデッキを模索していて、その結果が緑青だった。デッキのスピードアップに《ラノワールのエルフ》は欠かせないし、《ウルザの後継、カーン》とともに使うアーティファクトも多く欲しかった。アーティファクトを多く採用するなら《光り物集めの鶴》も素晴らしい。《屑鉄さらい》はそれほどでもないが、軽いアーティファクトである点と《歩行バリスタ》を回収できる点を評価した」

 さらにスコット=ヴァーガスは、《歩行バリスタ》の重要性を強調する。「《歩行バリスタ》は最高だ……間違いなくベスト・アーティファクトだし、《ウルザの後継、カーン》以外で選ぶならこれがベスト・カードだ」

 《ウルザの後継、カーン》へ差し向けられるであろう回答、とりわけ《魔術遠眼鏡》に対してどうするのか尋ねると、ナスはサイドボードの《打ち壊すブロントドン》を指差した。「確かに《魔術遠眼鏡》は厄介だ」と、スコット=ヴァーガスも認める。

「しかし《ウルザの後継、カーン》がなければ勝てないデッキではない。《魔術遠眼鏡》を繰り出してくる可能性が低い相手には《打ち壊すブロントドン》も入れないよ」

 こうして、「構築物」に注目した新たなデッキ「緑青カーン」が登場した。《ウルザの後継、カーン》の柔軟性はすでに指摘されていたため、このカードが生み出すアドバンテージをさらに活かす新デッキが登場するのも驚くことではないだろう。

 その好例として、数は少ないものの「青黒コントロール」に《ウルザの後継、カーン》を採用したプレイヤーたちがいる。「MTG Mint Card」のエドゥアルド・サイガリク/Eduardo Sajgalikもそのひとりだ。

「《天才の片鱗》と入れ換えた。最初にコストを払うだけでアドバンテージを生み出し続けるんだから最高だよ」

 このアイデアは、サイモン・ニールセン/Simon Nielsenからの指摘をきっかけに生まれたとサイガリクは言う。ニールセンいわく、一般的な青黒コントロールは《天才の片鱗》で手札を補充し始めるまで脅威に晒され続けやすく、ガードを下げるわけにもいかないため、こちらの動きがちぐはぐになり最終的に押し切られることが多いという。

「そこでこちらも《ウルザの後継、カーン》を繰り出して対抗する」とサイガリク。「空いた盤面に《ウルザの後継、カーン》を着地させて忠誠度を6に伸ばせば、大抵のデッキはそこから盤面を取り返すのに苦労するだろう。そういう状況を作りやすいのが青黒コントロールなんだ。《封じ込め》や《残骸の漂着》を使う白青コントロールと違って、相手の攻撃を待たずに脅威へ対処できる除去を搭載しているからね」

 コントロール・デッキであれ構築物を活かした構成であれ、《ウルザの後継、カーン》を採用するデッキは続々と登場している。この週末を終えたとき、どの形に帰結するのか楽しみだ。

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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