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グランプリ・京都2015

観戦記事

準々決勝:村上 和弥(愛媛) vs. 梅原 啓(大阪)

By 小山 和志

 さあ、グランプリ・京都2015もいよいよ佳境の決勝ラウンドだ。2000人近くのプレイヤーが8人まで絞りこまれ、グランプリ王者の栄光を手にするための最後の3ラウンドが始まる。

 ここで対戦する村上和弥と梅原啓は、対戦相手へのデッキリストの公開が義務かどうかの確認をし、義務であることを確認すると、ともに対戦相手のデッキリストを食い入るように見つめる。

 お互いのデッキを確認しながら「このデッキリスト渋いですね」「このカードなんでしたっけ」「負けそうですわ」と軽く談笑しながら対策を練っていく。「普通に負けそうです」と梅原が呟く。村上は「いやいや」と苦笑いながらも2ヶ月調整したというデッキに自信をのぞかせる。梅原がまた呟く。「《目くらまし》入ってるんや。面白いな」笑顔を覗かせながらも、デッキリストの分析は真剣だ。

 デッキリスト公開の時間が終わり、両者が自らのデッキに手を伸ばす。さあ、お互いに準備は整った。栄光のプレイオフを始めよう。


村上と梅原の決戦の火蓋が切って落とされる

ゲーム1

 先手は1位で予選を終えた村上。流れるような手つきでシャッフルを終えると、7枚を手に取りマリガンを選択する。《僧院の導師》や《剣を鍬に》といった強力なカードは手にあれど、肝心の白マナが出なくてはどうしようもない。さらにマリガン後の6枚も《相殺》2枚、《剣を鍬に》、《石鍛冶の神秘家》、《時を越えた探索》《溢れかえる岸辺》という6枚を見てひとこと「難しいな」。意を決してこれをキープする。

 まずは村上が先手1ターン目に《溢れかえる岸辺》を起動して、《》を持ってくる立ち上がり。《もみ消し》や《不毛の大地》をケアするための細かいテクニックだ。

 そして村上は2ターン目に無事《Tundra》を引き当てると、《相殺》をプレイ。これに梅原が《呪文嵌め》を当てると「強い」とポツリ。次ターンに《相殺》を唱えるも、またもや《呪文嵌め》に遭い、土地を置けずにターンエンド。

 すると梅原は《秘密を掘り下げる者》を降り立たせ、大事なクロックを用意する。村上は何とか《思案》で《乾燥台地》を引き当てるが、これが《もみ消し》され、思うように盤面を作ることができない。

 梅原はアップキープに《秘密を掘り下げる者》の誘発型能力を解決した後に《渦まく知識》を唱える。「誘発で見た後に手札見たら《渦まく知識》あってビックリしましたわ」と苦笑い。その《秘密を掘り下げる者》に村上の《剣を鍬に》が向けられると、梅原は宣言通りの《渦まく知識》をキャストするが、おとなしく追放領域へと送られることを選択する。

 そして、村上からは3枚目の《相殺》! これが通り、一気に梅原の戦況が悪化するが、冷静に《不毛の大地》で《Tundra》を破壊しまずは足止めを画策する。そして村上は梅原の目論見どおり土地を引き込めない。《渦まく知識》で探しても土地の姿は見えず、ターンを返すのみだ。

 梅原はここが好機と《タルモゴイフ》をキャストするが、これは村上が予めライブラリーに積んでおいた《相殺》の能力で《石鍛冶の神秘家》を公開し打ち消す。梅原は「マジか」と一言。ここで村上は《Tundra》を引き込み先ほどの《石鍛冶の神秘家》をキャスト、《殴打頭蓋》をサーチし、これが除去されなければ逆転という状況を作り上げる。

 もちろん、梅原がそんなイージーウィンを許すはずなく《敏捷なマングース》から《稲妻》で《石鍛冶の神秘家》を除去すると《不毛の大地》で《Tundra》を破壊し、村上のマナを否定する。

 その間コツコツと攻撃を続けていた《敏捷なマングース》だが、村上の戦場に独楽相殺が揃ったことで、いよいよ単騎での勝ちを目指さなければいけなくなった。手札の少ない梅原は《終末》が来ないことを祈るのみだ。

 だが、《師範の占い独楽》を起動した村上のライブラリートップからは無情にも《終末》が。

 これで脅威を全て捌き切った村上は、2枚目の《石鍛冶の神秘家》から《殴打頭蓋》を戦場に。これに対処するすべを持たない梅原は一度《殴打頭蓋》の攻撃を見届けると、5枚並んだ土地を片付けたのだった。

村上 1-0 梅原

 幕間、村上は愛媛から車で長時間かけて来たことを説明すると、梅原が「来たかいがありましたね」と応じ、両者に笑みが浮かぶ。お互いプロツアーの権利を得たことでひとまず安堵している様子だ。だが、ここは負ければ終わりの過酷なプレイオフ。ゲームに入ると一気に表情が引き締まる。


スイスラウンド1位通過の村上 和弥

ゲーム2

 先手梅原7枚でキープ、村上はまたもマリガン。「相手めっちゃマリガンしてくれてんねんけどな」と梅原が苦笑する。

 梅原が先手1ターン目に《秘密を掘り下げる者》からのロケットスタートを切る。一方、村上は現状これに対処する手段を持たず、《》からの《思案》で解決策を見出しに行く。

 だが、その《思案》で見えたのは、《師範の占い独楽》《相殺》《渦まく知識》という強力ではあるが《秘密を掘り下げる者》に対処できない3枚。

 《秘密を掘り下げる者》は変身せず梅原が「ツンツンしてるわ」と呟き、村上も苦笑いで返す。そして村上が悩んで先ほどの《思案》でトップに乗せた《師範の占い独楽》を《呪文嵌め》をコストにしての《Force of Will》で阻止する。

 梅原の《秘密を掘り下げる者》はまたも変身せず1点でのダメージを積み重ねていく。間に村上の《溢れかえる岸辺》を《もみ消し》するなどの細かいやりとりを挟んでいくが、心もとないクロックだ。

 村上はその《もみ消し》に対応して《渦まく知識》を唱え、《秘密を掘り下げる者》への対抗策を講じる。そして《古えの遺恨》をめくり、凶暴な虫となった《昆虫の逸脱者》を《剣を鍬に》で除去することに成功する。

 ここで逆転されては苦しい梅原は《敏捷なマングース》を着地させ、再びダメージレースを再開する。これがコツコツとダメージを重ね、村上のライフを8まで削りとる。

 村上は秘密兵器《僧院の導師》を召喚し、なんとか防波堤を構築しようとするが、梅原はこれに対応し《ヴェンディリオン三人衆》で村上の手札を丸裸にする。

 そしてここからは詰将棋。《紅蓮地獄》《方向転換》《剣を鍬に》から《剣を鍬に》を抜くと、《ヴェンディリオン三人衆》と《敏捷なマングース》で攻撃、《稲妻》をあなたに。それに対し《方向転換》を唱えてみるものの、梅原の手札からはもう1枚の《稲妻》が。

梅原 1-1 村上

2度目のグランプリ入賞を果たした梅原 啓

ゲーム3

 泣いても笑っても、ついに最終ゲーム。ここで村上が7枚をキープすると、梅原がマリガン。これで2人が「マジックよく出来てるなー」と同時に吹き出す。そして村上が待望の先手1ターン目《師範の占い独楽》スタート! 一方の梅原は静かに《思案》で静かに手札を整えていく。

 そして、《Volcanic Island》を《不毛の大地》で破壊するやりとりが行われた後、まず最初の交戦が。村上の《相殺》、これは大人しく梅原に《赤霊破》される。

 そして攻守が入れ替わり、梅原が《秘密を掘り下げる者》を出し、村上の《時を越えた探索》に《Force of Will》をあわせ、盤面上での優位を築いていこうとする。この《秘密を掘り下げる者》は《剣を鍬に》されるが、梅原の次なる矢は《ヴェンディリオン三人衆》。

 これが《師範の占い独楽》《渦まく知識》《僧院の導師》という強力な村上の手札を暴き、梅原が長考する。ジャッジに確認を取り、1分ほど考えた後に《師範の占い独楽》を抜き去る。

 ここで村上が新たに得たカードは《思案》で、《ヴェンディリオン三人衆》への対抗策を探していく。そして再び《師範の占い独楽》を引き込み、潜在的なアドバンテージを稼いでいく。

 手札が少ない村上は《師範の占い独楽》でライブラリートップをリフレッシュしながら《僧院の導師》を着地させる。さらに《渦まく知識》。

 《ヴェンディリオン三人衆》が攻撃して村上の残りライフが10となったところで、村上も《僧院の導師》でダメージレースを仕掛ける。まず《相殺》で1回、そして《師範の占い独楽》で2回果敢が誘発し、一気に7点のダメージを叩きだす。《ヴェンディリオン三人衆》とのダメージ差は明確で、次のターンにも梅原のライフを削りきってしまいそうな勢いだ。

 そして、梅原の決断は早かった。続くターンに《僧院の導師》を追いやることができないと悟ると、「無理だー」と土地を片付けたのだった。

村上 2-1 梅原

 村上和弥が準決勝進出!

 試合が終わると、再び梅原と村上は笑顔で談笑を始める。

「プロツアーの権利とれて良かったです」「行きますか?」「行きたいなあ」

「いやー、楽しかった。」「マジック楽しいですね」「本当に」

 勝った村上にはもちろん、負けた梅原にもさらなる舞台、プロツアーが用意されることになる。今日の2人を見ていると、きっとプロツアーでもマジックを楽しんでくれることだろう。

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