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コラム

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あなたの街のティーチングマイスター 第16回:blank HAIR SALON(富山県) 新屋潤さん

原田 武


 「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。「あなたの街のティーチングマイスター」では、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がリリースとなるこのタイミングに、全国各地にいる彼らの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。

 今回は、「髪屋で紙屋」なお店の店主にして、美容師兼ティーチングマイスターのこの方です。

 

一つの店舗、二つの顔

──本日はよろしくお願いいたします。すごい、本当にヘアサロンにマジックが置いてある……

新屋:大きな大会を開く時は別の会場を借りるのですが、プレリリースやカジュアルなイベントはここで開いています。2階にもスペースがあるので、そちらも使いつつコンパクトに。それこそティーチングをすることもありますね。

──非常に個性的な組み合わせだと感じます。このお店の成り立ちについてお伺いしてもよろしいでしょうか?

新屋:美容師になることを決めたのは小学生の頃でした。当時のテレビドラマで美容師が登場するものがあって、それを見た瞬間「これしかない」と。いつか自分で店を開いて生きていこうと考えていましたね。そうして地元・富山で開業したのが7年前のことです。

──昔からの夢を叶えられたのですね。では、そこからなぜマジックも扱うようになったのでしょう?

 

 ヘアサロンなので問屋さんからシャンプーやワックスを仕入れて販売したりもしはじめたのですが、そのタイミングで「マジックも取り扱えたら面白いんじゃない?」と思い付きまして。立ち上げた年のうちに公認店になりました。

──なるほど、そんな経緯が。マジックはいつごろからプレイされていたのでしょうか。

新屋:これも小学生のころですね。雑誌で特集されていたのを見たのがきっかけで、中学生の頃まで友人たちと遊んでいました。

 その後は部活動や仕事に打ち込む中でいったん離れてしまったのですが、たまたま友人の結婚式で関東の方を訪ねたとき「ゲームマーケット」に行く機会があって。久しぶりだな、とマジックのブースでティーチングを受けて復帰しました。

 今でもスタンダード・パイオニア・モダン・レガシーと、仕事の合間に楽しんでいます。特に青と赤の組み合わせが好きで……アグレッシブに攻めて、倒しきれなかった時にリソースを補給してもう一度立て直す、という動きがたまらないですね。

 

 なので好きなカードは《Volcanic Island》です、土地なんですが(笑)。手に入れるときの思い出やテキスト欄のデザインなど、様々な思い入れがある1枚です。これを使いたくてレガシーで遊んでいる節までありますね。

──憧れの土地カードですね。実際に髪を切りに来たお客様との会話で、マジックが話題になることもあるのでしょうか。

新屋:元プレイヤーの方も世の中には結構多いですし、「マジックだ!」と話が膨らむことはありますね。美容院にお越しのお客様には美容師との会話を負担に感じている方も多いそうなんですよ。マジックという共通の話題があることで、過ごしやすく感じていただけることもあるのかなと思います。

 逆に地元のプレイヤーの方が切りに来てくださることもあります。個人のヘアサロンというハードルもある中で、マジックが入り口を作ってくれているのは非常に有難いですね。

没頭と熱狂を提供したい

──美容師になるという夢を実現されたり、自分のお店でマジックを取り扱ったりと、ご自身の夢や興味・関心を追求されているという印象を強く受けました。

 

新屋:自分のやりたいことを我慢したくない、という思いは常にありますね。まず1回チャレンジしてみないと面白くないじゃないですか。もちろん結果的に長続きしなかった取り組みも色々あるのですが、やめるにしても一度は試しておきたい。

 大げさかもしれませんが、人生の豊かさって何かに没頭できた時間の量で決まると思うんですよ。最期の瞬間に思い出せるような、全力で熱狂した出来事を増やしていきたいと考えています。

──その想いがマイスターとしての活動などにも影響しているのでしょうか?

新屋:そうかもしれません。マイスターを取得したのもマジックに対しての向き合い方を考えた結果でした。プレイヤーとしての実績があったりする訳ではないのですが、ヘアサロンという場所から活動するということで今からはじめる方への入り口として貢献できるんじゃないかと。どちらも本業というスタンスです。

 マイスターとしての今の目標が「プレイヤーが安心して熱狂できる環境を提供すること」なんです。『エルドレインの森』のころ、マジックを始めたいとこの店に来てくれたお客さんがいて。ティーチングをした結果凄くハマってくださって、あっという間にモダンのデッキまで組んでくれたんですね。

──それはかなりの没頭ぶりかもしれません。

新屋:その後も大会に参加したり他のプレイヤーさんたちと仲良くなったりと、短い期間でマジックをしっかり好きになってくださって、安心して熱狂してくれているな、と。自分がコミュニティの中に誰かを送り出して、その人が楽しんでくれているのを見られるのは本当に嬉しいです。

 現在は大会を開いたりその様子をYouTubeで配信したりといった、楽しむ場を増やす取り組みもしています。石川県のコミュニティの方々と共同でイベントづくりをしているのですが「北陸で一番デカいイベントを目指そう」なんて言っていて……密かな野望ですね(笑)。

──自分の熱狂のみならず、他の誰かの熱狂をも支えたいという思いがおありなのですね。では、マイスターとしてティーチングをする際に気を付けていることはありますか?

 

新屋:こちらの目線にならないように、常に相手に寄り添おうということを考えていますね。説明がどれだけ伝わっていて、どれだけ漏れてしまっているかということを計りながらお客様のペースで進めていくので、相手の顔を見ながら教えることを一番意識しているかもしれません。

 あとは、以前自分ティーチングを受けた経験も活きているかもしれません。印象的だったのが、本当にシンプルなルールだけを伝えて、あとは経験しながら学んでもらう形式だったこと。

 マジックの複雑なルールの中から抑えるべきところを抑えて残りを的確に削ぎ落とせば、これだけシンプルに伝えられるんだ、ととても感動したのを覚えています。非常に印象的でしたね。

──思いやりと情報整理が重要ということですね。

 それから、面白さの話はあえてあまりしないようにしています。僕もマジック大好きなので、どうしても語りすぎてしまうんですよ(笑)。

──なんだか分かる気がします。ついつい熱く語ってしまう部分と申しますか。

新屋:遊んでもらえば面白さは後からついてくると思っていますので、ここも相手の顔を見ながらですね。

カギは「コンタクトの回数」

──6月6日に『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がWPN店舗にて先行販売開始となりました。マジック・アカデミーもFF仕様となり、これからマジックを始めてみよう!という方も多くなるはず。意気込みや思いを聞かせてください。

新屋:間違いなくマジックの世界に入ってこられる方が増えるタイミングになりますので、始めていただいた方にやめずに遊び続けていただくことが大事だと思います。このきっかけに興味をもっていただいて、それをいかに今後に繋げていくかというのがひとつ勝負になるのかなと。

 これはヘアサロンの話になるのですが、実は新規のお客様の獲得と同じくらい一度来ていただいたお客様に継続してお越しいただくことも大切なんです。マジックにも同じことが言えると考えていますね。

 

 ティーチングはもちろんながら、その後にイベントに参加していただいたり、そこでお友達を作ったり……継続して楽しんでいただくためのサポートが出来れば嬉しいです。

──ありがとうございます。ちなみに、コラボセットで気になるカードはありますか?

新屋:この1枚、というよりも天野喜孝氏によるアートのカード達ですね。FFで天野氏の絵というのはやっぱり「わあっ」となってしまいます(笑)。目力のある、引き込まれるような目の表現が凄く好きですね。アートの美しさもマジックの魅力なので、ファンの方にも楽しんでいただきたいです。

 魅力という話ですと、僕は対人カードゲームというマジックの側面も物凄く好きなんですよ。相手の顔を見ながら遊べるというのもそうですし、相手とのコンタクトの回数が面白さを生んでいるなと。

──コンタクトの回数?

新屋:接触回数、意志疎通の回数と言いますか。例えば、マジックではドローひとつとっても「ドローしていいですか」ってやりとりを挟みますよね。これは他のゲームと比べても特徴的な部分だと思いますし、自分の中でもウェイトが大きいように感じています。

 ゲームの戦略性に、それからコミュニケーション体験としても奥深さを生んでいる部分だと思うので、ここも体験して頂きたいですね。

──最後に、ここからはじめる皆様にメッセージをお願いします。

新屋:マイスターとして遊び方をしっかりお伝えするだけでなく、長く楽しんでもらえるようなバックアップもさせていただければと思います。趣味を通じてできた友達は価値観も会いますし、話も合うもの。そういった出会いを大事にしていけたらいいなと思っています。

 また、ここ富山には上手くて親切なプレイヤーさんも多数いらっしゃいます。カジュアルに遊ぶにも、しっかり上を目指すにも本当にいい環境ですので、是非一度足を運んでみてください!

──長時間のインタビュー、ありがとうございました。


 

blank HAIR SALON
住所:〒930-0171 富山県富山市野々上57-3
電話番号:076-456-1284
公式SNS:https://x.com/gametimeblankh1

「blank HAIR SALON」は名前の通り、ティーチングマイスターが在籍するヘアサロン。納屋を改築して作られたこだわりの店内にはヘアケア用品に古着、そしてマジックが並びます。周囲に広がる田んぼは田植え直前の時期になると、まるで鏡のように青空を映すそうです。


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