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ケージマッチ

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ケージマッチ

Zac Hill / Translated by Shin'ichiro Tachibana / TSV by YONEMURA "Pao" Kaoru

2012年1月27日


 やぁ、みんな。闇の隆盛発売週へようこそ。

 既にご存知のことだと思うが、――もしそうでなくとも、めでたいことに明日はあの降り注ぐ機関銃の弾のごとく表示されていたバナー広告が取りはずされる――闇の隆盛プレリリースだ。ぜひ時間をさいて参加して欲しい。先週言ったことだが、DKAは私が開発とデザインの両方のチームに参加した初めてのセットだ。このことは私を虜にし、子供のように夢中にさせた(見て、ママ!手放し運転だよ!) 私はみせびらかしたくて既にうずうずしている。私は、意味のある方法でブロックを前進させているまさにその間に、イニストラードをあれだけすばらしいものにしたのと同じ要素が詰まった製品を送り出せると、自信を持って言える。私はそれを誇りに思っている。そして私は、あなたが週末の数時間をさいてくれて、それらを試してくれることを心から望んでいる。

 さて、もしあなたがプレリリースに行くのであれば準備して行くとよいだろう。ここに並べ替え可能なスポイラーがあるのでチェックしてくれ。ここを見れば、この週末に見るであろうカードたち、あなたがプレイする際に必要なトリック、炸裂することを祈り望まれる爆弾が準備できる。

 本日取り上げたいカードはプレリリースではおそらくお目にかからないカードだ。それはほとんど一般的なリミテッドにおいては何もしない。攻撃もブロックもできない。;そして、もしデッキ構築をするために新しくてホットな爆弾を探すためにスポイラーを見まわしているのなら、それに気づきさえしないかもしれない。にもかかわらず、それはマジックのネット界隈を賑やかせた。また、それを印刷することは、過去数年にわたって徐々に根を下ろしている開発哲学の変化を示している。なぜそれが印刷されたのか、何を遂行するように意図されたのか、またその役割がどのように多くの異なるフォーマットにわたって変化をもたらすのかについてお話したい。

 そのカードとは《墓掘りの檻》だ。

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ぶっつぶす!

 これらのカードを思い出すかもしれない:

 あるいは、思い出さないかもしれない。これらはスタンダードで使われるような強いカードではないし、ブロック構築でも使われることは稀、フォーマット全体を見てもほとんど使われていない。しかしながら、それらを思い出せないとしても、あなたが思い出せうる少数の人々だったとしても、以下のこいつらのことは思い出せるだろう。

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 もちろん、こいつらのことは覚えている。

 デベロップの仕事の本質的な部分は(隠喩的な意味で)大災害を防ぐことだ。私はここ(リンク先は英語)で長時間にわたって、デベロップの役割がゲームのバランスを取ることから楽しいゲームを保証することへとシフトしたということについて話した。それが事実である一方、我々はよく確認して壊れたカードを作らないために多くの時間を費やす。フォーマットが壊れたとき、セットとあなたが交わしたクールな約束のすべて――可能性、新発見、潜在能力――が無効になる。なぜなら単一の戦略がそれらすべてを制圧してしまうからだ。それと同時に、毎週のように変わり続ける自然なメタゲームの変遷が停滞する。なぜなら、様々な競技的な戦略が、問題となる単一の戦略へと取って代わられてしまうからだ。さて、私たちは、恐らくある時点においては「最強のデッキ」が存在しうるということを理解している。だがそれ自体は問題ではない。問題になるのは、最強のデッキが最強のデッキとして君臨し続けるとき――すなわち他の何者もそれを倒せないときだ。


核への投入》 | イラスト Whit Brachna

 もしあなたがマジックの成長の軌跡を見ていたなら、幾度となくこの壊れた環境がプレイヤーを追い立てて行ったのを見たことだろう。我々はスタンダードという環境が停滞するとき、さまざまなものを失っているのだ。

 さて、私たちはそれに対処するための道具を常に持っていた。最近変わってきているのは、私たちがそれらの道具を展開させることを、いつ決めるかということだ。

 これらのカードを見てくれ:

 これらのカードの共通点はなにか?

 これらのカードは、どれも問題解決のために作られたものだ。《サーボの網》は《リシャーダの港》を倒すために設計された。《戦争の報い、禍汰奇》は親和を対象に。《大貂皮鹿》はフェアリーを殺すため。《強情なベイロス》は ジャンドを懲らしめるためだ。これらのカードが印刷されたことはマジックにとって良かった、そしてこれらをセットに入れたことはそれらのカードのデベロッパーの手柄だ。しかしながら、問題はそれらが遅すぎたということだ。

 これは必ずしも誰かの過ちということではない。例えばエリック・ラウアー/Erik Lauerは可能ならば最初のセットにベイロスを入れるつもりだったことを私は知っている。問題は個人ではなく方法論だ。実際の世界で特定の問題を識別することができる時には、解法を展開するまでに1年近く待たなければならなくなるだろう。それはあなたの打率は高いが飛距離は出ないということを意味する。問題となるカードは、いろんな意味で既にダメージを与えてしまっているということなのだ。

 《核への投入》と《忍び寄る腐食》に話を戻そう。


忍び寄る腐食》 イラスト Ryan Pancoast

 私たちがやり始めたものとは、その戦略の元となるセットからなるべく近い時系列で"対策カード"を仕込むことだ。これを開始したのにはいくつもの理由がある。もっとも重要なことは、かつてに比べ、メタゲームが進展し、成熟し、よどむ速度が速くなっているということだ。プレミア・イベントは毎週末開催され、ほぼ同水準でグランプリが開催され、過去に比べ、より短い間隔で同じフォーマットのイベントが繰り返される。これが何を意味するかというと、一昔前は「古くなった」といわれるのに3か月かかっていたものが、今や2週間ほどとなってしまった。その結果、1年後にメタゲームのトレンドに対応しても問題解決にはならない。もはやゆっくりやるだけの十分な時間はない。加えて、マジックにおいて大きく欲求不満に感じられることの一つは、その戦略に対してなす術がないと理解することだとわかった。強力で直接的な対策を直近におくことは、プレイヤーに見つけるべき解法を与えることなのだ。

 こうすることによって起こる不都合はあるだろうか?もちろん、それはあるだろう。私たちの内部でプレイテストをすることは支配的な戦略の識別にまあまあ優れてはいるが、それは完璧ではない。また、(たとえば)イニストラードが開発されているとき、われわれは(たとえば)闇の隆盛が最終的にどういうものになるのかはわからない。なので、われわれは真実でないかもしれない、いくつかの予測を作らないければならなかった。そのために、思い返せば全く必要のないような対策カード(《核への投入》や《忍び寄る腐食》のような)をデザインしてしまうこともあった。また、《トンネルのイグナス》、《レオニンの裁き人》、《幽霊街》のような、必要であるというほどは有効ではないカードをデザインすることもあった。しかしながら、結局私たちは、この計画の大部分は有効に働いていると信じている。それはプレイヤーに選択肢を与えることだ。それが不完全な選択肢だとしても、選択肢が全くないことに比べればはるかによいのだ。――もし我々が蒔いた種が芽吹かなければ、必要ならばわれわれには古くて、派手で、暴力的な取れる手段があるのだ。

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 多くのプレイヤーたちが、すごいことを始める機会を得る前にその可能性の芽を摘もうとしているのではないかと心配をする。それは非常に正当な懸念だ。しかしながら私たちは、通常、デッキにそのような狭い対策カードを含むことは、開かれた環境においてかなり厳しい障害になるものだと考えた。その最悪のシナリオを想定するのは簡単だ――彼らが対策カードを引いてあなたはそれにコテンパにされる――かもしれないが、それ以上に対策にならないマッチアップでその対策カードを引くと仮想的に手札は6枚になる。対戦相手がマリガンを強いられたならあなたはおそらく勝つだろうということについて考える――大抵は複数回――毎ゲーム。死に体である対策カードを引いたときに何が起こったことになるか:それは実際上、マリガンだ。つまり、大抵この種のカードはそれらが目的としたような直線的なデッキにだけしか役に立たないということになる。

わかったか、

 これらは《墓掘りの檻》に帰結する。

 何度か言ったように《墓掘りの檻》は対策カードだが、何を対策してるのかはあまり明確ではない。

その主たるものはこの2つだ:

 殻デッキによる制圧は、実際に現実世界の中で始まっていないけれが、Magic Onlineや、現実でのガンスリンガーの経験がそのデッキは完全に固まっているように思わせた。それは我々が心配していた事態よりはましだと言って間違いない。しかし、私たちが学習したもののうちの1つは、私たちは最悪のシナリオを想定しなければならないということだ。デザイナーやデベロッパーにとって、間違っているということを理解し、自分のゲームの構造そのものを否定するということは難しいことだ。私たちは仕事を完璧だと思いたいし、また正しいと思いたい。だが、そうはいかない。そして、そんなときにはその後始末をしなくてはならない。

 我々が闇の隆盛のデベロップを行なっているとき、まだ新たなるファイレクシアは発売されていなかった。内部ではイニストラードまでは殻デッキはFFLを制圧していなかった、しかし我々が何かを見逃していたと想像しえる。考えてみると、殻はそれが印刷された瞬間から制圧的だったのかもしれない。もしそれが真実だったならば、環境が悪かったのだろう。プレイヤーは毎ターンライブラリーを持ち上げカードを捜し、毎回ライブラリーの中から最適解をチューターしてくるだろう。《幻影の像》や《ファイレクシアの変形者》のような複製は比較的簡単にゲーム中の毎ターン《酸のスライム》で土地を吹き飛ばせるし (《霜のタイタン》はスライムや殻と相性が非常にいい) 、多くの剣が振り回され、殻で生け贄に捧げられ、ガラクサーチで1マナ加速することによりそれをとても速くはじめることが保証される。加えて不死のメカニズムは明らかに殻と相乗効果を織りなす。総合すると、現実での環境が、内部での環境と同じになり、それについて対応をしなけれあならないことがあきらかになった。

 別の内部での大きな問題はソーラーフレアのパワーだった。これらのデッキは実世界でも表面化していて、既にその存在がテンポ型のアグロデッキを環境から追いやっていた。今もなお予想される最悪のシナリオは続いている。我々はもっとも競技的なプレイヤーが既にタイタンにうんざりしている中で、リリアナと《禁忌の錬金術》のコンボがタイタンの超高速召喚を容易にさせていることを知っている。その上、前のブロックにいた《核の占い師、ジン=ギタクシアス》のようなカードのせいでより簡単にリアニメートすることができるようになったら、ゲームと言える様な状況になる前に終わるゲームが頻繁に起こっていただろう。―特に闇の隆盛で印刷された《信仰無き物あさり》を使って。檻は、そのようなデッキの肝であるリアニメイトを殺し、デッキを安定させる2番目のプランであるリリアナ+フラッシュバック/《瞬唱の魔道士》エンジンも攻撃する。

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 《墓掘りの檻》は 明確にこれら2つの戦略を追い出すためにデザインされたもので、派手で、明瞭で、有効だ。結局のところ、それらの戦略(少なくとも環境のデベロップのこの時点では)に対する対策が不必要である可能性はあった。しかし、私たちがこれを投入することを決定して、私は喜んでいるし。また、私は再び喜んでそれをするだろう。

エターナル・ラブ

 もちろん、われわれは直ちにこのカードの意図がスタンダードをはるかに越えて影響を及ぼすことを認識した。私は檻について多くのコメントを頂戴した。私たちはこれを予想したのか?このカードがどれだけ大きなインパクトを与えるのを理解しているのか?といったものだ。

 答えは:もちろんわかっていた!

 改めて、明確にしておきたい。このカードはジョイラの絶え間ない《修繕》による礼儀知らずな《荒廃鋼の巨像》のライブラリーからの出現をを妨げるために作成されたわけではない。このカードはストームデッキの"極悪な"《ヨーグモスの意志》によるサポートを妨げるために作成されたわけでもない。そして、このカードは《エメリアの盾、イオナ》や《核の占い師、ジン=ギタクシアス》そのままにして釣らせないとか、戦慄の《ゴルガリの墓トロール》などの復活を妨げるために作成されたわけでもない。しかし、これにはそれらの効果があるし、その大部分に私は満足している。

 ローテーションしないフォーマットの危険因子の一つは、環境を揺るがすようなカードが導入されないと、必然として停滞するということだ。これは今、現在フォーマットが停滞していると言っているわけではない。それはもっと数字的な問題なのだ。プレイできるカードのプールがより大きくなっても、その世界で実際にプレイされるカードはほとんど増えない―あなたが挑戦してみるまで。

 間違いなく《墓掘りの檻》は挑戦を意味する。

 ヴィンテージやレガシーで引き起こされる影響は非常に大きい。そこには少なくとも現在の形では全戦略において檻を倒すことができないものが存在する(同様に、現在の形では全戦略において倒すことができないもの――例えば《虚空の力線》が存在する)。もちろんそれは檻を唱えることを主体にする必要があるが、そうすることに対する恩恵が明確に存在する。恩恵にそれだけの価値がある場合、檻を唱えたプレイヤーはマッチに勝利する。逆に恩恵にそれだけの価値がない場合、檻を唱えたプレイヤーはマッチに敗北する。これによってプレイスタイルが潮の満ち引きのように自然にローテーションするようになり、それはマジック全体にとって良いことだと感じている。この振り子効果はローテーションしないフォーマットにとって良いことだ。なぜなら、新しいカードが導入された直後でなくてもゲームを楽しみ続けることができる―フォーマットは対策の密度に基づいて進展するからだ。


墓掘りの檻》 イラスト Daniel Ljunggren

 このカードの導入によって何が引き起こされるか?...、それは時間を置いて観察する。

 エターナルプレイヤーに新しいセットに興奮させる理由を与えることが重要だ。新鮮で、新しい、多様性のあるエターナルフォーマットが重要だ。しかし、それらのフォーマットはスタンダードよりはるかに大きなカードプールからカードを引くようになるので、並大抵のパワーレベルのカードではエターナルにスタンダードのカードを単体として入れることはできない。そのため《クァーサルの群れ魔道士》、《アメジストのとげ》、そして今回の《墓掘りの檻》といったカードを印刷してスタンダードを危険に追いやることなくインパクトを与えるのだ。そうしなければ、今日のヴィンテージやレガシーやモダン環境がそのまま5年後にも残ることになるか、もしくは環境の進展ごとに上から順に次々と禁止カードを設定するかだ。檻のようなカードを印刷することは先の2つの方法に比べ、ましな解決法だろう。

ヘータレード

 ともかく、95%以上のゲームに影響しない1マナアーティファクトについて、非常にたくさんの言葉を書いた。もし、檻やここ最近の対策カードのデザインをどのように決めているかについてご質問があれば、お気軽にTwitterや後述のリンクからメールを送ってれ。私はマーク・ローズウォーターと同じように、みなさんからのメールを全部読む。みんなが感じていることを教えてくれないと、私にはそれを知る一番の方法がないんだ!

 この週末のプレリリースを楽しんでくれ。

 それでは、また。

 Zac

闇の隆盛 好評発売中!
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