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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2023

観戦記事

準決勝:中道 大輔 vs. 川﨑 弘敬 ~64枚デッキとキャンディーの道標~

伊藤 敦

 

 578名が参加した、MTGアリーナを使用した『エルドレインの森』発売直後の無料大型スタンダード大会、ジャパンオープン2023。

 そのトップ8のアーキタイプは、「5色ランプ」「5色ランプ」「ゴルガリ・ミッドレンジ」「ゴルガリ・ミッドレンジ」「エスパー・ミッドレンジ」「グリクシス・ミッドレンジ」「白単アグロ」「白単ミッドレンジ」というものだった。

 直近のスタンダード環境を少し遊んでいたプレイヤーならばわかるだろう。そこには一人、異彩を放つデッキビルダーが勝ち残っていた。

 「白単ミッドレンジ」を使用する川﨑 弘敬だ。半年前にも、佐藤 レイが「白緑毒性」で優勝したチャンピオンズカップファイナル サイクル2において、リストは大分異なるもののアーキタイプとしては同じ「白単ミッドレンジ」でトップ8に勝ち残っていた。そこからカードプールは増えこそしたものの減ってはいないため、そこでの蓄積が今回の調整にも生きたのだろうと推察される。

 だが何よりも驚くべきポイントは、「白単ミッドレンジ」というアーキタイプ選択それ自体にではない。その独自の構築理論にあるのだ。

 川﨑のデッキは、何と64枚。かの殿堂プレイヤー・三原 槙仁が今は無くなったエクステンデッド・フォーマットのグランプリ・神戸11で準優勝した「オーメン・ヴァラクート」を彷彿とさせるデッキ枚数だ。

 デッキと初期手札があるカードゲームでは、動きの再現性を高めたり特定の強力なカードを引く確率を上げたりするために、そのルールにおける最小枚数のデッキにするのがセオリーである。スタンダードやモダンなら60枚。ドラフトやシールドなら40枚。その常識を打ち破ったのが64枚「オーメン・ヴァラクート」だった。ただそれは《風景の変容》で《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と一緒に確定サーチするための《》がゲーム後半に足りなくなるという理由があった。

 ならば、川﨑の「白単ミッドレンジ」には《風景の変容》に相当するギミックが搭載されているとでもいうのだろうか。

 しかも川﨑のデッキの独自性はそれだけではない。前週に発売したばかりの最新セット『エルドレインの森』から、ほとんどのプレイヤーが活躍を予想していなかったカードを4枚採用しているというのである。それでここまで勝ち上がっているというのは、構築理論とプレイヤースキル、そのどちらもが卓越していなければ成しえない偉業だ。

 一方、対する中道 大輔についてはもはや説明不要だろう。マジック歴27年。グランプリ・千葉2019優勝。日本選手権2021FINAL優勝。草の根大会で長年培った確かなプレイヤースキルは、競技シーンの第一線で活躍するプレイヤーに勝るとも劣らないほどだ。

 そんな中道が使用しているのが「白単アグロ」。そう、この準決勝は奇しくも白単対決と相成った。

 奇才がもたらした奇縁とも言うべきマッチアップ。だとすればこの戦いの果てに待つ結末もまた、奇なるべきということになる。

 ただ勝負の結果は、実際にやってみるまではわからない。

 譲れない白星をかけた、白熱の準決勝が始まった。

 

ゲーム 1

 スイスラウンド上位で先攻の川﨑のオープニングハンド7枚には、土地が《平地》1枚しかなかった。

 スタンダードの先攻ノーマリガンで土地1枚は、マジックのセオリーならば即マリガンだ。だが、川﨑はキープする。クリックミスではない。勝算があった。

 キャンディーの道標。『エルドレインの森』からの新カードであり、川﨑の「白単ミッドレンジ」を一段階上のステージに引き上げたおそらく立役者だ。登場時に「占術2」ができるので、2ターン目のドローも合わせてライブラリーの上3枚の中に1枚でも土地があれば土地2枚の手札をキープしたのと同じことだ。

 おまけに他の手札には《野心的な農場労働者》と《永岩城の修繕もある。4マナまで伸びれば通常どおりのゲームができる。

 64枚中の土地24枚は、60枚デッキで言えば22.75枚入っているようなものだ。初手の分を減らして57枚中23枚の土地を3枚から見つける確率は、約80%。十分信頼に値する。

 もちろん確率はその場で計算してはいないだろう。だが経験則がある。「土地1キャンディーは土地が《平地》で後続があるならキープ」……無数の調整によって培われた、おそらくそんな経験則が。ギャンブルではない。理性に従った判断だ。

 ゆえの土地1キープ……そのはずだった。

 だが、現実とは時に非情なものだ。

 「占術2」はどちらも土地ではなく下下。そして中道が送り出した《徴兵士官》の返し、2ターン目のドローは……残念なことに土地ではなかったのだ。

 そして、続く川﨑の3ターン目のドローもまた、土地ではなかった。

中道 1-0 川﨑

 

ゲーム 2

 後攻1ターン目《有望な信徒》スタートの中道に対し、川﨑は先攻3ターン目に《ギラプールの守護者》を立てるのが初動とゆっくり目な立ち上がり。

 これに対して中道はエンド前《忠義の徳目》の出来事側で騎士・トークンを生成してから『エルドレインの森』からの期待の新戦力である呪文書売りを召喚し、騎士・トークンに呪文書を売りつけ魔法戦士にして攻撃に向かわせると、これは《ギラプールの守護者》と相打ちになる。

 すると返すターン、川﨑のアクションは大天使エルズペス》!「+1」で態勢が整うまでのさらなる時間の猶予を作りにいく。

 中道は《輝かしい聖戦士、エーデリン》を召喚しつつ、《呪文書売り》で自身を強化して《大天使エルズペス》に総攻撃。兵士・トークンがチャンプブロックしつつ、忠誠度を2まで削る。

 ここで返すターン、5枚目の土地がない川﨑が引き込んだのは1ゲーム目であやが付いたカード、キャンディーの道標。「占術2」すると土地がなく、代わりにさらなる《キャンディーの道標》が見えるという思わず1ゲーム目の悪夢を想起してしまいそうな展開だが、川﨑は冷静にそんなジンクスに囚われることなく、合理的思考で《キャンディーの道標》だけをトップに残すと、2マナで《キャンディーの道標》即起動ドローからトップに積んだ《キャンディーの道標》を出して再び「占術2」することで、今度こそさらなる土地にたどり着く!

 白単で5マナにたどり着けばすべてが解決するカード……とくれば、「あれ」しかない。

 1ターン後の戦線壊滅を予告された中道は、せめて更地にプレインズウォーカーという事態にだけはならないよう《大天使エルズペス》を戦闘ダメージで落としつつ、《婚礼の発表》を出してリソースを補充する。

 そして、予告通り川﨑から繰り出される太陽降下》!

 だが、一度リセットされてもまだ立て直せるのが中道の白単の特徴だ。2枚の《静寂の呪い》でそれぞれ《永遠の放浪者》と《マイトストーンとウィークストーン》を指定しつつ、《婚礼の発表》の2枚目を追加する。

 これに対し、川﨑は《第三の道のロラン》で《婚礼の発表》のうち1枚を割ってターンを返すが、なおも中道は忠義の徳目》を設置し、絶えずプレッシャーをかけ続ける。

 《太陽降下》によっても流せない、継続的効果があるエンチャントによる攻勢を前に、さしもの「白単ミッドレンジ」にも打つ手がないか……そう思われた。

 中道の《静寂の呪い》の指定は、「白単ミッドレンジ」の情報がない中、制限時間もある状態で、公開制の川﨑のリストから読み取った精いっぱいの判断に基づくものだ。《スレイベンの守護者、サリア》がある中道のデッキに対し、6マナの非クリーチャー呪文は残しづらい。それでも残さざるをえないとするなら、メインサイドで合計3枚も採用されている《永遠の放浪者》の確率が高いか。逆に《マイトストーンとウィークストーン》は最低でも5マナ単体除去で、6マナのカードよりは優先度が高いだろう。

 だから《永遠の放浪者》と《マイトストーンとウィークストーン》を指定した。そして実際、《マイトストーンとウィークストーン》は川﨑のサイド後のデッキに残っていた。

 しかしもう片方は、川﨑のセオリーとは違っていた。

 エンド前の《キャンディーの道標》起動による1ドローが6枚目の土地をもたらし、ついに川﨑は永遠なる別れを告げる。

 告別》!

 今度こそすべてのリソースを失った中道には、続く《セラの模範》が《キャンディーの道標》との組み合わせでもたらすであろうさらなるリソースと戦い抜こうという気力は、もはや残されていなかった。

中道 1-1 川﨑

 

ゲーム 3

 先攻の中道が《徴兵士官》《銅纏いの先兵》というロケットスタート。

 一方、《平地》2枚に《軍備放棄》《骨化》《一時的封鎖》という上々の初手をキープして後手1ターン目には《軍備放棄》を唱えるのを我慢した川﨑だったが、《骨化》で《銅纏いの先兵》を追放して返すと、さらに《輝かしい聖戦士、エーデリン》を出された返しのターン、3枚目の土地が引けない!

 《軍備放棄》を《輝かしい聖戦士、エーデリン》に当てられない以上、《徴兵士官》を処理するしかないが、さらに《銅纏いの先兵》を追加され、このターン一気に10点アタックでライフは残り4。

 1ターン遅れで3枚目の土地を引き込むも、もはや盤面を覆すことはかなわない。

 かくして、とことん20%の裏目に泣かされた川﨑は無念の準決勝敗退となったのだった。

中道 2-1 川﨑

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