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日本選手権2018

観戦記事

準決勝:難波 直也(群馬) vs. 原根 健太(東京)

伊藤 敦

 「2018年、最もブレイクしたマジックプレイヤーは?」

 もしそう問われれば、難波 直也の名前は間違いなく挙がることだろうと思う。

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 昨年11月に開催されたプロツアー地域予選を突破し、2月にプロツアー『イクサランの相克』に出場。さらに7月には『基本セット2019』リミテッドのグランプリ・千葉2018でトップ8に入賞し、11月に開催予定のプロツアー『ラヴニカのギルド』への参加権利も獲得。

 そこに来て今回の日本選手権2018でも、スタンダード5-1-1、ドラフト6-0でスイス1位通過という圧倒的なパフォーマンスを見せつけてトップ8入賞を果たしたのである。

 しかも、それでいて難波はまだ20歳そこそこだというのだ。

 前途溢れる有望な若者が、ワールド・マジック・カップ日本代表の座まであと1勝というところまで来ている。

 だが、そんな難波の前に立ちはだかるのは。まさしく最大の試練と言ってもいい存在だった。


 一体どこまで強欲なのだろうか、この男は。

 日本選手権2017で日本王者となり、ワールド・マジック・カップ2017で渡辺 雄也・八十岡 翔太とともに日本代表を優勝に導いた男。原根 健太が、前人未踏の2年連続日本王者という偉業を達成するべく、この準決勝まで勝ち抜いていた。

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 もう片方の準決勝では、渡辺 雄也を準々決勝で倒して自ら日本代表キャプテンの座をすでに確定させた行弘 賢が戦っている。準決勝が始まる前、原根は行弘から「頼む、勝ってくれ」と激励を受けていた。前年のワールド・マジック・カップの優勝経験があるプレイヤーともなれば、日本代表チームメイトとしてこれ以上頼もしい存在はないだろう。

 だがもとより原根としても、ここまで来たら是が非でも勝ちたいに違いない。ゴールドレベルを維持できたとはいえ、そのうちのプロポイント11点は日本選手権とワールド・マジック・カップ絡みだった。同じ条件で次のシーズンもスタートできたなら、プロポイントのシステム次第だが、ゴールドレベルの維持にも目途がつきやすくなる。

 何かを望み、それを常に行動に移してきたから原根の今がある。齋藤 友晴に誘われ、愛知から上京してきたこと。「3年でレベルプロになる」と公言し、それを実現したこと。到達したゴールドレベルを、今シーズンも維持したこと。

 だから。初日のインタビューで「学生のようなもっと若いプレイヤーたちにマジックを遊んでほしい」と語っていた原根の前に、これ以上なく重要な局面で弱冠20歳の難波が対戦相手として現れるというのは、なんという運命の悪戯だろうか。


 難波にとっては、「世界に挑む」ための登竜門であり。

 そして原根自身が、何より望んだ光景がここにある。

 若き才能 vs. 前年の日本王者。

 日本代表の座をかけた、事実上の決勝戦。

 その幕が、いま上がった。


準決勝:難波 直也 vs. 原根 健太
ゲーム1

 先手はスイスラウンド1位の難波。原根が1マリガンでゲームがスタートする。

 まずは2ターン目、難波が挨拶代わりとばかりに《屑鉄場のたかり屋》を送り込むと、3ターン目には《ボーマットの急使》をプレイして2体ともレッドゾーンに。これに対して原根は《喪心》を《屑鉄場のたかり屋》に打ち込むが、難波は戦闘後に2体目の《屑鉄場のたかり屋》をおかわりし、攻め手を緩めない。

 ここで軽いアクションを後に残さなかったことから、《ゴブリンの鎖回し》のない難波の手札を読み切った原根も《光袖会の収集者》をブロッカーに立てるのだが、さすがにスイス1位通過から準決勝まで勝ち上がってきた「会場最強の赤黒アグロ」を駆る難波の仕上がり方はレベルが違った。

 4ターン目、難波は当然のように《反逆の先導者、チャンドラ》を送り出すと、すぐさま[-3]で《光袖会の収集者》を除去。原根も残った1マナで《致命的な一押し》を《屑鉄場のたかり屋》に打ち込んでライフを守るのだが、その脇で《ボーマットの急使》が淡々と貯金を稼いでいく。

 この《反逆の先導者、チャンドラ》には返しで《ヴラスカの侮辱》を当て、《スカラベの神》が降臨するまでの時間を稼ごうとする原根だったが、難波はならばとばかりに《再燃するフェニックス》をプレイ。そしてこれに対する応手は、さすがの原根も持ち合わせてはいなかった。《異臭の池》をサイクリングし、セットランドしながら《アルゲールの断血》を設置するのみでターンを返す。

 そして、難波の勢いはなおも止まらない。《ゴブリンの鎖回し》をプレイし、《再燃するフェニックス》と《ボーマットの急使》で5点アタック。加えてライフ13の原根が土地をすべて残してターンを返そうとしたエンド前に《屑鉄場のたかり屋》を墓地から戻す。この残りマナのないタイミングで《ボーマットの急使》に《ヴラスカの侮辱》を食らうものの、すでに盤面には10点クロックが形成されている。


原根 健太

 それでも、原根は最後に「紛れ」を呼び込むを張っていた。2点を得て原根のライフは15点。盤面には10点クロック。そのまま難波が10点で殴ると、《アルゲールの断血》が変身してしまう。そこから《スカラベの神》や《奔流の機械巨人》につながれば逆転の可能性が生まれるかもしれない。……そのように見せることで、難波に全力での攻撃を躊躇させるという罠を。

 だが、それも冷静に盤面の打点を計算した難波には通用しなかった。フルアタックで10点、さらに盤面に《キランの真意号》を追加してターンエンド。そのままアップキープに《アルゲールの断血》は変身するものの、そもそも《スカラベの神》も《奔流の機械巨人》も引いていない原根はカードを畳むしかない。

 しかし、実のところいずれにせよ難波にとっては問題なかったのだろう。何せ難波の最後の手札には、なおも《無許可の分解》が余っていたほどだったのだから。

難波 1-0 原根


ゲーム2

 後手の難波が《損魂魔道士》を送り出すのに対し、原根は《アルゲールの断血》でライフ獲得の伏線を作っておく。

 難波は続く《屑鉄場のたかり屋》こそ《本質の摘出》されるものの、意に介さず《ゴブリンの鎖回し》を続けて展開。


難波 直也

 その上、原根が《機知の勇者》で手札を整えた返しで再び《反逆の先導者、チャンドラ》! [+1]でマナを出すと《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》がクロックとして追加され、果敢が誘発した《損魂魔道士》と《ゴブリンの鎖回し》がレッドゾーンへと送り出される。

 やむなく《機知の勇者》をチャンプブロックに回し、「紛争」を達成した《致命的な一押し》で《ゴブリンの鎖回し》を除去する原根だったが、《損魂魔道士》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》、忠誠度5の《反逆の先導者、チャンドラ》と並んだこの状況。もはや一刻の猶予もなさそうだ。

 そう判断した原根は、最速・最大の勝ち手段である先手5ターン目《スカラベの神にすべてを賭ける。

 だが、そこに難波の大災厄が突き刺さる!

 《反逆の先導者、チャンドラ》の[+1]と果敢込みで、このターン原根のライフは一気に11点まで落ち込む。そしてこの時点で原根の手札には、《否認》以外のリソースが残されていなかった。

 《アルゲールの断血》を起動し、懸命に《ヴラスカの侮辱》を探す原根。だが、ドローは応えない。しかも、エンド前に《屑鉄場のたかり屋》が墓地から戻ってくる。

 すでに盤面には《損魂魔道士》《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》《屑鉄場のたかり屋》《反逆の先導者、チャンドラ》と並んでいる。慎重に打点を計算した難波は、勝利を掴むべくフルアタックを敢行。

 一縷の望みに懸ける原根は《アルゲールの断血》を起動し……そして引き当てた。《致命的な一押し》。難波の手札に何もなければ、このターンだけは残りライフ1点でしのぎきれる。1点あれば、まだわからない。まだ負けていない。まだ。

 だが。

 第2メインを迎えた難波が、ここまで終始冷静に、否、冷静であるように努めていた難波が。

 目前の価値ある結果に向けて少し恐る恐る、しかし勢い込むように公開したのは、その最後のわずかな1点を奪うゴブリンの鎖回しで。

 そして2年連続日本代表という夢を、まさに打ち砕かれようとしている原根は。

 しかしその瞬間、若き日本代表の誕生を祝福せんとばかりに、右手を差し出したのだった。

難波 2-0 原根

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