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Play Design -プレイ・デザイン-
強さのための解決
強さのための解決
Adam Prosak / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年10月27日
始める前に、まずはマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの記事「展望デザイン、セット・デザイン、プレイ・デザイン」を紹介しよう。開発部内の舞台裏を見ることに興味がある人向けに、マークは物事がどのように変化しているかについて少し説明をしている。私は将来の開発部とその中でのプレイ・デザインの役割にとてもワクワクしている!
本日の記事は我々の記事の大部分とは少し異なっている。本日、私はある1つの興味深い質問と、そしてプレイ・デザインがマジックのセットに関してどのような取り組みを行っているかについて話したいと思う。
プレイ・デザインはほとんどが不完全な情報に基いて活動する。我々は通常、現実世界よりも3~4セット先の仕事をしている。みんなが『イクサラン』を楽しんでいる(といいな!)ころ、プレイ・デザインは2018年の秋セットである『Spaghetti』に必死に取り組んでいるんだ。現在のフューチャー・フューチャー・リーグと現実世界で重なっているセットはただ1つ、『イクサラン』だけだ。これはつまり、我々が把握しようとしている環境の大部分がかなりの未知数であるということになる。
我々は現実世界のデータを(大量には)見ることができないが、プレイ・デザインは我々を導くことを助けるためにさまざまな戦術を用いる。我々はマジックの歴史的な傾向を多く見てきている。我々は過去のマジックの環境を見て、何がうまく行き、何がうまく行かなかったかの分析を行う。また我々は多くの理論構築を行い、そして答えるのが難しい(もしくは不可能な)質問をすることはしばしば我々を有用な情報へと導く助けとなる。そんな質問のいくつかを紹介しよう。
環境がローテーションする前に最強のデッキはどのぐらいの頻度で見つかるのか?
もし具体的な答えを期待しているのであれば、申し訳ないが君の助けにはなれない。しかし、この質問について話をすること(大好きだ!)はプレイ・デザインが素晴らしい環境を作り上げるために重要なことだ。この質問は多くの他の質問につながり、それらはプレイ・デザインの過程を通してとても重要な洞察をもたらしてくれる。
何をもってデッキを最強と分類するのか?
他の多くの課題と同じく、条件を設定しておくことは重要だ。この課題では、「最強のデッキ」を以下のように分類する。
- 最近のスタンダードのデッキ。ローテーションのないフォーマットは主に新しいカードの発売によって常にデッキ発見の過程が存在する。初期のスタンダードはそれほどプレイされておらず、マジックのコミュニティがデッキを洗練するためのトーナメントが複数回あったことは稀だったので、最近のスタンダードに焦点を当てたいと思う。
- 他のものよりもトーナメントで優勝する確率が高いデッキ。その例にはフェアリー、アブザン・リアニメイト、カウ・ブレード、白青デルバーが含まれる。もし君がトーナメントに出る準備をするなら、このデッキを選べばそのトーナメントに優勝する確率が最も高い。最強のデッキが最もプレイされていたデッキであることもあるが、この課題では人気ではなく強さだけを考慮する。これは「何がデッキを強くしているのか?」という質問につながるが、それは別の記事のテーマだ。
- あらゆるスタンダード環境には最高のデッキが1つだけ存在する。理論的に、真に最強のデッキは1つだけだが、我々の考えでは優れたスタンダード環境というのは何が最強であるかについて意見の一致しない環境のことだ。最強のデッキが多くの異なる戦略に弱いということはありうる(そしてそれは望ましいことだ!)。
どうやってローテーション後の強力なデッキを見つけ出すのか?
FFLのデッキは強い
理論的には、FFLのデッキが現実世界のものよりも強いということは起こりうる。我々が組んだ最強のデッキはどれも高レベルのトーナメントでプレイされたものよりも強くなる可能性がある。しかしながら、2つの理由からそうなることはほぼ不可能に近い。
- 数百万は数十に優る。プレイヤーは数百万いて、そして我々開発部はわずか数十人だ。開発部内の我々は君たちみんながセットが発売されたときに行う調査の量に近づくことができない。皆が我々の考えもしなかったような全てのクールなことを見るのは私が開発部内で働く中で好きなことの1つだ。
- プレイテスト時にプレイ・デザインの全メンバーがあるデッキを最強だと同意した場合、我々はどのデッキが最強であるか分からなくするようにいくつかのカードを変更する可能性が高い。もし少数のプレイ・デザイナーが最強のデッキを発見できるなら、皆がそれを把握するのに長い時間はかからないだろう。そういうことが起こると、探索の過程は失われ、その環境はより早く陳腐化してしまう。
シーズン後半での発見
しばしば、最強のデッキがすぐには見つからないことがある。思い浮かぶ例は2つある。1つめはマジックの歴史上最も有名なデッキであり、史上最強のデッキの議論に挙げられるデッキの1つだ。厳密には私が上で挙げたルールに違反しているが(古いデッキであり、今はなきエクステンデッドのデッキだ)、このデッキを紹介せずにはいられない。
4 《Underground Sea》 4 《Volcanic Island》 4 《Badlands》 4 《地底の大河》 4 《宝石鉱山》 2 《真鍮の都》 -土地(22)- -クリーチャー(0)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《Demonic Consultation》 4 《強迫》 4 《魔力の櫃》 4 《吸血の教示者》 2 《ごまかし》 4 《寄付》 4 《ネクロポーテンス》 4 《Illusions of Grandeur》 4 《意志の力》 -呪文(38)- |
2000年のグランプリ・フィラデルフィアで、今年の世界チャンピオンであるウィリアム・ジェンセン/ William Jensenがプレイしたこのデッキには、現在のレガシーの禁止制限リストに名を連ねるカードが満載だ! 驚異的な安定性を供給するために《吸血の教示者》や《Demonic Consultation》を使い、このデッキの狙いは序盤に《ネクロポーテンス》をプレイすることだ。《ネクロポーテンス》で手札を増やし、20点のライフを得るために《Illusions of Grandeur》を使い、それを対戦相手に《寄付》し、そしてその対戦相手は累加アップキープを払えなくなれば20点のライフを失うことになる。
紹介するもう1つの例は最近のスタンダードのものだ。プロツアー『戦乱のゼンディカー』で、マット・ナス/Matt Nassは下記のデッキでその時にプレイしていた他の何人かのプレイヤーよりも優秀な成績を残した。
1 《森》 1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 2 《梢の眺望》 1 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《進化する未開地》 -土地(25)- 3 《シディシの信者》 4 《エルフの幻想家》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《ズーラポートの殺し屋》 4 《地下墓地の選別者》 4 《不気味な腸卜師》 4 《ナントゥーコの鞘虫》 -クリーチャー(27)- |
4 《先祖の結集》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
4 《ジャディの横枝》 2 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 2 《肉袋の匪賊》 4 《払拭》 3 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
プロツアー『戦乱のゼンディカー』ではほぼ全くいなかったにも関わらず、このデッキはグランプリ・サーキットを支配し、このシーズンにおける最強デッキの地位を確固たるものにした。理論的には、このようなデッキが発見されるまでにはそのスタンダードのシーズンまるごとよりも時間がかかる可能性がある。もしマット・ナスが他のデッキに興味を示していたらどうなったか? もし彼がエイリアンに拐われていたら? このデッキは今発見されていただろうか?
《先祖の結集》のようなデッキは、私に我々が最強のデッキを見つけることなくスタンダードのシーズンが終わってしまうというある程度の確信を与えてくれた。しかしながら、数百万のマジック・プレイヤーによって、大部分の場合その最強デッキは明らかになっていると私は信じている。ないことを証明しようとするのは馬鹿らしいので、私はこの元々の答えに100%の確信を持って答えることはできない。
プレイ・デザインでは、我々はこのような質問をたくさん問いかけている。我々は多くの未知の変数を扱い、そして我々が作っているマジックの環境について良く分かった上で質問をしなければならない。我々の目標は、たとえ我々自身で完全に解明できないとしても、楽しく魅力的な環境を作り上げることだ。
我々が新しい環境の強力なデッキのバランスを取るに際して、プレイ・デザインが答えを探している質問を見て楽しんでもらえたなら幸いだ。メリッサは来週戻ってきて、さらなるプレイ・デザインの洞察をもたらしてくれるだろう!
――アダム
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