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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第64回:王者の復権?新「Caw-Blade」分析

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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2011.07.27

第64回:王者の復権~新「Caw-Blade」分析


 こんにちはー。
 先週末は予告していたチェコ選手権に加え、フランス選手権、オーストラリア選手権、そして「Starcitygames・オープントーナメント・シアトル」やプロツアー・フィラデルフィア予選など、いつにも増して実に多くの大会が開催されました。

 残念ながらチェコ選手権のカバレージはなかったので結果は分かりませんが、その他のカバレージはばっちり掲載されています。フランス選手権のカバレージはフランス語なのですが、デッキリストはちゃんと英語で絵も付いているので安心です!

 今回は大会が多かったので、各大会の上位3名のデッキに絞って分布を見ていきましょう。


オーストラリア選手権(英語)
優勝 「青緑赤Birthing Twin」
準優勝 「白単《鍛えられた鋼》」
3位 「Caw-Go」


フランス選手権(英語、デッキリストなどは英語)
優勝 「Caw-Blade」
準優勝 「黒赤吸血鬼」
3位 「緑単エルフ」


StarCityGames・オープントーナメント・シアトル(英語)
優勝 「Caw-Blade」
準優勝 「Caw-Blade」
3位 「青赤《欠片の双子》」


プロツアー・フィラデルフィア予選 川崎(上位デッキリスト
優勝 「Caw-Blade」
準優勝 「緑単コントロール」
3位 「青赤《欠片の双子》」


 ご覧の通りひとつだけ勝ち頭と呼べるデッキがありますが、それは禁止カードの影響を最も色濃く受けたはずの「Caw-Blade」でした。

 デッキの核とも言える《石鍛冶の神秘家》と《精神を刻む者、ジェイス》を失ったにも関わらず、このデッキが勝ち続けることができた理由は、一体どこにあるのでしょうか?

 今週はそんな不死鳥のごとく蘇った「Caw-Blade」の特集です。それぞれのリストを比較していく前に、まずはデッキの特徴から見ていきましょう。


~新環境版「Caw-Blade」の長所と短所~

 「Caw-Blade」の長所として、デッキの名前にもなっている《戦隊の鷹》のおかげで対コントロール戦の勝率が高いことが挙げられます。
 今まで幾度となくお伝えしているように、「仕掛ける際のリスク」が少ないというのは、それだけで対コントロール戦で大きな武器になりますからね。

 《戦隊の鷹》だけで殴りきれるか疑問視なさる方もいらっしゃるかもしれませんが、《戦隊の鷹》のクロックは思いのほか大きい上に、《紅蓮地獄》《漸増爆弾》《審判の日》のような全体除去以外では対処しづらいので、《饗宴と飢餓の剣》などのバックアップがなくてもゲームを決めるだけの力を秘めています。
 (コンボデッキである「青赤《欠片の双子》」だけは例外ですが)基本的には対戦相手が1ターン目に《》を置いただけで有利を確信できる、これがこのデッキを選ぶ最大の理由ではないかと考えています。

 逆にこのデッキの短所は、ビートダウンデッキ相手への脆さでしょうか。
 《石鍛冶の神秘家》がいた頃は《戦争と平和の剣》《殴打頭蓋》《シルヴォクの生命杖》《迫撃鞘》を任意のタイミングでサーチできましたし、そもそも「Caw-Blade」が強過ぎたがゆえに、ビートダウン系のデッキは環境から締め出されていたため、以前ならあまり気にならない点でした。
 しかし今は「白単《鍛えられた鋼》」と「赤単」だけでも相当な使用者数がいますし、先週末の大会でも結果を残している「吸血鬼」「ボロス」「緑単エルフ」も軽視できない存在と言えます。そのため禁止適用前と比べると、ビートダウン対策をしっかりと行う必要があるでしょう。

 とりわけ、《審判の日》をメインから抜いてしまったことが大きく響いて、「白単《鍛えられた鋼》」はメインでは絶望的なまでの相性の悪さになっています。

 メインで対コントロールに強い分、サイドボードはクリーチャーデッキ用にスロットを割くのは当然と言えば当然なのですが、以前と同じ感覚でサイドボードを作っていると、ビートダウン相手に足をすくわれてしまうので注意が必要です。


 それでは、勝ち組に属しているみなさんはどのように長所を伸ばし、また、どのように弱点を補っているのでしょうか。その点にも注目しながら、リストを見ていきましょう。

Armel Primot
フランス選手権2011 優勝[MO] [ARENA]
6 《平地
2 《
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
4 《地盤の際
2 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

4 《戦隊の鷹
2 《呪文滑り
4 《ミラディンの十字軍
4 《刃砦の英雄
1 《太陽のタイタン

-クリーチャー(15)-
4 《定業
3 《呪文貫き
4 《マナ漏出
1 《剥奪
1 《乱動への突入
2 《四肢切断
1 《忘却の輪
2 《饗宴と飢餓の剣
1 《ギデオン・ジュラ

-呪文(19)-
3 《レオニンの裁き人
1 《静寂の守り手、リンヴァーラ
2 《糾弾
2 《存在の破棄
3 《機を見た援軍
3 《審判の日
1 《白の太陽の頂点

-サイドボード(15)-


 こちらは今回紹介する「Caw-Blade」の中でも比較的珍しいリストになっています。

 特徴的なのは《ミラディンの十字軍》まで採用したアグレッシブなクリーチャー陣でしょう。
 周知の事実ではありますが、《ミラディンの十字軍》は《稲妻》のような赤い除去にこそ弱いものの、一度《饗宴と飢餓の剣》が付いてしまえば一撃で8点を叩き出す、3マナ圏では最高クラスに打撃力の高いクリーチャーです。

 「赤単」系のデッキが流行っている現状では、そのデメリットは無視できないものですが、これを解消するのに一役買ってくれるのが《呪文滑り》なんです。
 このデッキが苦手としている「青赤《欠片の双子》」デッキ対策にもなりますし、様々なデッキ相手に幅広く活躍してくれます。ついでに《呪文滑り》は、2ターン目にクリーチャー→3ターン目に《饗宴と飢餓の剣》というこのデッキの「嵌めパターン」を増やす役割も担っています。まさに至れり尽くせりといった感じの、このデッキにうってつけのクリーチャーですね。

 このデッキのアグレッシブさ加減は土地の構成にまで表れています。
 続いて登場するデッキリストを見れば分かりやすいのですが、一般的なリストは《》と《平地》の割合が五分か、《》が多くなっています。
 しかしこのデッキは《平地》が6枚も入っているので、従来の「Caw-Blade」というよりも、どちらかと言えば「白ウィニー」にカウンター呪文などを足した構成と言った方がいいのかもしれません。
 相手の展開がもたつくようであればそれを見逃すことなく勝利できるでしょうし、このリストは今回紹介する中で、最も《地盤の際》を上手く使えるデッキだと言えるでしょう。

 そしてその土地の構成の影響はサイドボードにまで及んでいます。その青マナの少なさゆえに、白いカードしか入れていないのです。
 少しやりすぎな気もしますが、実際にこのデッキを使ってみると、確かに青マナの関係上、青いカードをサイドインしてもキャストできずに負けることが多かったので、このような構成も納得でした。
 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に対しては《レオニンの裁き人》では些か心許ないので、それを改善したいのであれば、《瞬間凍結》と入れ替えてもいいでしょう。

 1枚だけ入った《白の太陽の頂点》は対コントロール用のサイドボードなんですが、驚くべきことに、Armelさんはこれ以外に対コントロール用のカードを取っていません。つまり対コントロール戦は、それほどまでに相性がいいという自信の表れと言えますね。

 このリストは青マナの少なさも相まって、他のバージョンよりも「青赤《欠片の双子》」デッキに弱くなっていますが、その代償に手に入れた《ミラディンの十字軍》のおかげで緑系のデッキには強くなっていて、緑デッキの代表格である「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」には他のリストよりも相性が良いと思います。
 《刃の接合者》と比べると《稲妻》などに弱いので微妙に見えるかもしれませんが、結局のところ《稲妻》が通ってしまった場合、《刃の接合者》はただの1/1でしかないので、《饗宴と飢餓の剣》がなければ無に等しい存在となってしまいます。そのため、生き残った場合のリターンが大きい《ミラディンの十字軍》を選ぶ選択肢は十分にありえるでしょう。特に「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」が多い日本では良い選択だと思います。

Edgar Flores
StarCityGames・オープントーナメント・シアトル 優勝[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
4 《地盤の際
3 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

4 《戦隊の鷹
3 《呪文滑り

-クリーチャー(7)-
4 《定業
3 《呪文貫き
4 《マナ漏出
3 《四肢切断
3 《乱動への突入
2 《機を見た援軍
3 《饗宴と飢餓の剣
3 《ジェイス・ベレレン
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(27)-
3 《精神的つまづき
2 《漸増爆弾
2 《存在の破棄
2 《瞬間凍結
1 《否認
1 《剥奪
1 《四肢切断
1 《機を見た援軍
2 《審判の日

-サイドボード(15)-


 禁止適用前から「Caw-Blade」マスターとして名を馳せていたEdgarさんなんですが、新環境になってもそのふたつ名が変わることはありませんでした。

 このリストの特徴は、メインから「青赤《欠片の双子》」を強烈にメタっていることでしょう。《呪文滑り》《乱動への突入》《四肢切断》を3枚ずつ投入することで、相性の改善を図っています。
 さらに《呪文滑り》と《饗宴と飢餓の剣》が3枚ずつ採用されているので、前述の「嵌めパターン」に持ち込める確率も僅かではありますが上がっています。

 そしてこのデッキで最も目を引くのは、メインから投入された《機を見た援軍》でしょう。
 このカードはただ単にビートダウンに強いだけではなく、《四肢切断》のペイライフを支払いやすくするという潤滑油的な効果もあります。個人的には確定でライフゲインができるカードを入れないのであれば、《四肢切断》はメインは2枚が限界だと思っていますが、《機を見た援軍》はその問題を見事に解決してくれるわけなんですね。

 サイドボードも「青赤《欠片の双子》」を強く意識していて、追加の確定カウンターに加え、《精神的つまづき》までをも採用しているのは興味深いです。
 これはひとえに、「青赤《欠片の双子》」デッキの《払拭》を意識してのことでしょう。ここまですると、「青赤《欠片の双子》」デッキにもかなり善戦できると思います。

 しかし主なクロックが《戦隊の鷹》だけになってしまっているので、この形だと「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に対しては少し厳しいかもしれません。
 アメリカやヨーロッパは「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」があまりいないようなので、クリーチャー選択もメタゲームに合わせてチョイスすべきだという良い見本だと思います。

 そんなわけで、「青赤《欠片の双子》」やビートダウンを意識するのならEdgarさんのリストは非常に優秀だと思いますが、もしも「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」が多そうなメタゲームなら、サイドボードに《瞬間凍結》を増やすといった工夫をするといいでしょう。

エンドウ リョウタ
プロツアー・フィラデルフィア予選 川崎 / 優勝[MO] [ARENA]
4《平地
4 《
4 《天界の列柱
4 《金属海の沿岸
4 《氷河の城砦
4 《地盤の際
3 《墨蛾の生息地

-土地(27)-

4《戦隊の鷹
4 《刃の接合者
4 《刃砦の英雄

-クリーチャー(12)-
4《定業
3 《呪文貫き
4 《マナ漏出
3 《忘却の輪
2 《四肢切断
2 《饗宴と飢餓の剣
2 《エルズペス・ティレル
1 《ギデオン・ジュラ

-呪文(21)-
3《失脚
4 《瞬間凍結
2 《存在の破棄
3 《機を見た援軍
3 《審判の日

-サイドボード(15)-


 最後に紹介するのは川崎でのプロツアー予選を制したエンドウさんのリストです。

 比較的バランスよく構築されていると思いますが、対「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」と「白単《鍛えられた鋼》」を特に意識しているように感じました。

 《忘却の輪》のおかげで《鍛えられた鋼》にも触ることができますし、《エルズペス・ティレル》も相手に飛行クリーチャーさえいなければかなりの強さです。
 「赤単」「ボロス」「吸血鬼」のような少数の小粒クリーチャー+火力で攻めてくるデッキには《機を見た援軍》の方が効果的なのですが、「白単《鍛えられた鋼》」のように火力のないビートダウンデッキには、少し遅くとも継続的にトークンが出せる《エルズペス・ティレル》の方がいいでしょう。

 「白単《鍛えられた鋼》」はやはり相当に強いデッキなので、しっかりと対策をしたいのであれば、遠藤さんのように《忘却の輪》を入れたり、サイドボードに《存在の破棄》や《漸増爆弾》を取るようにしましょう。


 今週は試験週間ということもあって、短めで申し訳ないのですがこの辺でお別れしたいと思います。最後にプロツアー予選で気になった一押しデッキを紹介させてもらいます。


「今週の一押し」~「緑単」
オオネダ ヨシヒロ
プロツアー・フィラデルフィア予選 川崎 / 準優勝[MO] [ARENA]
20《
2 《地盤の際

-土地(22)-

4《極楽鳥
4 《草茂る胸壁
4 《ダングローブの長老
2 《強情なベイロス
2 《酸のスライム
1 《原始のタイタン

-クリーチャー(17)-
4《耕作
4 《内にいる獣
2 《圧倒する暴走
4 《緑の太陽の頂点
4 《原初の狩人、ガラク
3 《解放された者、カーン

-呪文(21)-
2《呪文滑り
2 《強情なベイロス
2 《酸のスライム
2 《外科的摘出
4 《自然の要求
3 《忍び寄る腐食

-サイドボード(15)-

 久しぶりに見た「緑単色」のコントロールデッキです。と言っても2ターン目に《ダングローブの長老》を出してビートダウンしたりもできますし、《原初の狩人、ガラク》や《解放された者、カーン》で長期戦を挑んだりもできます。

 《圧倒する暴走》だけ《真面目な身代わり》にしたいなと思いましたが、《ダングローブの長老》とのコンボはすさまじい破壊力なので、まずはそのままで試してみたいですね。

 決勝では惜しくもエンドウさんの操る「Caw-Blade」に敗れてはしまいましたが、82人もの参加者が集ったプロツアー予選で堂々の準優勝を果たしたこのデッキ。かなり珍しくて面白そうなデッキなので、みなさんもぜひお試しください!


 申し訳ありませんが、来週は大学の試験があるのでお休みさせていただきます。再来週にはMOに基本セット2012も入っているはずなので、MOの結果にも注目していきたいと思っています!

 それでは、また再来週~!

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