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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2023

観戦記事

準決勝:名出 和貴 vs. Henrietta ~激闘!シェオル・スタック・シェオル~

伊藤 敦

 

 スタンダード・フォーマットでは、多くの環境に「王者のデッキ」が存在する。

 同じカードプールの環境が2ヶ月、3ヶ月と続くうち、勝率が低すぎるデッキは淘汰されてくる。そしてプレイヤーたちはデッキの乗り換え先を求めて今勝っているデッキは何かを調べ、最も活躍しているデッキに乗り換える。

 すると現出するのだ。メタゲームの頂点、「王者のデッキ」が。

 ここ最近の環境では、黒系のミッドレンジが「王者のデッキ」となることが多かった。

 では、先週末発売した『エルドレインの森』から始まるこの環境のスタンダードで「王者のデッキ」を予想するならば何か。

 その最右翼と目されているのが、『エルドレインの森』の新カードによって一気にメタゲームの最先端に躍り出たアーキタイプ、「ゴルガリ・ミッドレンジ」だ。

 そしてこの準決勝は「ゴルガリ・ミッドレンジ」ミラー。つまり、王者同士の対決と言っても過言ではないのである。

 トップ4に勝ち進んだ名出 和貴は、一時期プロツアーの権利を獲得するために海外のグランプリに精力的に遠征し、トップ8入賞はならずとも3敗ラインでのフィニッシュ経験は数えきれないほどある強豪。2017-18シーズンは最多のプレインズウォーカー・ポイントを獲得したほどだ。

 対するHenriettaはこれまで目立った成績はないようだが、「ゴルガリ・ミッドレンジ」という選択はミラーマッチの煩雑な盤面を整理して勝利をもぎ取れるほどに腕に自信がなければなしえない。現に、このトップ4まで数多のミラーマッチを制してきている。その事実一つとっても、強者たる証明は十分だろう。

 だから問題は、どちらがより「王者のデッキ」の使い手に相応しいかということ。

 ゴルガリ界の頂点を決めるべく、準決勝が始まった。

 

ゲーム 1

 先攻のHenriettaが2ターン目《しつこい負け犬》スタート。さらに後攻の名出が2マナを構えたのを見て、3ターン目は《グリッサ・サンスレイヤー》ではなく《苔森の戦慄騎士》を出し、《喉首狙い》を打たせる好プレイを見せるのだが、返す名出も下水王、駆け抜け侯》で墓地の《苔森の戦慄騎士》を追放してやり返す。『エルドレインの森』の新カード同士がぶつかり合う、瑞々しい開幕だ。

 返すターン、Henriettaは《下水王、駆け抜け侯》を《執念の徳目》の出来事側で除去し、2マナ構えてターンエンド。一方4ターン目を迎えた名出は《黙示録、シェオルドレッド》を出す選択肢もあったが、Henriettaが構えた2マナを見てさすがに強迫から入り、スタック《切り崩し》でネズミ・トークンを除去されつつも、《グリッサ・サンスレイヤー》《黙示録、シェオルドレッド》というHenriettaの手札内容を明らかにする。そして残った3マナで《墓地の侵入者》を出してターンエンド。

 そこからHenriettaはグリッサ・サンスレイヤーを、名出は黙示録、シェオルドレッドをそれぞれ召喚し、互いに攻撃できない、あるいはしたくない睨み合いの状態となる。

 Henriettaは《ヴェールのリリアナ》の「ー2」で名出の《墓地の侵入者》を生け贄に捧げさせるが、返す名出は《苔森の戦慄騎士》を出来事側でプレイ。ここで眼前の《グリッサ・サンスレイヤー》を処理できる喉首狙い》を引き込むが、唱えずに《苔森の戦慄騎士》をそのまま出してエンド。Henriettaの手札にある《黙示録、シェオルドレッド》に照準を定めている様子だ。

 続くターン、Henriettaは《ヴェールのリリアナ》「+1」から黙示録、シェオルドレッド》を召喚するが、これは名出のアップキープにプラン通りの《喉首狙い》で処理されてしまい、なおも《苦難の影》も送り出されてしまう。

 一方名出は、ここでHenriettaが《ヴェールのリリアナ》「+1」のみでターンを返したところで、その能力で捨てる形でうまく墓地に送り込んでいた《しつこい負け犬》を「奇襲」で走らせ、《苔森の戦慄騎士》と合わせて《ヴェールのリリアナ》に殴りにいく。これをHenriettaは両方ブロックしてどうにか《ヴェールのリリアナ》を守るのだが、しつこい負け犬》のドローと《苔森の戦慄騎士》の出来事側のドローでリソース差が徐々に開いていく。

 それでもHenriettaは「ー2」で名出の《苦難の影》を処理しつつ、引き込んだ《開花の亀》を出してめくれた《ミシュラの鋳造所》を釣りあげ、ついに7マナに到達する。序盤に唱えて追放領域で光る《執念の徳目》まで、あと1ターン。ライフもまだ9点残っている。

 他方、刻限を突きつけられた格好となった名出は再び《しつこい負け犬》を墓地から「奇襲」させ、《グリッサ・サンスレイヤー》にブロックされつつもドローを進めるのだが、ここに来て土地ドローが続く。やむなく《苔森の戦慄騎士》を出し直してターンを返すしかない。

 そして、名出の《黙示録、シェオルドレッド》の能力でHenriettaのライフが残り7点まで追い詰められたところで、Henriettaはついに《執念の徳目》を着地させる。

 それでも、ここで除去を引き込めれば《眠らずの小屋》と《ミシュラの鋳造所》も合わせての攻撃で名出の勝利だったが、引けずにどうやってもHenriettaの残りライフが削り切れない状況。名出はやむをえず《眠らずの小屋》のみ起動から《しつこい負け犬》「奇襲」と《苔森の戦慄騎士》も合わせての3体アタックを敢行し、墓地の《黙示録、シェオルドレッド》だけは釣り上げられないよう追放しながら、Henriettaのライフを4点まで追い詰める

 だが《執念の徳目》が《墓地の侵入者》を釣りあげて1点ゲインすると、ドローで2点ルーズを挟んでも残り3点。さらに名出の場に他にクリーチャーがいなくなったため、ヴェールのリリアナ》「ー2」でついに名出の《黙示録、シェオルドレッド》が墓地に落ちる

 これで次のターンに《執念の徳目》が名出の墓地から《黙示録、シェオルドレッド》を釣りあげれば、苦しかったがどうにか勝利が確定する。Henriettaもそう思ったのだろう、引き込んだ《開花の亀》を何気なくプレイする。

 だが、たったそれだけのことが、Henriettaの唯一の負け筋となった。

 Henriettaに緑マナを供給していたのはラノワールの荒原2枚と《眠らずの小屋》。つまり緑ダブルシンボルの生成には必ず1点食らう状況。

 これにより、Henriettaのライフは2にまで落ち込む。

 そして返すターン、名出は抱えていた2枚目の《黙示録、シェオルドレッドを送り出してターンエンド。

 Henriettaのアップキープ、もはや《墓地の侵入者》は墓地になく、黙示録、シェオルドレッド》を釣りあげるしかない。だが。

 ドロー・ステップにHenriettaがドローすると、アクティブ・プレイヤーであるHenriettaの《黙示録、シェオルドレッド》が先に誘発してスタックに乗り、非アクティブ・プレイヤーである名出の《黙示録、シェオルドレッド》の誘発が後にスタックに乗る。そしてマジックのスタック解決は逆順だ。

 ルール通りの処理をMTGアリーナが行い、激戦の果てに先に爆発したのはHenriettaのアバターだった。《眠らずの小屋》起動アタックによる食物・トークン生成でも、あるいはもしかすると何もプレイしなくてもHenriettaの手に転がり込んできていたはずの勝利は、眼前でするりとすり抜けていった。

名出 1-0 Henrietta

 

ゲーム 2

 お互い7枚キープで、後攻の名出が2ターン目に出した《苔森の戦慄騎士》をHenriettaが返すターンに《執念の徳目》の出来事側で対処すると、名出も返しに《苔森の戦慄騎士》の能力を使用して出来事側でドローを進めるゆっくりとした立ち上がり。

 だが、そんなゲーム展開が4ターン目に文字通りいきなり加速する。Henriettaが開花の亀でマナ加速すると、名出も開花の亀でマナを伸ばしたのだ。

 だがこうなると伸ばしたマナが先に使える先攻が有利。《喉首狙い》で名出の《開花の亀》を処理したHenriettaは、《開花の亀》の攻撃でさらにマナを伸ばすと、なおも《墓地の侵入者》を戦線に追加する。

 名出も2体目の《開花の亀》を出してマナ加速しつつ《苔森の戦慄騎士》もブロッカーに立てるが、返すターンにHenriettaが6マナ払って着地させたのは向上した精霊信者、ニッサ》!

 名出も遅れて《向上した精霊信者、ニッサ》を6マナで出しつつ《苦難の影》を立てるのだが、名出の側の《向上した精霊信者、ニッサ》は続くターンの名出のドローステップに一巻の終わり》で対処されてしまい、Henriettaの場に一方的な《向上した精霊信者、ニッサ》が定着する。

 名出も《ヴェールのリリアナ》を出して「ー2」でHenriettaの《開花の亀》を生け贄に捧げさせつつ《グリッサ・サンスレイヤー》を出してファイレクシアン・ホラー・トークンによる一方的な蹂躙を防ぐのだが、いかんせん毎ターン約束されている事象が大きすぎる状況。

 しかもHenriettaもヴェールのリリアナを送り出し、こちらは「+1」から入ったことで、3ターン後には名出のパーマネントが半減することが予告されてしまう。

 《黙示録、シェオルドレッド》を出してはみるものの、Henriettaの側には執念の徳目》までも設置され、ターンを経過するごとに加速度的に不利になっていく。

 そして名出がようやく相手の盤面に干渉できる《喉首狙い》を引き込んだ頃には、既にそんなスケールのカードでどうにかなる程度の盤面ではなかった。

 やがてHenriettaが《ヴェールのリリアナ》のいわゆる「奥義」こと「ー6」を発動させると、壊滅した名出の戦線を大量のファイレクシアン・ホラー・トークンたちが蹂躙するのに、そう時間はかからないのだった。

名出 1-1 Henrietta

 

ゲーム 3

 《苔森の戦慄騎士》から《墓地の侵入者》と最上のスタートを切った名出に対し、後攻ワンマリガンのHenriettaも《喉首狙い》で《苔森の戦慄騎士》を除去から《墓地の侵入者》で追放して食らいつく。

 一方、4マナ目が引けなかった名出は、《墓地の侵入者》が相打ちにされたところで《苦難の影》を戦線に送り出すが、Henriettaが《ヴェールのリリアナ》「ー2」で対処されてしまう。

 それでも、ここで1ターン遅れて4マナ目をトップした名出は《開花の亀》でマナ加速し、展開の遅れを取り戻す。他方、返すターンにHenriettaも《苔森の戦慄騎士》+《グリッサ・サンスレイヤー》と展開して戦線を固めるが、マリガンが響いて手札が《ヴェールのリリアナ》1枚のみとなり、《ヴェールのリリアナ》を「+1」できないターンとなってしまう。

 対し、6マナ目も引き込んだ名出は《執念の徳目》の出来事側で《グリッサ・サンスレイヤー》を除去しつつ《黙示録、シェオルドレッド》を召喚。

 Henriettaも《ヴェールのリリアナ》「+1」で名出の最後の手札である《向上した精霊信者、ニッサ》を見事奪い去りつつ、手札から2体目の《ヴェールのリリアナ》「ー2」で名出に《黙示録、シェオルドレッド》を生け贄に捧げさせるが、そこから名出が2枚目の《黙示録、シェオルドレッド》を、Henriettaも2枚目の《グリッサ・サンスレイヤー》をトップすると、盤面は完全に膠着を迎えてしまう。

 こうなると《ヴェールのリリアナ》がいるHenriettaが有利……に見えて「ー2」から入っているため奥義の「ー6」が遠い一方、名出の追放領域には先ほど出来事側で唱えた《執念の徳目があった。現在6マナ、あと1枚土地を引けば出てしまう。

 Henriettaにとっては幸いにも、続く名出のドローは土地ではなく《下水王、駆け抜け侯》。だが、これはこれでHenriettaにとっては《ヴェールのリリアナ》の「ー2」で自ら状況を打開しにいく選択肢もなくなってしまう。

 そして続くターンの名出のドローは……7枚目の土地!ついに《執念の徳目》が着地する!!

 かくして名出の場には《黙示録、シェオルドレッド》と《執念の徳目》とがHenriettaを挟み込む形が完成してしまう。

 しかもこの局面で返しのHenriettaのドローは完全な無駄ドローとなる土地で、度重なる《黙示録、シェオルドレッド》の能力発動でライフも既に8点しかない。

 返すターン、《墓地の侵入者》を《執念の徳目》で釣り上げてライフを詰めた名出が《眠らずの小屋》と《ミシュラの鋳造所》を起動して総攻撃すると、Henriettaのライフは一瞬にして削り切られてしまったのだった。

名出 2-1 Henrietta

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