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イニストラード・チャンピオンシップ

観戦記事

イニストラード・チャンピオンシップ 王者決定戦

Corbin Hosler

2021年12月5日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 ある意味で、「イニストラード・チャンピオンシップ」王者決定戦の舞台に立つ両者は2人ともすでに勝利していると言えるだろう。サイモン・ゴーツェンは「プロツアー・サンディエゴ2010」で文字通り勝利しているのだが、そういうことではない。今大会の決勝ラウンド開幕の一番で、彼(と市川)は見事勝利し、今シーズンの世界選手権への参加権利を獲得したのだ。

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サイモン・ゴーツェン

 

 だがそれで最後の決戦の緊張感が薄れるわけではない。少なくとも、常にストイックな姿勢のゴーツェンからは張り詰めたものを感じる。王者から解説者へ転身し、再びプレイヤーとして復帰した彼は、この2年間でハイレベルな舞台での成功を重ね、その素晴らしい経歴に2つ目の優勝タイトルを加えようとしている。

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市川 ユウキ

 

 対する市川 ユウキもまた自身3度目のトップ8入賞を果たし、今大会を席巻した日本チーム最後の1人としてこの大舞台に立つ。メタゲームを把握した彼らが練り上げた「ゴルガリ・フード」はヒストリックに革新を起こし、この週末を通してあらゆる相手を圧倒した。チームはトップ8に4人を輩出する大戦果を挙げたのだ。

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 今大会における人気上位のデッキの中で「ゴルガリ・フード」は最高勝率を叩き出し、「イゼット・フェニックス」がそれに続いた。市川の「ゴルガリ・フード」に匹敵するのは、ゴーツェンの「イゼット・フェニックス」しかない。

 この週末を通してそうであったように、両者はただひたすらに勝利を求めた――だから必然、この王者決定戦は最終マッチまでもつれ込むことになる。

 ゴーツェンの「イゼット・フェニックス」に分が悪いと考えられたこの試合だが、市川のデッキはあるリスクを抱えていた。《大釜の使い魔》や《魔女のかまど》、《パンくずの道標》、《金のガチョウ》といった食物を使う「コンボ」のパーツのうち、同じものを引き過ぎてしまうことがあるのだ。

 第1マッチはまさにそれが響いた上に、ゴーツェンの引きは理論ではどうにもできないほど強烈なものだった。このゲームをプレイしていると、手に負えないサイズになった2体の《弾けるドレイク》と対峙することもあるだろう。

 

 これは単なる幸運だったのだろうか? そうかもしれないが、ゴーツェンが爆発力を持つ「イゼット・フェニックス」を正確にプレイしたからこそ幸運を呼び込む下地ができたとも言えるだろう。2ゲームを素早く連取した彼は、2度目の優勝トロフィー獲得まであと1マッチに迫った。

 だがその1勝は簡単に得られるものではない。続くゲームでは市川が、ゴーツェンのデッキに対して有利である理由を示してみせた。《貪欲なるリス》による素早い動き出しと食物によるシナジーで組み上げられたエンジンには、《秘密を掘り下げる者》という素早いスタートを切ったゴーツェンをもってしてもまるで歯が立たなかった。

 

 壁際に追い込まれた市川がゲームを取り返し、もう1勝で試合をイーブンに戻せるようになった。しかし第2ゲームは開幕からゴーツェンの側に天秤が傾いた。ゴーツェンは序盤に《秘密を掘り下げる者》を展開すると、除去と《弧光のフェニックス》で戦線を支え、一方の市川は「フード・エンジン」のパーツを集めたもののマナ・フラッドに悩まされていた。

 残りライフ5点まで追い詰められながらも、《パンくずの道標》でライブラリーを掘り進める市川。ついに鍵となる『イニストラード:真夜中の狩り』の神話レアを引き込むと、大きな笑顔がこぼれた。

 

 《食肉鉤虐殺事件》がゲームを一転させ、本当に狭かった勝利への扉が開いた。市川のエンジンは最大出力で回りだす。彼のライフはすぐに安全圏まで回復し、ゴーツェンの《弧光のフェニックス》では到底削りきれない量になったのだった。

 

 3日間にわたる競技とダブルエリミネーション形式による決勝ラウンドをもってしても、ゴーツェンと市川に明確な差をつけるまで至らなかった。ゆえに両者は雌雄を決するべく、イニストラード・チャンピオンシップ王者を決める最後の戦いに挑む。

 最初に一撃を加えたのはゴーツェンだった。《食肉鉤虐殺事件》で盤面を一掃しつつライフを6点残した市川に対し、ゴーツェンはアドバンテージと除去の嵐を乗り越えたのだ。彼は墓地から2体の《弧光のフェニックス》を戻し、呪文も絡めて燃えるようなフィニッシュブローを決めてみせた。

 

 だがこのマッチが最終ゲームまでもつれ込むのは運命だった。続く第2ゲーム、市川は序盤から《貪欲なるリス》による攻撃を重ね、星を取り返した。王者を決する最後のゲームの舞台が整った。

 両者とも遅めの手札をキープ。ゴーツェンは序盤の除去で市川の展開を抑えつつ、土地を置いていく。

 問題は、ヒストリック最強の終盤力を持つフード・デッキに対し、十分なプレッシャーを与えられない点だった。ゴーツェンが一定のペースで戦線を整えている間に、市川は《パンくずの道標》や《魔女のかまど》を設置し、自身のゲームプランを進めていった。

 ゴーツェンがようやく脅威を繰り出したものの、市川の《食肉鉤虐殺事件》を受けた。それを契機に、育った《貪欲なるリス》が攻撃を始める。市川の夢のような快進撃をなんとか食い止めようと、ゴーツェンは最後のターンに臨む。

 彼が必要としたものが何であれ、それがもたらされることはなかった。

 

 こうして、市川 ユウキがイニストラード・チャンピオンシップを制した。個人としての見事な走りとトップ8に4人を送り込んだチームとしての大活躍を、最高の形で締めくくったのだ。市川の優勝者インタビューを聞くに、このスーパーチームが今後も大会で力を発揮し続けることは間違いないだろう。

 

市川 ユウキ選手、 #INNChamps優勝おめでとうございます!
ヒストリックの「ゴルガリ・フード」で決勝ラウンドを進む彼は、《貪欲なるリス》を見事に手なずけました。そしてリスはその期待に応えたのです。


 
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