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イニストラード・チャンピオンシップ

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市川ユウキとチームメイト、圧倒的成績の裏側

Corbin Hosler

2021年12月14日

 

 世界レベルのトーナメントにおいて、特定のデッキやチームが圧倒的な成績を収めることは珍しい。それは、世界各地からトッププレイヤーが集まり、その誰もがただひとつの目標を見据えているがゆえだ――最強のデッキを見つけ、そして優勝すること。加えて、あるフォーマットにおいて、他の誰もが成しえなかった発見をするということも稀だ。これが達成されたときは大抵競技マジック史に残るものだ。最強たちが集う場においても群を抜いた存在であることの証明たる、「プロツアー殿堂」――歴史に名を刻むデッキや、強豪揃いの有名チーム、これらがプレイヤーたちを殿堂へとのし上げた。

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市川 ユウキ

 

 これらはまさに、市川ユウキと精鋭たる彼のチームメイトたちが「イニストラード・チャンピオンシップ」における目覚ましい活躍で成し遂げたこととぴったりと重なる。プロツアー王者、世界王者や出場者、マジック・プロリーグ所属プレイヤーにライバルズ・リーグ所属プレイヤーと、錚々たる日本の才能が集まった、この大規模な調整チーム。世界王者・高橋優太、「プレイヤーツアーズ・名古屋2020」優勝者・原根健太、ライジング・スーパースター熊谷陸、MPLの常連・佐藤レイなど、輝かしい経歴を持つプレイヤーたちの名が並ぶ。

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高橋 優太(左写真)、原根 健太(右写真)
 
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熊谷 陸(左写真)、佐藤 レイ(右写真)
 

 「イニストラード・チャンピオンシップ」で再びプレミアイベントのフォーマットとして採用された「ヒストリック」は、新カードが多数加わったことにより大きな変化を遂げ、革新的なデッキが活躍する機会が広がっていた。市川の調整チームが情報収集を始めたのは大会2週間前だ。競技マジックにおいて傑出した出来事の多くは、全く新しいアーキタイプを発見したチームによって作られてきた―プロツアー『ゲートウォッチの誓い』でのエルドラージ・デッキや、プロツアー・サンディエゴ2007における双頭巨人戦での《悪性スリヴァー》を多くピックしたドラフト戦略が想起される――しかしながら、今回大躍進を見せたのはヒストリック・フォーマットに長く存在するデッキに、新規追加されたカードを加えて練りだしたものだ。

 その結果はチームメンバーのうち4名がトップ8に進出し、すでに「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への出場権を得ている高橋に加え、他の3名もが世界最高の舞台への切符を手にすることとなったのだ。それだけではない、市川はこの異例の快進撃にさらなるクライマックスを創出するかのように、タイトルマッチでサイモン・ゴーツェン/Simon Görtzenスコアに差をつけられた状態から見事な逆転を果たした。人気が高く、強力なデッキの1つである「イゼット・フェニックス」を打ち倒したのだ。このトーナメントに向けて日本のスーパーチームが革新した「ゴルガリ・フード」の構築が、その圧倒的強さを世界に見せつけた。

「『ストリクスヘイヴン・チャンピオンシップ』からこのチームと一緒に調整しています」 市川は説明した。「友人の多くがこのチームと調整をしていて、彼らに誘われました。最終的に良いデッキ選択ができる、というのがチームで調整することの利点ですね。チームで使用した『ゴルガリ・フード』も『イゼット天啓』も自分で作ったデッキではなかったですから、このチームなくして今回の優勝はなかったと思います」

 トップ8に進出したチームメイト全員――市川、高橋、熊谷、そして齊藤徹――が今季の世界選手権へと出場可能な32名の枠に駒を進めた。来年も確実に注目を集める勢力となる。

 「イニストラード・チャンピオンシップ」のヒストリック・フォーマットにおいて最も勝率の高かったデッキの1つである「ゴルガリ・フード」の完成にあたり、チームがはじめに取ったアプローチはコンパクトに行くことだ。まずはデッキから赤を削り、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を抜く代わりに『イニストラード:真夜中の狩り』で加わった強力な呪文《食肉鉤虐殺事件》を入れる。《よろめく怪異》と《命取りの論争》があれば、攻撃的なデッキに対しても、食物・トークンを用いた生け贄シナジーのエンジンに火がかかる終盤までしっかりと耐えることができるのだ。

市川 ユウキ - 「ゴルガリ・フード」
イニストラード・チャンピオンシップ トップ8 (2021年12月3~5日) / ヒストリック[MO] [ARENA]
3 《
1 《
4 《草むした墓
4 《花盛りの湿地
4 《闇孔の小道
3 《カルニの庭
1 《目玉の暴君の住処
2 《ファイレクシアの塔
-土地(22)-

4 《大釜の使い魔
4 《金のガチョウ
4 《貪欲なるリス
3 《よろめく怪異
-クリーチャー(15)-
4 《魔女のかまど
2 《魂標ランタン
4 《致命的な一押し
1 《村の儀式
4 《命取りの論争
4 《パンくずの道標
4 《食肉鉤虐殺事件
-呪文(23)-
1 《夢の巣のルールス
-相棒(1)-

2 《辺境地の罠外し
2 《魂標ランタン
4 《思考囲い
2 《神秘の撤回
1 《骨の破片
1 《大渦の脈動
1 《定命の槍
1 《戦慄衆の指揮
-サイドボード(14)-

「チームのデッキが強いことはわかってたんですが、まさか優勝できるとは思いませんでした」 そう市川は振り返る。「『ゴルガリ・フード』は大好きなアーキタイプですから、いくらでもプレイできますよ!」

 「イニストラード・チャンピオンシップ」を通して市川が《大釜の使い魔》を《魔女のかまど》にくべた回数を考慮すれば、「いくらでもプレイできる」気力とスキルを持ち合わせていることは素晴らしい特質に思える。それは間違いなく完璧なデッキ選択であったし、チーム全体としても努力が報われる形となった。

 「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」で高橋が優勝し、立て続けに市川が「イニストラード・チャンピオンシップ」で優勝。深夜遅くにプレイを強いられるという困難にも関わらず、日本が世界レベルのトーナメントで目をみはる存在感を放っていることは明らかだ。

 

 

 井川良彦がチーム調整について振り返る際に語っていたように(参考記事)、チームメンバー同士の信頼は非常に厚く、小グループに分かれてそれぞれが違うフォーマットを担当し、グループごとの結果を集計してチーム全体の判断を下すそうだ。市川は元々ヒストリックの調整チームではなかったと聞けば、彼が「チームなくして優勝はなかった」と言っていたのも頷けるだろう。

 市川にとって「イニストラード・チャンピオンシップ」での優勝は、単に突出した成績を出したトーナメントや、彼のチームメイトがいかに優れているかの証明、以上に大きな意味を持っている。あらゆる大会で勝ち続けるという目標への足掛かりなのだ。今年「2021 Magic Online Champions Showcase」でも優勝を果たした市川。「イニストラード・チャンピオンシップ」での優勝により、頭ひとつ抜けたポジションは強固なものとなっただろう。

「今回優勝したので、今の目標は次の大会で勝つことですね――規模の大きさに関係なく、マジックのトーナメントで対戦するのが好きなんですよ」 市川はそう説明する。「チャンピオンシップで優勝することはマジックにおける夢のひとつだったんですよね。今回でそれが叶いました」

 1999年に初めてマジックのカードを手にし、長年愛を注いできた市川にとってそれは長い旅路であった。Magic Onlineで卓越したスキルを発揮し、手に入れた「イニストラード・チャンピオンシップ」への参加資格。市川がMagic Onlineにおいても、MTGアリーナにおいても――もちろん配信においても――目覚ましい活躍を見せ、その多彩さを証明した。

 世界レベルのトーナメントにおけるこれまでの経験も、今季の市川の活躍の一助となっただろう。2013年にプロツアーデビューを飾った市川は、その後まもなく2度のトップ8入賞を彼の経歴に書き加えた。「グランプリ・シンガポール2018」での優勝以降はやや穏やかな成績であったものの、今年立て続けに2度も優勝したことにより、彼が単なる日本のトッププレイヤーたちの集まりの一員ではなく、市川は狙えるタイトルはすべて獲りに行くということを世界に知らしめたのだ――お互いに信頼し合い、強豪揃いのチームメイトたちと共に。

「世界選手権での優勝が最大の目標になりましたね」 市川が語る。「以前にも世界選手権に出場したことはありました。また参加する機会を手に入れることができて嬉しいですね」

 

 彼に勝るとも劣らない実力を誇るチームメイトを持つ市川。「神河チャンピオンシップ」で3連続となる優勝候補筆頭であるのみならず、「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」のトロフィー争いにおいても最有力プレイヤーの1人だ。

市川ユウキ、#INNChamps 優勝おめでとう!
貪欲なるリス》と相思相愛だった市川がヒストリック・フォーマットで行われたトップ8を「ゴルガリ・フード」で駆け抜けました!


 
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