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グランプリ・京都2018

戦略記事

デッキテク:レガシー in グランプリ・京都2018

by Masashi Koyama

 日本初の3人チーム構築戦で行われているグランプリ・京都2018。

 3つの構築フォーマットが入り乱れるイベントだけに、至るところで様々なデッキを見ることができる。

 本記事ではグランプリ・京都2018を彩る3つのレガシーデッキをご紹介する。

最近好成績を収め続ている「赤単プリズン」=「ドラスト」。その台頭は単なるフロックではない。

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 グランプリ・マドリード2018でトップ4にふたりを送り込み、一躍話題のデッキとなった「赤単プリズン」。かつては「ドラゴン・ストンピィ」=「ドラスト」として一定の勢力を抱えていたデッキだ。

 《古えの墳墓》《裏切り者の都》の2マナ土地2種に加え、《金属モックス》《猿人の指導霊》というマナ加速カードで最序盤から《虚空の杯》や《三なる宝球》、2種の「月」=《血染めの月》《月の大魔術師》といった妨害カードを設置し、フィニッシャーでの制圧を目指すデッキだ。

 その構成から一見「ブン回り重視」「上振れれば最強」と安定性に欠けるデッキであると判断されることが多いが、このアーキタイプを3年間使い続けている池田貴浩はその言説を即座に否定した。

 現在のメタゲームの2大巨頭と言える「グリクシス・デルバー」「4Cレオヴォルド」に対し「月」で明確に有利が取れるため再び注目されるようになったのではないか、と一通りの分析を述べたうえで「ドブンが強いデッキだというイメージが強かったとは思うのですが、安定して勝てるリストが世の中に出始めたことが大きいのではないかと思います」とこのデッキの地力を高く評価する。

 カウンターデッキに対しては脅威を連打しひとつでも着地してしまえば勝利に繋がるうえ、コンボデッキに対しては《虚空の杯》がクリティカルとなる。マナ加速からのフィニッシャー、《ゴブリンの熟練扇動者》《反逆の先導者、チャンドラ》で迅速にゲームを決めることができ、イメージ以上に「安定性の高い」デッキだという。

池田 貴浩 - 「ドラスト」
グランプリ・京都2018 / レガシー (3人チーム構築戦) (2018年3月24~25日)[MO] [ARENA]
11 《
4 《古えの墳墓
4 《裏切り者の都
-土地(19)-

4 《猿人の指導霊
4 《ゴブリンの熟練扇動者
4 《月の大魔術師
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー
-クリーチャー(13)-
4 《金属モックス
4 《血染めの月
4 《罠の橋
2 《三なる宝球
4 《焦熱の合流点
4 《虚空の杯
4 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《紅蓮の達人チャンドラ
-呪文(28)-
3 《瘡蓋族の狂戦士
3 《難題の予見者
3 《魔術遠眼鏡
1 《唐突なる死
2 《火山の流弾
1 《三なる宝球
2 《沸騰
-サイドボード(15)-

 池田は4回戦終了時点で、チームの成績こそ2勝2敗だが個人では4勝を収めている。その勝利は「グリクシス・デルバー」「4Cレオヴォルド」「奇跡コントロール」「エルドラージ」という一線級のレガシーデッキたちに対するものだ。

 今後メタゲームに大きな変化がなければ、この「赤単プリズン」はさらに躍進を遂げることになることだろう。もっとも池田によれば「『ドラスト』ですね。チャンドラストンピィで『ドラスト』です!」とのことで、新たな「ドラスト」としてその名前が定着することになるかもしれない。


松本友樹が選んだのは......「黒赤リアニメイト」!? 70%強の安定性。

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 シルバーレベル・プロであり、「Final Last Samurai」の一員である松本友樹。彼の持ち込むデッキはいつも注目なのだが、今回松本が持ち込んだデッキは爆発力が高く、一時期は流行の兆しを見せていた「黒赤リアニメイト」だった。

松本 友樹 - 「黒赤リアニメイト」
グランプリ・京都2018 / レガシー (3人チーム構築戦) (2018年3月24~25日)[MO] [ARENA]
2 《
2 《Badlands
1 《Bayou
4 《血染めのぬかるみ
4 《汚染された三角州
-土地(13)-

1 《狂気の種父
4 《別館の大長
1 《大修道士、エリシュ・ノーン
4 《グリセルブランド
1 《潮吹きの暴君
-クリーチャー(11)-
4 《水蓮の花びら
4 《暗黒の儀式
4 《納墓
4 《信仰無き物あさり
4 《再活性
4 《思考囲い
4 《動く死体
4 《死体発掘
4 《暴露
-呪文(36)-
4 《フェアリーの忌み者
1 《エメリアの盾、イオナ
2 《自然の要求
4 《集団的蛮行
3 《要塞の計略
1 《古えの遺恨
-サイドボード(15)-

 意外......と言っては何だが、松本がそういった「爆発力はあるが安定感に欠けるオール・イン」のデッキを好んで使用するイメージがなかったため、質問を投げかけると非常に理路整然とした回答が返ってきた。

松本「普段レガシーをプレイしているわけではないので、こういった『オール・イン』系のデッキは疲れないというのが凄く大きいですね。それにトップメタの『グリクシス・デルバー』に対しては有利になる初手というのが『(《水蓮の花びら》などの)マナ加速、土地、リアニメイトカード、手札破壊か手札を循環させるカード』というのがトリプルマリガンまで含めると77%ほどあるんですよ。実際にはそこまでマリガンしないので73%くらいの確率になるんですが」

 ......!?

 松本はこのデッキを持ち込むに際し、初手の組み合わせの確率を自ら緻密に計算してきたという。ドのつく文系人間である筆者にはよく分からない話であったが、「70%強の確率で対戦相手が《死儀礼のシャーマン》+打ち消し呪文、のような手札でない限り『グリクシス・デルバー』に対し有利を取れる手札が来る」ということらしい。

 そう言えば松本はかつて市川ユウキとタッグを組んでいた。市川も論理的なプレイヤーであり、通じるものがあったからこそともにデッキを作り上げていたのだろう。

 70%強

 この数字をどう見るかは人それぞれだろうが、少なくとも「安定性に欠けるブン回り期待のデッキ」と容易に判断すべき数字ではないだろう。

 また、このデッキは釣り上げるクリーチャーを対戦相手に合わせてチョイスできるため、柔軟性も最低限確保したデッキといえるだろう。

 「赤単プリズン」に「黒赤リアニメイト」。一見安定性に欠けると思われたデッキたちは一定の安定性と爆発力の高さを兼ね備えていた。

 レガシーの世界はこれだから奥が深い。


使い続けているからこそできる微調整・「エスパー石鍛冶」

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 最後にご紹介するのは、関西でレガシーの手練として知られる表西幸次郎の「エスパー石鍛冶」だ。かつては環境を支配するほどの勢力を誇ったデッキだが、「青白奇跡」が隆盛し始めた頃から使用プレイヤーが減少していった。

 表西はその間ずっとこの《石鍛冶の神秘家》デッキを使い続けており、現在のデッキの雛形が固まったのは3年ほども前になるという。

表西 幸次郎 - 「エスパー石鍛冶」
グランプリ・京都2018 / レガシー (3人チーム構築戦) (2018年3月24~25日)[MO] [ARENA]
4 《溢れかえる岸辺
3 《汚染された三角州
3 《Tundra
2 《
2 《湿地の干潟
2 《Underground Sea
2 《不毛の大地
1 《忍び寄るタール坑
1 《カラカス
1 《平地
1 《Scrubland
1 《
-土地(23)-

4 《石鍛冶の神秘家
2 《悪意の大梟
2 《瞬唱の魔道士
2 《黄金牙、タシグル
-クリーチャー(10)-
4 《渦まく知識
4 《剣を鍬に
3 《思考囲い
2 《思案
1 《仕組まれた爆薬
1 《コジレックの審問
1 《呪文貫き
1 《対抗呪文
1 《梅澤の十手
1 《議会の採決
2 《精神を刻む者、ジェイス
1 《至高の評決
4 《意志の力
1 《殴打頭蓋
-呪文(27)-
2 《狼狽の嵐
2 《外科的摘出
1 《致命的な一押し
1 《真髄の針
1 《呪文貫き
1 《解呪
1 《安らかなる眠り
1 《盲信的迫害
1 《世界のるつぼ
1 《聖域の僧院長
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《謙虚
1 《石術師、ナヒリ
-サイドボード(15)-

 これまでにご紹介したふたつのデッキと異なり「エスパー石鍛冶」にはオール・イン要素がない。《石鍛冶の神秘家》からの《殴打頭蓋》という黄金のイージーウィンパターンはあるものの、プレイに攻守の判断の機微が要求される繊細なデッキだ。それゆえに4枚の手札破壊呪文が搭載されており、対戦相手の手札を見てから判断を下すことができる作りになっている。

 表西のデッキには通常の本アーキタイプには見られない《悪意の大梟》や《黄金牙、タシグル》が採用されている。

表西「《石鍛冶の神秘家》デッキは《罰する火》に非常に弱いんですよね。その中で出てきた《黄金牙、タシグル》と《真の名の宿敵》が初めてと言っていいほどに《罰する火》に強いカードだったんです」

 彼のデッキは常に4枚のクリーチャー枠がフリースロットとして設定されており、その中で《悪意の大梟》《黄金牙、タシグル》《真の名の宿敵》をメタゲームによって使い分けているという。

表西「今回は『グリクシス・デルバー』が多いと思ったので《悪意の大梟》を2枚採用しています。もし『土地単』が多くなれば、より《罰する火》に強い《真の名の宿敵》にします」

 その他にも「青白奇跡」などのタフなマッチが想定されれば《未練ある魂》を採用したりと、微調整により環境に適応できるのがこのデッキの強みだ。

 そして、先に紹介した「赤単プリズン」=「ドラスト」の池田と同じく、レガシーの魅力は同じデッキを使い続けることができることにあると表西も述べてくれた。

表西「このデッキの使用を決めたのは『情』の選択だったんですが......なにより《石鍛冶の神秘家》から装備品を持ってくる動きが好き過ぎるんですよね」


 レガシープレイヤーたちが揃って口にするのは「好きなカードを使い続けることができる」のがレガシーというフォーマットである、ということだ。

 レガシーにはプレイヤーの愛が詰まっている。

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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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