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攻撃フェイズのデベロップ
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攻撃フェイズのデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年3月8日
今回はグルール特集ですから、攻撃とブロックというマジックの最も基本的なやりとりについて話すことは当然です。私は意味を成さない長文と本能のままの図を書こうと簡単に考えていたんですが、ギルドの手紙がまさにそれをやってしまっていますし、他の優秀なライターみんなと同じく、今は優しい顔をしている編集者に義務を果たせと制裁されることを恐れています。なので代わりに私は戦闘フェイズの複雑さについて、グルールのデベロップにどう影響を与えたかに注目して議論しようと思います。
マジックのデベロッパーには、長いコントロールのゲームやタイトなテンポのダメージレースを楽しむ類のプレイヤーが最も多いと思われますが、我々の中にはよくビーストを放ってとても上手く叩き付ける人物がいたりします。ここ何年か、我々はマジックの主な行動の舞台をプレイヤーの手札ではなく戦場にするために働いてきました。つまり、戦場でのやりとりにさらに意味を持たせるということです。例えばプレインズウォーカーを攻撃できるようにしたことで、ほとんどのデッキにそれらへの攻撃が可能なクリーチャーを入れる多大な必要性が生じました。そして、それは戦場にさらなるやりとりをもたらしたのです。
しかしながら、舞台を戦場に移すことでマジックの面白さが損なわれてはならないと私は信じています。プレイヤーが手札だけでなく戦場でも有意義なやりとりができ、その上で、楽しくダイナミックで健全なゲームを作るのがデベロップの使命です。単純さという考え方と戦略的に深いゲームプレイとを区別することは重要だと考えています。新世界秩序の取り組みの一つに、ゲームの最も基礎の部分はもっと単純にするが、ゲーム全体の戦略性の深さは増加させる、というものがあります。私は、その取り組みを達成するために、以前からマジックに存在していた様々な道具をより思慮深い方法で利用しているのだと信じています。
美しい非対称性
リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldが作り上げたオリジナル・バージョンのマジックの最も実りある事柄の一つは、パワーとタフネスの(それだけでなく、攻撃時のパワーと防御時のパワーも)価値が違うことです。それは今では明らかですが、マジックでそうなるという保証があるはずもなかったのです。マジックと前後して作られた多くのゲームは戦闘のために1つの数値を用いていました。その選択によって確かにマジックはいくらか複雑になりましたが、しかし多くの面白いゲームプレイを手に入れることができました。さらにそれはデベロップがカードのパワーレベルを適正にするための微調整の余地を与え、マジックのプレイをより面白いものにします。
では試しに、パワーとタフネスが同じクリーチャーだけでプレイしてみましょう。あなたが持っているのは2体の2/2バニラ、そして私が持っているのは4/4バニラです。あなたは私を攻撃することはできず、私は攻撃できてあなたのクリーチャー両方と相打ちできます(あなたが相打ちをお望みならば、ですが)。ではこれらのクリーチャーの数字が均一ではない選択肢を見てみましょう。2/2のうち1体を2/3にすれば、私の大きなクリーチャーは今やあなたのクリーチャー1体としか相打ちできず、その取引は私にとって無意味になってしまいます。しかしながら私のクリーチャーが3/5ならば、コンバット・トリックが出しゃばってこない限り私はあなたのクリーチャーを通り抜けて自由に攻撃できます。私のクリーチャーを4/3にしてもパワーに変化はありませんが、もしあなたが3/1を持っているならば相打ちにするでしょう。デベロップは、インスタントが1枚もなかったとしてもゲームプレイに様々な変化や決定を生み出せるよう、豊富な数の異なったパワーとタフネスの組み合わせを確保します。同時に、我々は、クリーチャーが戦闘で死にやすいか、生き残りやすいか、もしくは他のクリーチャーと相討ちするのが有利か、という方向性を踏まえてクリーチャーのパワーやタフネスを増減させ、クリーチャー個々の強さを調整することができるようになります。
マジックのセットがデザインからデベロップへと引き継がれるとき、デザインはコモンのクリーチャーを個々の規模ではリミテッドのバランスがよく取れた状態にしていますが、私が上記で検討したような単純なやりとりを考慮せず、そのセットのメインテーマに焦点を当てるために偏っている傾向にあります。しかし、それでいいのです。デザインはリミテッドと構築でどうプレイするべきかの大胆で斬新なビジョンを作り出すもので、そのビジョンの実現と、完成されたマジックのセットに期待されているものをどうやって並べるかを考え出すのはデベロップの責任です。
デベロップの最初の仕事は、実際にリミテッドでセットを試してみて、ダイナミックな相互作用で満ちた環境を作ることであり、その仕事の多くは、できるだけ多くのゲーム・プレイを与えるようにパワーやタフネスを分散させるという、一見するとつまらなさそうな作業です。もしセットの全ての強力なクリーチャーが単に《灰色熊》や《丘巨人》に能力がついたものなら、マジックはとても早く新鮮さを失ってしまうでしょう。様々なサイズやマナカーブの様々な場所に強力なクリーチャーを確実に出現させることは、より面白い戦闘の決断とともにダイナミックな環境を作ることを助けます。少なくともリミテッドにおいては、このデベロップの行動はそのセットの文字数の削減と、重要なパワーとタフネスを組み合わせたクリーチャーのやり取りを加える方法を考え出します。デザインファイルが《柱平原の雄牛》や《角海亀》、《地下墓地のナメクジ》のようなバニラでいっぱいになることは稀ですが、それらはリミテッドを繋ぎ止める接着剤の役目を果たします。デベロップはこれらがいつ、どこで必要なのかを把握しようとし、大抵の場合、ある色のマナカーブの必要不可欠な隙間を埋めるためにそれらをセットに加えます。
取引のコツ
ギルド門侵犯はマジックにおいてパワーとタフネスが非対称であることの研究報告です。セットのメカニズムのうち、湧血と進化はその非対称なパワーとタフネスがもたらすゲームプレイに極度に依存しています。見ていて興味深いのは人々が《神出鬼没の混成体》が進化デッキにおいていかに強力かを理解することです。ただブロックされないだけではなく、0/4というサイズのせいで恐らくあなたの他のクリーチャー全てを進化させ、これから出てくるあなたのクリーチャー全てによって進化するでしょう。進化デッキはまた、同じクリーチャーを多く入れるのではなく、多様なパワーとタフネスで頻繁に進化を起こさせる方向に誘導します。
とは言え、今回はシミック特集ではないので、目の前のギルド、グルールに戻りましょう。そしてグルールがしたいことは何ですか? グルールパンチです!
グルールはそのクリーチャーに常に攻撃することを求めています。攻撃しなければ、あなたは負けてしまうでしょう。攻撃しなければ、対戦相手は足場を固めてしまいます。攻撃しなければ、あなたは足元の対戦相手を叩き潰すこともできないのです。攻撃するか、戦線離脱するかです。しかしまあとにかく話を元に戻すと、グルールの働きを作る一つの鍵は、グルールでは攻撃するほうが簡単で、ブロックするほうが難しいことです。湧血という能力はそういう性質を持っています。
湧血クリーチャーは全て異なるパワーとタフネスを持ち、ブロックするかどうか決定することを難しくするとともに、戦場でのクリーチャーとしての強さや、手札でのコンバット・トリックとしての強さに幅を持たせています。もし対戦相手がプレイするのが+2/+2や+3/+3だとわかっているなら、どうすれば最適なブロックになるかの決断が簡単にできますが、湧血はそれらの決断を簡単にさせないようにデベロップされました。《焦土歩き》は、この二面性の申し子と言えるかもしれません。4マナ5/1が戦場で役に立つことや+5/+1のコンバットトリックが早い順目でピックされることは稀ですが、この2つが同じカードに組み合わさっていることで状況はまったく変わります。全ての湧血クリーチャーはどちらかの形でプレイできるので、あなたが《殺戮角》と《くすぶり獣》でアタックしたとき、対戦相手はそれら全てを少なくとも意識しなければならなくなります。複数のクリーチャーでブロックした場合に酷い目に遭わせることを意図したものもありますし、1体だけの大型クリーチャーでブロックした場合に酷い目に遭わせるものもあります。あるいは、ブロックしなかった場合の被害が最大になるようなものもあります。このメカニズムはグルールが真っ向から攻撃するギルドだということを強調しつつ、他のギルドとの面白いゲームプレイ上のやりとりをもたらすのです。
ダイナミックな防御
グルールは攻撃こそが全てですが、しかし我々はグルールがフォーマットを支配することを防ぐため、それを阻むいくつかの方法を入れました。結局、一方的に殴る環境はとても楽しくなかったのです。グルールの衝動性と攻撃性は最大の武器ですが、しかしそれは対戦相手にグルールを破るための最高の開幕を与えるものでもあります。グルールは打ち消し呪文をかわせるかもしれない反面、湧血に対応したあらゆる除去が致命的で、さらに我々はグルールの脅威に対してはっきりと噛み合ういくつかの要素を配置する手段を講じました。まず第1に、リミテッドで最も分かりやすいのは《強打》です。それはほとんど湧血に対抗するためにあると言ってよいでしょう。《強打》はそれ単独でも一般的にリミテッドで強力なカードですが、ギルド門侵犯のコンバット・トリックの密度とグルールの常軌を逸した戦略のためにさらに重要性を増しています。グルール最大の弱点は、戦闘で勝つために大型クリーチャーだけでなくコンバット・トリックに頼ることにあって、湧血に対応して除去を放てば、2対1交換になるでしょう。強力なカードのドローやテンポの喪失の回避なしでは、グルールは他の色よりもそれからの復帰が難しいでしょう。
第2のカードは《霊気化》です。とはいえ、これはアンコモンで《強打》よりも頻繁に現れませんが、これの利点はブロックされたクリーチャーだけでなく、ブロックされていないクリーチャーも同じように無効化できる点です。青いプレイヤーが、グルールのプレイヤーがゲームを決めうる《焦土歩き》や《ザル=ターの豚》への完璧な機会を提示したときは、そのグルールのプレイヤーはそれを撃つかどうか、そして《霊気化》でどれだけ遅れを取るかを考えなければならないでしょう。
構築では、《ゴーア族の暴行者》のような湧血カードは《スラーグ牙》や《ボロスの反攻者》、《修復の天使》といった強力なブロック・クリーチャーに対する超効果的な回答となる点で優れていますが、同様に《アゾリウスの魔除け》のようなカードや、しばしば《灼熱の槍》にさえも弱いのです。我々の楽しみの一つは、切り札であると同時に異なる戦略とカードが切り札となるカードを作ることです。これはフォーマットとしてスタンダードが動き続け、毎週プレイヤーのために新しさと面白さを保ち続ける一つの事柄です。
展望
湧血はギルド門侵犯のリミテッドの分野で驚くほどの働きをしますが、しかしこれにはもっと大きなことが運命付けられています。ドラゴンの迷路が発売されたあとのリミテッドで、ラヴニカへの回帰のおなじみのカードと組み合わせて湧血のより楽しい相互作用を見つけてくれることを望んでいます。《剣術の名手》に《焦土歩き》を湧血させて3ターン目に相手のライフに大ダメージを与えたり、《フェアリーの騙し屋》で《殺戮角》を戻して戦場での有用性を長続きさせて手札で戦闘のアシストの準備をしたりするのです。さらに、ドラゴンの迷路で加えられる素晴らしいカードのことがまだ考慮されていないのです。私はギルド門侵犯のリミテッドを楽しむのと同じぐらい、皆さんが3つ揃ったブロックを楽しめるようになることを心待ちにしています。
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