READING

コラム

企画記事

『異界月』みんなが選ぶトップ3!

『異界月』みんなが選ぶトップ3!

by 金子 真実(WotC 日本コミュニティ担当)

 皆さんこんにちは!気温はぐんぐん上がり、夏が迫ってまいりました! 梅雨が明ければみなさんお待ちかね、夏がやってきます!

 夏といえば、海!山!バーベキューだったり海水浴だったり......! っていやいや、やっぱりマジックプレイヤーたるもの、何よりもまずマジックですよね!そう、最新セット『異界月』の発売は7月22日(金)です!

 イニストラードの狂気の原因、エムラクール。打ち倒すべく集まったプレインズウォーカー。リリアナも加入した新生「ゲートウォッチ」、そしてゾンビの大群の連合軍で打倒エムラクール!

emn_keyart.jpg

 物語もクライマックス、結末が非常に気になります!......が、やっぱり今、一番気になるのは『異界月』の新カードの評価ですよね! そこで今回もまた、あの3人に期待のカードをピックアップしてもらいました!


鍛冶 友浩の場合

 通称『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダーであり、現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、多くの練習とレベルの高い理論により、数々のプレイヤーから信頼を得ている。

 主な戦績は、プロツアー・チャールストン2006優勝・世界選手権2005トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州2005優勝など。

 最近はプロツアーでのニコニコ生放送の実況や、グランプリなどで日本公式カバレージチームのリーダーも務める。

1位 《呪文捕らえ

kaji1.jpg

 『ゲートウォッチの誓い』の登場で初めて《反射魔道士》を見た時、こういった系統のクリーチャーは3マナの《大クラゲ》から4マナの《分離主義者の虚空魔道士》へコストが重くなる傾向にあったところでの突然変異に、「一体どうしてこうなった!?」ととても驚かされたものですが、そんな青白のマルチカラーに更なる高スペック・クリーチャーが登場しました。

 旧『イニストラード』にいた《悪鬼の狩人》が、まるで霊体になったかのような能力で、《呪文捕らえ》は戦場に出る際に呪文自体を一時的に追放する能力を持っています。狩人は追放効果をクリーチャーに限定していたため、戦場からの一時的な除去としてリミテッドでは重宝していましたが、構築では自身が除去で対処されやすい上に効果的な対象が少ないことにも問題がありました。

 それが4マナ以下の呪文となれば、序盤から適当に唱えるだけでほぼどんな対戦相手の妨害もすることができるでしょう。さらにはライブラリーから直接呼び出せる《集合した中隊》という時代の追い風もあるので、活躍は間違いありません。また、『異界月』では多くの注目に値するスピリット、例えば《霊廟の放浪者》などが収録されているので、青白の飛行ビートダウンでも使ってみたいですね。もちろん、お供には《鎖鳴らし》を!

2位 《怒り刃の吸血鬼

kaji2.jpg

 『イニストラードを覆う影』で再登場した「マッドネス」、通常のマナ・コストを支払うよりも(大抵、マナ割高)、そのカードを捨てるタイミングでマッドネス・コストを払うことで軽くなったり(こちらは割安!)と何らかのメリットを引き出すことができます。

 しかし、それらを能動的に低コストで活用するためにもマッドネスエンジン、つまり「カードを捨てる」という能力を持ったものをデッキに多用する必要が出てきます。けれども、エンジンが重いと土地を多く置く必要が出てきたり、軽くするメリットも薄れ、さらに捨てるための手札が不足し本来の能力を十分に発揮できなくなってしまいます。

 前セットだけでは、構築レベルでのマッドネス/マッドネスエンジンの枚数がまだ足りず、デッキを組むだけのカードが揃っていませんでしたが、今回の『異界月』が加わるとどうでしょう? 2マナ圏には4点クロックの《怒り刃の吸血鬼》が加わり、十分なサイズと手札が無いことでダメージを振りまく《血の間の僧侶》、手札がゼロでも能力を起動する価値のある《ガイアー岬の療養所》といったカードも登場するので、改めて『イニストラードを覆う影』のリストを見直す価値がありそうですね。2ターン目に《怒り刃の吸血鬼》、3ターン目に《手に負えない若輩》という動き、どうでしょう?

3位 《見事な再生

kaji3.jpg

 個人的に『異界月』で一番構築意欲が湧いたカードです! マジックの歴史には、墓地のクリーチャーを全部出してみたり、エンチャントを全部出してみたりするカードを軸に構築されたコンボデッキがいくつもありましたが、この《見事な再生》はそこに新しく加われるのでしょうか?

 墓地から全部出し系デッキの難しい点の1つに、60枚というデッキで、カードを墓地に送る手段や勝ち手段、対戦相手への妨害をきれいにまとめ上げるなければならないことがあります。しかし、土地は必ずある程度の枚数をデッキに入れるので(※一部例外を除く)、そういった悩みはかなり軽減されるのではないでしょうか。

 今のところ、大量の土地を並べることでできる「何か」を見つけてはいませんが、《進化する未開地》や《過去との取り組み》といったマナサポートで自然に墓地を肥やせますし、《汚染された三角州》ら10種のフェッチランドやサイクリング土地があることを考えると、モダンやレガシー環境での方が何らかのコンボデッキを開発することができるかもしれません。おっと、カードプールの広い環境下では墓地対策もしっかり揃っているので、そちらも悩みの種でした。うーん、時間が無限に欲しいですね。

『異界月』総評

kaji4.jpg

 イニストラード特有の両面カードというシステムにエルドラージ性が加わったことは、ストーリー展開と相まってとてもゲームを楽しいものにしてくれています。例えば、《捕食》の新旧イラストの比較でも、今までの「捕食する側」だった狼男が、『異界月』では「捕食される側」に逆転していたりと、イラスト1つも見逃せませんね。

 さらに、関係者プレリリースで一足早くパックを開封させてもらった時に現れた合体カードに、思わず出たー!と声を出して喜んでしまいました。実は、『Unglued』という、過去に英語版でだけ発売されたマジックのジョークセットで(認定イベントでは使えません)、《B.F.M. (Big Furry Monster)》という2枚組で99/99のカードがあったのですが、マジックを始めたばかりの僕も思わず集めてしまったほどインパクトのあるものでした。それがこういったカードの裏面を使うという形で再現されており、やはり開発陣は遊び心いっぱいで素敵ですね。

 今週末には全世界の店舗でプレリリースが行われますので、ぜひ皆さんも新環境をいち早く体験してみてください。もちろん、新セットの登場はつまり、次回のプロツアーが開催間近ということもお忘れなく!


射場本 正巳の場合

 通称『しゃば』。日本で初めて開催されたグランプリ・東京1997でベスト8に入賞するなど、黎明期から現在まで長きにわたりマジックを愛し、支え続けてきた人物。

 彼の作成したコンボデッキ『ピットサイクル』は、「マジック史上最も美しいコンボデッキ」と称された。現在はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社開発部に在籍し、主として『デュエル・マスターズ』の開発に携わりながら、「統率者戦」などでマジックをカジュアルに楽しんでいる。

1位 《折れた刃、ギセラ》《消えゆく光、ブルーナ》 /《悪夢の声、ブリセラ

syaba1.jpg

 このセットの一番の目玉といえば合体カードだろう。かつて「デュエル・マスターズ」のセットデザインを担当していたケン・ネーグル/Ken NagleEが、何とかして「デュエル・マスターズ」から「Gリンク」というクリーチャー同士を合体させる能力をマジックに輸入できないか検討していたのだが、そのままのカードで達成することは難しく、両面カードを使った覚醒リンクという手法を使う機会を伺っていた。それが、イニストラードへの再訪によってついにその願いがかなったのである。そもそも《B.F.M. (Big Furry Monster)》のアイデアを輸入して実用化していたリンク能力が本家に逆輸入されたとあって感慨もひとしおだ。

 マジックプレイヤーからすれば、あまりにも突飛ですぐには受け入れがたいものかもしれない。だが、それこそがエムラクールのもたらした狂気だと思えば納得である。

 かつて『アヴァシンの帰還』で優美な姿を見せていた天使たちがこのような姿になるとは誰が予想しただろう? 統率者戦ではどちらかを統率者に選ぶことになるだろうけど、きっと合体成功したらテンションもMAXになって自分までエムラクール化しそうだ。

2位 《見事な再生

syaba2.jpg

 このカードの元ネタとして、かつて《次元の誕生》というカードがあった。あまり使われることのないカードだったが、2マナですべての基本土地を墓地から戻すというのはコンボ好きにはダイヤの原石に思えたのだ。

 何とかして使えないかと思っていたが、たまたま負けたチーム戦のプロツアーのサイドイベントでブロック構築のプロツアー予選があったので試してみることにしたのだ。手持ちのカードで一晩かけて急ごしらえしたデッキが《次元の誕生》に《スカージの使い魔》と《再処理》を組み合わせたエンジンを搭載したデッキだった。バーゲンやドレインやマナ加速も入っている。そう、これこそがオリジナルのピットサイクルだったのだ。

 結果はというと、初戦負けたが、その後7連勝してのベスト8。一夜漬けの割にはなかなかの手ごたえだったので、その後調整を進めて現在知られているピットサイクルの形となった。

 このカードがなければもしかしたらあのデッキは生まれてなかったかもしれないと思うと、思い入れ深い。

 さて、そしてこのカードだ。いつの時代もすべてに影響を与えるカードはコンボのにおいがする。何より基本土地だけでなくあらゆる土地を戻せる。こんなに可能性にあふれているなんてワクワクするじゃないか!

3位 《ギサとゲラルフ

syaba3.jpg

 あの喧嘩ばかりしていたギサとゲラルフがついに手を取って1枚のカードとなった! ギサといえばナヒリちゃんと楽しくやっていたかと思ったのだが、『異界月』の状況においては姉弟で協力し合うほかなかったのだろう。しかしやっぱり姉弟は仲睦まじいに限る。フレーバーテキストが二人の関係をいい感じに表していておもしろい。

 能力もシンプルながらゾンビ使いらしい良いフレーバーで、せっかくだから新旧イニストラード産のカードだけでゾンビデッキを完成させてみたくなる。毎ターン1枚の制限があるとはいえ、墓地からカードを唱えられるのはなんだか悪いことができそうだ。何かコンボを探しにいきたくなってきたぞ!

(編注:このカードの日本語版には誤訳がありましたのでお知らせいたします。こちらをご確認ください)

『異界月』総評

syaba4.jpg

 このセットの一番の目玉は「合体」だろう。しかしそれはインパクト面での話で、ドラフトでこそキーになりそうではあるが、実際よく見かける能力となるのは「現出」の方かもしれない。

 かつて守護神が持っていた「献身」能力をより使いやすくアレンジしたそれは、効率のよいコスト踏み倒しでもあり、何か悪さをしそうな予感がする。4ターン目の《老いたる深海鬼》から《異界の進化》をして《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を出したら脳汁出そうだ。

 《異界の進化》もそうだが、このセットには異界を匂わせるためか、かつての名カードのオマージュともいえるデザインが多く投入されているのも特徴に思える。《ナヒリの怒り》と《炎の嵐》を見比べると時代の変化を感じずに入られない。数十年続くブランドだからこそ、同じようなコンセプトでも時代に合わせた調整をすることで新しさを提供できるといういい試みだと思う。

 特に統率者戦をやっていると別名同効果のカードはいろいろと欲しくなるのでいい感じ。これからも折に触れて掘り下げてほしいところだ。


浅原 晃の場合

 通称『エーツー』。強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権2005・世界選手権2008トップ8、グランプリ優勝2回、「The Finals」2連覇など。

 デッキブランド「G.o.D.(God of the Deck)」、「みのむしぶらりんしゃん」などで有名。独自の視点から、セットに切り込む。

1位 《地獄の樹

asahara1.jpg

 地獄にはいろいろな種類がある。焦熱地獄や血の海地獄、ワニ地獄、宇宙地獄など、かくも恐ろしい地獄があるが、我々にとって身近でもっとも恐ろしいのは、マリガン地獄であろう。1回ならばともかく、ダブルマリガン、トリプルマリガンともなれば、思わずため息の一つもついてしまうかもしれない。

 しかし、そんな時は地獄に生えるこの一本の樹を見て、心も落ち着かせようではないか。何せこいつは、地獄を生き抜いて来ただけあって、マリガン地獄にも耐えうる素晴らしい可能性を秘めている。まず、ただでさえ、0/13という超スペックなのに能力を普通に使えば0/20となり、相手の強力なクリーチャーの攻撃を完全にシャットダウン。

 さらに、勝ち筋として考えても、シナジーのオンパレード。かの《十三恐怖症》との簡単滅殺コンビは言うまでも無いが、《突撃陣形》を張って殴ったり、能力を使いそれに対応して《蛙变化》や《牙の贈り物》で一気に相手のライフを瀕死まで落とすなど、考えれば考えるほどに無限の可能性を持っている。大体2枚くらいで勝てそうなので、マリガン後の地獄を救済する、蜘蛛の糸となってくれることだろう。ダブルマリガン?トリプルマリガン? そんなんじゃ足りねぇ、クワドラブルマリガンかかってこいや!

2位 《騒乱の歓楽者

asahara2.jpg

 コストを軽減できるカードが強いのはマジック界に伝わる定説。最近では《時を越えた探索》や《宝船の巡航》がそれを証明したが、またまた、やらしていただきましたぁん、とマローが言ってるのが目に浮かぶのがこれ。探査と同じく墓地に関係があり、ソーサリーとインスタントを墓地に置けば置くほどにコストが下がるため、スペル中心のデッキならば勝手にたまっていきそう。

 さらに、探査と違って出すのに追放が必要なく、一度達成すれば、ずっと2マナで運用できるのが強み。戦場に出たときの効果をバウンスなどで使い回すのも良さそうだ。

 こういったカードはとりあえず、MAXで働いたときにどれだけ強いかというのを考えて、それがとても強ければシナジーを最大化したデッキを組む価値ありと言えるのだが、こいつはなかなか強そう、かつ条件がそこまで重荷にならなそうなので、専用デッキを組んで試してみたい。幸いにして、『異界月』では同様に墓地を溜めることで効果が増す《棚卸し》や《流電砲撃》などがあるので、これらとこの悪魔を《偏った幸運》などのカードを墓地に溜める呪文でサポートするとデッキ全体のシナジーも太くなりそう。戦場だけでなく、プロツアーを騒がせてもおかしくない気もする1枚。

3位 《ゲートウォッチ配備

asahara3.jpg

 プレインズウォーカーデッキには夢がある。かつて、スーパーフレンズというプレインズウォーカーまみれのデッキがあったように、通常の除去では対処しづらいプレインズウォーカーをデッキの主軸とするのは戦略として正しい。このカードは7枚見て、プレインズウォーカーを2枚まで出せるので、アドバンテージ、サーチ、テンポ、その全てが詰まっている。

 例えば《死の宿敵、ソリン》と《炎呼び、チャンドラ》が出れば、1枚が2枚になり、6マナが12マナ、そして盤面がむちゃくちゃになるので、俗にいう爆アドバンテージとなる。モダンまで行けば《精霊龍、ウギン》と《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》などの夢の組み合わせも実現。こうなると、対戦相手は、普通に考えてその2人出なくない?絶対仲悪いしさー、と言ってジャッジを呼んで怒られるくらいしかできないだろう。

 2枚出すためにはたくさんプレインズウォーカーを入れなくてはならないように見えるが、1体でも出ればそこそこ強いので、無理して詰め込むよりも、最低枚数を確保しつつ、バランス良くデッキを組んでも悪くなさそう。とにかく使いたくもあり、使われるとうわーとお祈りするカード。ただ、《死の宿敵、ソリン》と《先駆ける者、ナヒリ》を一緒に出されたら僕もさすがにジャッジを呼びたいと思う。その2人、今はめちゃめちゃ仲悪いから絶対一緒に戦わないですよね、と。

『異界月』総評

asahara4.jpg

 合体カードなども含め、『異界月』は注目カードが盛りだくさん。特にデッキを作らせようという気概に満ちたカードが多く、何か、どのカードを使っても良いデッキが作れるんじゃないかという気さえしてくる。特にスタンダードは《約束された終末、エムラクール》あり、吸血鬼あり、ゾンビあり、スピリットあり、猫あげる奴ありと、人間の天下もさすがにそろそろ怪しいのでは?というのも現実味を帯びてきた。スタンダードシーンが一体どうなるのか、個人的には激変すると予想しているので、今度のプロツアーを楽しみにしたい。


プレリリースに行こう!

 皆さん、お楽しみいただけましたか? そしてそして、今週末は『異界月』プレリリース! 今回、皆様にはゾンビになって頂き、エムラクールを打ち倒す軍勢の一員になって頂きます!ゾンビのコスプレなんかオススメですよ!

zombies.jpg

おわりに

 3人のチョイスはかなりバラバラでしたが、唯一かぶった1枚は《見事な再生》! 確かに夢のある、コンボの匂いを感じる1枚、はたして実際に使われるコンボデッキが組まれるのでしょうか......?

 カードリストを眺めていると、リミテッド的にも強力なカードが多く楽しみです!ドラフトも『異界月』2パック→『イニストラードを覆う影』と環境激変、早くドラフトがしたーい!

 そんな楽しみな『異界月』、7月22日発売です! それではみなさんご一緒に、「Crack-a-Pack!」

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索