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ブロールの新時代

Gavin Verhey
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2019年7月22日

 

 「サンディエゴ・コミコン」で土曜日に行われたパネル・ディスカッションにて、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterが『エルドレインの王権』で訪れるたくさんの変化について発表した。「コレクター・ブースターパック」! 「ショーケース・フレーム」! まったく新しい次元! ああもうたまらない!

 『エルドレインの王権』の新たな製品ラインナップは、本当に多くの人によるたゆまぬ努力の結晶だ――君たちが私たちと同じくらいこの新セットを楽しみにしていることを切に願うよ!

 たくさんの発表の中で、マークはある新製品についても言及した――それが「Brawl Decks」だ。彼は「近いうちにガヴィンから詳しい話があるだろう」と言っていたね。

 ……さあご注目。今がそのときだ!

 では、今回訪れる変化は一体どのようなものなのか? なぜ「Brawl Decks」なのか? なぜ今なのか? 他にどんな影響があるのか? その他、○○については?

 ここで詳しく話そう――まずはこの製品が生まれた背景からだ!

ブロールの歴史

 話は1年と少し前の『ドミナリア』までさかのぼる。

 私たちは2018年3月に、「ブロール」と呼ばれる新たなフォーマットを発表した。これはスタンダードで使用できるカードを用いて多人数戦を楽しめる、統率者戦に似た新たな遊び方だった。あなたを率いる伝説のクリーチャーかプレインズウォーカーを決めて、それを中心にデッキを構築するのだ。(詳しくは、このフォーマットの紹介ページを確認してくれ。)

 私たちはこのフォーマットを試験運用の1つとして見ていた。発表して、その動向を見守り、それから動くつもりだった。

 滑り出しはまさに好調だった! ブロールは明らかに盛り上がり、イベントを求める声が相次いだ。Magic Onlineでのプレイヤー数も上々で、ブロールのデッキ構築についての議論も活発だった。

 ブロールはスタンダードのカードで遊ぶことができ、ドラフトで手に入れたカードにも活躍のチャンスがあり、新しいデッキ構築を楽しめる。スタンダードとはまた違った新鮮な体験を味わえるんだ! ブロールは始めやすく、古いカードをたくさん覚える必要がなく、カードパワーの格差を心配することもない。持っている新しいカードで簡単にデッキを組める!

 しかし当初の盛り上がりとは裏腹に、私たちは大きな問題に直面することになった。奇遇にも物語と同様に《遵法長、バラル》が問題を起こし、私たちはそれを禁止せざるを得なくなったのだ――しかし禁止するころにはすでに、多くのプレイヤーが《遵法長、バラル》との戦いを経験していた。その後もさまざまなルールの変更と調整が行われ、事態はさらに混乱したのだった。

 当初の計画では、ブロールがどのように受け入れられるかを見る小規模のテストのつもりだった。だがこのフォーマットはまたたく間に大きな話題になった。最高のフォーマットだという声もあれば……明確な問題があるという声もあった――その問題とは、ブロール向けの製品が何もないことだ。「こんなフォーマットがあるよ!」と言うだけでなく、公式でサポートすることをプレイヤーたちは求めていたのだ。

 そこで私たちは、ブロールを成功させるために必要なものをすべて作る方針に切り替えた。さまざまなフィードバックを取り入れ、取り組みに反映させた。

 しかしながら、私たちには特に厄介な敵がいた――時間だ。

 みんなが知っているかはわからないが、セットを発売するのには長い時間がかかる。例えば、『灯争大戦』は2019年5月に発売されたセットだが……私たちがこのセットの制作を始めたのは2016年6月だった。時間がかかるのは、マジックのセットは計画を立て、デザインし、テストを行い、製品化する、という風にいくつものプロセスを経て完成するからだ。再録カードの製品ならスピードを上げることもできるけれど、それでもある程度の時間はかかる。だからブロールの導入直後に着手した構築済みデッキ製品「Brawl Decks」でも、みんなの手元に届くのは『エルドレインの王権』でようやくというわけだ。

 構築済みデッキの発売には時間がかかるということで、それまでは一時的にブロールをあれこれいじるのは止めた方が良いと判断した。(加えて、《遵法長、バラル》の存在は事態を悪化させると判断した。)私たちは『エルドレインの王権』まで中途半端な処置を続けるのではなく、構築済みデッキの完成を待つことにした。しっかりと準備を整えてからすべてを始めることにしたのだ。

 正直に言って、少し辛かったよ。私のもとには、「ブロールが生き残るためには」と題したツイートや記事が無数に送られてきた……その間私は、まさにその「ブロールが生き残るため」の仕事を社内でしていたんだ。ウィザーズで働く中で最も辛いことの1つは、プレイヤーたちが求めているものをまさに作っている最中に「なんでやらないんだ」と催促の声が上がることなんだ。

 でもこうして、良い知らせを持って来られたよ。ブロールに再び火をつけ、私たちの本気を見せる準備がついにできたんだ! 今度こそ、ブロールを全力でサポートする。スタンダードにも伝説のキャラクターをたくさん登場させてブロールをサポートするし(『エルドレインの王権』には「伝説」がたくさんあるんだ!)、ブロールのイベントも開催する――そしてブロールのための製品も用意する。

 ではそれらは具体的にどういうものなのか? それぞれ詳しくお話ししよう!

ブロールを構築する

 オーケー、それじゃあブロールの構築済みデッキから話そう。これは一体どういう製品なんだろう?

 この製品は、すでに成功している製品を参考にした――それは『統率者』シリーズの構築済みデッキだ! 『統率者』シリーズは箱から出してすぐに遊べるだけでなく、「統率者戦」そのものを味わえるようになっている。デッキを買い揃えれば、それだけで統率者戦を始められるのだ!

 そこで『エルドレインの王権』では、4種類の「Brawl Decks」を用意することにした。毎年発売されている『統率者』シリーズと同様に、その4つのデッキをすべて揃えることで最高の体験を味わえるようになっている。多人数戦でそれぞれのデッキを戦わせるのが最高に楽しいんだ!

 さて、私たちが望むことをすべて込めたデッキを作り上げるには、デザイン工程を正しく率いてくれる人物が必要だ。これについては幸運にも、はっきりと思い浮かぶ名前があった――メリッサ・デトラ/Melissa DeToraしかいない、と。

 彼女はまさに適任だった。今回必要とされる人材は、スタンダード環境の上位デッキを把握しており(プレイ・デザインでの彼女の役割が、まさにそれだ)、同時に多人数戦ブロールをよくプレイしている者だった。メリッサはいつも新しいデッキに挑戦していて、そして作業工程を率いる仕事を見事にこなせる人物であると私は知っている。ここで全部話して彼女が話すチャンスを奪ってしまうわけにはいかないから、彼女が率いたデザイン・チームの取り組みについてはまた後日、彼女の口から語ってもらうことにしよう。ともに多くのプレイテストを重ねた者の1人として、とても楽しかったとだけ言わせてもらうよ。

 そして「Brawl Decks」には、『統率者』シリーズにはない素晴らしい特典がある――スタンダードのデッキでもあることだ! 「Brawl Decks」の各デッキはそれぞれテーマを持っていて、スタンダードのデッキを組む第一歩として最高の土台になるだろう。

 各デッキの収録カードは、『ラヴニカのギルド』から『エルドレインの王権』までスタンダードの全範囲にまたがっている。ブロールのことも意識してカードをデザインするようになってから、スタンダードのカード・プールの広さでも十分にブロールへカードを供給できるようになっているのだ。スタンダードで使えるカード・セットの一覧は、このページで見ることができる。

 だがそれでも、何かが足りないと思われた。そこで私たちは、再び『統率者』シリーズを参考にして――「Brawl Decks」でも新規カードを作ることにした。

 『エルドレインの王権』の「Brawl Decks」には、通常のブースターパックには入っていない20種類の限定カードが収録される(それらは「コレクター・ブースター」からでも手に入る)。限定カードは各デッキに7枚ずつ入っていて、そのうち4枚はそのデッキだけのカード、1枚は別のデッキにも収録されるカード、そして残る2枚は各デッキに収録されるカードとなっている。限定カードは、スタンダードとブロールをはじめ、すべてのフォーマットで使用できる。(ただし少なくとも最新セットが使用できるフォーマットに限る――残念ながら『ミラディン』ブロック構築では使えない!)

 限定カードにはいくつかの目標がある。

 まず、ブロール環境に空いている穴を埋めること。例えば特定の色の組み合わせがプレイできなかったり、評価されていなかったりする場合、そこへ伝説のクリーチャーやプレインズウォーカーを追加してやることができる。

 それから、統率者戦でも魅力的なカードにすること。なぜ? ブロールには統率者戦プレイヤーの注目も集まると予想され、またこのフォーマットは統率者戦への入り口としても期待できるからだ。その上で、限定カードは多人数戦で効果を発揮するものが多くなる。必然的にスタンダードではあまり使えないが、ブロールでなら活躍の機会を生み出せるだろう。

 最後に、競技的なスタンダードではなくブロール(や統率者戦)向けのカードにすること。これらは「Brawl Decks」とコレクター・ブースターから手に入るため、限定カードとはいえかなり出回ると思う。だがスタンダードで使用できることを念頭に置いて、ミシックチャンピオンシップの上位卓を席巻しようというものよりはブロールや統率者戦で輝くものにしたい。(カジュアルやFNMレベルなど、メタ上位のデッキばかりでない場所でなら十分活躍できるはずだ。)

 例えばどんなカードかって? ああ、これを言うのを楽しみにしていたよ――実はいくつかのカードを公開するつもりだったんだ! 『エルドレインの王権』のカードをお披露目するのは、これが初めてとなる。そんな大役を任せられるなんて光栄だ!

 統率者戦で誰もが使っているカードと言えば、マナを生み出すアーティファクトだろう。しかしスタンダードでは、2マナのものはまず出てこない。そのことがブロールにとって悩みの種だった。加えて統率者戦のように多くの2色土地を使えるわけでもないため、マナ基盤を支えるものが必要なんだ。

 さて、スタンダードに影響を与えずにブロールのためのカードを作るにはどうすればいいだろう?

 針に糸を通すような難題を見事に成し遂げたカードをご紹介しよう。〈秘儀の印鑑/Arcane Signet〉の登場だ!

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 《Arcane Signet》はすべての「Brawl Decks」に収録される。これは軽い無色のマナ加速装置であり、色マナを安定させてくれる。スタンダードには統率者はいないため、スタンダードに一切影響を与えることなく、ブロールが求めていた役割を果たしてくれるのだ。完璧だね!

 そしてもちろん、統率者戦でのマナを生み出すアーティファクトの人気ぶりを見るに、《Arcane Signet》も多くの統率者戦プレイヤーの力になると予想するよ。

 このような新規カードも加わることで、再録カードの詰め合わせよりずっと良いデッキになった。きっと他にも素敵なカードが見つかるだろう。今はまだ内容について多くは語れないけれど、どのデッキも素晴らしい出来だ。新規プレイヤーやどれだけマジックにのめり込もうか迷っているプレイヤーにとって、「Brawl Decks」が『統率者』シリーズよりも手に取りやすい製品になることを願うよ!

 こうして、4つの構築済みデッキがブロールに登場することになった。他にお知らせは?

 ビッグ・ニュースがあるよ。この話をするのを今か今かと楽しみにしていたんだ!

MTGアリーナでブロールを

 ……出し惜しんだ理由がわかるだろう?

 ブロールが発表されて以降、最も多く寄せられた声が「ブロールのMTGアリーナへの実装はいつですか?」というものだった。私もそれに答えられる日を楽しみにしていたんだ――間もなくやって来るよ!

 今のMTGアリーナには、統率者戦のように伝説のクリーチャーを中心にデッキを組むフォーマットがない。ついにそれを体験できるようになるぞ! 年内にはMTGアリーナで1対1のブロールを楽しめるようになるはずだ。これを書いている時点で、私はMTGアリーナでブロールをプレイするウィザーズ社員を見たことがある。すごく楽しそうだったよ! まだ機能は充実していないものの、開発チームが今、超クールなことに取り組んでいるのは伝わった。

 MTGアリーナ・チームの素敵な計画をここで詳しく話すつもりはないよ。ブロール(と「Brawl Decks」)のMTGアリーナへの実装については、後日きっと彼らの口から語られるだろう。

店舗でブロールを

 もうひとつ多くのリクエストが寄せられたのは、ブロールのイベントと店舗サポートについてだった。『エルドレインの王権』でそれらが実現するぞ!

 『エルドレインの王権』シーズン中の10月26~27日に、お近くのゲーム店でブロールのイベントが開催される! 「マジック・ウィークエンド:ブロール」と呼ばれるそのイベントでは、多人数戦ブロールを1日中楽しめるだろう!

 その日はブロールのデッキを組んで(あるいは構築済みデッキを手に!)店舗へ足を運び、ブロールをプレイしよう! カジュアルな雰囲気で楽しめるはずだ。

 賞品はそれに加えて、各店舗で出るものだけだ。こういったイベントでは、私たちは勝つことに報酬を用意しないよう勧めている(多人数戦は気軽に楽しめるときに最高の体験を生み出すということを、私たちは知っているのだ)。でも、もしかしたら、イベント中の良いふるまいに賞品が出るかもね。いつものように、詳細についてはお近くのゲーム店で後日確認してくれ。

エルドレインの伝説

 今日の話を終える前に、もう1つお見せしたいものがある。

 さっき『エルドレインの王権』で登場する新規カードを1枚見せた。もちろん素敵なカードだけれど――ちょっと「縁の下」感が強かったね。

 『統率者』シリーズと同様に、「Brawl Decks」の各デッキにはパッケージを飾る新たな伝説のクリーチャーが収録される。(ただし『統率者』シリーズでは各デッキに統率者として使用できるカードが3枚収録されているが、「Brawl Decks」には1枚だけだ。)そして先述した通り、この製品はブロール環境に空いている穴を埋めることが目標の1つであり、2色や3色はもちろん、5色デッキもプレイできるよう可能な限り取り組んでいる。

 『エルドレインの王権』の導入とともに、《策略の龍、アルカデス》がスタンダードを去る。そのため、ブロールには緑白青の組み合わせがぽっかり空いてしまう。だからその穴を埋めるため、「Brawl Decks」には緑白青のデッキがある。

 そしてそのパッケージを飾るのは、もちろん新たな伝説のクリーチャーだ。このカードはブロールだけでなく統率者戦でも魅力的な1枚だと私は確信している。

 さあご注目。『エルドレインの王権』のプレビュー・カード2枚目――〈伝承の語り部、チュレイン/Chulane, Teller of Tales〉だ!

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 わあ! なんて派手な統率者なんだ! こちらのクリーチャーが全部キャントリップを持ち、マナ加速まで? これまで私が使ってきたあらゆるデッキが欲しがる効果じゃないか! その上、バウンス効果で「戦場に出たとき」の能力(と《Chulane, Teller of Tales》の誘発)を再利用までできる。

 ブロール・ファンのみんな、今すぐ君のデッキ構築エンジンを始動するんだ!

 《Chulane, Teller of Tales》デッキは(もちろん他の3つも)、『エルドレインの王権』の発売日にお近くのゲーム店で販売されるぞ。

 およそ1年半にわたる準備期間を経てようやく、こうして「ブロールのこれから」をみんなに話せて本当に嬉しいよ。このフォーマットが初めてだという人もプレイしたことのある人も、これを機にやってみようと思ってもらえたなら幸いだ。

 最後に、ブロールに関するフィードバックを送ってくれた方全員にありがとうと伝えたい。このフォーマットについては多くの議論があったことを私は知っている。その中心に立ってすべての意見に耳を傾けようと努めた者として、希望を伝えてくれたみんなには心から感謝している。今回話した私たちの取り組みが、このフォーマットに求められているものを実現していることを願うよ!

 フィードバックといえば、何かご意見・ご質問等あったらぜひ聞かせてくれ! TwitterやInstagram、Tumblrはもちろん、メールでもいいから(英語で)送ってくれ。

 おっと、それから統率者戦といえば、『統率者(2019年版)』プレビューの準備はいいかい? 8月第1週の週末に開催される「GenCon」から始まるぞ! 私も現地へ行って、素晴らしいマジック界のゲストとともにさまざまなパネル・ディスカッションに参加し、カードをプレビューする予定だ。現地に行く人は現地で、そうでない人はオンラインで、新カードの情報をチェックしてくれ。もちろんその後もプレビューは続くから、最新情報をお見逃しなく!

 それじゃあまたね!

Gavin

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