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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第70回:次期スタンダードを担う男

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2011.09.15

第70回:次期スタンダードを担う男


 こんにちはー。

イニストラード

 「イニストラード」発売まであと2週間ほどになりました。ついこの間基本セット2012が発売されたばかりのような気もしますが、基本セットが毎年発売されるようになってからは、夏から秋シーズンはプレイヤーにとって1年の中で最も忙しい時期になりましたね。

 ダイアリーノートやツイッター上で「お気に入りカード追悼トップ10」という企画を毎年見るたびに、ローテーションが近付いてきたんだなぁと実感します。この時期になると、そんなお気に入りのカードを入れたデッキを使い倒したり、次期スタンダードを睨んでカードを集めておくなど、プレイヤーによって取る行動は様々でしょう。僕はどちらかというと前者で、去年の今頃は《残酷な根本原理》の入ったデッキをこれでもか、というくらいに使って遊んでいました。

 残念ながら、今年は《残酷な根本原理》ほど好きなカードは現れませんでしたが、1枚だけ、この1年間ほぼ毎日使っているカードがありました。それを含めた「ゼンディカーブロック&基本セット2011追悼トップ10」は来週以降にまわすとして、今週は先週に引き続き、「イニストラード」発売後に注目のアーキタイプとカードに焦点を当てていきたいと思います。

 まずは、ローテーション直後に起こりがちなメタゲーム事情を整理してみましょう。


~ローテーション直後のTier1~

 過去の事例を見てみると、ローテーション直後にTier1になりやすいデッキは大きく分けて3つあります。

  • ローテーションの影響を受けないデッキ
  • 新セットの登場により誕生する新デッキ
  • ブロック構築でTier1だったデッキ

 それぞれに分けて、例を挙げて説明していきましょう。


ローテーションの影響を受けないデッキ

 ひとつめは前環境の生き残りです。昨年で言えば「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」がこれに当たります。

 《不屈の自然》以外、他のパーツが落ちなかったために、そのまま環境を席巻したのは記憶に新しいでしょう。このように、ローテーションの影響を全く受けないデッキ、またはデッキの核が残っているデッキは、次期スタンダードでも、十分な活躍が期待できます。

 今年だと「《出産の殻》」デッキが良い例ですね。現環境でさえTier1に位置するデッキですし、新セットが出ることで使用できるクリーチャーが増えれば、それだけでデッキパワーが大きく上がるデッキなので、ローテーション後も変わらぬ活躍が見込めるはずです。


新セットの登場により誕生する新デッキ

 ふたつめは新セットのカードを軸にしたデッキです。新しいシステムだったり、新しいコンボだったりと、新セットのカードをふんだんに使うことで、今までにないアーキタイプが誕生するパターンですね。

 昨年はこれに該当するデッキがあまりなかったように思えますが、「感染(第28回の「一押し」で紹介)」デッキなどは「感染」というキーワードを擁する「ミラディンの傷跡」ならではのデッキと言えます。

 新セットのカードがあまりにも強い場合は、ローテーション直後にTier1になりますが、そうではない場合は、そのテクニックを発見するまでに時間がかかることが多いので、年末の世界選手権でお披露目されるのが通例となっています。
 新セットのカードを使い倒した、というわけではないのですが、後に2枚の禁止カードを生み出すことになった悪名高き「Caw-Blade(第56回で紹介)」の雛型である「Caw-Go」がデビューを果たしたのも、去年の世界選手権でしたね(参考:世界選手権2010スタンダード上位者デッキ)。


ブロック構築でTier1だったデッキ

 みっつめは最も一般的なもので、ブロック構築でTier1だったデッキが、新環境のスタンダードでそのままTier1になる、というものです。

 「ローウィンブロック構築」では「青黒フェアリー」が、「アラーラブロック構築」では「ジャンド(第5回)」デッキが、「ゼンディカーブロック構築」では「青緑赤Turboland(第49回)」や「青白コントロール(第46回)」が例として挙げられます。

 そして今後を占う「ミラディンの傷跡ブロック構築」のTier1は、「白単《鍛えられた鋼》」と「青黒テゼレイター」です。

 「白単《鍛えられた鋼》」は、みなさんご存じの通り日本選手権優勝(第63回で分析)を皮切りに、ローテーション前にも関わらず、すでにスタンダードの舞台で活躍するまでの急成長を遂げています。
 そのあまりの強さゆえ、《忍び寄る腐食》のような専用カードが使われる事態にまで発展したために、一時期は絶滅の危機に瀕していましたが、近頃はマークもあまくなったこともあり、再び見かける機会も増えてきましたね。


 では、もう一方の「青黒テゼレイター」はどうでしょう?

 スタンダードの鬼神、ヤソさんこと八十岡 翔太が好んで使っていることでもお馴染みのアーキタイプですが、今のところ「白単《鍛えられた鋼》」ほどの活躍はできていないように思えます。

 しかし、《ボーラスの工作員、テゼレット》のポテンシャルは今更語るまでもないくらいに高いですし、「青黒テゼレイター」が、今後を担っていくアーキタイプであることは疑いようのない事実でしょう。


 今週はその《ボーラスの工作員、テゼレット》の入ったデッキ特集です。ローテーション後でも活躍できそうなものから、ローテーション前の今しか使えないものまで、色んなリストを紹介していきたいと思います。


「青黒テゼレイター」

Wuggalix (1st Place)
Standard Premier #2803431 on 09/09/2011[MO] [ARENA]
4 《
4 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
2 《水没した地下墓地
4 《地盤の際
3 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

3 《呪文滑り
3 《真面目な身代わり
2 《聖別されたスフィンクス
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(10)-
4 《永遠溢れの杯
4 《定業
3 《コジレックの審問
2 《破滅の刃
2 《喉首狙い
2 《マナ漏出
2 《漸増爆弾
2 《転倒の磁石
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(25)-
1 《聖別されたスフィンクス
4 《見栄え損ない
3 《瞬間凍結
1 《倦怠の宝珠
3 《記憶殺し
2 《生命の終焉
1 《記憶の熟達者、ジェイス

-サイドボード(15)-


 まずは最もオーソドックスな青黒純正のバージョンから。デッキリストの解説の前に、《ボーラスの工作員、テゼレット》の長所を軽くおさらいしておきましょう。


手軽にアドバンテージが得られる+1能力

 いささか不安定ではありますが、概ねなにかしらのアーティファクトが手に入る+1能力は、アーティファクト大好きな《ボーラスの工作員、テゼレット》の特徴をよく表しています。

 これを効果的に機能させるのであれば、デッキ構築の段階でアーティファクトの総数を意識しておく必要があります。例えば、このリストのようにアーティファクトが16枚だと、そこそこの頻度で空振りしてしまうので、確実にヒットさせたいのなら、20枚前後が目安となるでしょう。
 しかしあまりにも多くのアーティファクトをデッキに入れると、サイド後の《帰化》系のカードや、《忍び寄る腐食》の前に手も足も出なくなるので、最近ではアーティファクトを少なめにする構築が主流になっています。そういった意味でも重要になってくるのがふたつめの能力です。


圧倒的な攻撃力を誇る-1能力

 歴代のプレインズウォーカーの中でも、屈指の攻撃力を誇るのが《ボーラスの工作員、テゼレット》のマイナス能力です。初見では、プラス能力を使う頻度が多いのかなと思っていましたが、実際に一番よく使うのはこの能力ですね。
 この能力さえ使えば、敵陣のプレインズウォーカーも粉砕できますし、《ボーラスの工作員、テゼレット》自身を守るのにも重宝します。

 今更感が漂いますが、《墨蛾の生息地》を5/5にして、僅か2回のアタックで毒殺できるのも《ボーラスの工作員、テゼレット》だけの特権と言えるでしょう。
 ちなみに《ボーラスの工作員、テゼレット》で5/5にした「飛行・感染」持ちの《墨蛾の生息地》は、ターン終了後には、何の能力も持たないただの5/5アーティファクトクリーチャーに戻ってしまうので、自身の次のターンに再び「感染」を付けるためには、一度1/1「飛行・感染」クリーチャーにしなおした後に、もう一度《ボーラスの工作員、テゼレット》のマイナス能力を使ってあげる必要があります。

 他にも相手の《燃え上がる憤怒の祭殿》などをクリーチャー化して、《破滅の刃》で除去したり、相手の装備品をクリーチャー化して、装備品の特性を失わせたりと、実に幅広い役割が期待できます。


 基本的にはマイナス能力を使って積極的に攻めていくプランが良いと思いますが、もしもプラス能力とマイナス能力のどちらを使うかで悩んだ場合は、プラス能力を使って「何も得られなかった場合にどうなるか」を想定して決めるといいでしょう。

 対コントロール戦ならば、1回や2回プラス能力が空振りしても大した影響はないでしょうが、対ビートダウン戦だとそれは当てはまらないので、最低でもブロッカーを確保できるマイナス能力を使う方がいい局面が多いと思います。

 対コントロール戦でも、基本セット2012で《忘却の輪》が再録されたことで、以前とは違いいきなり《ボーラスの工作員、テゼレット》が除去されることがあるので、特に白の入ったコントロール相手には、どちらの能力を使うかしっかり考えた上で起動するように心掛けたいですね。


 それでは、ここからはデッキの解説に移ります。

 このデッキは従来の「青黒コントロール」に、《ボーラスの工作員、テゼレット》とお供のアーティファクトを組み込んだコントロールデッキです。第57回第63回で紹介したヤソさんのデッキの最新版とも言えますが、当時とはメタゲームが随分と様変わりしたので、カードの選択も異なっています。まずは新たにデッキに加わったカードを順を追って見ていきましょう。


~メインボード~

 ヤソさんのリストと比べると、メインボードの変更点は「白単《鍛えられた鋼》」の衰退に伴い、全体除去が減ってフィニッシャーが減り、《倦怠の宝珠》が抜けたくらいなので、デッキ全体の解説は前の記事を読んでいただくとして、今回は新顔と呼べるカードを見ていきます。メインボードは《呪文滑り》と《真面目な身代わり》のみですね。

呪文滑り

 「赤単」や「青赤《欠片の双子》」に効果的な、とても2マナとは思えない万能クリーチャー。サイド後には《帰化》系のカードを身を挺して受け止めてくれますし、《聖別されたスフィンクス》や《ワームとぐろエンジン》を除去から守れるのも強いですね。2マナと軽いこともあり、序盤から戦場に置いておけるので、《ボーラスの工作員、テゼレット》で5/5にする的としても最上級です。

 色的に対処の難しい「赤単」の《燃え上がる憤怒の祭殿》を疑似的にですが対処できる点も見逃せませんし、《ぐらつく峰》を曲げた時の爽快感は半端ではないので、そういった細かい能力を曲げられることを常に忘れないようにしておきましょう。
「《出産の殻》」デッキにメインから入っている、このデッキにとって致命的な《酸のスライム》の能力を回避することもできるので、今後は今以上に使われるようになると思います。

真面目な身代わり

 《ボーラスの工作員、テゼレット》を使用するデッキは、青黒2色や、3色以上など様々なバージョンがありますが、どんなバージョンであれ、最も悩ましい点は《倦怠の宝珠》を使うか《真面目な身代わり》を使うか、という問題でしょう。

 《倦怠の宝珠》はTier1に位置する「《出産の殻》」デッキと「青赤《欠片の双子》」デッキに効果絶大ですし、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」相手にも《原始のタイタン》の戦場に出た際の能力を封じられるので、効かないことはないです。ただし「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に関しては、その後に6/6クリーチャーを対処しなければいけないので、上記2つのデッキと比べると、効果はいまひとつですが。

 Tier1のデッキの中のふたつに強い、こう書くと《倦怠の宝珠》を入れない選択肢は無いように見えるかもしれませんが、それを許さないのが「赤単(第67回)」の存在です。
 「赤単」は「バーン型」と「ゴブリン型」の2種類があるのですが、「バーン型」にいる《倦怠の宝珠》に引っ掛かるクリーチャーはサイドの《躁の蛮人》くらいのもので、これは「ゴブリン型」でも大差はなく、効果があるのはメインの《ゴブリンの奇襲隊》と、サイドの《躁の蛮人》のみと、効き目はいまいちです。

 一方で《真面目な身代わり》は、「赤単」に対して優秀なブロッカー兼マナ加速の役割を果たしてくれます。そこから《聖別されたスフィンクス》か《ワームとぐろエンジン》を素早く召喚することが、「赤単」に対する最高の展開なので、「赤単」を意識するのであれば、《真面目な身代わり》を優先した方がいいでしょう。

 そもそも「青黒テゼレイター」は、対処法の限られている《燃え上がる憤怒の祭殿》擁する「赤単」系のデッキを苦手としているのですが、《真面目な身代わり》ではなく《倦怠の宝珠》を採用していると、メイン戦はほぼ勝てないと言ってもいいくらいの、絶望的な相性になってしまいます。

 それならば「赤単」を無視して、他のデッキに勝てるように《倦怠の宝珠》を使いたくなる気持ちも山々なのですが、それを決断できないほどに、「赤単」系のデッキは環境に溢れてしまっているのが現状です。そして、非常にデッキパワーの高い「赤単」相手にサイド後の2本を確実に取ることは難しいのです。

 僕個人の結論としては、メインは《真面目な身代わり》の採用をお勧めします。詳しくは後述しますが、「赤単」相手よりも、「《出産の殻》」デッキや「青赤《欠片の双子》」デッキ相手の方が、サイドボードに明確な対処法があることも、《真面目な身代わり》を推す要因です。


~サイドボード~

 サイドボードは新しいカードが多めになっているので、全てのカードを見ていきましょう。


見栄え損ない

 「赤単」を筆頭としたビートダウン対策。ローテーション後は《ソリンの渇き》が代用品になりそうですね。


瞬間凍結

 主な使用先は「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」ですが、「青赤《欠片の双子》」デッキや「《出産の殻》」デッキなどにも効く優良カード。
 「赤単」に対しては、《燃え上がる憤怒の祭殿》登場前ならば有効なサイドボードでしたが、最大のガンであるその《燃え上がる憤怒の祭殿》に対処できないカードなので、僕は《マナ漏出》と入れ替えることはしませんね。


倦怠の宝珠

「《出産の殻》」デッキと「青赤《欠片の双子》」デッキへの明確な解答。サイド後なので、相手も《自然の要求》などで対処してくるため過信は禁物ですが、戦場に残ればそれだけで有利にゲームを運べます。「赤単」や「Caw-Blade」が少ないのなら増量を検討したいくらいのカードなのですが、この辺はメタゲームと要相談といったところでしょうか。

 ローテーション後は「赤単」が《ゴブリンの先達》《稲妻》《よろめきショック》などの退場により、大幅な弱体化を余儀なくされますし、「Caw-Blade」は《戦隊の鷹》がいなくなるので、デッキの存在自体が危ぶまれています。そして、それらの数が減ることが予想される上に、《倦怠の宝珠》がクリーンヒットする「《出産の殻》」デッキが増えそうなことも相まって、ローテーション後は今以上に使われるようになると思います。
 一見、「Caw-Blade」相手には《戦隊の鷹》や《太陽のタイタン》を封じられるので効果がありそうに見えますが、こちらが後手だとすでに《戦隊の鷹》は戦場に出ていることが多いですし、《太陽のタイタン》は「戦場に出た時」の能力は封じられますが、結局は6/6のクリーチャーを対処しないといけないので、《破滅の刃》のような単体除去の方が対処法として優れています。


記憶殺し

 「青赤《欠片の双子》」と「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に劇的に効く1枚。
 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に関しては、《最後のトロール、スラーン》、《業火のタイタン》、《ガイアの復讐者》などがあるので、撃てば勝ち、とまではいきませんが、それでも《原始のタイタン》がいないだけでゲーム運びはとても楽になりますし、「青赤《欠片の双子》」にいたっては、通れば勝ちの正真正銘のゲームエンドカードです。
 「青赤《欠片の双子》」で《記憶殺し》をカウンターできる呪文は《呪文貫き》、《マナ漏出》と、たまにサイドに入っている《否認》くらいのものですし、最近では第68回の連載で紹介したような、カウンター呪文が少ないバージョンもそれなりにいるので、思いの外通りやすいのも良いですね。

生命の終焉

 「《出産の殻》」デッキが、文字通り終焉を迎える1枚。

 「《出産の殻》」デッキの特徴として、仮に戦場のクリーチャーを一掃しようとも、《出産の殻》さえあればすぐにそこから復旧して、最終的にゴールと呼べる《太陽のタイタン》や《ワームとぐろエンジン》に繋がってしまうことが挙げられます。つまり「《出産の殻》」側のプレイヤーは、手札に少しでもクリーチャーを残しておけば、全体除去対策ができてしまうわけなんです。

 それゆえに、《黒の太陽の頂点》や《審判の日》のようなカードは、「《出産の殻》」デッキ対策としては少し頼りないのですが、しかしながら《生命の終焉》は、戦場のクリーチャーだけに限らず、対戦相手のライブラリーに眠る「ゴール」までをも刈り取ります。
 「《出産の殻》」デッキと試合をしたことがない方には、少しイメージしづらいかもしれませんが、《生命の終焉》を撃つと、相手のデッキに入っている一番強いクリーチャーが《幻影の像》か《酸のスライム》のような状態になります。そうなってしまえば、いくら《出産の殻》を起動されようとも大した脅威ではありません。相手にクロックがある状態であれば、《酸のスライム》のランデスは効果的ですが、《生命の終焉》はクロックすらも排除してくれるので、これをキャストできればほとんど勝ったようなものです。

 唯一の例外として、第68回で紹介した《復讐蔦》の入ったバージョンにはそこまで効きませんが、そのタイプはそこまで多くはありませんし、ローテーションによって《復讐蔦》はいなくなるので、今後の「《出産の殻》」デッキ対策として要チェックの1枚です。

 注意点としては、このカードは「追放」ではなく、「墓地に置く」なので、対戦相手のデッキに《剃刀のヒポグリフ》のような、墓地からクリーチャーを回収できるカードが入っているかどうかをきちんと確認した上で、墓地に選ぶクリーチャーを選ぶようにしましょう。

 それと、今は対「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」戦でもサイドインして試しています。《原始のタイタン》を根絶やしにできますし、《ゼンディカーの報復者》《ガイアの復讐者》や、タイミング次第では《最後のトロール、スラーン》も除去できます。
 今のところ効果的に機能しているように思えるので、《記憶殺し》と合わせて、みなさんもせひお試しください。


記憶の熟達者、ジェイス

 対コントロールデッキや、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」、「《出産の殻》」デッキ用のカードです。
 しかしサイドカードとしては役割が中途半端なので、他のカードにしてもいいでしょうね。プレミアイベントという、MO内でも比較的大きめの大会を優勝したこともあり、このデッキをコピーしている人は多いのですが、MOの結果を見ると、コピーしている人のほとんどがこの枠を《強迫》などに差し替えているようです。

 僕はプレインズウォーカーが好きですし、新環境に向けてこのカードをテストしておきたかったのでそのまま使っていますが、今のところ感触は悪くないです。4ターンほどでライブラリーアウト勝ちができるので、コントロール対決においてはかなりの強さを誇りますからね。
 しかし「イニストラード」に墓地を有効活用する手段が豊富という噂があるので、真偽のほどは、「イニストラード」のリストが全て出たあとでまたお伝えしたいと思います。


聖別されたスフィンクス

 対コントロールだけでなく、「《出産の殻》」デッキや、飛行クリーチャーの多い「白単《鍛えられた鋼》」にもサイドインしています。
 「《出産の殻》」デッキ相手に関しては、よく《幻影の像》や《ファイレクシアの変形者》でコピーされるので、ディスカード祭りのドロー合戦になります。メインボードはお互いに満足のいくまで引き切った場合、おそらくこちらが不利になりますが、サイド後だと《生命の終焉》があるので、こちらが圧倒的に有利です。どれだけ相手に引かれようとも、こちらの手札に《生命の終焉》と単体除去を大量に抱えるまで引けば負けることはないので、その辺りのメインボード戦とサイド後の違いには注意しておきましょう。


 最もポピュラーな「青黒」バージョンの解説は以上になります。お次は「青黒」の次にメジャーな「タッチ赤」バージョンを。


「青黒赤テゼレイター」

Phillip Lorren
StarCityGames.com オープントーナメント・アトランタ 9位 (2011-09-11) [MO] [ARENA]
2 《
2 《
4 《忍び寄るタール坑
3 《闇滑りの岸
2 《黒割れの崖
4 《沸騰する小湖
3 《地盤の際
2 《墨蛾の生息地

-土地(22)-

2 《呪文滑り

-クリーチャー(2)-
4 《永遠溢れの杯
2 《オパールのモックス
4 《定業
4 《感電破
2 《脆い彫像
4 《伝染病の留め金
2 《予言のプリズム
4 《転倒の磁石
3 《テゼレットの計略
2 《黒の太陽の頂点
1 《殴打頭蓋
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(36)-
1 《呪文滑り
2 《コジレックの審問
3 《瞬間凍結
2 《紅蓮地獄
1 《破滅の刃
3 《倦怠の宝珠
2 《漸増爆弾
1 《殴打頭蓋

-サイドボード(15)-

 赤を使うメリットは、《感電破》と《紅蓮地獄》のような軽量除去です。「赤単ゴブリン」のようなデッキ相手には、《紅蓮地獄》は他の何よりも強力な全体除去になりますし、《感電破》はプレインズウォーカーを除去できる点が《破滅の刃》などにはない利点ですね。

 このリストは、《伝染病の留め金》と《テゼレットの計略》を使用し、「増殖」色を強めているのも印象的です。《永遠溢れの杯》という、「増殖」と最も相性の良いカードが使えるのも残り僅かな期間しかないこともあり、ローテーション後は少し厳しいアプローチかもしれないので、「増殖」好きの方は今のうちに使い倒してしまいましょう。

 少し形は違えど、「青黒赤」バージョンはプロツアー・パリでもトップ8に残っていますし、見かけたことのある方も多いかと思われます。しかし次のバージョンはどうでしょう?


「青黒白テゼレイター」

TheDeathGod (3-1)
Standard Daily #2772669 on 09/05/2011[MO] [ARENA]
5 《
3 《
1 《平地
4 《闇滑りの岸
1 《氷河の城砦
1 《金属海の沿岸
4 《墨蛾の生息地
2 《地盤の際

-土地(21)-

3 《呪文滑り
3 《大建築家
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(8)-
2 《オパールのモックス
3 《永遠溢れの杯
4 《太陽の宝球
1 《うねりの結節
2 《急送
2 《伝染病の留め金
2 《倦怠の宝珠
2 《転倒の磁石
3 《忘却の輪
3 《テゼレットの計略
1 《伝染病エンジン
2 《黒の太陽の頂点
1 《殴打頭蓋
3 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(31)-
2 《呪詛の寄生虫
1 《大建築家
3 《宝物の魔道士
1 《真面目な身代わり
1 《急送
2 《神への捧げ物
1 《忘却の輪
3 《記憶殺し
1 《精神隷属器

-サイドボード(15)-

 先程「赤単」の《燃え上がる憤怒の祭殿》が最大のガンとお伝えしましたが、このリストは白を入れることで《忘却の輪》の採用を可能とし、その改善を図っています。
 みなさんご存じのように、《忘却の輪》はプレインズウォーカー含むほとんどのパーマネントに対処できるので、「青赤《欠片の双子》」や「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のような瞬殺系のデッキがなくなるローテーション後はもっと使われるようになるでしょう。

 このリストには入っていませんが、白を採用すれば《機を見た援軍》のような、「赤単」メタのカードも採用できます。個人的には今の「赤単」過多のメタゲームなら、ぜひとも入れておきたいカードですね。

 他にもマナ加速を《大建築家》にしているのも興味深いです。《永遠溢れの杯》があるうちは、採用すべきか疑問ではありますが、ローテーション後ならばお呼びがかかることもあるでしょう。


 さて、ここまでは比較的まともなデッキを紹介してきましたが、ここからはめずらしい形の「《ボーラスの工作員、テゼレット》」デッキをご紹介させていただきます。


「青黒白テゼレイター」

mirrormoon1ty (3-1)
Standard Daily #2803224 on 09/10/2011[MO] [ARENA]
6 《
7 《平地
2 《
4 《闇滑りの岸
4 《金属海の沿岸
2 《墨蛾の生息地

-土地(25)-


-クリーチャー(0)-
4 《太陽の宝球
4 《コジレックの審問
4 《倦怠の宝珠
3 《マイコシンスの水源
1 《胆液の水源
4 《忘却の輪
3 《機を見た援軍
1 《青の太陽の頂点
1 《白の太陽の頂点
4 《ボーラスの工作員、テゼレット
1 《エルズペス・ティレル
1 《ギデオン・ジュラ
1 《記憶の熟達者、ジェイス
1 《滞留者ヴェンセール
2 《解放された者、カーン

-呪文(35)-
3 《精神的つまづき
2 《蔑み
3 《神への捧げ物
4 《審判の日
3 《記憶殺し

-サイドボード(15)-

 このデッキは、「青赤《欠片の双子》」と「《出産の殻》」には《倦怠の宝珠》で、「赤単」系のデッキには《機を見た援軍》で、コントロール相手にはプレインズウォーカーの多さで対抗するデッキになっています。

 理論上は全てのデッキ相手に万遍なく戦えますが、こういったデッキは引きムラがすさまじく、今の時代は、いかに完璧なコントロールデッキを作り上げるのが難しいかという証明とも言えるリストになっています。ただローテーションで失うカードが《コジレックの審問》くらいなので、そういった意味で今後に期待できるアプローチではありますし、もう少しメタゲームがコントロールかビートダウンに寄れば、もっと良いリストに仕上げることができると思います。

 繰り返しになりますが、今は強いデッキの種類が多いので、コントロールデッキにとっては本当につらい時代です。ですがローテーション後は「青赤《欠片の双子》」や「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のような軸のずれたデッキが減るので、純粋なコントロールデッキも再び日の目を浴びるであろうと感じています。
 それまでは純粋なコントロールデッキで勝ちきるのは難しいかもしれませんが、そんな時は《ボーラスの工作員、テゼレット》の力を借りて、少し前のめりな構築をしてみてはいかがでしょう?


 今週の本編はここまでになりますが、いつも通り最後に「今週の一押し」を紹介してお別れしたいと思います。


「今週の一押し」~「4色コントロール」

MysticNinjaGoemon (3-1)
Standard Daily #2803154 on 09/08/2011[MO] [ARENA]
3 《平地
3 《
2 《
1 《
3 《天界の列柱
3 《忍び寄るタール坑
2 《竜髑髏の山頂
2 《水没した地下墓地
1 《氷河の城砦
4 《湿地の干潟
2 《沸騰する小湖

-土地(26)-

3 《前兆の壁
3 《真面目な身代わり
1 《聖別されたスフィンクス
2 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(9)-
2 《予言のプリズム
4 《コジレックの審問
4 《定業
4 《マナ漏出
2 《喉首狙い
2 《忘却の輪
1 《審判の日
1 《予感
1 《ソリンの復讐
2 《炬火のチャンドラ
2 《狂乱のサルカン

-呪文(25)-
4 《倦怠の宝珠
1 《破滅の刃
4 《機を見た援軍
1 《ミミックの大桶
1 《忘却の輪
1 《審判の日
1 《消耗の蒸気
2 《ボーラスの工作員、テゼレット

-サイドボード(15)-

 この方は3~4度ほど「Decks of the Week」に載っていますが、初めてこのデッキリストを見た時は激震が走りました。
 《狂乱のサルカン》の採用理由は分からず終いでしたが、《炬火のチャンドラ》は《狡猾な火花魔道士》に大量のおまけが付いたような存在なので、《極楽鳥》や《ラノワールのエルフ》の入った「《出産の殻》」デッキや、《戦隊の鷹》の入った「Caw-Blade」の多い現在のメタゲームなら、そこそこの活躍を見せてくれます。
 その他のカード選択も独創的なものばかりで、謎に包まれた禍々しいデッキですが、リストから伝わるように面白さはかなりのものです。

 4色のデッキなので、たまにこんなお茶目なハンドがきたりもしますが...


4CC 1

 上手くまわれば《前兆の壁》や《真面目な身代わり》を《狂乱のサルカン》でドラゴンにしたり、《炬火のチャンドラ》で《ソリンの復讐》をコピーする一撃必殺も狙えます。

4CC 2

 今をときめく「《出産の殻》」相手には、サイドから《倦怠の宝珠》+《ボーラスの工作員、テゼレット》を入れて、《前兆の壁》や《真面目な身代わり》を抜くプランを選択することになります。そうするとアーティファクトが10枚前後になりますが、それでもこのプランは今後にも活かせるものだと感じたので、「青黒」絡みのデッキをお使いの方にはぜひ検討してみてほしいですね。

 このリストは《狂乱のサルカン》が抜けても痛くもなんともないのですが、MysticNinjaGoemonさんの構築力を味わいたいのならば、ローテーション前の今がチャンスです! このデッキにおける《予言のプリズム》は、《太陽の宝球》などでは代用しづらいため、そういった意味でも今がチャンスですね。


 今週は以上になります。
 冒頭でもお伝えした通り、ローテーションまで残りほんの僅かな時間しかありません。思い入れのあるカードの入ったデッキを使ってもいいですし、今後を見据えて将来性のある「《出産の殻》」のようなデッキを使うのもいいでしょう。
 思い入れのあるカードは、スタンダードを去ったあとでも、一応モダンやレガシーで使うことができますが、しかしながら僕の大好きな《残酷な根本原理》のように、モダンなどでは全く声のかからない秀逸な重いカードも数多く存在するので、そんなあなたのお気に入りのカードが悲しみに包まれてしまう前に、スタンダードで思う存分に使ってあげてみてはいかがでしょうか??

 それでは、また来週ー!

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