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Play Design -プレイ・デザイン-
コンボの理念
コンボの理念
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年8月4日
「Play Design -プレイ・デザイン-」にようこそ。今回はコンボ・デッキと、それらの背景にある開発部のガイドラインと理念についてお話ししようと思います。最初に指摘しておきたいのは、コンボ・デッキのための厳格なルールがあるわけではなく、楽しい環境を作り出すという目標を達成するためのガイドラインがあるだけだということです。
コンボとは?
コンボとはそれらの合計よりもとても強力な相互作用を持った複数のカードのことを指します。例えば、《やっかい児》それ単体ではあまり影響がありません。《欠片の双子》はそれ単体では何もしません。しかし、この2枚のカードが組み合わさると無限のクリーチャーが生み出されます。この相互作用は2枚カードそれぞれよりもとても強力です。
シナジーとは?
シナジーとは一緒に上手く機能し、機能を高めあう複数のカードのことを指します。シナジーの高いデッキはコンボ・デッキであることもありますが、必ずしもそうではありません。例えば、ゴブリン・部族デッキはシナジー的デッキですがコンボ・デッキではありません。
コンボ・デッキはシナジー・デッキの一種です。一度に強力な効果を発揮する複数のカードを集めようとします。基本的にその効果は勝ち手段です。わたしたちはコンボとシナジーがどちらもマジックに存在することは、探求をもたらしデッキ構築を楽しくするので健全なことだと考えています。しかしながら、一部のコンボは不健全で、一部は抑圧的ですらあります。
以下はわたしたちが守っているコンボを楽しく健全にするためのガイドラインの一部です。
速度
コンボ・デッキがそのフォーマットの最速のアグロ・デッキよりも速いことは不健全です。お互いにやり取りがないので、アグロは勝ち目のない純粋な速度勝負を強いられます。やり取りがない場合、どちらのデッキも本質的に金魚すくいであるためコンボ対アグロは面白い対戦ではありません。その対戦は一方的で楽しくありません。コンボがアグロよりも速い場合、それはアグロのメタゲーム上の役割を取り除いてしまいます。
金魚すくい/Goldfishing
自分自身に対して対戦相手なしでマジックのゲームをする――マジックのゲームを1人回しすること。
その一例がレガシーでの「Zoo」対「ストーム」です。Zooがこのフォーマットで最速のアグロ・デッキだった時期がありましたが、ストーム・コンボはそれよりも1ターン早かったのです。Zooがストームに干渉する方法はほとんどなく、程なくしてZooはメタゲームから姿を消してしまいました。現在のレガシーでは、純粋なアグロはコンボよりも早く勝つことができないため実際にあまり見かけません。
干渉の余地
コンボに干渉の余地がある場合は健全です。わたしたちが避けようとしているコンボのタイプの1つは、ストームのような空の盤面から1ターンで勝ててしまうものです。ストームは何もないところから勝つことができます。パーマネントは使わずに手札の呪文を使います。打ち消し呪文のような呪文への干渉手段はこれに対して機能しません。《もみ消し》や《狼狽の嵐》のような特定のタイプの打ち消しが必要です。
干渉の余地があって楽しく強力なコンボはたくさんあります。通常これらのコンボは複数のパーツを集める必要があり、一定時間隙を見せなければなりません。モダンで人気を得て現在プレイされているコンボ・デッキは《献身のドルイド》と《療治の侍臣》です。このコンボは無限マナを出し、必要なカードは2枚だけですが、少し完成させるのが大変です。まず、《献身のドルイド》は1ターン戦場に留まらなければいけません。次に、どちらのクリーチャーも除去から生き残らなければいけません。さらに、この2枚だけでは勝つことができず、この無限マナで何かをする必要があります。というわけでこれは強力で早ければ3ターン目に完成できますが、これを止めるための多くの干渉できるポイントがあります。
《紅蓮術士の昇天》は複数の方法で干渉できるので、わたしたちが健全だと考えているもう1つのコンボ・カードです。これは1枚コンボで1ターンで相手を倒すことができますが、時間をかけて準備しなければ駄目で、そしてエンチャント除去や墓地除去で邪魔することができます。
健全なコンボは人々がよくプレイしているカードで邪魔できるか、1ターンよりも多くターンが必要か、対戦相手に何かするための余地を与えるものです。
《療治の侍臣》 アート:Randy Gallegos |
安定性
最も安定したコンボは必要なカードが最も少なく、重複するカードが最も多いものです。コンボが安定しすぎている場合、不健全な環境を作ることがあります。2枚コンボはそれらのカードを両方引く必要がありますが、時々コンボ・パーツには重複があり、その結果そういうデッキは安定性が高くなりすぎてしまいます。例えば《欠片の双子》では、《詐欺師の総督》と《やっかい児》の役割は同じで、《欠片の双子》と《鏡割りのキキジキ》も同様です。これらがそれぞれ同じデッキに入っているということは、本質的にコンボパーツが8枚づつ入っているということになります。
コンボが存在するとき、わたしたちはドロー操作と教示者には特に注意をしなければいけません。これらのカードが多すぎると、多くのコンボ・デッキを一度に安定しすぎるものにしてしまいます。《思案》、《定業》、《緑の太陽の頂点》、《吸血の教示者》、その他似たようなカードはそれらのある各フォーマットのデザイン空間に大きく制限をかけています。ドロー操作や教示者の数が少ない場合は、コンボ・デッキの安定性に制限がかかるので、わたしたちはよりリスクを背負ってクールなコンボ・パーツを印刷することができます。必要なカードが簡単に見つけられてしまうと、そのコンボデッキの勝率はとても高くなり、他の多くのデッキをメタゲームから追いやってしまうでしょう。
デッキ構築面での代償
コンボ・デッキを構築するときに考慮することの1つは、実際にそのコンボをデッキに入れることの代償です。そのカードはそれ自体が何かしますか? コンボが完成しない場合にそのデッキで何ができますか?
《霊気池の驚異》(『霊気紛争』前)を例に挙げてみましょう。このバージョンの霊気池は『霊気紛争』が発売された後の霊気池デッキほど機能しませんでした。このデッキは《織木師の組細工》や10マナのエルドラージなどのようなそれだけではほとんど何もしないカードをプレイしていました。
霊気池デッキは『霊気紛争』が発売され、《ならず者の精製屋》のような「プランB」を可能にするより強力なエネルギー・パーツを手に入れたことによって安定性が大きく増しました。コンボを引けない場合にでも、《つむじ風の巨匠》や《ならず者の精製屋》のようなカードで簡単に勝つことができます。これはつまり対戦相手はそのデッキに異なる角度から攻撃しなければならないということです。もし対戦相手が《霊気池の驚異》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》に対処したとしても、これらのクリーチャーに対処するリソースを持っていないかもしれません。対戦相手は必要とする回答が多く種類がありすぎ、そしてそのようなコンボ・デッキはスタンダードにとって健全ではありません。
これらのガイドラインを踏まえた上で、スタンダードにとって楽しく健全なコンボの例をいくつか紹介します。
《ズーラポートの殺し屋》《血統の観察者》《変位エルドラージ》――これは3枚3色のコンボです。全てのコンボ・パーツがクリーチャーで、このコンボへの干渉が容易になっています。
《新たな視点》コンボ――このデッキは空の盤面から勝つことができますが、このデッキは6ターン目まで何もできず、また打ち消しやエンチャント除去で妨害できます。
《上級建設官、スラム》《逆説的な結果》《霊気貯蔵器》――これらのパーツに干渉する手段はたくさんあり、《上級建設官、スラム》を出してからでないとコンボが開始できません。このデッキは安定性に欠けていて、《逆説的な結果》が引けないと勝てないことがよくあります。
わたしたちはコンボがスタンダードにあることが好きですが、そのコンボの強さと安定性には注意を払わなければいけません。スタンダードで異なるアーキタイプがプレイできることは大事で、強力なコンボの存在は多くの戦略を追いやってしまうことがあります。
今週のプレイ・デザイン・チーム
現実世界のスタンダードに追いつくことは、わたしたちがプレイ・デザインで行っていることの一部です。これによりプレイヤーの意見に対応し、将来のセットの潜在的な問題を解決することができます。先週はプロツアー『破滅の刻』があり、わたしたちの多くはプレイ・デザインのメンバーであるアンドリュー・ヴィーン/Andrew Veenの家でプロツアーの観戦「パーティー」をしました。
同じ部屋に一緒にいることで、配信でやっているようなデッキやプレイに関する話をすることができました。全てのクールなプレイをみんなで観て、わたしたちはプレイヤーが何を引けばこの状況を挽回できるかとか、わたしたちならこうしなかっただろうというプレイについて話すことに興奮しました。みんなで見ることはわたしの大好きな配信の観戦方法です。友達やコミュニティはマジックを世界で最も素晴らしいゲームにしているのです。
ではまた次回お会いしましょう。
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
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