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エリマキ神秘家

Melissa DeTora
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2019年1月4日

 

 マジックファンの皆さんこんにちは! 今回わたしことメリッサ・デトラは皆さんに『ラヴニカの献身』からの素敵なプレビュー・カードをお見せするために戻ってきました。

 わたしが何をしているかよく知らない人のために説明すると、わたしは最もプレイされているスタンダードとリミテッドをメインとしてマジックの競技的バランスを取ることに責任を持つマジック開発部の中のプレイデザイン・チームの一員です。昔は毎週ここDailyMTGで「プレイ・デザイン -Play Design-」の記事を書いていましたが、現在この記事はとても散発的になっていて、基本的にプレイデザインの他のメンバーによって書かれています。その記事の中で、わたしたちはプレイデザインの理念について語り、そしてわたしたちが行った事柄の方法・理由を説明しています。

 今回はわたしたちの思考過程と今日のプレビュー・カードでやりたかったことを取り上げ、そしてわたしたちのスタンダードのデザイン理念について少し掘り下げたいと思います。

 話の始まりは『ラヴニカのギルド』のセットデザインのころです。わたしたちはプレイヤーが5つのギルドのうちどれかをドラフトでき、そしてカードとマナ基盤があれば3色に逸れることができるリミテッド環境を作ろうとしていました。

 多くのセットのリミテッドにはドラフト可能な10個の色のペアが存在します。ラヴニカのセットはそのセットの中で取り上げられているギルドの色のペアしかドラフトできないという点で独特であり、『ラヴニカのギルド』の場合、ドラフトできる色のペアは5つだけです。

 深いリミテッド環境をデザインするという目標のために、わたしたちは5つのギルド以外のデッキをドラフトする方法を模索しました。そのための方策の一部が、ギルド門を追加して強力なカードをタッチできるようにしたり、《ギルド会談》のような指向性を持った基柱カードを入れたりすることでした。

 その後すぐに、わたしたちはプレイテスターが全部を、つまり各パックの一番強いカードとマナ基盤を取って3~4色デッキを、ドラフトしていたことを発見しました。ドラフトにおいてプレイヤーが2色に固執するだけでなく、デッキの方向性を変えられる十分な選択肢があると感じるプレイヤーの数を良い割合にすることは本当に難しいことでした。

 適正なバランスを見つけようとするに際して、わたしたちは2色に固執することをプレイヤーに推奨するために他の方向性に戻るカードのサイクルを追加しました。アンコモンのCCDDのサイクルの登場です。

 このサイクルの名前の意味がわからないという人も多いかもしれませんが、この省略はわたしたちがマジック開発部内でよく使っているものです。Cはカードの中に含まれる色マナ1つを表していて、Dは別の色を表しています。なので、CCDDは下のカードのコストのようなどれか1つの色マナ2つとそれ以外の色マナ2つを表しています。

 これらのカードには2つの主な目的がありました。1つ目は、プレイヤーにドラフトで2色に固執することの動機になる強力なカードを提供することです。2つ目の目的は、セットのテーマを選びたくないプレイヤーにすごくて魅力的なアンコモンを作ることです。

 1つ目の目標を達成するため、わたしたちは色拘束の厳しいカードを作りました。2つ目のために、各ギルドがやろうとしていることと合わせて使っても素晴らしいけれど、プレイヤーへ召集や再活などを重用することを強制しないカードを作りました。

 デザインができてそれらをリミテッドで必要なところに配置したら、次のステップはそれらのカードを構築フォーマットでプレイすることです。結局のところ、これらはかなり素敵で多くのプレイデザイン・チームのメンバーに新しいデッキを作る刺激を与えました! これらのデザインのいくつかは特に競技レベルで超楽しいものでした。

 プレイデザインでは、スタンダードのプレイテストをする際に楽しいプレイパターンのカードやデッキを探しています。それらを特定したとき、わたしたちはそれらを向上させる方法とそれらをスタンダードで楽しい経験にするデッキを探します。

 現実世界のスタンダードの結果を見て分かるように、《ゴルガリの拾売人》と《弾けるドレイク》はかなりの数の競技的プレイで見かけられます。わたしたちはこれらを5つのうちで最も楽しいカードだと考えています。《弾けるドレイク》は『ラヴニカのギルド』でわたしが個人的に好きなカードで、このカードでデッキを作るのが大好きです。《ゴルガリの拾売人》はミッドレンジで単純に得をするカードです。これは《永遠の証人》系のカードなので、わたしたちはプレイヤーがその場所を見つけることを確信していました。プレイテストに際し、わたしたちはこれらのカードが最終的に競技スタンダードで良い位置につけられるように、これらの周りの環境を改善する楽しい方法を模索しました。

 『ラヴニカのギルド』のプレイデザインの時期に、わたしたちは『ラヴニカの献身』のセットデザインも始めていました。このセットは『ラヴニカのギルド』と同じようなセット構造をしていて、わたしたちは特にCCDDサイクルの完成に目を向けていました。このサイクルをデザインするにあたって、わたしたちはアイデアが湧いてくるようなカードや、大昔にプレイするのが好きだったデッキを思い出させるようなカードを模索しました。わたしにとってのそういうカードの1つが《神秘の蛇》でした。

 わたしには《神秘の蛇》との素敵な思い出がたくさんあります。わたしは『インベイジョン』ブロックのころにかなりの競技プレイヤーで、それを実際にデッキに入れてトーナメントでプレイしていました。わたしはかなりの調整を重ねていました。その多色の性質と、私に与えてくれた全ての選択肢のおかげで、わたしは『インベイジョン』ブロックが大好きでした。今日に至るまで、わたしは多色セットが好きです。

 『アポカリプス』が発売されたとき、わたしはウィザーズが敵対色のペアを推しているという事実に感動したのを覚えています! 素敵で新しい敵対色のペインランドさえも手に入れました! あのセットにはデッキを組んでみるのが待ちきれないようなすごいカードがたくさんありましたが、最もわたしの目を惹いたカードの1つが《神秘の蛇》でした。

 私はこのカードをいろいろなデッキでたくさんプレイしました。当時わたしのお気に入りだったデッキの1つは、《神秘の蛇》と《火炎舌のカヴー》や他に2対1交換をとるカードが大量に入っているのが特徴の3色デッキ「スネークタン」でした。わたしはこのデッキにとても興奮し、次のスタンダードのグランプリでプレイするために、ミルウォーキーへの飛行機を予約しました。

 さて、これは2002年のことで、私はとても若く、全盛期のころよりもずっとマジックが下手でした。またわたしは最終的に《神秘の蛇》をデッキから抜きました(なんにせよ、誰が2002年当時にこれに4マナを払うと言うのでしょう?)。わたしはそのグランプリでうまくやれたわけではありませんでしたが、マイク・チュリアン/Mike Turianとフィーチャーマッチで対戦しました! 誰がこの両者とも後年マジック開発部で働くことになると思ったでしょうか?

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2人の未来のマジック・デザイナー。
 

 皆さん私が何を言いたいか、もうおわかりだと思います。皆さんにわたしの『ラヴニカの献身』のプレビュー・カードをご紹介します。でもその前に、お伝えしないといけない大事なことがあって、それはこのカードのプレイテスト名が〈神秘の虫它〉だったということです。

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 このシミックのカードをデザインすることはこのサイクルの中で最もやりづらかったことの1つでした。伝統的に、シミックのカードは+1/+1カウンターや、クリーチャーを異なる形とサイズにするなどの極めて具体的な物事を取り扱ってきました。わたしたちはこのカードを強力なものにして、そして一般的で魅力的な能力を持っているけれど、シミックらしさも感じるようなものしたいと考えました。最終的に、一番気に入ったのは《神秘の蛇》のデザインでした。

 本題はつまりこういうことです。わたしたちがどのようにしてリミテッドの問題を解決しなければならなかったか、そして最終的に2つのラヴニカのセットにある異なるタイプのプレイヤーたちにとって魅力的で楽しいカードのサイクルを完成させた話です。

 これらのカードは、デザインに取り組むことやデッキを構築する上でのわたしのお気に入りのカードの一部で、そしてわたしは何年経っても、多くのルールの繰り返しを経た後でも、マジックのプレイの根幹はそれほど変わっていないということを知りました。わたしたちは今でも変わらずクールなクリーチャーを唱え、素晴らしいシナジーを探しています。マジックの歴史はプレイ・デザイナーにとってとても強力な武器です。わたしたちはパワー・レベル、プレイ・パターン、そしてマジックを楽しくするものについて考えるときに、毎日自分の経験やマジックの歴史に関する知識を活用しています。

 『ラヴニカの献身』の発売が見えてきて、10のギルドすべてのカードとショックランドのサイクルが揃い、そのことがプレイヤーにデッキ構築における選択肢のものすごい増加をもたらします。どんなスタンダードのデッキがプレイされるのが見られるのか、わたしはもう待ちきれません。最後まで読んでくれてありがとう、そして新しいセットでのやりこみを楽しんでください!

 ではまた次の機会に。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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