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恐るべき物語 その2

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恐るべき物語 その2

Mark Rosewater / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru

2011年9月26日


 前回は、プレビューで公開されたカードのデザインの話をした。今回は、それ以外のカードについての話をしよう。


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 ホラーの話に触発された怪物の話はいろいろとしてきたが、ホラー世界に必要なのは怪物だけではない。我々はもう一つ、ホラー映画に登場する現実世界の動物のリストを作った。蛇、蜘蛛、鼠、蝙蝠......それら全てをこのセットに入れるのは難しいことだった。このカードはどこからともなく現われる毒蛇に触発されたカードである。


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 このカードは、ヘルハウンドをトップダウン・デザインで描いたものだ。戦闘に入っただけでダメージを与える理由は、火をまとっているからだ!

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 両面カードを作るとき、全ての色に存在するようにしなければならないということが分かっていた。その障害の一つに、白は「善」の色だったということがあった。白には怪物はいないのだ。それなら、白に入れるべき変身カードとは何だろうか? いくつかの答えが挙げられたが、中で興味を引いたのは、(少女のような)無垢な存在が、悪魔に取り憑かれるというものだった(この種の話で一番有名なのは、映画「エクソシスト」だろう)。

両面カードのルール

 このカードを作るにあたってメカニズム的に求めたのは、自由意思で怪物になることはできても決して戻ることは出来ないということだった。場合によってはプレイヤー自身を殺してしまうこともあるような不利益を持つ怪物、というイメージは、いかにもふさわしい物だ。元々白かったものが、変身を経て黒になるというのもこのカードの善と悪の両面を際立たせることが出来るお気に入りの発想だ。


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 このカードはデザイン時、「ほうきの柄」と呼ばれていた。装備品を探していた私にとって、ほうきの柄は飛行を与える装備品としてこの上ない物に思えたのだ(この装備品はあまりにも当たり前だったので、複数のデザイナーが提案していたことを添えておこう)。ある時点で、私は(クリエイティブ・チームからデザイン・チームに来ていた)ジェンナ/Jennaに頼んで、クリエイティブ・ディレクターのブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthにカードを見てもらい、コンセプトが合わないカードがないかを見てもらうことにした。通常、この手順はもっと後の方で行なわれるのだが、今回は多くのカードがトップダウンでデザインされていたので、処理しなければならないカードを知る必要があったのだ。

 ダメ出しを受けたカードの一つが、このほうきの柄だった。(黒いとがった帽子をかぶってほうきに乗って、という)ハロウィンの魔女はクリエイティブ・チームのまとめたゴシック・ホラーにふさわしくないというのだ。私はこの装備品が気に入っていたので、「空飛ぶ棒」と仮に改名しておいた。イニストラードで空を飛ぶ助けとなるものが何なのか、やがてクリエイティブ・チームが決めてくれるだろうと思ったのだ。

 やがて、デザイン上の仮名がつけられていたカードにまともな名前をつける時がやってきた。空飛ぶ棒もその一つだった。グレアム・ホプキンス/Greame Hopkinsが言った、「ああ、空飛ぶ棒とは何とも古典ホラーっぽいじゃないか」という冗談が忘れられない。

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 狼男デッキに必要なものの一つに、呪文を唱えないターンにマナを余らせないための能力がある(人間を狼男に変身させるためには、呪文を使わない必要がある)。この問題を解決するための方法の一つに、我々が「蛇口」と呼んでいる、余ったマナを使えるようにする起動型能力がある。デザイン時、赤や緑には数枚の蛇口が存在し、その後にデベロップ段階でもまた数枚追加された。そういった蛇口が狼に多いのは、すでに諸君も気づいているとおりだ。これは、狼男を強化するカードの多くは狼も強化するので、狼は狼男デッキに入りやすいからである。

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 青がマッド・サイエンティストのイメージとそぐうという話はすでにしたとおりだ。この両面カードは、自分自身を怪物にするという実験を行なう科学者をカードで再現しようとしたものだ。このカードは、映画「ザ・フライ」を元にしている(そしてそれはカフカの『変身』を元にしている)。

両面カードのルール
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 このカードはその1で取り上げても良かったのだが、よく受けていた質問を忘れてしまっていたのでその2に回すことにした。そう、なぜ「変身後」のガラクが混成枠をしているのかだ。この理由を理解してもらうために、まず金枠についての説明をしなければならない。金枠の場合、その大部分は金色であり、2色の金色カードの色を示す方法は2つしかない。1つはマナ・コストに含まれるマナ・シンボルであり、もう一つはカードの縁の色である。縁の線が左右それぞれで別の色をしているのだ。

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 《ヴェールの呪いのガラク》はマナ・コストを持たないので、1つめの方法を使うことはできない。プレインズウォーカーなので、縁は丸まっていてその色は識別しにくい。そして、《情け知らずのガラク》は緑単色なので、戦場に出たばかりの時や手札にあるときは緑単色なのだ。

両面カードのルール

 緑から黒緑への変身は、このカードの鍵となる部分である。両面カードを使って、ガラクが根本的に変身してしまっているということをシメしているのだ。金枠では、それを伝えることができない。そこで、クリエイティブに、緑単色から黒単色へ変身するようにはできないかと提案することになった。そうすれば見た目ですぐに識別できるからである。しかし、クリエイティブは、ガラクは確かに黒の影響を受けているが、緑でもあるのだと強く主張してきた。

 詳しくない諸君のために言っておくと、マット・カヴォッタ/Matt Cavotta(非凡なマジックのアーティストであり、以前は公式サイトに連載を持っていた)がウィザーズに戻ってきて、カード枠やその他のことを監督する立場になったのだ。そして彼は両面カードの見た目にずっと取り組んできた人物でもある。マットは、2色を明確に表すために最高の仕上がりとなっている混成枠を使うことを提案してきた。変身後の面で唱えられることはないので、このカードと他の両面カードの見た目を統一することよりも変身を視覚的に描写することの方が重要だと決定したのだった。

 こうして、《ヴェールの呪いのガラク》は混成枠を使うことになったのだ。


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 このカードは巨大カカシのトップダウン・デザインだった。コンセプトの調整中に、カカシが多すぎて第6の部族のように見えてしまい、強調したい5つの部族から焦点がずれてしまう危険性が示唆された。このカードがどうしてこうなったのかは覚えていない(私自身はこれに関与していない)が、映画「ゴーストバスターズ」のエクト1を連想させるこのイメージは気に入っている。


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 これは私が初めてデザインしたゾンビ・カードのうちの1枚だ。私は、ゾンビ・デッキではクリーチャーは簡単に墓地から蘇ってくるという発想が気に入っていた。そこで、ゾンビ・デッキ以外でも使えるがゾンビ・デッキでその実力を発揮するという手段を取ることにした。このカードがデベロップ中に施された変更点は、コストが{1}{B}から{B}に引き下げられたことだけである。


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 前回、歌い手のジョナサン・クールトン/Jonathan Coultonに捧げる《不気味な人形》の話をしたが、今回はジョージ・ファン/George Fanに捧げるカードの話をしよう。ジョージはマジックのプレイヤーだ。そして、非常に有名なビデオゲーム「プラント vs. ゾンビ」のデザイナーとして知られている。

 このゲームのデザインに、マジックが及ぼした影響が非常に大きいと言うことはあまり知られていない。このゲームにはマナの要素とデッキ構築の要素が含まれており、どちらも(私が調べた限りでは)マジックから直接影響を受けている。

 私はイニストラードのデザイン中に、このプラント vs. ゾンビのデザインにマジックが影響を及ぼしていることを知った。植物は緑であり、緑の敵対色は黒と青であり、それはイニストラードにおけるゾンビの色である。ここに思い至ると、プロテクション(ゾンビ)という発想が浮かんできて、もはやそれは私の中では決定事項になっていた。

 クリエイティブ・チームは、植物というカードをイメージ付け始めた。すべてがうまく行っていたように思えたが、あるときファイルを見たら「プロテクション(ゾンビ)」が到達に変更されていた。私のつけたプレイテスト名はTallnut(訳注:プラント vs. ゾンビに出てくる堅いクリーチャー。Wall-nutの強化版である)だった(Wallnutにしておけばよかったのだが)。デベロップはTallと書いてあったので到達をつけた。そして、後になって、2つの能力を持たせたくはなかったのでプロテクション(ゾンビ)を削ったのだ。

 私は、「Tallnutのイメージを守ろうとした」というエリック/Erikに、プロテクション(ゾンビ)なしではまったく意味がなくなると伝えた。その結果、またもエリックは私の主張を聞き入れ、元の版に戻してくれたのだ(本当にありがとう、エリック)。


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 シャベルをマジック世界に持ち込むのは、それほど難しいことではないと思うかも知れないが、それは間違いだ。かつてゼンディカーにシャベルを入れようとした。冒険の世界なので、冒険者が持ち歩くような装備品を作ろうと思ったのだ。シャベルは道具としても、また武器としても使えるものであり、ゼンディカーのような危険な世界では必要な道具だ。しかし、コンセプト調整中にそのカードはシャベルではなくなった。その変更の理由を聞いたところ、ゼンディカーにはシャベルが存在しないからだと説明された。「何!? 穴を掘る必要がない世界にいるってのか!?」と叫びそうになったとも。(冗談抜きに言うなら、シャベルが存在できないというわけではないにせよ、それが世界の本質にはつながらないということだ)

 ミラディンの傷跡でも、シャベルを導入するのは簡単だと思った。アーティファクトのセットなので、装備品をいろいろと入れられるはずだったのだ。しかし、ミラディンにはシャベルは入らなかった。金属ばかりで土がないのに、シャベルだけあってもしかたない。これは多元宇宙の問題だ:簡単には穴を作れないのだ。

 それから2年が経って、イニストラードのデザインが始まった。イニストラード(の次元)には墓所が大量に存在し、墓所には墓穴がある。墓穴を作るには――そう、シャベルだ! ということで、シャベルが存在しなければならない世界が訪れた。そうとも!

 墓地からクリーチャー・カードを追放することでライフを得られる理由を聞いてくる人がいた。フレイバー的に? 一言で言うなら、屍体を食うのだ。あり得ないって? イニストラードへようこそ。


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 私の名前はマークです。私はレアのエンチャント使いのジョニーです。自分が使いたいような奇妙なエンチャントのレアを作るのが好きです。このカードができたのにはとても満足しています。そしてこれはウーズ・カードで、ウーズ・カードを作るのも大好きです。ところで、このカードは弱そうに見えますが、リミテッドではとても強いのです。


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 このカードに関しては、多くの批難が押し寄せてきている。グレート・デザイナー・サーチ2の選択問題の中で、

 まあ、その通り、キーワードが2つあるからといってコモンになれないわけではない。ではなぜこのカードがコモンではあり得ないのか? その答えは絆魂にある。絆魂がコモンにあることはあり得るが、その場合のパワーは低く抑えられる。絆魂は強烈な能力なので、パワーが3以上の絆魂持ちクリーチャーはコモンにはしないのだ。


 このカードはこの説明に違反してはいないかというのだ。ああ、違反しているとも。では、この質問の答えが「コモン」というのは間違いだったのか? いいや、そうではない。この問題を作った時点では、パワー3以上の絆魂持ちのコモンは作っていなかった。イニストラードのデベロップ中に、エリックはこの規則を破ることにしたのだ。これはあくまでこの問題を作って公開したよりも後の話である。この質問の時点では、1年後に変更することになるとは分かっていなかった。

 これは一度限りの例外なのか、それとも今後はコモンにも高パワーの絆魂クリーチャーが出てくるのか、それは分からない。デベロップはこの件についてイニストラードをテストに使うことにしたのだ。問題がなければ、コモンでの絆魂の扱いを変更するかもしれない。いつも言うとおり、マジックのデザインやデベロップは常時流転しているのだ。

 そもそも、あの試験は「それまで」の状態を知っているかを問うものであり、「それから」の状態を問うものではなかった。


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 私は《根囲い》というカードが好きだ。ゼンディカーで再録しようとしたが、土地メカニズムとの相性が良すぎて実現しなかった。そして数年後、雰囲気があって、カラーパイに従っている、クリーチャー・カードをライブラリーから墓地に動かすカードを探していた。イニストラードでは、緑は墓地にあるクリーチャー・カードを扱う色だということで、《根囲い》が浮上してきた。

 しばしば言うとおり、パワーレベルは環境に依存する。このカードはまさにそれだ。ゼンディカーのリミテッド環境では強すぎたが、イニストラードではちょうど良い働きを見せてくれた。ということで、《根囲い》の復活が決まったのだ。


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 もう長年にわたってカード名やフレイバー・テキストには触れていないが、かつて、ミラージュやテンペストの時代には、それらに強く関与していた。カード名やフレイバー・テキストは流行に左右されがちで、当時よく使われていたのはクリーチャー名として集団を使うことだった。

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 ファンタジー世界のクリーチャーは一体ずつで存在するが、現実世界では集合語が用いられる。カード名として使いたかった単語に、《カラスの群れ》というものがあった。今までに何度か入れようとはしたのだが、コンセプト的に「カラスの群れ」からそれ以外の物に書き換えられてしまっていた。イニストラードこそがその名前を使うのにふさわしい世界であり、使えたことをうれしく思っている。

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 このカードは2つのデザイン方針の交点に位置する。一つ目が、人間が鍵の部族であるということが明らかだったため、松明と熊手をセットに導入することは決まっていた(松明と熊手を掲げた怒れる群衆というのはホラーのお約束だ)。その1で説明したとおり、《猛火の松明》は完璧な再録カードである。

 そして二つ目、人間の強みは怪物よりも巧く道具を使えることである。これを表すために、いくつかの装備品に人間が用いた場合にはより強力になるという能力を与えることにした。松明が再録であり、そういう変更を加えることができないので、熊手にそういう能力を与えることにした。


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 そう、銀といえば狼男の弱点である。いや、このカードはそういうものではない。そのことに関しては、このブロックの後のセットで表現することになるだろう。


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 さて、これで威嚇が存在しないのは青だけとなった。威嚇というキーワードに、その能力を持つクリーチャーの色が関与するように変更されたので、できるだけ全ての色で使うようにした。現在、この能力の第1の色は黒、第2の色は赤、第3の色が緑、白、青となっている。威嚇という単語自体がホラーっぽいので、イニストラードでは他のブロックよりも多く使われることになるだろう。


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 青は狼男の色である赤と緑の敵なので、リミテッドで狼男デッキに対抗するには青がいいと判断された。そのために、インスタントや軽いカードを増やした。インスタントは対戦相手が自分のターンに呪文を使わなかった時に変身を防ぐことができ、軽いカードがあれば1ターンに2つの呪文を唱えることで人間に戻すことができるようになる。このカードはまさに軽いインスタントで、しかもフラッシュバックもついているために1枚で2度唱えることも出来るのだ。私自身もこのカードで狼男を何度も人間に戻してきた(普通に唱えたターンにフラッシュバックでもう一度唱えると、2つ呪文を唱えたことになるのだ)。


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 私がリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldをイニストラードのデザイン・チームに迎えることにした理由の一つに、トップダウンのデザインは彼の得意とするところだということが挙げられる。ホラーのお約束の武器をイメージして、それがリチャードの手でトップダウンにデザインされたらどうなるか――そう、こうなるのだ。


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 デザインの初期において、私はデザイン・チームに、古いカードの中でこのテーマにふさわしいカードを探すように指示した。そして全員のリストに入っていたカードが、《怒れる群衆》である。このカードの問題は、これが色対策カードだったということである(彼らは《》が入っているデッキが大嫌いなのだ)。メカニズム的に、これはふさわしいとは言えなかった。そこで次善の策として、《怒れる群衆》のような雰囲気を持ったカードをデザインし直し、そこにこんなメモをつけた。「ダグへ:これは怒れる群衆なので、それっぽい名前にして欲しい。ただし、《怒れる群衆》というカードはもうある」


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 マジックのデザインにおいて私が得た教訓の一つに、「その世界でのみ通用するカードのデザインは、他の世界でも通用するカードよりも優先されるべきである」というものがある。この教訓はデザイン空間の保存という理由によるもので、このカードはまさにそれだ。

 このカードは雰囲気があり、楽しい。ただし、イニストラードでだけだ。イニストラード以外の世界では、印刷にまで至らないだろう。そのため、私はこのカードをこのセットに残すために並ならぬ努力をした。単にこのカードを残すというだけでなく、他のカードを入れるために場所が必要だとしても、二度と収録の機会がないであろう良いカードを永遠に葬るようなことがないように細心の注意を払わなければならない。

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そして彼らは末永く不幸せに暮らしましたとさ

 この2回に渡る物語を楽しんでもらえたなら幸いである。そして、私がこのセットを楽しくデザインしたように、諸君にこのセットをプレイすることを楽しんでもらえれば幸いである。

 それではまた次回、狼男特集で狼男の変身メカニズムについて語る日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの心臓が鼓動を忘れますように。

イニストラード
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