EVENT COVERAGE

日本選手権2018

観戦記事

決勝:森山 真秀(島根) vs. 難波 直也(群馬)

Moriyasu Genki

 日本選手権2018。

 スイスラウンド全13回戦と準々決勝・準決勝の2戦を経て、いよいよ決勝を戦うファイナリストの2人が決まった。それは今年のワールド・マジック・カップの代表3人が同時に決まったということでもあった。日本人プレイヤーとしてシーズン・プロポイント最上位として「キャプテン」枠の行弘 賢が、そのポジションを確定させた。ファイナリストとして、森山 真秀と難波 直也も代表の座を勝ち取った。

 ワールド・マジック・カップ代表選出戦としての日本選手権は、ここまでだ。最後の1戦。ここからは純粋に日本選手権王者の座を懸けた戦いが始まる。


日本選手権2018決勝:森山 真秀 vs. 難波 直也
プレイヤー紹介、デッキ紹介

 弱冠20歳の難波(写真、右)は群馬を中心に活動するプレイヤーだ。参加者の中でも非常に若いプレイヤーだが、すでに誇るべき戦績は有している。先日のグランプリ・千葉2018でもトップ8に入賞しており、「新世代」プレイヤーの1人としてにわかに注目を集めてきている。

 今回もドラフトを6戦全勝としており、リミテッドもスタンダードも強いプレイヤーとして今後も名前を見る機会は頻繁にありそうだ。

 準決勝では日本選手権連覇を狙った原根 健太を打ち倒し、ここに座っている。

 対する森山(写真、左)も25歳と比較的若いプレイヤーだ。2年前まで「デュエルマスターズ」を中心に遊んでいたという。初めて触れたマジックのセットは『カラデシュ』と話し、経験2年で日本選手権決勝進出という勢いある若手だ。

 森山も、準決勝にて「キャプテン」行弘 賢との接戦を制しての決勝進出だ。

 普段、ベテランと呼ばれるプレイヤー同士の戦いであればより細かく戦績や人となりを紹介するのだが、今回は「新世代」同士の戦いとなった。彼らを紹介するのは前文ではなく、デッキリストとゲーム展開によって行うことになるだろう。

難波 直也 - 「赤黒アグロ」
日本選手権2018 スイスラウンド1位 / スタンダード (2018年9月8~9日)[MO]
14 《
1 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
2 《霊気拠点

-土地(25)-

4 《ボーマットの急使
2 《損魂魔道士
4 《屑鉄場のたかり屋
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
3 《再燃するフェニックス
1 《熱烈の神ハゾレト
2 《栄光をもたらすもの

-クリーチャー(24)-
2 《削剥
2 《無許可の分解
2 《木端+微塵
2 《キランの真意号
3 《反逆の先導者、チャンドラ

-呪文(11)-
3 《チャンドラの敗北
3 《マグマのしぶき
2 《強迫
1 《削剥
1 《魔術遠眼鏡
3 《大災厄
2 《ウルザの後継、カーン

-サイドボード(15)-

 難波のデッキは「オーソドックス」とも呼ばれるようなリストの「赤黒アグロ」だ。おそらくかなり多くの枚数を同じリストで参加したプレイヤーも数多いだろう。そのなかで難波というプレイヤーがここまで勝ち進んできたのは、彼の抜きんでた実力を何より示す証拠だろう。そして「赤黒」同型戦において重要な先手の権利も確定させている。

森山 真秀 - 「赤黒ミッドレンジ」
日本選手権2018 スイスラウンド7位 / スタンダード (2018年9月8~9日)[MO]
10 《
2 《
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
4 《燃え殻の痩せ地
2 《霊気拠点

-土地(26)-

4 《屑鉄場のたかり屋
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《ピア・ナラー
4 《再燃するフェニックス
2 《栄光をもたらすもの

-クリーチャー(16)-
3 《マグマのしぶき
3 《削剥
4 《ヴラスカの侮辱
3 《キランの真意号
3 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《ウルザの後継、カーン

-呪文(18)-
4 《強迫
3 《チャンドラの敗北
2 《アルゲールの断血
1 《削剥
1 《大災厄
1 《最古再誕
2 《木端+微塵
1 《ウルザの後継、カーン

-サイドボード(15)-

 森山はメインから《ヴラスカの侮辱》4枚と、かなり濃く黒を採用している。

 他に能力を持たない「2色・タップインランド」の《燃え殻の痩せ地》も4枚だ。《ボーマットの急使》など1マナ域がなく、アグロとは明確に区分される「赤黒ミッドレンジ」だ。

 《マグマのしぶき》や《アルゲールの断血》の枚数など、かなり調整を重ねたであろう様子が見てとれる。後手であってもそれを打ち返せるほどどっしりとしたアクションを取れる体制は、整っていた。

 リストを比較してもデッキ相性を示す天秤の針は一定せず、グラグラと揺れているようであった。

ゲーム1

 ゲーム開始にあたっても、2人に緊張の様子は見られない。

 もちろん、完全にいつもどおりというわけでもないのだろうが、2人とも良い意味で普段の実力を発揮できる前提は揃っているようだ。

 試合は難波の1マリガンで始まる。

 《ゴブリンの鎖回し》、《反逆の先導者、チャンドラ》、《削剥》。

 必要なキーパーツはそろっている手札だが、肝心なものに恵まれていない。土地だ。《竜髑髏の山頂》1枚の手札から、どこまで伸ばせるか。


森山 真秀

 難波の《ボーマットの急使》を、森山は《ゴブリンの鎖回し》で、カードを消費することなく退場させる。

 この《ゴブリンの鎖回し》を難波も《削剥》で落とすものの、3枚目の土地が遠く、ここから攻めあぐねてしまう。

 対する森山は《反逆の先導者、チャンドラ》の忠誠度を順調に増やしてゆき、戦況を整えてゆく。

 森山が《屑鉄場のたかり屋》、《ゴブリンの鎖回し》と続けて展開したところで、いまだ2マナでしか動けない難波は気持ちを次のゲームに向けた。

森山 1-0 難波


森山「土地はどうしても」

難波「逃れられないね」

 言葉短かだが、土地1枚でスタートした難波のチャレンジを2人とも無謀とせず受け入れているようだ。

 2人とも現行のスタンダードで「赤黒」というカラーリングを使う以上、土地の引き具合にムラが生じてしまうのは仕方のないことだと割り切っていた。

森山「リスト、もう一度見せてもらっていいですか」

 サイドボード中、森山がジャッジに声をかけた。

 デッキリストの相互確認はゲームの開始前と、ゲームの間(サイドボード中)に認められている。

 より深く、より正しくサイドボーディングするためには、重々の確認が必要なようだ。

 あわせて難波も森山のデッキリストを確認し、「サイド後、どういった形に変形するのか」をお互い推測しあうことになる。

 そして先にサイドボーディングを終えたのは森山だった。

 ゲーム1を落とし、すでに「絶対にゲームを負けられない」難波は、より慎重に、より時間をかけてゆく。

ゲーム2

 2人ともマリガンでのスタートとなったゲーム2。

 《キランの真意号》設置から始め、《強迫》と繋げる難波は順調ともいえる立ち上がりだろう。

 その《強迫》によって、《ゴブリンの鎖回し》、《再燃するフェニックス》、《反逆の先導者、チャンドラ》2枚、《ヴラスカの侮辱》、《削剥》という手札が公開される。

 展開も除去もある手札を見せたが、今度は、森山のもとに土地が訪れていなかった。


難波 直也

 《削剥》が捨てられ、2ランド・ストップで森山がなにもアクションできずにいるところで難波は攻め切る姿勢を見せた。

 《ピア・ナラー》召喚、そのまま《キランの真意号》に搭乗してアタック。

 次いで《屑鉄場のたかり屋》召喚、《キランの真意号》に搭乗して《ピア・ナラー》とともにアタック。

 緊急のレッド・ランプがつくライフになってようやく森山に3枚目の土地が届くが、プレイできるカードは《ゴブリンの鎖回し》のみだ。

 《ピア・ナラー》の生成した飛行機械・トークンを落としただけで、盤面を取り返すには時期を逸していた。

森山 1-1 難波


森山「仕方ないですね」

 今度は森山にマナスクリュー(土地が少なすぎる事故)が訪れた。

 時々訪れてしまうこの事故の確率を現状より抑えることよりも、普通に回れば向かうところ敵なしというパワーカードを詰め込むことを選んだのが「赤黒」というデッキだ。

 実際、ゲーム1もゲーム2においても、2人とももう1ターン土地を引くのが早かっただけで全く展開は違ったものだっただろう。

ゲーム3

 ここにきて、お互いが納得のいく手札7枚のキープを宣言した。

 森山が《キランの真意号》プレイすると、難波もそれに応えて《キランの真意号》をプレイした。

 森山は、難波の《キランの真意号》を《削剥》してから4ターン目に《ウルザの後継、カーン》をプレイ。

 [+1]能力を起動すると、《ウルザの後継、カーン》と《反逆の先導者、チャンドラ》という凄まじい2枚をめくって見せた。

 このパワーカードの2択には、こらえきれず難波が「うええ」と漏らしてしまう。仕方なく《ウルザの後継、カーン》を森山の手札に加えることを選択する。

fn_karn.jpg

 難波も動きが悪いわけではない。3ターン目には《ゴブリンの鎖回し》をプレイできており、《ウルザの後継、カーン》を守る《キランの真意号》には《無許可の分解》を当てて、《ゴブリンの鎖回し》のアタックを通している。

 《ウルザの後継、カーン》の忠誠値を大きく削いで1としたが、しかし「落とす」ことはできていない。

 生き残った《ウルザの後継、カーン》は[+1]を起動して、《ピア・ナラー》と《ヴラスカの侮辱》をめくる。

 難波は「まだマシ」と、《ピア・ナラー》を手札に加えさせることを選んだ。この《ピア・ナラー》はそのままプレイされて戦線に追加される。

 難波も、ここからパワーカードを押し付けてゆく。《栄光をもたらすもの》を督励して飛行機械・トークンを落とし、《ウルザの後継、カーン》をようやく撃墜する。

 しかし森山の手札に2枚目の《ウルザの後継、カーン》があることは周知だ。《ウルザの後継、カーン》を[+1]で入る形でプレイしつつ、《屑鉄場のたかり屋》も展開してゆく。

 難波は督励の効果でまだアンタップしない《栄光をもたらすもの》の横に、《再燃するフェニックス》を追加してターンを終えた。

 ここで初めて森山の《ウルザの後継、カーン》は[-1]を起動し、《ヴラスカの侮辱》を回収しつつ、そのまま《再燃するフェニックス》に向けてプレイした。

 森山はプレインズウォーカーの連打という脅威を示しつつ、《ピア・ナラー》、《屑鉄場のたかり屋》のアタックも続け、ライフレースもしっかりと詰めてゆく。

 難波はこの返しに《栄光をもたらすもの》で《ウルザの後継、カーン》を攻撃するが、忠誠値は1残り、まだ落とせていない。

 しかし《木端+微塵》で《ピア・ナラー》を、《大災厄》で《屑鉄場のたかり屋》を対処すると盤面は大分スッキリとした。

 《ウルザの後継、カーン》 vs. 《栄光をもたらすもの》という構図に最初に割り込んだのは、森山の《最古再誕》だ。

 難波は他に生け贄に捧げられるクリーチャーがいない以上、唯一の戦力である《栄光をもたらすもの》を生け贄にせざるを得ない。

 この返しには劣勢を打開するカードを展開したかった難波だが、《屑鉄場のたかり屋》追加にとどまってしまう。

 《ウルザの後継、カーン》によって土地も手札も増やし続けていた森山が8マナから《再燃するフェニックス》を2枚展開したところで、難波は森山の優勝を祝った。

森山 2-1 難波

fn_last.jpg
試合後

 「県内ではPPTQ(プロツアー予備予選)が開催されていないんです」と語った島根在住の森山。「次回の日本選手権は、ぜひ島根で開催してください!」とも続けた。

 これは過去、日本選手権が「前年度優勝者の居住地で翌年大会が開催される」という制度があったことをふまえてのものだ。

 そして地方在住ながら、彼がこれほどまでに卓越した実力を持つようになったのは理由がある。

 1つは「みなさんに支えられて、勝てました」と話してくれたように、周りのコミュニティとの温かくも深い絆だろう。

 実際に森山を知るプレイヤーに、彼を冷たく表現する者は1人もいなかった。

 「見た目通りに爽やかだよ」 この言葉が彼を分かりやすく表現している一文だろうか。

 もう1つ、「これからMORPTQ(Magic Onlineでのプロツアー地域予選)に出るんです」と笑って話していたところに、その一端がかいま見える。

 先々週開催された日本のRPTQ参加は事情があって参加できず、Magic Onlineで開催されるRPTQにその参加権利を振り替えているとのことだった。

 そして森山の言う「これから」いうのは、後日という意味合いではなかった。

 今期のMORPTQ開催時間は、日本時間にして「2018年9月9日、午後9時00分」からだ。

 つまり同日の「午後8時過ぎ」に日本選手権会場を後にした森山にとってみれば、「これから」というより、むしろ「今から」という表現の合う連戦だ。

 しかしその連戦を明るく「楽しみたい」と語る姿は、年代を問わず「マジックに惹かれたプレイヤー」の姿だ。

 若き「新世代」のプレイヤー、森山 真秀として。そして世代を問わずマジックを愛するマジック・フリーク、森山 真秀として。

 日本選手権、優勝おめでとう!

champion.jpg
  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
最終
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST