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プレインズウォーカーのための『リアリティ・フラクチャー』案内

2026年8月28日
我々がよく知る多元宇宙が危機に瀕しています。プレインズウォーカーにして精神魔道士でもあるジェイス・ベレレンが、現実を書き換えようとしているのです――自身の思い描く理想の形へと。『リアリティ・フラクチャー』は彼の「模倣宇宙」へと我々を連れ出し、彼の計画とねじれた過去に対峙させ、そしてマジックを永遠に変えることになるでしょう。すべてはこの時へと続いていたのです――2026年8月31日(訳注:日本時間2026年9月1日)、DailyMTGおよびThe Magic Story Podcastにて『リアリティ・フラクチャー』の物語が幕を開けます。
ですが模倣宇宙とは何なのでしょうか? ヘクスヘイヴン大学とは? そして長年に渡って多元宇宙を救うべく尽力してきたジェイス・ベレレンは、なぜ悪玉へと転じてしまったのでしょうか? 『リアリティ・フラクチャー』はマジックの物語において極めて重要な局面となります。皆さんに予習して頂くために、この「案内」をまとめました。幾つかの疑問点が今日解消されるでしょう。残りについては? ぜひ実際のストーリーを読んで確かめてください。
『リアリティ・フラクチャー』の物語は8月31日(日本時間9月1日)から公開です。『リアリティ・フラクチャー』は2026年10月2日に発売予定です。お近くのゲーム店やAmazon、楽天ブックス、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。
プレインズウォーカーにとって、世界から世界へと旅するというのは決して珍しいことじゃない。新たな次元に足を踏み入れる時の高揚感は、決して消えることはない。だが別の現実へと足を踏み入れるという体験は稀だ。ほとんど前例はないと言ってもいいだろう。
(ここは、塔の中に無数に存在する記憶の牢獄のひとつ。そこに、自身に対して正直なジェイスの一面がいます。彼は空想上の廃墟の中、ギルドパクト庁舎にあるかつての自身の聖域に佇んでいます)
ジェイス・ベレレンの大計画
俺は多元宇宙を守ると誓った。
そして何度となくそうしてきた。けれど時が経つにつれ、残虐な悪党や破滅的な災厄に立ち向かう中で、俺たちにひとつの考えが生まれた。ファイレクシアの全多元宇宙侵略が俺たちに残した傷跡から発想を得た、ある仮説だった。もし、あいつらのような怪物がそもそも存在しなかったとしたら? 誰も苦しむことのない、友を失うこともない、意に反して忌まわしい怪物へと作り変えられることもない、そんな多元宇宙があるとしたら?
ここにエルドラージはいない。その汚染が大地や魂に触れることはない。ファイレクシア人もいない。俺たちの身体は俺たちだけのものだ。ボーラスもいない。俺たちの運命を決めるのは一体の暴君じゃなく、慈悲深い思索者だ。
崇高な理念から始まったそれは、悪夢へと転じた。俺たちの最初の計画は破綻し、ジェイスは瞑想領土にて壊れてしまった。けれどその一部は、俺のような一部は残った。あいつは瞑想領土の本質を用いて、砕け散った自身の要素を再構築した。だけれど残っていたのは、切実な必要性だった。多元宇宙を修復するのではなく、より良いものへ作り変えるというような。
瞑想領土から、俺たちは新たな現実の構築に着手した。必要な変数を幾度となく、念入りに計算し直した。この新たな多元宇宙は完成間近だが、状態は不安定だ。そして俺がとある事実に気づいた時には、もう手遅れだった――この未来像は、俺たちの性質の中でも最悪の部分によって歪められていた。残酷で、正しくなんてなかった。ただの模倣だった。俺たちが精魂込めて作り上げる現実は、そこに至るまでに破滅させてしまう命や心を犠牲にする価値なんてないものだった。
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| アート:Serena Malyon |
理論家、ジェイス・ベレレン
かつて俺たちが、俺たちの幾つもの断片が同居していた頃は、それぞれの声で語り合ったり議論したり言い争ったりしていた。けれど多元宇宙の「救い主」という役割を自ら引き受けたのは、俺の中でも最も頑固な一面だった。そいつは異論に耳を傾けようとはしなかった。それどころか、異を唱える自分自身の一部を切り捨てることすらした。最初に排除されたのは、こんな計画が成し遂げられるとは信じられないという部分だった。続いて、こんな計画を進めるべきじゃないと考える部分が切り捨てられていった。俺がその最初のひとりだった。俺たちが何者であるかについて、ありのまま正直に受け止める部分だ。俺たちの意図を正直に受け止める部分だ。そして俺たちは相当な能力を持ちながらも、同時に限界を抱えているという事実を正直に受け止める部分だ。
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| アート:Zara Alfonso |
今や、残っているのは“理論家”だけだ。俺たちが指導者としてやっていけたのは、共感というものを持っていたからだ。けれど“理論家”にそれはない。あいつは俺たちの持つ最悪の資質が増幅して融合した存在だ。元々の俺たちも強力な精神魔法の使い手だったが、“理論家”は手加減なんてしない。あいつは「自由意志」のような概念なんてどうでもいいと思っている。容赦なく記憶を消去して、自分の敵を操り人形のように支配する。“理論家”は、俺たちがこれまで大切にしてきたすべてを裏切っている。俺たちが出会ってきた、冷酷な師や上司のような存在となることすら容認してしまった。あいつが思い描く「完璧な結末」のためには、かつてなら絶対に使うまいと誓った手段も正当化してしまっている。
(かつて「ギルドパクト」であったジェイスの一部は溜息をつきます)
これは俺たちが創造したものだ。それを理解すれば、あいつへの対処法がわかるかもしれない。
模倣宇宙
ファイレクシア人も、エルドラージも、ボーラスもいない。模倣宇宙――そう呼ぶことを“理論家”は頑なに拒んでいるが。ここには、多元宇宙のあらゆる次元が再現されている。ただし俺たちが「あまりにも大きすぎる邪悪」とみなした要素は除いてある。
痛みも苦しみもない多元宇宙を創造するため“理論家”は確率を計算し、その次元の歴史から特定の要素(人物であったり、出来事であったり)を排除しようと試みている。あいつの思考が現実になれば、そんな要素はまるで存在すらしなかったようになる。そこから、模倣宇宙の更なる創造と拡大はほぼ自律的に進んでいく。“理論家”はすべての結果を細部まで管理・干渉しているわけじゃない。あいつは傲慢で、間違った方向へ進んでいる。けれど狂っているわけじゃない。
冷静な論理が一貫しているとはいえ、“理論家”の未来像は不安定だ。現実を再配列したことで生じた矛盾が積み重なってきている。とても重要な歴史的出来事の数々が欠落した多元宇宙なんて、歪んだピースを無理矢理押し込んだジグゾーパズルに過ぎない。それを安定させる唯一の方法は、既存の多元宇宙の骨組みの上に新たな多元宇宙という皮膚を被せることだ。その過程の鍵となるのは、アルケヴィオス次元の創造を理解すること――ふたつの次元の衝突から、いかにして安定した新たな次元が作り出されたのか。“理論家”はそのためにここで、自分が思い描く現実が顕現する最終段階を見守っている。
模倣宇宙のアルケヴィオスへようこそ
ここに、今まさに誕生しようとしているひとつの次元がある。危険なほど予測不能で、荒々しい変化の内にある。けれど模倣宇宙のアルケヴィオスの住民にとって、世界はずっとその姿だった。彼らは何世代も遡る記憶を有している。彼らが過去から得る教訓は、俺たちに好意を持たせるために意図的に構築されたものだ。
“理論家”は模倣宇宙の不調和を最小限に抑えようと奮闘した。結果、この次元のマナの整合性がその影響を受けた。相反する要素が絡み合う元のアルケヴィオスの交錯の代わりに、“理論家”のアルケヴィオスでは調和するマナ同士が融合した。五体のエルダー・スフィンクスが誕生し、調和に基づいた理念を掲げる各大学が創設された。
“理論家”の塔
次元最大の力線の合流点から、巨大でありえない一本の塔がそびえ立っている。この力線の集合地点からは豊かな魔力が湧き出していて、模倣宇宙におけるストリクスヘイヴン――ヘクスヘイヴン大学での教育や訓練の動力源になっている。“理論家”はこの塔の高みから魔道士輪を通して自作の若き多元宇宙を監視し、導いている。また塔の下に集中する力線エネルギーを吸収し、自らの活動の動力源としている。あいつが自身の聖域を離れることはほとんどない。塔の周囲と模倣宇宙全域に精神的な幻影を映し出して、情報収集や進捗の監視を行う方を好んでいる。
“理論家”が模倣宇宙のアルケヴィオスに降り立った当初、ヘクスヘイヴンの学舎は石の外壁に取り囲まれた要塞のような複合構造を成していた。けれど今や学舎の建物はこうして見るような塔の形だ。“理論家”は中央の鐘塔を拠点にしたが、“理論家”自身の存在と、現実を歪める魔法を絶え間なく使い続けた影響で建築が変容してしまった。ヘクスヘイヴンの学舎は塔下部の大半を占めていて、各大学はそれぞれ異なる垂直方向の「区域」に拠点を置いている。
壁は曲がり、床は折れる。塔の中ではどこにいようと、学舎の他のどこかが予期しない角度で現れる。誰かにとっては床だった場所が、他の誰かにとっては壁になる。階段を上っていった実習生が、ふと気づくと出発地点より三階下にいるなんてこともある。ヘクスヘイヴンの学舎には、コンストラリの教授たちが「独自の意識」と呼ぶ性質が備わっている。廊下そのものが物理的に動くわけじゃないが、この塔は、目指している場所への到達を妨げるような何かを有している。
俺たちの精神的影響はこのアルケヴィオス全土に及んでいるが、中でもヘクスヘイヴンとその周辺に集中している。奇妙極まりなく、心をねじ曲げるような生物がこの次元を徘徊している。物理的な現実も予期しない形へ歪んで変化している。塔の建築様式には俺たちの人生や記憶の断片が取り入れられていて、“理論家”の聖域に近づくにつれてその密度は高まる。出入口や窓は“理論家”の記章を模している。俺たちの故郷の次元ヴリンの魔道士輪を思わせる円形だ。そして塔の住民を見下ろすようにあいつの彫像が幾つも立っている。
自分たちの歴史をこんなに強く反映させるつもりはなかった。多元宇宙の計算に集中している間、はぐれた思考や記憶が俺たちの意識からこぼれ出して、周囲の環境を形作ってしまったらしい。
それを警告として受け止めるべきだった。
エラディア
“理論家”はヘクスヘイヴンの学舎を一本の塔へと歪めただけじゃなく、その現実を歪める魔法は周囲100マイル程を不毛の荒野へと変えてしまった。その地はエラディアと呼ばれている。魔道士を食らう怪物が徘徊し、現実の危険な歪みも多発している。塔の頂上から放たれる強大な魔力に引き寄せられ、魔道士狩りや魔女跡追いといった怪物たちがまるで蟻の群れのようにその地面を埋め尽くしている。
荒れ狂うエラディアへ入るには、あるいは通過するには通常、綿密で入念な防護と計画が必要となる。懲罰としてエラディアの一部を「掃除」する任務を課された不運な実習生たちは、その事実をよく理解している。
エラディアの生物
魔道士狩りと魔女跡追い
魔道士狩りは多脚の醜悪な怪物で、魔法の存在や行使を本能的に察知する。その沢山の脚を駆使して、どれほど険しい地形やどんな急斜面でも素早く走り回る。身体から光って伸びる棘は昆虫の触角のようなもので、敏感に魔法を感知する役割を果たしている。通常の「狩猟状態」に加えて、ある種の魔道士狩りは身体を折りたたんで「休眠状態」に入ることもできる。その状態では体力を温存できるだけじゃなく、魔法に対する感知力も高まる。
魔女跡追いは複数の頭や多すぎる脚、鋭い目をもつ恐ろしい狼だ。すさまじい速さで走り、少しの足がかりさえあれば塔の壁も難なく駆け上る。魔法の匂いに引き寄せられ、群れで狩りをする。捕食された魔法使いはそいつらの力の糧になる。
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| アート:Néstor Ossandón Leal |
現実に歪められたクリーチャー
生物や人々の中には、アルケヴィオスのねじれた現実に取り込まれた結果、不完全な状態で存在し続ける者たちもいる。ヘクスヘイヴンの実習生たちはしばしば三つに分裂したような彫像を目にする。過去、現在、未来の狭間に捕われたものだ。塔の通路では、「想像体」と呼ばれる顔のない死霊たちが夢うつつの状態で徘徊している。そいつらは模倣宇宙に繋ぎ留められているものの、ここに存在はしていない。変容する生物はふたつの異なる形態を併せ持っていて、日常的にその姿を変化させている。“理論家”の塔周辺に生息する生物の多くは頭がふたつある。間違いなく、あいつが多元宇宙の複製を作り出すために放つ魔力で歪められた結果だ。
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| アート:Chris Rahn |
監視クリーチャーと塔の防衛
“理論家”は自分自身の模倣宇宙全域を常に監視している。沢山あるその手法のひとつが、自分の本質を生きた生物へと意図的に投影するというものだ。
ここでは、頭の代わりに俺たちのようなフードを被った顔をもつ鳥をよく見かける。そいつらはヘクスヘイヴンのそこかしこでアーチや尖塔の上に止まっている。“理論家”の印を思わせる巨大な一つ目をもつ様々な生物も確認されている。とはいえ“理論家”が本質を投影しようとする生物が遠くにいればいるほど、その繋がりは断片的なものになる。
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| アート:Chris Rallis |
顔のない衛兵が“理論家”の聖域近辺を巡回しているが、ほとんどの実習生はそいつらを避けようとする。賢い、あるいは好奇心旺盛な実習生はそいつらの服装がヘクスヘイヴンよりもヴリンのものに近いと気づくかもしれない。けれどそれを“理論家”に質問したところで、即座に黙らされるだけだ。
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| アート:Randy Vargas |
ヘクスヘイヴン大学
ヘクスヘイヴン大学は、アルケヴィオス次元のもつ危険と変動性に対する魔法的な防衛の要として立っている。厳しくも規律正しい魔法の学府で、実習生たちを戦闘魔道士へと鍛え上げる。卒業生はアルケヴィオスの各地に点在する村や街に向かい、治療師や守護者や助言者として活躍する。模倣宇宙の他次元からの実習生受け入れは行っていない。
5つの大学がヘクスヘイヴンの垂直方向の空間の大半を占めているが、所属に関わらず全員が利用できる共用区域も幾つか存在する。塔の中程には実習生向けの寮、食堂、そして大冊子棟が鎮座している。
ヘクスヘイヴンへの入学
入学希望者はその洞察力や能力に基づいて受け入れられる。ヘクスヘイヴンの入学担当官は新入生候補を探してこの次元を巡る。各共同体では、魔法の素質を持つ子供たちの存在を彼ら担当官に知らせることが奨励されている。
ヘクスヘイヴンの講義は、攻撃と防御と制御に重点が置かれている。それ以外の時間も、訓練や反復練習や精神的鍛錬に充てることが推奨されている。だから娯楽や休養の機会は少ない。こうした訓練は実習生たちの思考を鎮めるので、“理論家”は彼らの精神的雑音に悩まされなくて済むというわけだ。一方で実習生たちにとっては、心を読まれやすくなるという副作用も生じる。実習生は全員が“理論家”の目を模した記章のバッジを着用している。
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| アート:Ioannis Fiore |
ヘクスヘイヴンの一年生は共通の制服を着用する。最初の学期は入門的な訓練や講義が中心となる。内容は呪文詠唱の基礎やこの次元の動植物について、それとアルケヴィオスの歴史などだ。二学期目に入ると、一年生は各大学の講座を順に回って上級生の研究助手や訓練の補助役を務める。中には実験呪文の被験者になる者さえいる。この二学期目は、様々に異なる魔法の分野を観察し、実践し、直接経験することで学ぶ機会を一年生に与えている。
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| アート:Nathaniel Himawan |
昇級試験と式典
各学年度に一度、アルケヴィオスの各共同体の代表者たちがヘクスヘイヴンの中央決闘場に招かれる。昇級試験と試練、それと式典に参列するためだ。
一年次の最後に行われるこの一連の試験では、様々な魔法の専門分野に対する適正が試される。そこでは課題を達成するために様々な技能を披露しなければならない。
試験の内容は毎年変わる。試験では、それまでの一年間で学んだあらゆる魔法と技術を駆使するよう求められる。創始スフィンクスたちは、試験の成績や課題での立ち回りやその際の方法論を見て、自分の所に迎え入れたい実習生を選抜する。例えば、傀儡獣とその操縦者の魔道士が守る品物を手に入れるという課題が出たとしよう。それに挑む一年生は攻撃魔法で真っ向から挑むのか、それとも周囲の環境を操って道具を作り出してその品物に手を届かせるのか。
試験が終わると、合格した実習生たちのための式典が始まる。名前を呼ばれた実習生は演壇上のスフィンクスと副学部長の前に進み出て、新しい制服を受け取る。けれど一年生全員が合格するわけじゃない。試練を完遂できない者すらいる。不合格だった魔道士たちは故郷へ戻り、それぞれの居住地で魔法を使わない職に就くことになる。
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| アート:Elizabeth Peiró |
創始スフィンクス
俺たちとスフィンクスとの関係は複雑だ。創始スフィンクスの姿形は、間違いなくその影響を受けている。ヘクスヘイヴンの公式な歴史では、エルダー・スフィンクスたちはアルケヴィオスの人々を憐れんで、この次元の過酷な環境からの守りを与えたとされている――哀愁のある解釈だ。模倣宇宙のアルケヴィオスの住民たちが嵐や地殻変動とみなしていたものは実のところ、俺たちの現実魔法の余波だった。それらはアルケヴィオス次元とその歴史が一度に形作られる過程で生じたものだ。
スフィンクスたちは、生来習得していた魔法を一部の民に教え始めた。やがて学徒の共同体が成長すると、スフィンクスたちは彼らの訓練を監督する機関を正式に設立した。アルケヴィオスの住民たちが自然の脅威に負けることなく生きていけるように。スフィンクスたちが姿を現したその場所に、力線の巨大な合流点の上に、ヘクスヘイヴン大学が築かれた。
次第にスフィンクスたちは、超然として気まぐれで不可解な存在になっていった。以前はアルケヴィオスの住民に慈悲を向けていたかもしれない。けれど今は無関心で、自分たちの学府を卒業した精鋭の戦闘魔道士の方に関心を寄せている。
スフィンクスたちは各大学の学部長でもあるから、教授や精鋭の実習生たちから懸念事項を聞く謁見の機会を設けている。とはいえ日々の業務の大半は、教授陣や副学部長や学舎の責任者に委ねている。
ヘクスヘイヴンには異なる魔法の専門分野を扱う5つの大学が存在する。そのどれも、創始スフィンクスたちがそれぞれ極めた魔法に基づいている。
フェイトホールド
未来史の学び舎
主な研究分野:歴史学、占術、記録史料学、預言
「未来がもたらすものを待っているだけでは、永遠に待ち続けることになる」
最善の歴史はどのような道筋を辿るか。それを予見して築き上げることは可能だとフェイトホールドは信じている。この大学は、未来を見通して歴史の道筋を形作る預言的戦略家となる魔道士たちを鍛え上げている。フェイトホールドによる予言や運命を操る呪文は、この次元のあらゆる共同体に安定をもたらしてきた。
デンジロア・フェイトホールドは、模倣宇宙のアルケヴィオスに生きる民の前途をより良いものにするためにこの大学を創設した。そしてその生徒たちに向けて以下の理念を定めた:
- 未来とは現在に対する反面教師であり、模範でもある。
- 何が起こり得るかを予測し、その未来を構成する要素に働きかけることで、歴史の進路を導け。
- 未来の知識の力を、あらゆる者の幸福のために活用せよ。
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| アート:Denman Rooke |
フェイトホールドの占術呪文は、あらゆる物体や生物の内部で脈動する潜在エネルギーを調べることで、その対象のあり得る未来を覗き見る。術者はまず最良の結末を見定めると、そこから遡って世界の様々な要素を微調整し、操り、制御し、呪文の対象が平和で安定した未来へ至るよう導く。フェイトホールドの呪文は精密でありながらエネルギーに満ちていて、行使には多大な集中力を必要とする。その魔法的現象は、半透明の書物の頁や巻物といった姿で具現化する。
フェイトホールドの魔道士の多くは書庫や予見の間に閉じこもって、あらゆる可能性を熟視することに没頭している。予見自体はどこでも行うことができるが、特別に設えられた空間も存在する。沢山の鏡が円形の演壇を取り囲む「プレオプティコン」は、預言の力を増幅するために造られた施設だ。新入りの実習生がプレオプティコンを使用することは許可されていない。心構えや訓練が不十分なまま足を踏み入れたなら、生きて戻ることは望めないからだ。
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| アート:Nathaniel Himawan |
運命造形課程では、実習生たちは占術呪文を戦闘魔法として使いこなす術を学ぶ。未来書記は意識の流れを書き記すことに特化していて、他の魔道士が予見した未来視や未来の真実を細部まで漏れのないよう文書に記録する。フェイトホールドの研究記録庫と予言保管庫には、預言による未来視のメモや巻物がぎっしり詰まった棚や収納が並んでいる。これらの記録は、預言における決定的な岐路が過ぎてその出来事がもはや未来の可能性ではなくなるまで保管され、その後大冊子棟に移される。
戦闘では、フェイトホールドの魔道士は多くの異なる結末を予測する術を活用する。ある時は敵の起こり得る未来を掌握して圧倒し、またある時は予見で得た情報を用いて勝利に必要な条件を整える。また「運命の頁」に形を与えて、現在の敵への攻撃や防御に用いることもある。
フェイトホールドの卒業生は多くが助言者としての役割に就くか、あるいは未来の記録保管庫での業務を継続する。予見者、年代学者、あるいは戦略的預言者となる者もいる。彼らは預言の術だけではなく、重要な情報を分析し抽出する手法も習得している。そのため助言者として実用的な指針を提供することができる。
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| アート:Chris Cold |
フェイトホールドの学舎は塔の基部に位置している。物理的にも比喩的にも、ヘクスヘイヴンの礎だ。フェイトホールドは地上に一番近い場所にある。アーチや窓から望むエラディアの風景は、彼らが実現させようとしている未来を常に想起させてくれる。
「変えることのできない過去をなぜ学ぶのだ? 未来の可能性に目を向け、アルケヴィオスの民のため最善の結果を形作るべし」
セオリクス
難解な数学の学び舎
主な研究分野:秘儀数学、理論物理学、影数、パラドックス学、不可能幾何学、マナ物理学
「無限の知識は無限の力へと通じる」
セオリクスにて実習生たちは理論数学や物理学の深淵を探求し、世界の様々な問題の解決策を導き出す。セオリクスの魔道士はありえない定理や秘術方程式を駆使してポータルを生成し、自分たちを取り巻く現実の法則そのものを歪曲させる。
エルダー・スフィンクスのウルダロス・セオリクスは、現実を歪める魔法を駆使して当初のヘクスヘイヴンである要塞を築き上げた。当時激化していた魔道士狩りによる学舎への猛攻撃を押し留めるためだった。
セオリクスの創始者は、知識を渇望し抽象的思考力を示す生徒を求めた。そして自身の大学を導くために以下の魔法的法則を定めた:
- 犠牲なしには現実を創造することも、破壊することもできない。
- 力線のエネルギーとはひとつの多元宇宙的定数である。
- 現実の広がりは、久遠の闇と接触する点の最小数によって定義される。
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| アート:Magali Villeneuve |
セオリクスの魔道士たちは宇宙の不可能性に惹きつけられていて、大局的かつ抽象的に物事を捉える。彼らは驚くほど勉強熱心で、しばしば幼い頃から高い知能を示す。そのためか、ヘクスヘイヴン大学の中でも屈指の問題解決屋として知られている。セオリクスの魔法は、幾何学的な図形や儀式用の魔法円のような形で表れる。その線の一本一本が方程式の一部を成しているんだ。魔道士たちは自分たちの身体を動かしてそういった図形を形作る、ちょうど指先で宙に絵を描くように。
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| アート:Kai Carpenter |
実習生も教授も、常に何らかの実験を続けている。彼らは現実の「法則」に定義されることを拒否し、新たな可能性や証明や真理を強く求めている。けれどそんな学問的情熱には危険が満ちている。虚無理論の専門家は抽象概念やパラドックス魔術、さらには他空間の生物を召喚するポータルなんかを専門としている。不可能幾何学は数学的定理を用いて物理的な現実を歪める。重力の井戸や殺傷力のあるブラックホールを生み出しうる証明さえ存在する。だから、セオリクスの特定の区画に長時間滞在するのは危険だ。
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| アート:Slawomir Maniak |
戦場では、セオリクスの魔道士たちは現実を歪める力を回避や防御に役立てる。けれど通常、現実を生み出すことはできない。あくまで既存の現実を変化させたり転換させたりするだけだ。それでも彼らはこの法則の抜け穴を見つけ出した。自分の正気の一部を犠牲にすることで、別の現実から物質を引き寄せるという技がある。学舎の外れには影に覆われた岩石庭園があって、そこで実習生たちが戦闘用呪文の訓練を行っている。砕け散った、あるいは不自然な形に変形した石の数々を見たなら、彼らがどんな呪文を練習しているのかがわかるだろう。
セオリクスの学舎は塔の頂上近く、すなわち“理論家”の聖域に最も近い場所に位置している。ヘクスヘイヴンで最も歪んでいて、最も危険なのがこの学舎だ。絶えず回転し、変化し、構造の内側と外側が反転することすらある。前触れもなく通路が密室へと変化することもある。それと至る所にポータルや重力の井戸が点在している。
セオリクスの学舎中央には「パラボックス」が鎮座している。虚無空間でできた一辺11フィートの完璧な立方体だ。外側から見ると表面は黒く滑らかで、各辺には紫色にうねるポータル魔法が走っている。立方体の面の内には現実の改変が封じ込められていて、内部は無限にも思えるような理論空間になっている。魔道士たちはこの空間を利用して、学舎に影響を及ぼすことなく極度に過激な数学理論の検証を行っている。
「存在というのは全面的に否定されうる。あなたに必要なのは、正しい変数だけである」
スティンガークイル
辛辣な言葉の学び舎
主な研究分野:詩学、構文法、律動魔術、情動心理学、新言語学、呪術
「刃は肉を断つのみ。言葉は魂までも切り込む」
スティンガークイルの魔道士たちは、ヘクスヘイヴンやアルケヴィオスの村々を守る戦闘詩人や音声術士としてしばしば配備される。反応が素早く、明敏なコミュニケーション能力を持つ実習生はしばしばスティンガークイルに迎え入れられる。
イングリス・スティンガークイルは、自身の信奉者と大学のために次に挙げるカノンを作り上げた。
- 何があろうとも、最後の言葉を放つのは汝であれ。
- 機転の利く者が勝利する。
- 敵の鼓動はその恐れや疑念を物語る。言葉を放ち相手を圧倒せよ。
スティンガークイルの実習生たちは豊富な語彙と感情に触れる能力を併せ持っていて、ヘクスヘイヴンの中でもとりわけ魅力的でありながら激しい気性で知られている。この戦闘詩人たちは決闘だけでなく、アルケヴィオスの怪物とも一対一の戦いに挑む。他の大学は自分たちの外の源から力を得ているが、スティンガークイルの魔道士は自身の中に魔力の源を持っている。自立しているからこそ彼らは素早く思考し、素早く行動し、相手が事態を把握する前に勝利を収めることができる。
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| アート:Nathaniel Himawan |
スティンガークイルの教員は作文や言語学や詩学、そして舌戦といった多岐に渡る科目を指導している。講義の形式ではなく教授がまず手本を示し、その後に実習生たちが小集団に分かれて練習や決闘や討論、詩作を行う。反応速度を上げるため、精神的な敏捷性を鍛える訓練も全員が受ける。スティンガークイルには、小論や時間をかけて練り上げる論文のような課題は存在しない。学習課題や試験はすべてその場の即興で行われる。
律動魔術は、言語や発話におけるパターンや動きを実習生に教える学問だ。発する言葉の振動や身体の動きを通じて魔法の印を描くための訓練も行っている。
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| アート:Javier Charro |
スティンガークイルの戦闘戦略で重視されるものの中には、相手の感情を把握してそれに働きかけることが含まれる。相手を笑わせたり泣かせたり、力を得たと感じさせたり、疑念を抱かせたり、あるいは感情を操作したりする方法を実習生たちは学ぶ。そういった技を振るう精鋭の魔道士たちは魂砕きと呼ばれている。
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| アート:Jeff Miracola |
視覚的な威嚇もまた彼らの戦略の一部だ。実習生は衣服や自分たち自身を美しく飾り立てる。宝飾品や刺青で口元を強調したり、あるいは心臓の位置を際立たせる服装で内なる力を誇示したりもする。彼らの服装は、見ているこちらの方が痛々しく感じるかもしれない。けれど敵に大きな傷を与えるためなら、自分たちの痛みなんて彼らにとっては許容できる代償に過ぎない。
「熱い言葉でわからせてあげようか? よくやれてるっていうその妄想を邪魔したくはないんだけどさ」
コンストラリ
構築芸術の学び舎
主な研究分野:解剖学、構造設計、木工、彫刻、繋操魔術
「自然は、優雅さにおいても獰猛さにおいても、最良の教師です」
コンストラリは傀儡獣を製作し、構築し、命を吹き込む技術を専門としている。ここに集う実習生たちは全員が並外れた建築家や彫刻家や設計者で、自然素材の本質を理解している。彼らが作り上げる構築物は模倣宇宙のアルケヴィオスの民を守り、荒野への偵察任務にて先頭に立ち、この薄暗い世界へと驚くべき創造性の輝きをもたらしている。他の大学とは違って、コンストラリは次元そのものを変えることにはこだわっていない。彼らはこの次元で生き続けることを目指し、そのために必要な道具を作り出している。
アエリド・コンストラリは、力線のエネルギーを魂木の結晶へと凝縮させることで不活性な物質に命を吹き込む術を極めた。赤と緑の力線が交わる地で生まれたこのスフィンクスは、自身の大学のために次に挙げる信条を定めた:
- 心(勇気)を受け入れ、魂(洞察)を信ぜよ。
- 直感と想像力のままに進むべし。
- 創造性は感情から生まれる。
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| アート:Javier Charro |
傀儡獣は木や石や粘土を素材としていて、金属や布で装飾されている。大きさは人間ほどの背丈から数十フィートに達するものまで様々だ。大型のものは設計者や作り手の集団で製作されて、主席操縦者を務める繋操魔道士もそこに含まれている。操縦者は他にもいる。そしてこれら構築物の形は一種の自己表現にもなっている。
コンストラリの生徒たちは大胆不敵で危険を厭わない表現者だ。夢は大きく、作るものはもっと大きい。創造したいという熱意に突き動かされていて、広大な想像力と柔軟な規範を組み合わせて思いもよらないものを設計する。自然素材を扱う適性、自由奔放な想像力、勇気、そして優れた空間認識能力を見せた実習生はしばしばコンストラリに選抜される。彼らの堂々とした存在感は他者を鼓舞し、その強烈なエネルギーが戦いへと駆り立てる。
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| アート:Cristi Balanescu |
彫刻、建築、工学、設計、そして繋操の技術をコンストラリは教えている。コンストラリの魔法は、素材の動かし方から傀儡の操縦に至るまで、ヘクスヘイヴンの5大学で最も身体を用いる。そのため彼らの芸術教育において、身体的な鍛錬は不可欠な要素となっている。
卒業生は建築家や技師として革新的なインフラの構築に貢献する。あるいは自分たちが指揮する構築物を斥候や戦士として役立てる。
「アニマの図解」、生物の解剖学的構造研究はコンストラリのすべての構造設計の基礎を成している。これを用いて構築作業を率いる魔道士たちは「図解術士」と呼ばれている。「試作品の間」には過去の構築物の設計図が収められた小さな図書室があって、生徒たちのインスピレーションを喚起している。
自然加工の講義では、自然素材を浮遊させて結びつけるための高度に複雑化する接合呪文を学ぶ。素材に宿るマナを引き出して霊的な糸を作り出し、物体を動かす。コンストラリの実習室はどれも、机の上は小さな模型や設計図で埋め尽くされている。
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| アート:Anna Podedworna |
実習生は魂木の抽出に初めて成功してようやく、繋操魔道士となる訓練課程に進むことができる。この魂木というのは、傀儡獣に命を吹き込んで操縦者へと繋ぎ止めるために必要なものだ。繋操魔道士たちは自身の生命力と、傀儡を構成する自然素材から作り出した霊的な糸を魂木の結晶に込める。ほとんどの実習生は、ベルトから下げた小さな容器にそのエネルギーを収めている。コンストラリでも最も熟練した魔道士の中には、力線のエネルギーから直接結晶を生成するまでに技を磨き上げた者もいる。この儀式は塔の基部にある力線の合流点で行われる。その部屋はとても古く、力線の振動によって石造りの壁面が滑らかに摩耗しているほどだ。
傀儡獣を操る動作が直感的に行えるようになるまで、繋操魔道士は訓練を重ねる。高い技術を持つ繋操魔道士なら遠隔操作も可能だが、ほとんどは直接乗り込んで操縦する。魂木の力を引き出した繋操魔道士は、その傀儡獣と永遠に繋がることになる。この絆を断ち切ることは可能だが、そんな例は稀だ。特に巨大な傀儡獣の場合は、複数人の繋操魔道士たちが魂木の糸を作り出して共同で制御する。
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| アート:Ilse Gort |
「マールメイズ区画」は工房が連なった一連の作業場だ。大きなアーチ状の窪みに区切られていて、制作途中の構築物が収められている。隅々には石や木材や粘土や布といった未加工の素材が山積みにされている。コンストラリの魔道士たちが素材を所定の場所へ運び、接合し、そして彫刻や仕上げを施して構築物の真の姿を作り上げて行く様子は、見ていて眩暈がするだろう。
そこから吊り下げ式の通路を進むと「傀儡格納庫」に辿り着く。これはコンストラリの学舎にある巨大な広間で、現在使用されていない様々な構築物が陳列・保管されている。傀儡獣は多種多様な姿をしているから、この広間は動物園と博物館を合わせたような雰囲気になっている。他大学の実習生たちもこの場所を歩き回っては、構築物の精巧な作りに魅入っている。
コンストラリが使用する原材料はすべて「エスカの窪地」で採取されている。川に深く削られてできた小さな峡谷だ。巨大な自然の岩壁のすぐ傍には、丈夫で成長の速い木々が並んでいる。ヴィゴーブルームの育苗担当者たちが毎年、新しい苗木の植え付けに協力している。
「自然が授けてくれる道具を用いれば、私たちはあらゆる問題に耐えるだけでなく、その解決策を作り出すこともできるのです」
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| アート:Sergey Glushakov |
ヴィゴーブルーム
侵襲性治癒術の学び舎
主な研究分野:薬用植物学、園芸魔術、接合外科、植物魔術
「自然とは癒しである」
ヴィゴーブルームは傷病者の治癒と世話に尽力する大学だ。実習生たちが学ぶのは、植物組織を直接肉体に植え付けることで病気を診断したり傷を癒したりする技だ。植物を用いた彼らの治療法は、しばしば驚くほどの速度で結果をもたらす。ヴィゴーブルームは生命の調和を尊び、植物が持つ治癒の力を受け入れている。アルケヴィオスの民が困難を乗り越え、生き抜く支えとなるために。
エルダー・スフィンクスのクウィア・ヴィゴーブルームは、植物を成長させ操る能力を携えて力線の合流点から姿を現した。そして自身の大学を創設した後、学徒のために次に挙げる倫理と誓いを定めた:
- 自分自身を超えた、高みにある目的のために尽力します。
- 共同体を育て、癒やし、強きものへと成長させます。
- 必要とあらばあらゆる手段の治癒を通じて、共同体の存続を確かなものとします。
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| アート:Ryan Pancoast |
ヴィゴーブルームの実習生は全員、薬用植物学と応急処置の基礎を教えられる。彼らがまず学ぶのは植物由来の素材を用いた短期的な処置だ。湿布や気付け薬やチンキ、添え木なんかを用いて、今ある痛みを緩和したり炎症を抑制したりして患者の症状を安定させる。そしてそこからもっと高度な治療の技に進む。薬用植物学はヴィゴーブルームの全科目の中でも実技の比重が最も低くて、主に植物の識別方法や多様な治癒効果、採取方法、そして接ぎ木に最適な条件なんかを学ぶ。そしてそういった知識や記録はすべて大冊子棟に収められている。
ヴィゴーブルームの学舎には何十という温室が点在している。そこで育った苗や胞子は、接ぎ木や外科的処置や移植の素材として保存される。最大の温室は生徒たちから「クウィアの苗床」と呼ばれている。中央の施設から何本もの通路が伸びていて、実験や実習や精力的な植物研究が行われる部屋へと繋がっている。
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| アート:Ekaterina Burmak |
ヴィゴーブルームの魔道士の中には、園芸魔術を専門とする者たちがいる。彼らは主に温室で庭師として働き、最高の植物を育てるための栽培や実験を行っている。衛生兵に苗や胞子を安定供給することも重要な役割だ。彼らは若芽のドルイドとも呼ばれていて、魔法的な成長技術の開発も行っている。
負傷の中には現場や戦場ですぐに処置しなければならないものもあるが、患者の治療の大半は「侵襲治療院」で行われる。複数の手術室を有していて、その中でも最大規模を誇るのが「播種講堂」だ。名前の通り講堂でもあって、実習生たちはここで講義を受けたり特定の移植手術を見学したりする。ここで言う移植手術というのは、身体に植物の組織や苗を埋め込んで、その植物を成長させることで治癒を促進する処置のことだ。紡織医や移植外科医になるには植物の知識や解剖学の知識、そして植物を適切な大きさと成熟度まで急速に成長させる育成魔法の能力が求められる。
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| アート:Néstor Ossandón Leal |
術後の患者が回復期を過ごす場所が、幾つもの大きな窓から自然光が豊かに差し込む「日光の分院」だ。この光は、宿主である患者に植物が根を下ろすためのエネルギーにもなっている。患者はここで、気配りの行き届いた世話を受けながら過ごす。
ヴィゴーブルームで成功している魔道士たちは機知に富んでいる。豊かで生物多様性のある温室の環境を生かして、植物や手法や解決策を常に試している。戦場での応急処置という切迫した状況であっても、手術室で一生懸命に蘇生術を試みていようとも、彼らはその幅広い知識を駆使して診断と治療を行う。
ヴィゴーブルームの魔道士たちは、治癒という天命に全身全霊をもって献身している。そのため、患者を死の淵から蘇生させるためなら、時に家族の意向さえも無視することがある。ヴィゴーブルームにとっての優先事項は、個人の希望よりも集団の健康を維持することにあるためだ。彼らは治癒を実践する上で、独断的とも言えるほど自身の信念を信じている。
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| アート:Dmitry Burmak |
また彼らは、植物素材との一体化がもたらす可能性を崇めている。他大学の魔道士の多くは、ヴィゴーブルームの侵襲的治療は病気や怪我の対処法に過ぎないと考えている。けれどヴィゴーブルームの魔道士の中には、もっと広く深く植物の生命との一体化を目指している者もいる。
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| アート:Kaitlyn McCulley |
ヴィゴーブルームにおける最上級の植物魔術の講義では、敵の身体に植物を植え付けて傷を負わせたり窒息させたりする術を教えている。この魔法が「不適切な」対象に向けられることを防ぐため、攻撃的治療術の訓練は確かな倫理観を示した精鋭の実習生にのみ開かれている。
卒業に失敗したヴィゴーブルームの実習生が、アルケヴィオスの共同体で農民としての職を得ることもある。
「ヴィゴーブルームは、アルケヴィオスの各地に長寿と活力の種を蒔いています」
卒業後の進路
すべての適切な課程と訓練を無事に修了した後、上級実習生たちは卒業を懸けた最終試験に挑む。各大学から選抜された実習生で構成されるチームが共に決闘場へ入り、魔道士狩りや環境的な試練に立ち向かう。
どの大学にも、有望な実習生が最終試練に失敗したという逸話が伝わっている。あるセオリクスの挑戦者は、試験をショートカットしようと無理にポータルを開いて二度と戻ってこなかった。フェイトホールドの挑戦者は、試練の結果を予見しようと未来を覗き込み、自身の無数の死に様を目撃して試験を断念した。コンストラリの挑戦者は、自身が操る巨大な構築物に踏み潰された。
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| アート:Constantin Marin |
卒業生の多くは教授やティーチング・アシスタントとして母校に留まり、学業を続ける傍ら創始スフィンクスや“理論家”の命を受けて任務に赴く。模倣宇宙のアルケヴィオスのいずこかの共同体で、公的な魔法の治癒師や助言者や建築家として働く者もいる。どの場合であっても、彼らのヘクスヘイヴンに対する忠誠は揺るぎない。
最終試練を生き延びたものの合格できなかった者は、学舎の司書や食堂の調理師、庭師や研究助手のような職に就くことを目指す。不合格者は正式な魔法の職に就くことを禁じられているからだ――隠れて就く者もいるが。
大冊子棟
ヘクスヘイヴンの大冊子棟は魔法研究のための書庫だ。中は薄暗い。創始スフィンクスは教授たちに、実験の記録や定理の証明、発見のすべてを保存するよう促している。だがその情報は厳重に管理されている。大冊子棟内では、生徒たちは想像体や彫像や職員によって厳しく監視されている。文書や巻物、あるいはアーティファクトを利用するには正式な申請を行わなければならない。悪意ある者が強力な魔法を手にするのを防ぐため、“理論家”は多くの書物や区画の利用を制限している。その中には、生きた恐るべき書物「コーディ」も含まれている。これは模倣宇宙の全域から集められた危険かつ深遠な知識を秘めているためだ。
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| アート:Steve Prescott |
聖域
ヘクスヘイヴンを成す壮大な設計は、そこに至るまでの数学を理解せずとも目で見ることはできる。けれど「聖域」は別物だ。この怪物的建築の力を奪いたいと願うなら、内部を自在に動き回れるようにならないといけない。
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| アート:Adam Paquette |
最奥のすぐ外側に、雨の降る街角がある。建築様式はすべてラヴニカ風に変わり、空は灰色になり、そして――
君 私 俺たち 私 お前
今すぐ
お喋りを
やめろ
君が耳にした内容は見当外れだ。止めることは誰にもできない。弱き自意識たちは、不可能だと執拗に反論を繰り返す。無用な道徳的細部に囚われているせいだ。生じる犠牲など取るに足らないことだと理解できず、ただ止めろとわめく。違う。新たな世界が傷跡を抱くことはない。
世界を修復できるのは私だけだ。私でなければならない。
君は見聞きした内容をすべて忘れる。
『リアリティ・フラクチャー』の物語は2026年8月31日(日本時間9月1日)に幕を開けます。この歪んだ現実に真っ向から立ち向かいましょう。9月8日(日本時間9月9日)にはデビュー配信が公開され、模倣宇宙にまつわるさらなる秘密を明かす予定です。“理論家”その人が皆さんの参加を心待ちにしています。
『リアリティ・フラクチャー』は2026年10月2日に発売予定です。お近くのゲーム店やAmazon、楽天ブックス、その他マジック製品を取り扱う店舗で今すぐご予約いただけます。
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