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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第97回:いのちをだいじに・《滞留者ヴェンセール》コントロール特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.04.12
第97回:いのちをだいじに・《滞留者ヴェンセール》コントロール特集
こんにちはー。
ようやく桜も満開になり始め、気候も暖かくなって過ごしやすくなってきましたね。進学や就職な様々な変化のある時期だと思いますが、みなさんはもう新生活に慣れましたか?
マジックの世界でも、『アヴァシンの帰還』のカードリストが公開され始めるという大きな変化がありました。ストーリー上で重要な《希望の天使アヴァシン》と《グリセルブランド》を筆頭に、すでに10数枚のカードが披露されています。
『アヴァシンの帰還』と銘打っているだけあって、今のところ公開されているカードは「天使」クリーチャーが目立ちますね。《歓喜の天使》や《鷺群れのシカルダ》など、スタンダードでの活躍が期待できるものも多く見受けられ、毎日mtg.comの更新を心待ちにしています。
しかしながら、そんなホットな話題とは裏腹に、この時期はスタンダード的観点で見るとネタに乏しい時期でもあります。今週はローグデッキ特集をしようと思っていたのですが、ちょっと目新しいデッキが少なかったので、「What's Happening?」で見つけた面白いデッキを特集したいと思います。
まずはデッキリストをご覧ください。
「《滞留者ヴェンセール》コントロール」
7 《島》 4 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《水没した地下墓地》 1 《闇滑りの岸》 3 《幽霊街》 -土地(26)- 4 《石角の高官》 1 《霜のタイタン》 2 《ドラグスコルの肉裂き》 -クリーチャー(7)- |
4 《漸増爆弾》 3 《熟慮》 4 《機を見た援軍》 3 《清純のタリスマン》 3 《禁忌の錬金術》 3 《審判の日》 2 《殴打頭蓋》 1 《イシュ・サーの背骨》 3 《滞留者ヴェンセール》 1 《解放された者、カーン》 -呪文(27)- |
4 《堂々たる撤廃者》 4 《天界の粛清》 2 《忘却の輪》 1 《決断の手綱》 3 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
今回ご紹介させていただくのは、クリーチャーデッキを目の敵にした「《滞留者ヴェンセール》コントロール」です。
このデッキの軸となるのは、デッキ名にもなっている《滞留者ヴェンセール》で、永遠に戦闘フェイズを飛ばせる《石角の高官》とのお馴染みのコンボはもちろんのこと、《イシュ・サーの背骨》まで入っている本気っぷり。
前者はクリーチャーデッキのみならず、「赤緑《ケッシグの狼の地》」にも効果的で、後者は対コントロール戦で必殺兵器になります。
《滞留者ヴェンセール》はそれ以外のカードとも相性が良く、《霜のタイタン》でタップできるパーマネントや、《清純のタリスマン》のライフゲイン量を2倍にすることができます。
このデッキだと、《解放された者、カーン》で相手のパーマネントを追放→《滞留者ヴェンセール》で消して「忠誠度」を回復、という使い方もよく使いしますね。
通常であれば、《清純のタリスマン》の回復量が2点になっても大したことがないように思えますが、このデッキはフィニッシャーを《ドラグスコルの肉裂き》にすることで、その行為に含みを持たせています。
7マナと少し重いものの、単体の性能だけ見ても対ビートダウン戦では非常に頼りになりますし、《機を見た援軍》《清純のタリスマン》《殴打頭蓋》と組み合わせることで、そのドロー能力も遺憾なく発揮することができます。
基本的にはこれらのカードでひたすらに時間を稼ぎ、最終的には《滞留者ヴェンセール》の最終奥義、または《イシュ・サーの背骨》や《解放された者、カーン》で勝利を目指すことになります。
ここまで紹介したカードだけでも、このデッキがいかにビートダウンデッキに強いかご理解していただけるかと思いますが、その半面でその他のマッチアップは多少厳しいものになります。カウンターの有無もあり、「青黒コントロール」や「エスパー(青白黒)コントロール」もなかなかに厳しい相手ですが、このデッキが最も苦手とする相手は「赤緑《ケッシグの狼の地》」だと感じています。
「青黒コントロール」や「エスパーコントロール」に対しては、サイド後に《堂々たる撤廃者》という明確なプランがありますが、「赤緑《ケッシグの狼の地》」に対してはそういったものがないので、サイド後にも相性が改善しないことがそう考える要因です。
そのため、サイドボードには《瞬間凍結》か《マナ漏出》を3枚以上は用意しておきたいところ。《忘却の輪》2枚と《天界の粛清》1~2枚を変更するといいと思います。
~変更後サイドボード~
4 《堂々たる撤廃者》
4 《瞬間凍結》
2 《天界の粛清》
1 《決断の手綱》
3 《記憶の熟達者、ジェイス》
1 《解放された者、カーン》
それでは、ここからは環境の主要デッキ相手のサイドボーディングプランと、そのマッチアップの要点を見ていきましょう。
対「ゾンビ」(黒青、黒赤)
このマッチアップは、ビートダウンデッキの中では一番きついです。理由としては《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボを妨害される可能性が高いためで、《ゲスの評決》や《ヴェールのリリアナ》には注意が必要です。
理想としては《機を見た援軍》でそういった除去対策をしつつコンボを開始したいところですが、《機を見た援軍》を引けていない場合は《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボにはあまり頼らず、除去で戦況をコントロールしつつ《殴打頭蓋》で盤面を固めるといいでしょう。
サイドボーディング
out: 1《霜のタイタン》、1《ドラグスコルの肉裂き》、1《イシュ・サーの背骨》
in: 2《天界の粛清》、1《解放された者、カーン》
前述の通りクリーチャーへの信頼度が少し低いので、重いクリーチャーを抜いて《天界の粛清》などに変更を。《機を見た援軍》さえ引ければ押し切られることはほとんどないでしょうが、《ゲラルフの伝書使》や《戦墓の隊長》のライフ損失による突然死には注意しましょう。
対「赤緑ビートダウン」
《戦争と平和の剣》だけは厄介ですが、《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボをカード1枚では妨害されないので、比較的楽なマッチアップです。ある程度の余裕があるならば、《漸増爆弾》はカウンター0個のままで置いておいて《高原の荒廃者》に睨みをきかせておくと吉です。
サイドボーディング
in: 4《瞬間凍結》
第87回の時にもお伝えしたように、ドローサポートを抜くのはあまり良い戦略とは考えていないのですが、対戦回数の少なさもあってまだ固まりきっていない感じです。
後手の場合は《イシュ・サーの背骨》と《解放された者、カーン》を抜いて、《瞬間凍結》を2枚だけ入れるのがいいかもしれません。
対「赤緑《ケッシグの狼の地》」
このマッチアップで重要なのが、「《滞留者ヴェンセール》コントロール」だと悟られないようにプレイすることです。
こちらにカウンター呪文が入っているとミスリードできれば、それだけで《原始のタイタン》のキャストを遅らせることができるかもしれませんし、相手が《高原の狩りの達人》や《業火のタイタン》で牽制してくる間に《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボを揃えるのに全力を注ぎましょう。
サイドボーディング
in: 4《瞬間凍結》、1《決断の手綱》、1《解放された者、カーン》
サイドボーディングは非常に分かりやすいですね。サイド後は相手側にも《内にいる獣》や《解放された者、カーン》といった変化球が入ってくるので、《石角の高官》+《滞留者ヴェンセール》コンボが妨害されやすくなるのに注意が必要です。
もしも《霜のタイタン》を早期の段階で引けた場合は、《不屈の自然》を打ち消して土地を縛る戦略も視野に入れておくといいと思います。
対「青黒コントロール」
これもこのデッキにとって鬼門と言える対戦になります。これくらい重いカードが入ったデッキで《マナ漏出》を警戒するのは無理があるので、何か通ればラッキーくらいの気持ちで積極的に仕掛けていくといいでしょう。
サイドボーディング
out: 4《石角の高官》、4《機を見た援軍》、3《審判の日》
in: 4《堂々たる撤廃者》、2《天界の粛清》、3《記憶の熟達者、ジェイス》、1《決断の手綱》、1《解放された者、カーン》
サイド後はカウンターを乗り越えられる《堂々たる撤廃者》と、1枚で勝てる《記憶の熟達者、ジェイス》などが入っていくぶん戦いやすくなります。最近はクリーチャーが入っていない「青黒コントロール」のリストも多いですが、相手のフィニッシャーが《墓所のタイタン》の場合は《ドラグスコルの肉裂き》ではなく《石角の高官》を2枚残してもいいですね。
対「青白Delver」
ここまで全くと言っていいほど対「青白Delver」について触れてきませんでしたが、これはこのマッチをほとんど練習できていないためです。
この記事を書くまでに30マッチ近くやったのですが、「青白Delver」と対戦できたのはわずかに1回のみ。その時の印象としては、最初に思っていたよりは遥かに好勝負が期待できるというものでしたが、基本的にはこれもきついマッチアップですね。
対「青黒コントロール」とは違いメインには確定カウンターが入っていないので、《漸増爆弾》や《審判の日》、または《機を見た援軍》などで相手の攻勢を凌げた場合は、《マナ漏出》を意識して3マナ余らせて動いてくといいでしょう。
サイドボーディング
out: 1《霜のタイタン》、2《ドラグスコルの肉裂き》、1《イシュ・サーの背骨》
in: 4《堂々たる撤廃者》
そんな台所事情もあり、サイドボーディングプランも決めかねている現状なのですが、重いクリーチャーは《蒸気の絡みつき》の良い的ですし、下手をすると《幻影の像》でコピーされてしまうので、今のところ抜いた方がいいのではないかと思っています。
あまりにも重いカードを抜きすぎると、《堂々たる撤廃者》を何のために入れたか分からなくなるので、《ドラグスコルの肉裂き》を1~2枚残してもいいかもしれません。
今週は少し短いですが、本編は以上です。
このデッキはビートダウンに非常に強いので、もしも「青白Delver」とも対等に渡り合えるようであれば、もっと強くお勧めしたかったのですが、残念ながらそこまでは検証できませんでした。
来週も今週の要領でひとつのデッキを掘り下げる予定なので、次回はもう少し時間が取れればと思います。
最後に、少し進化を遂げた「Delver-Spirits」をご紹介してお別れしましょう。
「Delver-Spirits」
5 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 4 《闇滑りの岸》 1 《進化する未開地》 1 《ムーアランドの憑依地》 1 《大天使の霊堂》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(8)- |
2 《はらわた撃ち》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 4 《無形の美徳》 4 《未練ある魂》 4 《深夜の出没》 -呪文(30)- |
2 《地下牢の霊》 4 《精神的つまづき》 1 《否認》 2 《存在の破棄》 3 《天界の粛清》 2 《雲散霧消》 1 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
先週紹介した《清浄の名誉》のリストから、さらにトークン戦略を強めたものがMagic Online上で流行の兆しを見せています。こうすることで除去耐性が上がりますし、クリーチャー同士の殴り合いでも《無形の美徳》は良い働きをしてくれるので、このアプローチも要注目です。
「青白Delver」は直近のグランプリふたつで優勝しており、実績面で言えば圧倒的なのですが、なべ君のように《ギタクシア派の調査》を抜いたり、このリストのようにトークン戦略を強めたりと、多くのプレイヤーが日々試行錯誤を繰り返しています。
他にも《幽体の飛行》が入ったリストもちらほら見かけますし、「青白Delver」も王座を守るために色んな工夫をしているわけですね。
もちろん、その他のデッキも色々な変化を見せているので、お時間のある方はぜひ「What's Happening?」をご覧くださいませ!
それでは、また来週ー!
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