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マジック・スポットライト:シークレッツ

マジックにおけるチームとは
「マジック・スポットライト」メインイベントのような大型オープントーナメントでは、数多くの競技プレイヤーたちが全国から集結します。その会場では対戦だけでなくイベントまでの調整や仲間との議論、情報交換もまた、大会を形作る重要な要素となっています。
近年の競技マジックでは、デッキ選択や環境理解においてコミュニティの重要度がますます大きくなっています。競技シーンのレベルが高まるにつれ、一人の力だけで最適解にたどり着くことは難しくなりました。仲間と知見を共有しながら調整を進める"チーム"や"コミュニティ"は、今や競技マジックを語るうえで欠かせない存在となっています。
もっとも、マジックはあくまで個人戦。最終的にプレイを選択し、勝敗を決めるのはプレイヤー自身です。それでもなお、多くの競技プレイヤーたちが仲間との調整を重視するのはなぜなのでしょうか。
今回は、本イベントで解説を務める行弘 賢さんも所属する競技コミュニティ「常勝集団MSD」の皆さんへのインタビューを通して、プレイヤーたちがどのように調整を重ね、スポットライトへ臨んでいるのか、その実像に迫ります。
行弘 賢の場合 ―― 「目標を持って取り組むなら、チームは必須」
行弘にとってチームとは、「お互いがお互いを高め合う関係」だという。
「目標に向かって一丸となって努力し、より良い結果を全員で目指せるチームが理想ですね」
競技マジックは個人戦だ。しかし行弘は、本気で結果を求めるのであれば、チームやコミュニティの存在は欠かせないと考えている。
普段は仕事の傍らMTGアリーナやドラフトを楽しみながら過ごしているが、大会が近づくと話は別だ。およそ1か月前を目安に個人でもチームでも調整をスタートし、本番へ向けた準備を進めていく。
「元々、個人でやるよりチームでやった方が良い結果につながると思っていました」
そう語る行弘にとって、「常勝集団MSD」への加入は大きな転機だったようだ。
「モチベーションの復活にもなりましたし、加入したことでそれを維持できているとも感じています」
一方で、チーム活動には課題もある。
行弘が挙げたのは、チーム内に蓄積された情報や知見をどのように引き出し、共有していくかという点だ。意見が割れた場合も、結論を急ぐのではなく、その原因を探ることを重視しているという。
「何で意見が割れているのか、そこをしっかり追求すると解決することが多いですね」
そんな行弘がチームの価値を強く実感したのは、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』での出来事だった。
デッキ登録前日、チームメイトが考案した「赤単アグロ」へ乗り換える決断を下した。自身はそれまで一度も使用したことのないデッキだったが、その選択が優勝につながった。
「復帰してからは、自分由来じゃないチームデッキに何度も助けられています。あの時は本当にチームの恩恵を感じました」
最後に、これから競技イベントへ挑戦するプレイヤーへメッセージをもらった。
「ある程度までは個人でもできます。でも目標を持って取り組むなら、チームやコミュニティがある方がかなり有利だと思います。興味があるなら、まずはアウトプットを続けてみてください」
平山 怜の場合 ―― 「チームに正解はない」
平山は、「チームとは何か」という問いに対して、まず「目的をともにした同士の集まり」と答えてくれた。
ただし、その形は一つではないという。
「チームによって集まる目的や温度感は違います。自分のマジックとの向き合い方や人間性に合ったチームを選ぶべきだと思います」
平山が所属する常勝集団MSDも、必ずしも厳格な調整チームというわけではない。
「MSD自体は基本的にはマジックおじさんの仲良し集団ですね。一緒に通話しながらマジックする程度のゆるいコミュニティです。別に義務もありません」
常勝集団MSDの始まりも、他チームを見て増田さんと冗談半分に名乗り始めたのがきっかけだったという。そこから仲の良い友人や実力のある知人に声を掛け、少しずつ現在の形になっていった。
もちろん、大会前には調整も行う。イベントに参加するメンバー同士で通話を繋ぎながら練習し、気になるマッチアップがあれば直接対戦して検証する。同じデッキを使う場合は意見交換や情報共有も欠かさない。
また、自身が参加しない大会であっても、過去のイベントで得た知見を共有することは珍しくないという。
平山は、かつては強い個人主義だったと振り返る。
「昔は自分が勝つことが一番重要でした。もちろん今でも最優先なのは変わりません」
しかしチームで活動するようになってからは、個人の結果だけでなく、チーム全体の結果を見るようになった。
たとえ自分が勝てなかったとしても、同じデッキを使った仲間が結果を残せば、その調整や選択が正しかったことは証明できる。
「自信のあったデッキで自分は勝てなくても、他のメンバーが勝ってくれたことがありました。チームだと試行回数が増えるので、そういう見方ができるんです」
一方で、意見が割れること自体はあまり問題だとは考えていない。
「マジックは最終的には個人のゲームですから」
意見は共有する。しかし最終的にどのリストを使い、どんな戦術を選ぶのかを決めるのは各個人だ。結果として、常勝集団MSDでは同じデッキを選択したとしても、全員の75枚が完全に一致したことは一度もないという。
印象に残っているエピソードとして挙げてくれたのは、自分たちの調整結果がその後の構築に影響を与えた経験だ。
チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2で使用した「リビングエンド」では、諜報ランドを複数採用する構成にたどり着いた。この構成は後に広く使われるようになり、自分たちの結論が環境に影響を与えたことを実感したという。
「自分たちがたどり着いた結論が、あとから広く使われるようになると嬉しいですね」
そして将来的な目標を聞くと、少し笑いながらこう答えてくれた。
「いつか決勝で仲間同士が戦えたらいいなと思っています」
最後に、これから競技マジックに取り組む人へメッセージをもらった。
「一人でどこまで行けるか挑戦するのもいいし、コミュニティで切磋琢磨するのもいい。好きにすればいいと思います」
ただし、と平山は続ける。
「『一人だから勝てない』と環境のせいにするのはもったいないですね。チームに入りたければ入ればいいし、なければ作ればいい。今はSNSもありますし、新しいコミュニティに出会うことは昔よりずっと簡単だと思います」
……ちなみに常勝集団MSDでは新規メンバーも募集中とのこと。
「最近は加齢臭がきついので若手を募集しています」
河野 融の場合 ―― 「マジックを一緒に楽しめる仲間」
河野は、チームを「同じ目的を持って一緒にマジックをする相手」と表現する。
「普段はただの友人同士でも、『スポットライトシリーズで好成績を残したい』とか『次のチャンピオンズカップファイナルに出たい』とか、同じ目標を共有して動いているなら、その瞬間はチームだと思います」
常勝集団MSDでは、通話に集まって対戦画面を共有したり、環境やデッキについて話し合ったりすることが多いという。
もちろん大会へ向けた調整も行うが、河野の話を聞いていると、そうした時間そのものを楽しんでいる様子が伝わってくる。
「MTGアリーナやMagic Onlineをやる時も、みんなとわいわい話しながら遊べるのが楽しいんですよね」
チームに入って変わったことを尋ねても、最初に出てきたのは成績の話ではなかった。
「マジックがより一層楽しくなりました」
同時に、自分では気付かなかったプレイや考え方を指摘してもらえる機会も増えたという。
一緒に遊び、一緒に議論する。そんな時間そのものが、河野にとってチームの魅力なのかもしれない。
一方で、チームにはさまざまな立場の人がいる。
仕事や家庭の事情によってマジックに使える時間は違うし、好きなデッキや得意な戦略も異なる。
だからこそ、無理に意見を一つにまとめることはない。
「なぜその選択をするのか、その理由をお互いに理解することが大事だと思っています」
印象的だったのは、大会中にゲームプランを見直したエピソードだ。
同じデッキを使用していた仲間たちと情報を共有しながら、ラウンドを重ねるごとにサイドボードプランを修正していったという。
「同じリストやゲームプランを検討した仲間が同じ会場にいたからこそできたことでした」
最後に、マジックを楽しむプレイヤーたちへ向けた言葉を聞いた。
「結果だけを追うと、どこかでしんどくなることもあります。大会に向けた日々のマジックそのものを楽しんでほしいですね」
そして、もう一つ。
「一緒にマジックを楽しめる仲間を大事にしてほしいです」
三者三様の回答でしたが、そこには共通するものもありました。
それは、チームとは単に勝つための組織ではなく、「同じ目標や時間を共有する仲間の集まり」だということです。
目標は人によって異なります。大きな大会で結果を残したい人もいれば、より上達したい人もいるでしょう。あるいは、気の合う仲間とマジックを楽しみたいという人もいるかもしれません。
だからこそ、チームの形にも正解はありません。
厳しく調整を重ねるグループもあれば、普段は雑談をしながらマジックを楽しむコミュニティもあります。そのどちらもまた、マジックにおけるチームの一つの形なのでしょう。
一人で遊んでも楽しいのがマジックです。しかし、仲間と語り合い、ともに悩み、ともに喜ぶことで見える景色もあります。
スポットライトのような競技イベントであっても、その根底にあるのはそうした人と人とのつながりなのかもしれません。
マジックにおけるチームとは、そんな時間を共有するための場所なのではないでしょうか。
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