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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリ・京都2018直前特集

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリ・京都2018直前特集

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 こんにちは! 晴れる屋の津村です。

 いよいよグランプリ・京都2018の開催が来週末に迫ってまいりました。というわけで、今週は現環境、そしてグランプリ本選でも活躍するであろうデッキを特集していきたいと思います。

 まずは、前回の記事からのメタゲームの流れを簡単に振り返ってみましょう。

メタゲームの変遷 ~赤単の衰退とミッドレンジ・コントロールデッキの繁栄~

 前回の記事が掲載された時点では、環境初期らしく「マルドゥ・機体」や「赤単」といった攻撃的なデッキが大活躍していました。特に「赤単」の勢いはとどまることを知らず、Magic Onlineで最も過酷な大会とされるMagic Onine Championship Series (2月11日開催) での優勝を皮切りに次々と好成績を残し続けました。

 しかしながら、2月末に開催されたグランプリ・メンフィス2018 (2月25日開催) を境にこの流れは一変します。

グランプリ・メンフィス2018 トップ8デッキ (2月24~25日開催)
  • 優勝・「赤緑モンスター」
  • 準優勝・「スゥルタイ (黒緑青) ・巻きつき蛇」
  • 3位・「グリクシス (青黒赤) ・ミッドレンジ」
  • 4位・「グリクシス (青黒赤) ・ミッドレンジ」
  • 5位・「マルドゥ (白赤黒) ・機体」
  • 6位・「グリクシス (青黒赤) ・ミッドレンジ」
  • 7位・「青黒コントロール」
  • 8位・「青黒コントロール」

 まさかの「赤単」のいないトップ8。トップ32にまで視野を広げてみれば6名進出と、「グリクシス・ミッドレンジ」に並ぶ素晴らしい成績を残していますが、前評判の高さを加味するといささか物足りない結果となりました。

 そして、代わりに頭角を現したのが「グリクシス・ミッドレンジ」と「青黒コントロール」です。ここから環境はミッドレンジとコントロールが支配力を強める結果となり、今ではメインデッキに《アルゲールの断血》を入れる過激なアプローチまで散見されるほどになっています。

 では、なぜ「赤単」は以前のような勢いを保てず、ミッドレンジやコントロールデッキの後塵を拝することになってしまったのでしょうか。

 その理由としては、(1)除去呪文の質の高さ、(2)マークのきつさ、(3)サイドボード後のプランニング、この3点が挙げられると思います。

 
(1) 除去呪文の質の高さ

 現環境は、ここ数年で見てもかなり除去の質が高いです。1マナには《致命的な一押し》や《マグマのしぶき》がありますし、2マナにも《渇望の時》、《蓄霊稲妻》、《削剥》と優秀なカードが勢ぞろい。さらに各種「神」や「プレインズウォーカー」、《再燃するフェニックス》などにしっかりと対応できる《ヴラスカの侮辱》という環境最強の除去呪文もあれば、サイドボードには1マナとは思えないほどに強力な効果を持った《チャンドラの敗北》までもが控えています。

 つまるところ、今の環境はしっかりと意識さえすれば「赤単」に勝つこと自体はさほど難しくはないのです。特に「グリクシス・ミッドレンジ」であれば、上に挙げた優秀な除去呪文がデッキに入りきらないくらいですし、対策手段には事欠きません。

(2) マークのきつさ

 現環境は各デッキパワーが均衡しており、今のところこれといって突出したデッキはないと思います。強いて挙げるとすれば「グリクシス・ミッドレンジ」が総合力で少し抜きん出ている感はありますが、決して強すぎるというほどではありません。

 では、そんな群雄割拠の環境でなぜ「赤単」が勝ちづらくなってきたかと言いますと、どのデッキも「赤単」対策は絶対に怠らないからです。それどころかグランプリ・メンフィス前は「赤単」の活躍が顕著だったため、どのデッキもいつも以上に厚めの対策を施していたと思います。また、《栄光をもたらすもの》や《反逆の先導者、チャンドラ》が様々なデッキで活躍していることもあり、「赤単」に対して非常に効果的な《チャンドラの敗北》が環境的に強く、多めに採用することに何ら問題がないこともこの風潮を後押ししていました。

 「赤単」はデッキパワー自体はかなり高い方だと思いますが、そのデッキパワーの高さゆえに真っ先に意識される存在であることが「赤単」の成功に待ったをかけているというわけですね。

(3) サイドボード後のプランニング

 「赤単」のサイドボード後のプランといえば、《栄光をもたらすもの》と《反逆の先導者、チャンドラ》で重めにシフトする形が一般的ですが、この戦略は半年以上も前から使用されているので対戦相手もしっかりと準備をしています。両カードに対処可能な《チャンドラの敗北》や《ヴラスカの侮辱》は極力温存されますし、以前ほど1枚で勝てるような展開は減ってしまったように思えます。

 これは「赤単」だけに限ったことではありませんが、昨今のスタンダードはサイドボード後にどれだけ相手の想像を上回れるかが非常に重要なので、サイドボード後も含めて驚きが少なく、ゲームがやりやすい点は「赤単」の明確な弱点だと言えます。

 

 さて、以上の理由から「赤単」は一時期に比べて数を減らしてしまったわけですが、それと入れ替わる形で凄まじき存在感を放ち始めたのが「グリクシス・ミッドレンジ」を筆頭とした各種青黒ベースのデッキです。

グランプリ・マドリード2018 トップ8デッキ (3人チーム構築・3月10~11日開催)
優勝・「グリクシス・ミッドレンジ」
準優勝・「青黒ミッドレンジ」
3位・「青黒コントロール」
4位・「赤単」
 
5位・「グリクシス・ミッドレンジ」 9位・「青黒コントロール」 13位・「青黒ミッドレンジ」
6位・「スゥルタイ・巻きつき蛇」 10位・「青黒コントロール」 14位・「赤単」
7位・「青黒コントロール」 11位・「グリクシス・ミッドレンジ」 15位・「グリクシス・ミッドレンジ」
8位・「エスパー (青白黒) ・王神の贈り物」 12位・「青黒コントロール」 16位・「スゥルタイ・巻きつき蛇」

 「グリクシス・ミッドレンジ」に「青黒ミッドレンジ」、さらには「青黒コントロール」と、青黒系のデッキがその力を遺憾なく発揮する結果となったマドリード。チーム戦なので各人の個人成績までは分かりませんが、これほどまでに同系統のデッキが結果を残したのはただの偶然ではないでしょう。

 いずれのアーキタイプもトッププレイヤーたちが質の高いデッキガイドを掲載していたこともまた、このような結果をもたらした要因かもしれません。(各リンク先は英語)

 

 それでは、ここからは各リストをご覧いただきたいと思います。まずはスタンダードを牽引する青黒系のデッキから。

グリクシス (青黒赤)・エネルギー

Christoph Green - 「グリクシス・エネルギー」
グランプリ・マドリード2018 優勝 / スタンダード (3人チーム構築戦) (2018年3月10~11日)[MO] [ARENA]
1 《
2 《
1 《
4 《異臭の池
4 《水没した地下墓地
3 《尖塔断の運河
4 《泥濘の峡谷
4 《竜髑髏の山頂
4 《霊気拠点
-土地(27)-

4 《光袖会の収集者
4 《つむじ風の巨匠
2 《豪華の王、ゴンティ
4 《スカラベの神
-クリーチャー(14)-
2 《マグマのしぶき
4 《蓄霊稲妻
2 《削剥
1 《本質の散乱
1 《革命的拒絶
1 《大災厄
1 《至高の意志
4 《ヴラスカの侮辱
2 《慮外な押収
1 《暗記 // 記憶
-呪文(19)-
1 《多面相の侍臣
1 《奔流の機械巨人
2 《強迫
1 《チャンドラの敗北
1 《致命的な一押し
1 《マグマのしぶき
1 《呪文貫き
2 《否認
1 《アルゲールの断血
1 《天才の片鱗
1 《慮外な押収
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
 

 現環境で最も活躍が顕著なデッキが「グリクシス・ミッドレンジ」。環境最高の除去呪文の数々、そして環境最高の名高いクリーチャーである《光袖会の収集者》と《スカラベの神》を主軸にしたデッキです。

 このデッキの強みはその柔軟性です。前述の通り除去呪文は選りすぐりですし、かつてはこのカラーリングで触ることができなかったエンチャントに対しても《徙家 // 忘妻》や《暗記 // 記憶》があるので、その気になればどんなカードにも対応できる柔軟性こそが「グリクシス・ミッドレンジ」の最大の長所と言えるでしょう。

 どちらも対応力に富んだカードではありますが、《排斥》《イクサランの束縛》を擁する白いデッキに対しては、バウンス後にタイムラグができる《暗記 // 記憶》の方が明確に優れています。また、サイドボード後によく見かける《殺戮の暴君》に対して時間稼ぎができるのも《暗記 // 記憶》ならではの強みですね。

 サイドボードで注目すべきは上記2枚。《多面相の侍臣》は《殺戮の暴君》対策として最適なだけでなく、ミラーマッチでも非常に効果的な1枚です。特に《豪華の王、ゴンティ》をコピーできた際には圧倒的な優位を築くことができるので、今後《豪華の王、ゴンティ》が数を増やすようであれば2枚目の採用を検討してみてもいいでしょう。

 もう1枚の《アルゲールの断血》は、対ミッドレンジ・コントロール戦における必殺兵器。第1面の強さはみなさんもご存知かと思いますが、実は「変身」後の能力も非常に優秀です。

 《アクロゾズの神殿》があれば《スカラベの神》を任意のタイミングで生け贄に捧げられるので、《ヴラスカの侮辱》や《排斥》といったカードから《スカラベの神》を守ることができるようになります。当然ながらマナ加速としての価値も高いですし、片方のプレイヤーのみ《アルゲールの断血》をコントロールしている状況を打破するのは難しいため、個人的には2枚がお勧めです。

 何でもできるデッキだからこそ最適なリストを作り上げるのが難しいという嬉しい悲鳴も聞こえてきそうですが、3色のデッキでありながらマナベースも強固ですし、自分の好きなように組み替えられる自由度の高さも魅力的なデッキですので、ミッドレンジ好きな全てのプレイヤーにお勧めのデッキです。

 

青黒ミッドレンジ

Michael Bonde - 「青黒ミッドレンジ」
グランプリ・マドリード2018 準優勝 / スタンダード (3人チーム構築戦) (2018年3月10~11日)[MO] [ARENA]
4 《
6 《
4 《異臭の池
4 《水没した地下墓地
1 《泥濘の峡谷
4 《霊気拠点
3 《廃墟の地
-土地(26)-

4 《光袖会の収集者
3 《薄暮軍団の盲信者
4 《機知の勇者
2 《豪華の王、ゴンティ
3 《スカラベの神
2 《奔流の機械巨人
2 《歩行バリスタ
-クリーチャー(20)-
4 《致命的な一押し
1 《本質の散乱
1 《至高の意志
4 《ヴラスカの侮辱
2 《暗記 // 記憶
2 《死の権威、リリアナ
-呪文(14)-
2 《強迫
2 《アルゲールの断血
2 《渇望の時
2 《否認
1 《ジェイスの敗北
1 《大災厄
1 《黄金の死
1 《天才の片鱗
1 《川の叱責
2 《霊気圏の収集艇
-サイドボード(15)-
 

 こちらは「グリクシス・ミッドレンジ」から赤を抜いたような構成の「青黒ミッドレンジ」。「グリクシス・ミッドレンジ」との最大の相違点は《廃墟の地》が使えることです。

 《廃墟の地》は主に《水没遺跡、アズカンタ》対策という側面が強く、《スカラベの神》がいる際には《屍肉あさりの地》を排除する手段としても重宝します。

 ただ《アルゲールの断血》が存在感を増すに連れて《アズカンタの探索》の使用頻度は少し下がっていますし、なおかつ《廃墟の地》では《アルゲールの断血》の「変身」前のドロー能力を食い止めることができません。そのため、現状では《廃墟の地》を採用できることよりもカードパワーを重視する方がいいと考えているので、個人的には青黒2色よりもカードパワーで勝る「グリクシス」の方が現環境に合っているように思います。

 

青黒コントロール

Elias Watsfeldt - 「青黒コントロール」
グランプリ・マドリード2018 3位 / スタンダード (3人チーム構築戦) (2018年3月10~11日)[MO] [ARENA]
7 《
7 《
4 《異臭の池
4 《水没した地下墓地
4 《廃墟の地
-土地(26)-

2 《スカラベの神
4 《奔流の機械巨人
-クリーチャー(6)-
4 《致命的な一押し
4 《本質の散乱
4 《渇望の時
2 《アルゲールの断血
4 《不許可
4 《ヴラスカの侮辱
3 《天才の片鱗
1 《ヒエログリフの輝き
2 《暗記 // 記憶
-呪文(28)-
2 《光袖会の収集者
2 《豪華の王、ゴンティ
2 《強迫
2 《否認
2 《大災厄
2 《黄金の死
1 《バントゥ最後の算段
2 《機械医学的召喚
-サイドボード(15)-
 

 由緒正しき古典的な「青黒コントロール」のアップデート版。各ミッドレンジに対して有利に戦えますし、《渇望の時》が入ったことで「赤単」などのビートダウンデッキにも以前ほど苦戦しないようになったことから、メインデッキ戦に関しては最強と言って差し支えないデッキだと思います。

 ただこのデッキも「赤単」と同様に、サイドボード後のプランに幅がないことが課題として挙げられます。そういった意味でサイドボードに採用された《機械医学的召喚》には要注目です。

 《機械医学的召喚》の役割は主にミラーマッチにおける切り札ですが、もしかすると他のマッチアップにおいても対処されづらい追加の勝ち手段として機能するかもしれません。基本的に「青黒コントロール」にエンチャント対策カードをサイドインすることはないですし、設置するターンこそ隙だらけなものの、攻防一体の頼れるフィニッシャーとして活躍してくれることでしょう。

 

赤単

John Rolf - 「赤単」
グランプリ・メンフィス2018 10位 / スタンダード (2018年2月24~25日)[MO] [ARENA]
18 《
3 《絡みつく砂丘
3 《屍肉あさりの地
-土地(24)-

4 《ボーマットの急使
4 《狂信的扇動者
4 《地揺すりのケンラ
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《アン一門の壊し屋
1 《ピア・ナラー
4 《熱烈の神ハゾレト
3 《再燃するフェニックス
-クリーチャー(27)-
3 《ショック
1 《マグマのしぶき
4 《稲妻の一撃
1 《削剥
-呪文(9)-
2 《凶兆艦隊の向こう見ず
2 《ピア・ナラー
1 《再燃するフェニックス
2 《マグマのしぶき
2 《削剥
1 《ヴァンスの爆破砲
2 《霊気圏の収集艇
3 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
 

 ここまでお伝えしてきたように以前ほどの支配力はなくなってしまったものの、「赤単」は依然として攻撃的なデッキの代表格です。ここ最近はメインボードから《再燃するフェニックス》を採用し、より太く、より粘り強くといったリストが増えてきました。

 《再燃するフェニックス》は対戦相手のデッキを問わず強力なカードで、それはミラーマッチも例外ではありません。そのため、対戦相手側の《再燃するフェニックス》を意識したであろうカード選択も散見されます。

 前者はもともと《損魂魔道士》が入っていた枠に収まった新戦力で、後者は《ラムナプの遺跡》の穴を埋めるべく採用されたユーティリティーランドです。これらのカードは《再燃するフェニックス》から生み出された「エレメンタル・トークン」を除去するのに最適で、他にも《熱烈の神ハゾレト》対《奔流の機械巨人》の睨み合いに終止符を打ったりと、見た目以上に活躍の機会が多く重宝します。特に《絡みつく砂丘》は土地のスロットでありながらほぼ呪文と同じ役割を担ってくれるので、マナフラッドを軽減できるという意味でもありがたいカードですね。

 他に要注目のカードは、サイドボードに潜む《凶兆艦隊の向こう見ず》でしょうか。

 このカードはスタンダードのみならず、モダンやレガシーでもよく見かけるカードで、ミラーマッチや対ミッドレンジなど消耗戦において抜群の存在感を放つ1枚です。能力が強いのみならず本体のスペックもそこそこ高いので、これから先、さらに活躍の場を広げていくことになるでしょう。

 ここまでの項目では「赤単」に関してネガティブな印象ばかりを与えてしまったかもしれませんが、あくまで対策が過剰なほどに進んでいるから抑えこまれているだけだということをお忘れのないように。デッキパワーは間違いなく一級品ですし、マークが甘くなれば即座に王座に返り咲けるだけの力を秘めたデッキですので、決して対策を怠らないようにしましょう。

 

スゥルタイ (黒緑青)・巻きつき蛇

Tristan Polzl - 「スゥルタイ・巻きつき蛇」
グランプリ・マドリード2018 6位 / スタンダード (3人チーム構築戦) (2018年3月10~11日)[MO] [ARENA]
3 《
2 《
4 《花盛りの湿地
4 《植物の聖域
4 《異臭の池
4 《霊気拠点
2 《ハシェプのオアシス
1 《イフニルの死界
-土地(24)-

4 《光袖会の収集者
4 《導路の召使い
4 《巻きつき蛇
4 《翡翠光のレインジャー
4 《逆毛ハイドラ
2 《新緑の機械巨人
4 《歩行バリスタ
-クリーチャー(26)-
4 《致命的な一押し
3 《顕在的防御
3 《ハダーナの登臨
-呪文(10)-
2 《殺戮の暴君
2 《沈黙の墓石
3 《否認
2 《帰化
1 《本質の散乱
2 《野望のカルトーシュ
1 《失われた遺産
2 《ヴラスカの侮辱
-サイドボード(15)-
 

 こちらは《歩行バリスタ》と《巻きつき蛇》を軸にした「黒緑・巻きつき蛇」の最新型。この手のデッキが躍進する場合、えてして《歩行バリスタ》が強い環境であることが多いですが、今の環境はどうでしょうか?

 《歩行バリスタ》は、現環境で最高のクリーチャーの1枚である《光袖会の収集者》を除去するのにうってつけです。他にも「赤単」であったり、ここ最近で勢力を伸ばしてきている「白黒吸血鬼」などこのカードが輝くマッチアップは多いので、「《歩行バリスタ》が強い」という前提条件は十分に満たしているように思えます。

 また、《歩行バリスタ》は新戦力の《ハダーナの登臨》との相性も特筆に値します。

 《ハダーナの登臨》は《歩行バリスタ》以外にも《巻きつき蛇》や《逆毛ハイドラ》と恐ろしいシナジーを形成する新カード。特に《逆毛ハイドラ》との組み合わせは極悪非道で、容易に2桁のダメージを叩き込んでくれます。

 今現在は全体除去の使用率が低く単体除去の需要が高い傾向にあるので、《逆毛ハイドラ》はこれまで以上に対処の難しい脅威として機能しますね。

 「黒緑・巻きつき蛇」系統のデッキの天敵として挙げられるのは、「白緑」系のデッキや「青白オーラ」などがよく採用している《厳粛》です。

 たった1枚であまりにも多くのカードが機能不全に陥ってしまうため、対策カードは必須となります。幸いにも《打ち壊すブロントドン》、《帰化》など対策カード自体は豊富にあるので、どのデッキのサイドボードに《厳粛》が取られているのかを事前にしっかりと確認しておくといいでしょう。

 

赤緑モンスター

Tyler Schroeder - 「赤緑モンスター」
グランプリ・メンフィス2018 優勝 / スタンダード (2018年2月24~25日)[MO] [ARENA]
8 《
7 《
4 《隠れた茂み
4 《根縛りの岩山
2 《ハシェプのオアシス
-土地(25)-

4 《地揺すりのケンラ
4 《マーフォークの枝渡り
3 《立て直しのケンラ
4 《翡翠光のレインジャー
2 《不屈の神ロナス
1 《ピア・ナラー
4 《再燃するフェニックス
4 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(26)-
3 《マグマのしぶき
4 《削剥
2 《捲土 // 重来
-呪文(9)-
2 《アゾカンの射手
2 《貪る死肉あさり
2 《打ち壊すブロントドン
2 《殺戮の暴君
1 《顕在的防御
1 《チャンドラの敗北
1 《マグマのしぶき
1 《帰化
1 《捲土 // 重来
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
 

 続いてはグランプリ・メンフィス2018を制した「赤緑モンスター」。《マーフォークの枝渡り》、《翡翠光のレインジャー》といったアドバンテージ獲得手段を兼ねたクリーチャー、序盤から終盤まで活躍する2種類の「ケンラ」と、クリーチャー満載のデッキでありながら見た目以上の粘り強さが魅力的なデッキです。

 僕自身もグランプリ・メンフィス直後にこのデッキを使ってみて、その粘り強さや対処の難しさに驚きましたが、当時と今で決定的に異なる点が《スカラベの神》の使用率です。赤緑、とりわけクリーチャーを主軸とするこの手のデッキにとって、《スカラベの神》はあまりにも致命的な1枚です。

 もちろん《スカラベの神》対策として《捲土 // 重来》こそ採用されてはいますが、青黒系のデッキが氾濫する現在は「赤緑モンスター」にとってあまり良い立ち位置とは言えません。

 そのため、もしもこのデッキを使うのであれば、序盤の動きが少々いびつになろうとも《捲土 // 重来》の増量をお勧めします。

 

今週の一押し ~「白緑機体」~

lighdar - 「白緑機体」
Magic Online Standard PTQ #11227641 優勝 / スタンダード (2018年3月10日)[MO] [ARENA]
4 《平地
4 《
4 《まばらな木立ち
4 《陽花弁の木立ち
1 《平穏なる広野
4 《シェフェトの砂丘
4 《ハシェプのオアシス
-土地(25)-

1 《聖なる猫
4 《典雅な襲撃者
4 《マーフォークの枝渡り
4 《翡翠光のレインジャー
-クリーチャー(13)-
3 《軍団の上陸
4 《霊気装置の展示
4 《スラムの巧技
4 《旗幟 // 鮮明
4 《霊気圏の収集艇
3 《領事の旗艦、スカイソブリン
-呪文(22)-
3 《打ち壊すブロントドン
2 《アゾカンの射手
2 《殺戮の暴君
4 《不可解な終焉
2 《厳粛
2 《排斥
-サイドボード(15)-
 

 最後を飾るデッキは、先週末のプロツアー予選を突破した「白緑機体」デッキです。

 このデッキは《霊気装置の展示》や《スラムの巧技》などを駆使した横並び、《典雅な襲撃者》や「機体」を生かした一点突破という、「面と点」での攻めに《旗幟 // 鮮明》の一撃必殺を加えた中速デッキです。

 初見ではこれらの組み合わせがどれほどの威力を発揮するか判断しづらいかと思いますが、《鮮明》でサイズの大きなブロッカーすらどけてしまえるので、いともたやすく10点を越えるダメージを叩き込むことができます。トークンや「機体」で圧力をかけていって対戦相手をタップアウトの状態に追い込み、そこで《旗幟 // 鮮明》を解き放ち一気にゲームを決めてしまうのが青写真となります。

 もし《旗幟 // 鮮明》にたどり着けないという場合には、これらの優秀な土地がばっちりとサポートしてくれます。時折「砂漠」を固め引いてしまってライフの損失が大きい展開もあったりしますが、そこは《軍団の上陸》や《霊気圏の収集艇》がカバーしてくれる安心設計。

 両カードともに単体で非常に頼りになるカードですが、《軍団の上陸》は「青黒」系のデッキに、《霊気圏の収集艇》は《再燃するフェニックス》に強く、メタゲーム的な観点で見てもとても優秀です。

 すでに予選を突破された本人、浦瀬 (亮佑) さんによる解説記事も掲載されておりますので(参考)、お時間のある方はぜひそちらもご覧ください。

 

おわりに

 今週の「スタンダード・アナライズ」は以上です。少し前までは《熱烈の神ハゾレト》、《再燃するフェニックス》に《翡翠光のレインジャー》などなど、全体除去呪文を入れる気が起こらないようなデッキの活躍が目立っていたものの、ここにきて「白黒吸血鬼」が勢力を伸ばしてきたり「白緑機体」が登場したりといったトピックがあったため、《焼けつく双陽》や《削剥》あたりのカードの採用率には変化が起こりそうです。

 今のところ青黒系のデッキの数が少しだけ多く感じますが、各デッキ間のデッキパワーに大きな差はないと思いますので、グランプリ・京都2018がどのような結果になるのか楽しみですね!

 グランプリ本選ではスタンダードだけでなくモダン、レガシーの試合模様もお届けする予定ですので、残念ながら参加が叶わないという方はぜひ生放送で各フォーマットの激闘をお楽しみください!

グランプリ・京都2018 実況生放送
日程 放送日 放送時間 放送ページ
1日目 3月24日(土) 9:00~ ニコニコ生放送」「YouTube Live Twitch
2日目 3月25日(日) 9:00~ ニコニコ生放送」「YouTube Live

 それでは、また次回の連載で!

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