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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

闇の隆盛 リミテッド点数表・後編?隆盛のラグランジェ?

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2012.02.28

闇の隆盛 リミテッド点数表・後編~隆盛のラグランジェ~


 こんにちは。渡辺です。

 今回は前回に引き続き、闇の隆盛の点数表・後編をお送りします。前回で白・青・黒までの点数表を作ったので、今回で残りのカードすべてに点数を付けていこうと思います。
 前回の点数表を見ていないという方は、そちらからどうぞ。

 カードの評価基準も載せておきますね。

点数 基準
10 神カード。見たら取るべし。確定初手。
9 爆弾カード。これ1枚でゲームに勝てるようなカード。初手~2手目。
8 かなり優秀なカード。流れてきてもおかしくないが、初手でも問題ないレベル。初手~3手目。
7 優良カード。是非デッキに入れたいレベル。2~4手目。
6 普通にデッキに入るくらいのカード。3~6手目。
5 ぎりぎりデッキに入るぐらいのカード。5~8手目。
4 できればデッキに入れたくないようなのカード。枚数が足りないときに仕方なく使うレベル。または特殊な条件でのみ使用するカード。7~9手目。
3 サイドボード要員。基本はデッキに入らない。10~12手目。
2 よほどのことがない限りデッキに入れることはないカード。12~14手目。
1 何をしてもデッキに入らないレベル。ほぼ14手目。


 では今回は赤から。


点数 カード
9 地獄乗り
8 月の帳のドラゴン
8 燃える油
8 モンドロネンのシャーマン
8 紅蓮心の狼
7 不死の火
7 憎悪縛りの剥ぎ取り
7 マルコフの刃の達人
7 狂気の残骸
6 血の抗争
6 炉の小悪魔
6 内陸の隠遁者
6 松明の悪鬼
6 マルコフの大将軍
5 近野の忍び寄り
5 流血の呪い
5 やじる悪鬼
5 信仰無き物あさり
5 苦悩の脱走者
5 茜の狼
4 頭目の乱闘
4 エルドワルの切り裂き魔
4 投げ飛ばし
3 砕かれた知覚
3 高まる復讐心
2 野の焼き払い
2 ファルケンラスの鉤爪

 全体的に見てコモン・アンコモンの、特にクリーチャーの質が悪い今回の赤。
 黒と同じく、闇の隆盛では不人気の色と認識されています。

 コモンの主力クリーチャーが《内陸の隠遁者》や《近野の忍び寄り》のようなラインナップになってしまうので、不人気になってしまうのはしょうがないことでしょう。

 ただ、不人気ということはそれだけ競争相手が少ないということ。
 ドラフトで自分のやっている色の競争相手が少ないというのはそれだけでかなりのメリットなので、もしドラフトで赤をやる場合は卓の状況をきちんと把握して選択するようにしましょう。

 そんな赤のトップは《地獄乗り》。

 4マナ3/3というサイズだけ見ればただの《丘巨人》ですが、速攻による奇襲性と、自分のクリーチャーに与える攻撃時の追加効果は非常に強力。上手く嵌れば4ターン目にして一気にゲームを決めてしまうことも。
 プロツアー・闇の隆盛の上位デッキや、先日のグランプリ・バルチモアでも見かけたこのカード。構築級のカードがリミテッドで弱いわけがないですね。このカードからなら喜んで赤をドラフトしても良いでしょう。

 《月の帳のドラゴン》は最初《地獄乗り》と同じ9点を付けていたのですが、もし同じパックから《紅蓮心の狼》と一緒に出たら《紅蓮心の狼》を優先するだろうということで評価ダウン。
 確かに能力はバケモノ級ですが、そのコストと能力的に赤に寄せないといけないというのが厳しいところ。いくら6マナのカードといえどトリプルシンボルのカードはマナ拘束が厳しい部類に入ります。
 この環境の赤のカードには、他の色と違って2マナ域や3マナ域にダブルシンボルを要求してでも使いたくなるようなカードがほとんどないので、メインカラーにはせずに2色目として運用することが多いという事情があります。
 このカードから無理やり赤に寄せてもいいですが、前述の通りこの環境の赤のコモンやアンコモンの質は軒並み低いので、もし無理やり赤に寄せようとして失敗してしまったら目も当てられません。

 僕がこの環境の赤を嫌いなのもありますが、「もしこのカードを初手で引いても手放しで喜べない」ということを考えてこの評価にしました。カード自体は非常に強力ですし、「出たら勝つ」系のカードなので初手で取ってもいいとは思いますが、もし取ったらその後のドラフトが難しくなる覚悟が必要です。


 赤のトップコモンは《不死の火》。

 フラッシュバックのコストが多少重いとはいえ、繰り返し使えるクリーチャー除去が弱いわけがありません。

 不満点を挙げるとすれば、フラッシュバックまで見据えた色の組み合わせですね。赤黒という色の組み合わせはカードの質が全体的に低くなりがち。もし赤黒の純正2色で組むのなら、デッキを吸血鬼に寄せて個々のカードパワーの低さを補うのが一般的です。赤黒という強くない同士の色の組み合わせでも、シナジーに特化して上手く組めたら強力なデッキを作ることができますからね。

 2色目を黒にせず、赤緑などで《夜明け歩きの大鹿》からタッチ黒してフラッシュバックを使えるようにすることもできます。

 この環境でデッキを3色にはしたくありませんが、色の合っていないフラッシュバック呪文のために《旅行者の護符》のようなマナサーチと基本土地を1枚だけ挿す価値は十分にあるので、もしデッキにそういったカードが入っていたときは多少のリスクを負ってでも3色にする選択があることを覚えておきましょう。


 では次は緑のカードを。


点数 カード
9 食百足
9 高まる残虐性
8 群れに餌
8 茨群れの頭目
8 錯乱したのけ者
7 グール樹
7 絡み根の霊
7 狼に噛まれた囚人
6 夜明け歩きの大鹿
6 ケッシグの出家蜘蛛
6 ラムホルトの古老
6 軽蔑された村人
6 ソンバーワルドのドライアド
6 野生の飢え
6 若き狼
5 ホロウヘンジの獣
5 押し潰す蔦
5 墓耕しのワーム
5 追跡者の本能
5 ウルヴェンワルドの熊
5 村の生き残り
5 吠え群れの飢え
4 捕食者のウーズ
4 森での迷子
4 不気味な開花
3 しがみつく霧
2 森林の好意


 全体的にコモンの質が良い緑。
 突出して強いカードはありませんが、中堅どころが揃っていて序盤から終盤まで幅広く戦えるようになっています。白・青と同じく安定している色といえますね。


 緑のトップは《食百足》と《高まる残虐性》の2枚。

 前回《食百足》と《未練ある魂》の比較の話をしましたが、あれは《未練ある魂》というカードが本当に壊れているだけで、《食百足》も十分頭のおかしいカード。
 いくらトリプルシンボルとはいえ、トランプル+警戒+不死はどう考えてもやりすぎ。直接戦闘では無類の強さを誇ります。
 《罪の重責》や《閉所恐怖症》などで簡単に対処されてしまうこともありますが、逆にそれらのカード以外での対処は困難なので、《レインジャーの悪知恵》を構えて貼られないようにするか、《投げ飛ばし》のようなカードで自分から不死させてエンチャントを剥がしたりして対処しましょう。そういう相手にはサイドから《帰化》で対処することも忘れずに。

 もう片方の《高まる残虐性》も中々にぶっ飛んでいるカード。
 3ターン目に出てきた何の変哲もない2/2が、次のターンには7/7になって殴ってくるなんて何の冗談でしょうね。
 フラッシュバックコストも7マナと、重いながらもまだ現実的な数字ではあるので思ったよりはプレイできます。しかもその際は乗るカウンターが10個と更に倍増。トランプル付きのクリーチャーに付けば一瞬でゲームが終わる修整値。正直高まりすぎです。
 4ターン目に適当に使って強いカードですが、触ることのできない《不可視の忍び寄り》にキャストしたらさぞかし気持ち良いでしょうね。


 一部で話題になっている《森での迷子》にも触れておきましょう。

 《森での迷子》戦術は、デッキの中身を《森での迷子》以外は全て《》にして相手の攻撃をシャットダウンし、相手のライブラリーアウトを狙うというものです。

 その性質上、デッキを40枚で構築してしまうと、相手のマリガンや先手後手のドローの差で自分が先にライブラリーアウトしてしまう恐れがあるので、それらの点を踏まえて45枚くらいで構築するのがこの戦略の基本。ドラフト中にライブラリーを削れるカードやエンチャント破壊などを積極的にカットするのもこの戦術を行うにあたって重要な要素。

 《森での迷子》さえ手札にあれば残りは全て《》なので、初期手札の枚数に気にせず積極的にマリガンしていけます。延々とマリガンして見つからなくても、先手なら2枚、後手なら1枚になるまでマリガンできるというある意味脅威の戦術です。
 どのくらいの確率で《森での迷子》を引けるのかについては、興味のある方は調べてみてください。

 ちなみにデッキに《森での迷子》を2枚入れてしまうと、デッキに《》でないカードが1枚入っていることになるので、クリーチャーの攻撃を数ターンに1度喰らってしまいます。その場合2枚目の《森での迷子》を引かない限り敗北してしまうという、冗談のような本当の話。

 基本的には普通にドラフトして、自分のドラフトしたデッキではどうしても勝てないような相手のときにするサイドボードテクですが、相手のデッキに《セルホフの密教信者》+生け贄エンジンや《墓所粛正》のようなライブラリを操作する要素があるとほぼ負けてしまうので、もしサイド後に仕掛けるなら、メイン戦でそういった要素が相手のデッキにないことを確認してからにしましょう。


 緑のコモントップは《野生の飢え》。

 緑のコモンは突出したものがないかわりに粒ぞろいなので非常に悩みましたが、『7つの分析編』で書いたように、緑という色の戦略に非常に噛み合っているのと、クリーチャーの代わりは後から確保できるにしても《野生の飢え》は他のカードでは代用がきかない、ということが大きいです。
 フラッシュバックまで見据えると2色のカードになってしまいますが、それを差し引いても使う魅力は十分にあります。これを早めに取って赤緑のアーキタイプである狼男を狙っていきたいですね。


 ここから基本の5色ではないカードに移ります。


多色
点数 カード
10 高原の狩りの達人
9 イニストラードの君主、ソリン
9 ファルケンラスの貴種
9 ヘイヴングルの死者
8 ドラグスコルの隊長
8 戦墓の隊長
8 ドラグスコルの肉裂き
8 常なる狼
7 流城の隊長


 闇の隆盛の多色カードはアンコモンの各種族のロードと神話レアの化け物たちしか居ないので、必然的にどれも評価が高いです。

 2色固定のカードをドラフトの序盤にピックするのはその後のピックの選択肢を狭めてしまうことになりますが、この環境の多色カードはどれも使えたときの強さがゲームを決めてしまうようなものなので、その2色に寄せてドラフトする価値は十分にあります。神話レア群は言わずもがな、アンコモンの各種ロードも上手く組めれば強力レア並の強さになりますからね。


 そんな多色のトップは《高原の狩りの達人》。

 先日のプロツアー・闇の隆盛での活躍が記憶に新しいカードですが、その強さはリミテッドでも変わらず健在。むしろ対処手段を用意できないデッキも存在するので、より凶悪になっています。
 いったん場に出てしまえば、後は呪文をプレイしないターン→呪文を2つプレイするターンと進行するだけで盤面の掌握ができてしまいます。除去できずに生き残ったらほぼゲームオーバー。プレリでこいつ1枚にぼっこぼこにされたのはいい思い出です。

 強力な両面カードなのでドラフト中に周りからヘイトされる可能性もありますが、それを加味してもこれより優先するカードはほとんどないので、もし引いたときは周りにドヤ顔でピックしてやりましょう。


 各種ロードの中でもっとも評価の低い吸血鬼ロードの《流城の隊長》。

 これは能力ではなく、色の組み合わせを見ての評価ですね。《不死の火》のところでも触れましたが、やはり赤黒という色はそれだけ他の友好色に比べて厳しい色の組み合わせなのです。

 とはいえ赤黒の吸血鬼に寄せるならこのカードは必須と言っていいレベルのカード。これから思い切って赤黒に踏み込むという選択肢も十分にあり得ますね。


アーティーファクト
点数 カード
7 アヴァシンの首飾り
7 狼狩りの矢筒
6 壁の守部
5 獄庫
5 目玉の壺
5 重いつるはし
4 処刑人の頭巾
4 生の杯
3 迷いし者の祭壇
3 墓掘りの檻
1 束縛の刃、エルブラス


 ミラディンの傷跡ブロックのようにアーティファクトを目玉にしているわけではないので、アーティファクトの枚数は少なめ。実用的なものもそれほど多くないですね。


 アーティファクトのTOP2は《アヴァシンの首飾り》と《狼狩りの矢筒》の装備品2種。

 《アヴァシンの首飾り》は人間に寄せたデッキで組むと非常に良い動きをしてくれます。《宿命の旅人》や《忠実な聖戦士》のような死亡しても何か残してくれるクリーチャーに付ければ、更に嫌らしさ倍増。そういった人間クリーチャーの多い白で使うのが一番強く使えます。

 《狼狩りの矢筒》は装備コストこそ非常に重いですが、やはりリミテッドでのティムは強力。環境にあるタフネス1クリーチャーたちを封殺しつつ、狼男へのアンチカードとしても活躍してくれます。
 また接死持ちのクリーチャーに付けることで、往年の「接死ティム」コンボも狙えますね。この環境なら《待ち伏せのバイパー》《ケッシグの出家蜘蛛》《チフス鼠》といったコモンの接死持ちがいるので、十分狙いにいけるでしょう。

 接死持ち以外にも《深夜の護衛》のようなアンタップ能力を持ったクリーチャーと組み合わせることもできるので、《狼狩りの矢筒》がピックでできたときはこれらの相性の良いクリーチャーは率先して確保するようにしたいですね。


土地
点数 カード
8 大天使の霊堂
6 進化する未開地
4 不気味な辺境林
4 憑依された沼墓


 闇の隆盛の土地カードはたったの4種。まぁ小型エキスパンションなのでこんなもんといえばこんなもんですかね。

 《大天使の霊堂》は自身のクリーチャー全てに接死と絆魂を与えるという規格外の土地。イニストラードの《ガヴォニーの居住区》ほどではないですが、それでも土地のする仕事を大幅に振り切っています。これと比べられる《不気味な辺境林》は本当に可哀相ですね。


 《進化する未開地》は優秀なマナサポート。

 フラッシュバックの色が違う呪文が多いこの環境では、いつでも2色で綺麗にデッキを組めるわけではないので、こういったマナサポートは貴重です。確保できるときに確保しておきましょう。




 以上が僕の闇の隆盛の点数表になります。

 基本的には、


  • 序盤用の軽いカードの点数は高め。
  • 重いカードはそれ一枚でゲームに勝てるようなもの以外は低め。
  • 除去は高め。ただしプレイするのに1ターン使うような重いものはその限りではない

 といった基準で採点しています。それ以外のものに関しては、使ったor使われたときの体感で点数を付けました。

 基本的にはこのイニストラード環境は「超テンポ環境」。先手後手の優劣は大きく、2マナ域のクリーチャーをプレイできるかどうかでゲーム展開は大きく変わります。

 闇の隆盛の加入により《旅の準備》や《戦慄の感覚》といった押し込む系カードの出現は減りましたが、それでも狼男のシステム的な側面とコンバットトリックの増加による先手時の仕掛けやすさを考えると、俄然先手有利の環境といえますね。
 このイニストラード環境は、それらのことを意識したマナカーブやカードの選択を常に心がけましょう。


 最後に、何度も同じことを言うようで恐縮ですが、この点数表はあくまで僕が闇の隆盛をドラフトするときの基準であって、これが絶対の正解というわけではありません。
 人によって得意な戦略や戦術は違いますし、パックの中身やピックの状況によってカードの評価が変わることも多々あります。

 また環境の理解度が進むにつれてカードの評価というのは常に変わっていくものです。
 練習を繰り返しているうちに、カードの評価が上がったり下がったりするのはよくある話。実際、前回の記事で話題に出した白のトップコモン2枚の話ですが、今では《罪の重責》よりも《忠実な聖戦士》を優先するようになりました。

 《罪の重責》は確かに優良な確定除去なのですが、この高速環境では恒久的に払う1マナが厳しいという考えになりましたね。

 こういったカードの評価の変化は環境が進むにつれて少なくなっていきますが、環境後期になったからといってまったくなくなるわけではありません。僕が今回作った点数表も一週間後には数枚のカードの点数が変わっていて、一ヵ月後には大幅に変わっているかもしれません。

 こういったカードの評価が変動していくのも、新環境の醍醐味の一つ。まだまだ始まったばかりの闇の隆盛環境をもっと楽しんでいきましょう!!


 今回で闇の隆盛編は終了です。

 また次のエキスパンション、アヴァシンの帰還で特集記事を書かせていただく予定なので、そのときお会いしましょう。
 それでは、また。

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