EVENT COVERAGE

マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017

戦略記事

デッキテク:ジョシュ・アター=レイトン、ジェリー・トンプソン、サム・ブラックの「青黒コントロール」

矢吹 哲也
authorpic_FrankKarsten.jpg

Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年10月7日


 昨日のスタンダード・ラウンドでは、「青黒コントロール」が勝率62.5%と大活躍を見せた。使用者4名のうち、ひとりは世界ランキング11位のケルヴィン・チュウ/Kelvin Chew。そして残る3名――ジェリー・トンプソン/Gerry Thompson(プロツアー『アモンケット』王者)、サミュエル・ブラック/Samuel Black(プロポイント上位)、ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leyton(Magic Online王者)は、マーティン・ジュザ/Martin Juza(ドラフト・マスター)を加えた4人でプレイテスト・グループを結成し今大会に臨んでいた。

ubcontrol_group.jpg
(左から)サミュエル・ブラック、ジョシュ・アター=レイトン、ジェリー・トンプソン

 4人はデンバーにあるアター=レイトンの家に1週間ほど滞在し、主に横並びに座ってMagic Onlineをプレイしながらテストを進めていった。しばらくはデッキを作っては解体する日々を過ごした4人だが、ある晩、トンプソンが《アズカンタの探索》や《ヴラスカの侮辱》、《スカラベの神》を採用した「青黒コントロール」の叩き台を組み上げた。そして翌朝、彼はアター=レイトンが以前同僚のベン・ルンドクィスト/Ben Lundquistやパトリック・チャピン/Patrick Chapinと意見を交わしたという「青黒コントロール」のリストと比較した。すると、両者のリストにはほとんど違いが見受けられなかった。さらに、ブラックもデンバーへ来る前に同様のデッキに取り組んでいたという。

 それぞれが異なるアプローチで同じアイデアにたどり着いたこと。彼らはこれを良い兆候だと考えた。そして彼らは、「青黒コントロール」が緑軸の「エネルギー」デッキに対してどれだけ有効であるかを見出し、「青黒」のカードの質の高さを感じ取った。

 ジュザは最終的にこのデッキの選択を避けた。「世界最高のコントロール使い」として名高い八十岡 翔太のようなプレイヤーとコントロールの同系戦をやりたくなかったためだ。事実、八十岡はプロツアー『カラデシュ』でオリジナル・デザインの「グリクシス・コントロール」を高速かつ完璧にプレイし優勝を果たしている。そして彼は今大会でも、同様のコントロール・デッキを持ち込んでいるのだ。しかしそれでも、恐れることはない――「青黒コントロール」は強力だ。

コントロール・ミラーで翔太に勝ったけど何か質問ある?

「何か質問ある?」と言ったね? では遠慮なくいこう。まずは「デッキリストを教えて?」

Josh Utter-Leyton - 「青黒コントロール」
世界選手権2017 / スタンダード (2017年10月6~8日)[MO]
6 《
5 《
4 《異臭の池
4 《水没した地下墓地
4 《進化する未開地
3 《廃墟の地

-土地(26)-

2 《スカラベの神
3 《奔流の機械巨人

-クリーチャー(5)-
4 《致命的な一押し
4 《検閲
4 《本質の散乱
3 《アズカンタの探索
4 《不許可
2 《本質の摘出
4 《ヒエログリフの輝き
3 《ヴラスカの侮辱
1 《天才の片鱗

-呪文(29)-
3 《禁制品の黒幕
2 《多面相の侍臣
4 《強迫
2 《否認
1 《アルゲールの断血
1 《宝物の地図
1 《本質の摘出
1 《廃墟の地

-サイドボード(15)-

 サミュエル・ブラックとジェリー・トンプソンも同じリストを共有しているが、それぞれわずかに違いが見受けられる。

 アター=レイトンのものと比較すると、トンプソンは《進化する未開地》4枚と3枚目の《廃墟の地》の代わりに《》を2枚と《》を1枚追加し、それから《水没した骨塚》を2枚採用している。《アズカンタの探索》の素早い「変身」や《致命的な一押し》の「紛争」よりも、マナ基盤の安定を優先した形だ。また、《スカラベの神》と《奔流の機械巨人》の枚数もアター=レイトンのリストと逆になっている。

 ブラックのリストもカード選択に違いがあり、彼は《本質の摘出》2枚と《天才の片鱗》を1枚抜いて枠を空け、《ヴラスカの侮辱》を1枚と《過酷な精査》を1枚、そして《至高の意志》を1枚採用している。

 サイドボードにも少しの違いが見受けられるが、いずれにせよゲーム・プランは三者共通している。

今大会で使う戦略として複数のプレイヤーを惹きつけた「青黒コントロール」のキー・カード。

 このデッキの最終的な勝ち手段は《スカラベの神》か《奔流の機械巨人》だが、しかし大半のゲームで《アズカンタの探索》をめぐる戦いになる。ブラックいわく《アズカンタの探索》は「恐らくこれまでで最高のコントロール用カードだし、コントロールを支え、動かす原動力となる」そうだ。

 アター=レイトンは、このデッキの動きと《アズカンタの探索》がどれだけ噛み合っているか語る。「1対1交換を繰り返して、土地を伸ばしながら盤面をクリアな状況にしておくだけで良いんです。対戦相手の動きをすべて1対1交換に取ることができれば理想ですね。4ターン目に《アズカンタの探索》をプレイしつつ、相手への回答も持っているのが望ましいです。その後《アズカンタの探索》が戦場に残って盤面もクリアなら、もう負ける要素はありません。このデッキなら《アズカンタの探索》が素早く『変身』し、長期戦で絶対的なエンジンとなるのです」

 そこへトンプソンが補足に入った。「サイクリングやコストの軽い妨害手段を駆使すれば、墓地に7枚のカードを貯めるのは簡単だ。土地に『変身』するから《不屈の自然》のようなマナ加速になるし、青いデッキでそれができるのはおかしいよ! 序盤に簡単に出せて、その後のドローを安定させて、マナ加速までしてくれて、そして毎ターン手札にカードを加えてくれる。完璧な1枚だね」

天才の片鱗》の枚数を減らしているアター=レイトンだが、比較的重いコストの《ヴラスカの侮辱》は重要な役割を果たしたそうだ。

 ケルヴィン・チュウとデンバーの3人のリストとの大きな違いは、チュウが《天才の片鱗》を4枚採用していることだ。しかしアター=レイトンは、この「青黒コントロール」では《天才の片鱗》はそこまで優れたカードではないと感じていた。その結果彼のリストでは1枚の採用に留めており、その理由を以下のように語る。

「『青黒コントロール』は、劣勢を覆す力を持っていません。解答のほとんどが打ち消し呪文なので、《天才の片鱗》を唱えるターンに脅威を繰り出されると不利になります。その点《アズカンタの探索》は、非常に少ないマナでカード・アドバンテージ源をもたらしてくれるのです」

 《天才の片鱗》の枚数を減らしたことで《奔流の機械巨人》の力がやや弱まったものの、『イクサラン』でも墓地から再利用したいインスタントが登場した。それが《ヴラスカの侮辱》だ。

「4マナは重く理想的ではありませんが、さまざまなものへの綺麗な解答になります」とアター=レイトンは言う。《熱烈の神ハゾレト》や《反逆の先導者、チャンドラ》、《スカラベの神》といった対処しにくい脅威も、《ヴラスカの侮辱》は1対1交換を取ることができる。それから、ライフ回復も馬鹿にならないだろう。

 こうして柔軟性の高い解答を得た「青黒コントロール」だが、しかし「穴」はある。残る弱点は、《秘密の備蓄品》のようなエンチャントやアーティファクトを着地させてしまうと対処手段がないことだ。

 前環境の「青黒コントロール」と比較すると、マナ基盤は強化されている。中盤以降安定してアンタップ・インの土地が欲しいこのデッキでは、《窪み渓谷》や《詰まった河口》より《水没した地下墓地》の方がずっと優れている。

 『イクサラン』で獲得したカードをもうひとつ挙げるなら、《廃墟の地》だろう。「《アズカンタの探索》は極めて強力なカードですが、《廃墟の地》がその解答になります」とアター=レイトンは言う。「《致命的な一押し》の『紛争』を達成するために使うこともできますし、《》や《》を持ってきて色マナを安定させることもできるのです」

サイドボードは?

 サイドボードは《強迫》と《否認》が中心になっているが、1枚挿しされたカードにそれぞれのプレイヤーの好みが表れている。アター=レイトンは《宝物の地図》を採用し、ブラックは《奔流の機械巨人》と《豪華の王、ゴンティ》を選択し、トンプソンは《リリアナの敗北》と《アズカンタの探索》を搭載した。

 また、「ラムナプ・レッド」に対するサイド・カードについても、3人が同意する答えはなかったようだ。アター=レイトンとトンプソンは《禁制品の黒幕》を頼り、一方ブラックはメイン・デッキから外した《本質の摘出》をサイドボードに複数枚採用している。彼は《本質の摘出》をやや狭いカードだと考えており、また《進化する未開地》を使う上で3マナ域に{B}{B}と{U}{U}のカードを同居させたくなかったという。

 サイドボードの最後の1枠には、主に緑軸のデッキに対して入れる《多面相の侍臣》が採用されている。「《ならず者の精製屋》のような優秀なクリーチャーに対して実に効果的です」とアター=レイトンは評価する。「他にも、戦場にいると厄介な《逆毛ハイドラ》や《殺戮の暴君》に対しても良い解答になりますね」

相性の良いデッキと悪いデッキは?

 3人がこのデッキを選択した大きな理由は、今大会では「ラムナプ・レッド」のようなアグロ・デッキより「ティムール・エネルギー」のような緑軸のデッキが多いと予想したからだった。「緑軸のデッキとは相性が良いです。アグレッシブなデッキは苦手ですね」 アター=レイトンは確信を持って言った。

「緑軸のデッキはボコボコにできるよ」とトンプソンも主張する。「1ゲーム目は除去を腐らせることができてすべてのカードに対処する必要がないし、《本質の散乱》のようなカードで《ならず者の精製屋》や《逆毛ハイドラ》、《栄光をもたらすもの》と有利な交換が取れる。基本的にこちらのカードや脅威が、相手にとって対処しにくいんだ」

0-2から4-3。悪くないね。デッキ超強い。

このデッキに興味を持ったプレイヤーに向けてアドバイスをください

 アター=レイトンは、2ターン目に《アズカンタの探索》をプレイしないことを勧める。「2ターン目は相手の動きに対応して、攻め手を与えないようにしたいですね。《アズカンタの探索》は、4ターン目以降にプレイするようにしています」

 トンプソンは、このデッキに要求されるマナを過小評価しないよう注意する。「すでに7マナか8マナ揃っているのにサイクリング・ランドを置く展開もある」 《水没遺跡、アズカンタ》や《スカラベの神》の起動型能力は、かなりの「マナ食い虫」なのだ。

 そしてブラックは、このデッキがさまざまなプレイ・スタイルを持っていることを示す。「トンプソンと僕はプレイ方針に大きな違いがある。彼は『時間を稼いで《スカラベの神》を降臨させる』ことを重視しているけれど、僕は《アズカンタの探索》でコントロールしきることを目指している。このデッキには、どれも同じくらい有効な戦い方がたくさんあるんだ。でも、どの方針をとっても上手くいくよ。デッキ自体がかなり強いからね」

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
最終
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST