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Play Design -プレイ・デザイン-
非競技的環境向けのデザイン
非競技的環境向けのデザイン
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年11月3日
こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今回はわたしたちが非競技環境向けのカードをデザインする理由と方法についてお話ししようと思います。マジック:ザ・ギャザリングはデッキを構築するゲームであり、ゲームよりも組み合わせ自体に多くのものがあります。わたしたちがプレイするフォーマットのデッキ構築や探求には多くの楽しみがあり、プレイ・デザインの仕事は、最も優秀な成績を残すグランプリのデッキから、キッチンのテーブルでプレイされる突拍子もない底辺のデッキまで、幅広いデッキへ十分な選択肢を供給することです。
この記事のためにわたしはデッキを3つの分類に分けます。
- トップのデッキ――これはあなたが何度も繰り返し見ることになるデッキです。グランプリのような競技的なトーナメントが好きならば、これらのデッキが何であるか、そしてその倒し方を知っているほうがよいでしょう。これらのデッキはグランプリやプロツアーで優勝する可能性がとても高いものです。
- 次の分類のデッキは、強いけれども安定してプレミア・イベントのトップ8になるには十分ではないデッキです。これらのデッキはグランプリに優勝することができ、あなたの向かいに座っていてもおかしくはないでしょう。
- 3番目の分類のデッキは非競技的デッキです。これらのデッキは通常突拍子もない戦略やコンボを採用していて、プレミア・イベントで安定して好成績を残すには不十分な強さです。これらのデッキはグランプリで優勝はしないでしょうが、フライデー・ナイト・マジックやスタンダード・ショーダウンのような競技性の少ないイベントを勝つことはできます。
先週、アダム・プロサック/Adam Prosakは1つのフォーマット内での最強デッキを見つけることについて語りました。この記事の要点の1つは、わたしたちはどのデッキが最強か分かっている環境を作ろうとはしないという点です。
プレイ・デザイナーたちがあるデッキが最強であると同意した場合、わたしたちはどのデッキが最強かはっきりわからなくなるように、そのデッキか他のデッキに何らかの変更を行います。わたしたちがやろうとすることは選択肢と探求するべき物事がたくさんある環境を作り上げることです。1強のデッキが存在しない限り、デッキは発見されると自然にこの3つの分類へと当てはまっていきます。
非競技環境向けにデザインを行うときに求めるものは?
多くのプレイヤー、そしてこの記事の読者の大部分はマジックを競技的にプレイし、そして最高レベルで優れた成績を残すものという観点からデッキのことを考えています。ですが、マジックをそういった考えかたで捉えていないプレイヤーも数多く存在します。マジックには、この間のグランプリでどのデッキが優勝したかということよりももっと多くのものがあるのです。
非競技環境を作り上げるとき、そこにはわたしたちがその要求に応じるべき、さまざまなタイプのプレイヤーが存在します。新しいプレイヤーやコレクションの少ないプレイヤーは非競技的なデッキをプレイすることが多いでしょう。彼らはより競技的なものを構築可能にする知識やリソースを持っていないかもしれませんし、コレクションの乏しさによって制限を受けているのが普通です。
また、わたしたちはジョニー/ジェニーの要望にも応えたいと思っています。デッキの軸となる面白いカードや見つけにくい戦略はしばしばこの分類に入ります。
最後に、FNMレベルやそれ以下でだけプレイをしているプレイヤーの要望に応えることは大事です。多くのプレイヤーはプロツアーでプレイしたいとは思っていませんが、それでも楽しくカジュアルなトーナメント環境でプレイしたいと思っています。わたしたちは競技性の少ない選択肢をそれらのプレイヤーに提供したいと思っています。
どうして「最高のデッキ」ではないデッキでプレイしたいと思う人がいるのかと疑問に思うかもしれません。多くの競技プレイヤーはマジックをプレイするときに1つの目標を持っています――それは勝つことです。
しかし、マジックは最も競技的なプレイヤー以外の要望にも応えられるゲームです。一部のプレイヤーは何かを達成したり証明したりしたいと考えています。ビデオゲームでは、しばしば何か難しいことをすると報酬がもらえる実績(アチーブメント)があります。そのゲームをしていてこれらの実績を無視することができますが、一部のプレイヤーは100%コンプリートしたいと考えます。マジックではそのような実績はありませんが、友達に誰でもできることではないクールなことをできることを証明しようとする社会的な側面があります。このようなデッキ構築上の挑戦は競技的な上位のデッキでは届かないかゆいところに手が届きます。
わたしたちが非競技的なカードをデザインするときに探すものの1つは、存在が少なければ楽しい戦略です。例えば、時々ならば本当にクールだけれども、最高レベルで頻繁に起こると楽しくない、独特な物事です。
その一例が《精神隷属器》です。《精神隷属器》は斬新で派手な効果ですが、頻繁に起こると問題があります。他のプレイヤーのターンをコントロールすることは時間がかかり、両方のプレイヤーの視点からの考慮するべき無限の要素によって正確にプレイすることが困難です。
『異界月』で《約束された終末、エムラクール》を作ったとき、わたしたちは物語上のキャラクターを構築フォーマットのトップメタのデッキで使えるように推していました。わたしたちはエムラクールがすごくて派手な能力を持ったクリーチャーだと分かっていて、競技レベルの構築フォーマットで流行させるという目標を達成しました。しかしながらわたしたちは《精神隷属器》することが時々起こるのであればクールで楽しいけれども、1ゲームに3回も4回も起こると不健全であることに気づくことができず、そしてエムラクールがスタンダードで禁止されるのは避けられませんでした。
去年のプレイ・デザイン・チームの創設以来、開発部はこのような効果を高レベルのスタンダードから遠ざけつつ、非競技的環境向けにそれらを楽しい比率に保つことにより焦点を当ててきました。『破滅の刻』でわたしたちが非競技レベルの超楽しいカードだと思っているのが、《冠毛の陽馬》です。わたしたちはこのカードが競技的なデッキの軸になるカードになれないことを分かっていましたが、それでもこれはプレイヤーにデッキ構築上の挑戦を提供しました。このカードはプレイヤーがこれを探求するのに足る十分な強さを持ち、馬部族でもライフ獲得戦略でも探求するべき多くの視点があります。
20 《平地》 4 《信義の砂漠》 -土地(24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《栄光半ばの修練者》 4 《単体騎手》 4 《空中対応員》 3 《折れた刃、ギセラ》 4 《冠毛の陽馬》 -クリーチャー(23)- |
4 《霊気圏の収集艇》 4 《永遠の見守り》 2 《停滞の罠》 3 《排斥》 -呪文(13)- |
わたしたちが楽しく健全であると発見した非競技的なデッキのもう1つの例が、《マリオネットの達人》コンボです。わたしたちは『イクサラン』の宝物がその前年の『カラデシュ』のテーマとシナジーを形成することを知っていて、そして《マリオネットの達人》が宝物を使うクールな方法を提供すると感じていました。
このデッキは構築が難しくそのコンボは準備が困難でした。宝物を出すカードをたくさんプレイする必要があり、それらの一部は弱く、そしてこのデッキはしばしば安定性に欠けます――特に《呪文詐欺》で打ち消すことに頼っている場合はなおさらです。
このデッキを競技スタンダードに推す場合、潜在的な問題があります。宝物は対処が難しく、《マリオネットの達人》が解決されるとその場でゲームに勝ってしまいかねません。しかし宝物を出すカードと《マリオネットの達人》自体は強力ですが十分重く、毎週グランプリのトップ8になるのに十分な安定性はありません。
以下のリストはコンリー・ウッズ/Conley Woodsが彼の配信で調整した《マリオネットの達人》デッキの1つです。
2 《島》 2 《沼》 2 《山》 4 《異臭の池》 4 《尖塔断の運河》 1 《泥濘の峡谷》 4 《竜髑髏の山頂》 2 《産業の塔》 1 《発明博覧会》 -土地(22)- 4 《禁制品の黒幕》 3 《ピア・ナラー》 4 《マリオネットの達人》 -クリーチャー(11)- |
4 《旅行者の護符》 4 《宝物の地図》 3 《予言のプリズム》 2 《削剥》 2 《欲望の深み》 2 《無許可の分解》 3 《海賊の獲物》 2 《呪文詐欺》 1 《サヒーリ・ライ》 4 《策謀家テゼレット》 -呪文(27)- |
わたしたちが好きなものの1つは、開発部が予期しなかったカードの使い方を見つける時です。わたしたちはフォーマットに過剰を設計しようとはせず、プレイヤーにわたしたちが見逃したことを見つけてほしいと思っています。わたしたちは多くの用途を見つけられるプレヤーへたくさんの選択肢と楽しいカードを提供したいと考えています。わたしたちが楽しい選択肢を提供すればするほど、競技的であってもなくてもより多くの異なるデッキや戦略が存在するようになるでしょう。
今回は以上です。お読みいただきありがとうございました! RedditやTwitterでの感想を楽しみにしています。
それではまた次回。
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
今週のお話
アレン・ウー/Allen Wu著
マジックの開発部はウィザーズの社屋の一角を10年以上に渡って占領していて、奈落と呼ばれて親しまれている。私が2か月前にここに来たときの自撮りで、そのパーテイションはよく整備されているけども年季が入ったものなのが見て取れる。新入社員は空いてる机ならどの場所でももらえて、プレイテスト用のテーブルは全部の真ん中に置いてあるので、開発部内のさまざまなグループが混在していた。
2~3週間前、我々は3階の違う場所、窓際に引越しした。新しいパーテーションとテーブルが手に入り、各チームはそれぞれの区域を割り当てられた。プレイ・デザインはプレイテストをするときに他のチームの邪魔にならないよう注意しなければいけなかったが、今や自分たちのスペースでジョークを飛ばし、対戦について議論できるようになった。設備担当はいくつかのオーバーサイズのプレイマットさえも手に入れてきた。
また我々は素敵なソファーをいくつかと、私が見た中で最高の土地用の箱も手に入れた。
しかしながら、この引越しの一番エキサイティングなところは、そのプレイマットやソファーではない。調節可能な机や、エルゴノミック・チェアでもない。
アンドリュー・ブラウン/Andrew Brownとブライアン・ホーレー/Bryan Hawleyは6か月間で誰が一番背の高い植物を育てられるか賭けをしていた。先週チーム全体でホームセンターに行って彼らが植物を選ぶ手伝いをして、5月1日に高さを比べることになった。下の画像の左の植物がブライアンので、右がアンドリューのだ。
アンドリューの植物が店の植木鉢のままで、オフィスのキッチンから持ってきたお椀の中に入っているのに気づいたかもしれない。アンドリューは引越しの後に植物が欲しくなったときにブライアンに思いつきで賭けを持ちかけて、我々はみんな驚いた。アンドリューのすごいところは、我々に「生き物を育てること」が彼の分野だと考えられているとは思えないところだ。それだけでなく、ブライアンは典型的な園芸家だ。注意深く、我慢強くて、用心深い。ポール・チェオン/Paul Cheonはアンドリューにこの賭けに勝つチャンスを33%と考えて、ダン・バーディック/Dan Burdickはそれを強気だと考えた。
ブライアンが家で鉢植えを移し変えて次の日に持って戻ってきたとき、アンドリューはブライアンがすでに新しい植木鉢と土を買ったことに驚いていた。「前から持ってたよ」とブライアンは返した。彼はこれらを最初から持っていたんだ。
負けたほうはサスペンダーとフェドーラをつけて1週間仕事しなければならないので、私はこの競争の結果が見えてくるにつれてヒートアップしていくことを期待している。そしてアンドリューはまだ我々に見せていない仕掛けをいくつか持っているのではないかと私は疑っている。
いずれにせよ、参加者のうち1人はオフィスでの永遠の名声を運命づけられた。
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