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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第3回:もっと勝てる!『カルドハイム』シールド
お久しぶりです! マジック・プロリーグ所属の佐藤レイ(@r_0310)です。また皆さんにリミテッドの話をすることができてとても嬉しいです。
前回の10月時点ではリーグ・ウィークエンドの1回目が終わった直後で、11勝1敗という好成績をあげ暫定1位で喜んでいたのですが、気が付いたら4回目を終えた3月の現時点では6位タイまで落ちてしまいました。やればやるほどプロに位置する選手たちの強さを実感するばかりの日々です。
とはいえ、今後の成績次第ではトップになる可能性も残したポジションなので、今後とも頑張っていきたいと思います!
今回は現時点での最新セット『カルドハイム』について語っていきたいと思うのですが、タイトルが実は過去2回と微妙に変わっているのにお気付きでしょうか。
「もっと勝てる!『カルドハイム』シールド」
ということで、公式にて記事を書かせていただいてこれが3回目になりますが、今回はドラフトについて解説してきた過去2回とは違う「シールド」フォーマットについて触れていきたいと思います。
もくじ
なぜ今「シールド」なのか
まずはなぜ過去2回ドラフトのことを書いていたのに、今回急にシールドについて話すことにしたのかを話したいと思います。
MTGアリーナで行われる誰でも参加可能な2日制の賞金制トーナメント「アリーナ・オープン」。今まで数回行われてきましたが、どの回もとても人気の高いイベントとなっていました。
そして今年の2月、アリーナ・オープンにて初めてリミテッド・フォーマットの1つであるシールドが採用され、多くのリミテッダーが歓喜しました。もちろんぼくもその1人であり、嬉々として参加して、幸運にも2日目に7勝を達成し最高額で賞金を手にすることができました。
さらに今週末の3月13~14日にもMTGアリーナ内で、最高峰の大会である「セット・チャンピオンシップ」に出場するための大会「予選ウィークエンド」が行われるのですが、そのフォーマットも『カルドハイム』を用いたシールドとなっています。
MTGアリーナが競技マジックのメインになって以来、トーナメント・シーンにおいてリミテッドは取り残された存在でしたが、それが今変わりつつあります。
競技種目としてのドラフト実施にはまだ時間がかかるとのことでしたので、今回は現時点で最もアツいフォーマットであるシールドについてご紹介することにしたというわけです。
それでは、さっそく解説に入りましょう。
まずは緑多色を理解する
『カルドハイム』リミテッドを語る上で、最も重要なアーキタイプが「緑多色」です。
ドラフトにおいても強力なのですが、シールドでは自分の使用する強力なカードや氷雪土地の色を選べないという理由から、さらに使用頻度の高いアーキタイプとなっています。おそらく本環境のシールドにおいて、かなりの回数お世話になることでしょう。
緑多色をやるべきかどうかの判断基準
緑多色をやるべきかどうかは、以下の3点がチェックポイントとなります。
1.緑という色の強度と、色マナサポートの数
まず「緑」多色というからには当たり前なのですが、やるべきかどうかを検討する上で最も重要なのは、緑という色が使用するに値するかどうかを検討することです。
通常シールドではまず初めにレア・神話レアを確認した後、すべての色のプレイアブルな(使用に耐えうる)カードとそうでないカードを分けて、それぞれの色の強度を見るのが一般的ですが、この環境に限って言えば「まず緑をやれるかどうか」を見るのが良いです。
緑という色自体の強度と色マナサポートの両方を見る必要があり、強度の指針となるカードはコモンだと《サルーフの群友》《貪欲なリンドワーム》の枚数、色マナサポートだと《冬を彫る者》《輝く霜》やアンコモンの《世界樹への道》《アルダガルドのスピリット》があるかどうかなども重要になります。
もちろん《エシカの戦車》や《秘密を知るもの、トスキ》などの強力なレアがあれば、なお言うことはありません。
2.強力な多色のカードの存在
この環境における多色カードのカードパワーは群を抜いています。それらの多くを採用できるということは緑多色の大きな強みです。
特に1枚で勝ちうるような切り札級のカードと、強力かつ緑が絡んでいるカードに着目するといいでしょう。前者は例えば《イマースタームの捕食者》《スカルドの決戦》《情け無用のケイヤ》など、後者は《古き神々への束縛》や《氷刻み、スヴェラ》といったカードたちになります。
3.氷雪土地の存在
与えられた氷雪土地の種類や枚数も、緑多色を組めるかどうかを検討するうえで必ず確認しなければならない事柄でしょう。基本的にシールドで使用できる氷雪土地は、パックから出ることが決まっている6枚の基本土地もしくは2色タップインランドと《煌積の谷間》(と一応レアですが《不詳の安息地》)がすべてです。
それらが上手く複数枚デッキに組み込めるようになっているかは緑多色を組む上で影響します。《冬を彫る者》は氷雪土地がないと真価を発揮できないですし、《世界樹への道》や《アルダガルドのスピリット》の強さも変わってきます。
5 《森》 1 《冠雪の森》 4 《平地》 1 《冠雪の平地》 1 《山》 1 《冠雪の山》 2 《沼》 1 《極北の並木》 1 《世界樹》 -土地(17)- 1 《牙持ち、フィン》 1 《仮面の蛮人》 1 《物語の探究者》 1 《嘘の神、ヴァルキー》 2 《北方の先導》 1 《領界渡り》 2 《サルーフの群友》 1 《イマースタームの捕食者》 2 《灰毛の先導》 1 《練達のスカルド》 -クリーチャー(13)- |
1 《世界樹への道》 1 《強力のルーン》 2 《金への捕縛》 2 《鉄の評決》 1 《悪魔の稲妻》 1 《ファーヤの報復》 1 《スケムファーのための闘争》 1 《エルフの弓》 -呪文(10)- |
こちらはMPL所属の行弘賢選手が前回アリーナ・オープンにて7戦全勝して賞金を獲得されたときに使用していたデッキです。まさにお手本のような緑多色ですね。
緑を主色としつつも《イマースタームの捕食者》や《ファーヤの報復》、《嘘の神、ヴァルキー》といった緑ではない多色の強力なカードが上手く使える構成になっています。
緑多色を組む上で気を付けること
マナベース
多色デッキを構築するときにまず考えなければならないのはマナベースです。何も考えずに強いカードを端から入れていけばいいわけではなく、上手くデッキが回るようにバランスを取る必要があります。
自分のデッキのメインカラーを強く意識して(基本的にはマナサポートがあるのなら緑になることが多いはずです)、それ以外の色のダブルシンボルのカードはあまり採用しない、除去でない軽いカードのタッチは避ける、2色でのタッチとなるカードはボム(1枚で戦況を左右するカード)だけにする、など工夫をしてみてください。
ぼくの見てきた経験では、構築フォーマットを多くプレイしていてあまりリミテッドに慣れていない方は、自分にとって都合の良い状況だけを意識してマナベースに負荷をかけ過ぎている印象を受けます。
緑をタッチで使うという選択肢を忘れない
この環境のシールドに慣れて何度も緑多色を構築し、最初に緑のカードをとりあえず並べて使える使えないを判断するようになると意外に抜け落ちてしまうのが、緑をメインカラーではなく「タッチで使う」という発想です。
6 《島》 3 《平地》 1 《冠雪の平地》 2 《森》 1 《極北の並木》 1 《移り変わるフィヨルド》 1 《森林の地割れ》 1 《煌積の谷間》 1 《イストフェルの門》 -土地(17)- 1 《雪崩呼び》 1 《クラリオンのスピリット》 1 《物語の探究者》 2 《煙霧歩き》 2 《嘲笑の人形》 2 《見張るもの、ヴェイガ》 1 《黄金口の勇者》 2 《サルーフの群友》 1 《アクスガルドの自慢屋》 2 《氷山の徘徊者》 1 《ブレタガルドの守護者、メイヤ》 1 《霜のモーリット》 -クリーチャー(17)- |
1 《怪物縛り》 1 《巨人の護符》 1 《金への捕縛》 1 《多元宇宙の警告》 1 《アールンドの天啓》 1 《エシカの戦車》 -呪文(6)- |
《エシカの戦車》はもちろん、《サルーフの群友》もタッチで使いやすいカードです。それらは使いたいけれど、他の色の組み合わせも悪くないといったときは緑をタッチするという選択肢も考えてみてください。
対緑多色で有効なアプローチ
ここまでは自分が緑多色を構築する際に意識することを説明してきましたが、ここでは相手のデッキが緑多色だったときに、2戦目以降どういうアプローチが有効なのかを考えていきましょう。
相手のマナベースを見る
1ゲーム目でチェックしておきたいのは、相手のマナベースがどれだけ脆弱か(あるいは強固か)です。相手にとって《輝く霜》は、あるいは《ヤスペラの歩哨》はどれだけ重要でしょうか。
それによってこちらは、時には《悪魔の稲妻》を《ヤスペラの歩哨》に打つ必要があるかもしれません。また追加の《神聖の発動》をサイドインしたり、ときには普段は使用に堪えないであろう《大当たり》のようなカードさえ入れたほうがいいかもしれません。
逆に相手のマナベースは強固ですべて無視したほうがいいこともあります。相手のタッチしているカードなどからデッキ構造を推測していきましょう。
相手のゲームレンジを見る
予顕、誇示といったキーワード能力は先手のほうが使いやすいため基本的にはこの環境は先手を取るべきだと思っていますが、相手のデッキ構造によって柔軟に変えるべきでしょう。
特に相手が除去が多くコントロール指向の強い遅い多色デッキだったり、相手のデッキが不安定だったりすると後手を選ぶのも有効ですね。
~まとめ~
- 緑多色をやるためにまず緑の強さ、強力な多色カード、氷雪土地の色を確認する。
- マナベースに気を遣う。緑をタッチするという選択肢を忘れない。
- 対緑多色では相手のマナベース、ゲームレンジをしっかり見ておく。
次に2色アグロを理解する
緑多色はこの環境屈指の強力なアーキタイプですが、毎回できるわけではありません。そもそも緑に十分なカードがなかったり、強力なレアがなかったり、マナベースが不安定すぎて構築できないことも多々あります。
そこでもう1つのこの環境のシールドで勝つための有力なアプローチが2色アグロです。基本的に2色アグロには白か赤を使用することになります。
2色アグロを構築する際の着目点
2色アグロを構築する上では、以下の点に気を配りましょう。
1.装備品が何より重要
予顕によって通常より早いターンに大きなサイズのクリーチャーが出たり《ドワーフの援軍》などをプレイされてしまうこの環境では、能力を持たない2/2や3/2といったサイズで戦線を突破することは難しいです。
低いマナ域からクリーチャーを展開していく上で最もアグロデッキに必要なのは、装備品です。特に環境最強色は緑なので、それに対して有効な飛行を付与することができる《鴉の翼》が強力と言えるでしょう。
2.押し切れるようなカードを積極的に採用しよう
アグロデッキを構築するときはカードパワーだけでなく、デッキの方向性も意識してカードを選択するようにしたいです。緑多色のようなデッキでは使いづらい《ケイヤの猛攻》や《猛り狂い》、時には通常はあまりデッキには採用されない《裏切りの手枷》、《マンモス化》のようなカードもデッキによっては必要かもしれません。
3.可能なら別プランのデッキも組めるとなお望ましい
この環境には《ドワーフの援軍》や《弱者粉砕》など、対緑系ミッドレンジ戦でそこまで強くないためメインデッキには入りづらいものの、アグロデッキに対するサイドボードとしてはクリティカルなカードたちが少なくない枚数存在しています。
アグロデッキは基本的に相手が正しく対応してきてしまうと、2ゲーム目以降の勝率が大きく下がりがちです。そこでこちら側もミッドレンジにシフトできたり、そもそも別の色のデッキを持っておけるのであれば、相手のサイドボーディングを逆手に取って以降のゲームを有利に運ぶことができます。
なので、できればアグロデッキを使う際には、可能であればもう1つ別のデッキや違うプランが組み立てられるといいですね。
相手の対応を間違えさせたいという同様の理由で、同じくらいの強さの緑多色やミッドレンジとアグロデッキが組めた場合は、アグロデッキをメインデッキとしてプレイすることをおすすめします。ミッドレンジや緑多色のほうが強いのであればそちらをメインにして、先手の時だけアグロデッキの方をプレイするのも面白いかもしれません。
シールドをあまりやっていない方にとっては驚きかもしれませんが、このフォーマットにおいてデッキを2つ組んでおくというのは割と一般的です。それもマジックで唯一サイドボードのほうがメインデッキよりも多いフォーマットであるシールドの醍醐味ですね。
サンプルデッキ
9 《森》 8 《山》 -土地(17)- 3 《恐れなき解放者》 1 《護衛の林歩き》 1 《厚顔の無法者、マグダ》 1 《首折りの狂戦士》 1 《老樹林のトロール》 1 《氷刻み、スヴェラ》 1 《サルーフの群友》 1 《秘密を知るもの、トスキ》 1 《灰毛の先導》 1 《根無しのイチイ》 2 《貪欲なリンドワーム》 -クリーチャー(14)- |
1 《霜噛み》 1 《アーニ、トロールを制す》 1 《猛り狂い》 1 《壊れた翼》 1 《悪魔の稲妻》 1 《スケムファーのための闘争》 2 《鴉の翼》 1 《エシカの戦車》 -呪文(9)- |
ぼくが2月度のアリーナ・オープンにて使用し、7勝した2色アグロデッキです。
なんと土地構成は森9・山8、そして氷雪土地が0枚です。緑多色のようなデッキも組めつつ、こういうまったく別軸のデッキでも勝つことができるのがこの環境の奥の深さを示していますね。
8 《平地》 6 《森》 1 《冠雪の森》 1 《煌積の谷間》 -土地(16)- 1 《戦場の猛禽》 1 《掟綴りの僧侶》 2 《ベスキールの盾仲間》 2 《クラリオンのスピリット》 1 《護衛の林歩き》 1 《物語の探究者》 1 《北方の先導》 1 《ドゥームスカールの神託者》 2 《アクスガルドの自慢屋》 2 《サルーフの群友》 2 《秘密を知るもの、トスキ》 1 《古葉の導師》 -クリーチャー(17)- |
1 《星界の翼》 1 《ブレタガルドをかけた戦い》 1 《壊れた翼》 1 《マンモス化》 1 《スケムファーのための闘争》 1 《金脈のつるはし》 1 《鴉の翼》 -呪文(7)- |
こちらはぼくがMagic Onlineのトーナメントで4勝したデッキです。
2枚ずつの《クラリオンのスピリット》と《秘密を知るもの、トスキ》、スタンダードの「ナヤ・クラリオン」を彷彿とさせるようなデッキで、プレイしていてとても楽しかったです。強いところさえしっかりしていれば、あとは弱いカードで補強するだけでも戦えるのがアグロのいいところですね。
なんだかんだこういう再現性のまったくないような、一期一会なデッキを回して勝っているときがシールドは一番面白いです(笑)。
~まとめ~
- 2色アグロを組む上では、装備品が何より重要。
- デッキの方向性に合った、押し切るためのカードも積極的に採用していこう。
- 特にアグロをプレイするのなら、違うゲームレンジのデッキがあればなお良い。
終わりに
ここまで読んでくださり、ありがとうございました! 今回は『カルドハイム』のシールド・フォーマットについて、代表的な2つのプランニングについて説明させていただきました。少しでも参考になることがあれば、またシールドというフォーマットの魅力を少しでも知ってもらえたなら幸いです。
マジックの中で最も純粋で美しいフォーマット、それがシールドです。
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaやリード・デューク/Reid Dukeら世界のトップ・オブ・トップとも言えるプレイヤーたちが(現在のプロ級トーナメントでは基本的に使用されないにも関わらず)「最も好きなフォーマットはシールドである」と過去にインタビューで答えています。
皆さんも、もっともっとシールドをプレイして楽しんでください!
では、また次回お会いしましょう!
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