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開発秘話

Play Design -プレイ・デザイン-

FFL初級講座・デッキの作りかた

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FFL初級講座・デッキの作りかた

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年7月28日


スペシャルサンクス:この記事の執筆を手伝ってくれたアンドリュー・ブラウン/Andrew Brown

 こんにちは皆さん。皆さんの多くがご存知のとおり、この記事は「Latest Developments -デベロップ最先端-」と入れ替わって始まり、リニューアルに伴いこの記事全体の焦点を当て直します。サム/Samはわたしたちがリミテッドとスタンダード向けにどのようにカードをデベロップしたかについていくつかの素晴らしい洞察をもたらしました。この「Play Design -プレイ・デザイン-」記事では、わたしたちはバランスを取る過程についてさらなる洞察を伝えたいと思います。今回お話しするのは、デッキ構築の裏側にあるわたしたちの思考過程と、1枚のカードを中心としてデッキを構築するときにわたしたちが求めているものについてです。

 バランスの取れたスタンダードのためにとても重要なことの1つは、デッキにとって重要となるカードを全てテストすることです。わたしたちが印刷するカードの多くは《灰色熊》や《司祭の祈り》、《ギデオンの叱責》のようなおなじみのクリーチャーや効果のものです。これらを理解するためにフューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)でテストをする必要はありません。

 しかし独特なカードはかなりの数存在していて、デッキの軸となるよく分からないカードや、構築フォーマットで使われることを意図したカードがかなりの数存在します。わたしたちはここで多くの理論構築をしますが、1枚のカードの有用性や可能性に関する議論だけでは不十分です。わたしたちはそれらのカードを必ずプレイしてみなければいけません。確信の持てないカードは全てテストします。

 わたしたちがFFLでデッキを作るときには従うべきガイドラインがたくさんあります。この記事では、そのガイドラインのうち1つについてお話ししようと思います。

 わたしはカード・ファイルに目を通すとき、初めてのときも、2回目も、そして3回目も、マジックのルールを壊しているカードを探します。たとえばコスト軽減効果を持つカード(探査、ファイレクシア・マナ)、コストを踏み倒して戦場に出すもの(《霊気池の驚異》、《召喚の罠》)、以前に印刷されたカードと何か違うか少し軽いもの(《粉砕》に対する《削剥》、《必殺の一射》に対する《鑽火の輝き》など)です。

 私がデッキを構築するとき、これらの「ルール」を壊すカードのリストを作って、そこからデッキ構築を始めます。またわたしたちはこれらのカードについて会議で議論をして、協力してデッキを構築します。わたしたちは基本的に一人で仕事をしますが、たくさんのカードがあり、それに比べてわたしたちの人数はとても少ないので、仕事が多くの目に触れることは参考になります。

 今回挙げる例は《ハゾレトの終わりなき怒り》です。これはデッキの中心になりたいと乞い願う効果を持った独特なカードです。わたしたちは主にFFLでのデッキの作り方について話そうとしていますが、これらの教訓は一般的なデッキ構築にも応用できます。これはデッキ構築を始めたときに自分自身に問うことがある2つの質問です。

質問1:これでできる一番強い動きは何? その動きをするためのカードは(FFLに)存在する? このカードを中心にした最狂のコンボ・デッキを作るために必要なカードは?

 わたしたちはそのカードの最強の動きを見つけたいので、最初にこの質問をします。デッキの軸となるカードには多くの方法がありますが、最狂で最強のコンボを見つけることが最初にするべきことです。ほとんどの場合、この最も強力な動きは、特にカード・プールに限りがあるスタンダードでは、最も安定性が低い動きでもあります。たとえば、《血統の観察者》、《ズーラポートの殺し屋》、《変位エルドラージ》はスタンダードでの無限コンボですが、安定性に欠け、3枚コンボで、簡単に妨害できます。


ハゾレトの終わりなき怒り》 アート:Victor Adame Minguez

 では《ハゾレトの終わりなき怒り》で可能な最強の動きはなんでしょうか? 点数で見たマナ・コストに5という上限があるため、これが見つけられるものには制限があります。その時点で、次に進むべき段階は、点数で見たマナ・コストの上限が5であるコンボを考え出すことです。

 カードのリストを作ったら、次の段階は実際にデッキを構築することです。覚えておきたいことは除去やマナ加速、一般的な詰め物のカードを多くプレイすればするほど、コンボの安定性が下がるということです。可能な限りコンボの安定性を高める手段を見つけることがここでの鍵です。教示者、デッキ圧縮、そして最も重要なのはやろうとしていることを準備段階で生き残る手段を入れておくことです。また《ハゾレトの終わりなき怒り》はカードを公開する前にライブラリーをシャッフルするので、占術や《渦まく知識》のようなデッキ操作効果はアウトです。

質問2:パワーレベルは置いておいて、それでできる最も安定性のある事柄は何? このデッキはコンボ・デッキとして機能しながらプランBを持つことは可能?

 プロツアー『カラデシュ』直後の霊気池デッキはこれの素晴らしい例です。このデッキは2枚コンボ(《霊気池の驚異》とエルドラージ)をプレイしながらコンボパーツを引くまで妥当でフェアデッキとしてマジックのゲームをプレイすることもできました。《ならず者の精製屋》は安定性を高め、《炎呼び、チャンドラ》のようなプレインズウォーカーは《霊気池の驚異》を引けない場合勝ち手段としても機能して素晴らしい中盤戦を演じます(またチャンドラは《霊気池の驚異》で当たっても強力です)。 《霊気との調和》は《霊気池の驚異》が有効牌をめくりやすくするようにデッキを圧縮する助けになります。

 以下のデッキリストはアンドリュー・ブラウンが《ハゾレトの終わりなき怒り》を使って考えだしたものです。

アンドリュー・ブラウンの「ハゾレトの終わりなき怒り」
フューチャー・フューチャー・リーグ[MO] [ARENA]
9 《
3 《
4 《獲物道

-土地(16)-

4 《媒介者の修練者
4 《導路の召使い
4 《逆毛ハイドラ
4 《栄光をもたらすもの
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ

-クリーチャー(18)-
4 《霊気との調和
4 《改革派の地図
4 《ウルヴェンワルド横断
4 《蓄霊稲妻
4 《ハゾレトの終わりなき怒り
3 《アーリン・コード
3 《反逆の先導者、チャンドラ

-呪文(26)-

 このリストに関してでまずわたしが指摘したいことは、土地の枚数が少なく、土地を探してこなくてはならない8つの手段です。デッキ圧縮はライブラリーの上の無作為なカードを見るこのデッキにおいて本当に大事なことです。上の霊気池の例で言ったように、デッキの中の土地が少ないことは有効牌を「めくる」確率を高めます。

 これにはいくつかのことができるように、少しエネルギー要素も搭載されています。これにより強力な除去の《蓄霊稲妻》が使えて、除去耐性のある脅威の《逆毛ハイドラ》の運用が可能になっています。またこのエネルギー要素はサイドボード時の柔軟性も与えてくれます。対コントロール・デッキのように《ハゾレトの終わりなき怒り》コンボが弱くなる対戦では「変形」することができます。《牙長獣の仔》や《ラスヌーのヘリオン》のようなカードが使えることは、サイドボーディング時に相手の予想を覆すのに役立ちます。

 このデッキが次に向かっていくものは速さです。《ハゾレトの終わりなき怒り》のコストは6マナで、そして早く唱えられるほど有利になります。わたしたちはそれを達成するために多くのマナ・クリーチャーと《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイし、そしてそれらは土地がアンタップできないターンに使えるマナを倍増させます。

 このデッキには無限やエルドラージほど強力なものはなく、本質的には6マナのソーサリーで複数のカードを唱えることでマナをごまかしています。このデッキにはいくつかのクールなコンボと《ハゾレトの終わりなき怒り》から利益を得る多くの手段があります。《アーリン・コード》と《栄光をもたらすもの》には督励の不利を被ることなく強烈な攻撃ができるクールなシナジーがあり、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》とチャンドラは速い対戦相手に対して持ちこたえることを助けるための素晴らしい手段です。

まとめ

 これは特定のカードを軸にしてデッキを作るときのわたしたちの思考過程を、かなり要約したものです。マジックとは探求と発見をすることなので、わたしたちの秘密をここで全て公開することはありませんが、あなたがコンボ・デッキとを作ろうとする場合のいい出発点になってほしいと思います。次回はFFLの他のデッキリストとともに、わたしたちのコンボ・デッキの背景にある理念についてさらに深く飛び込んでいこうと思います。

今週のプレイ・デザイン・チーム

 奈落(わたしたちの職場で遊び場)では、わたしたちはしばしば、さまざまなことについて議論を行います。そして最近驚いた議論は、1つの場所に集まったときの1平方フィートあたりの最大プロ・ポイントについてです。このことはダン/Danに多くのプロ・ポイントが1箇所に詰め込まれた出来事を思い出させました。2013年のパトリック・チャピン/Patrick Chapinの結婚式で、その招待者リストには自然と何年間も活躍してきたプロツアー出場者が含まれていました。彼らは集合写真を撮り、そのプロ・ポイントの合計は5907でした!

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 今週、プレイ・デザインのメンバーであるダン・バーディックとアンドリュー・ブラウンは、プロツアー『破滅の刻』のためと多くのプロ・チームに会って、彼らのテスト体験や新しいスタンダードについて学ぶために京都にいます。最初に向かうところはチーム「Puzzle Quest」です。この伝説的チームにはマジックのものすごい偉人たちがいることは誰もが知っています。

 彼らのプロツアーでの偉大さは彼らの現実での身長と関係があります――ジョン・フィンケル/Jon Finkel、ウィリアム・ジェンセン/William Jensen、イェルガー・ヴィーガーズマ/Jelger Wiegersma、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar、リード・デューク/Reid Dukeは6フィート(約183cm)を越える長身です。

 しかしながら、彼らのテストする場所はその業績ほど大きくはありませんでした。日本の建築様式とデザインは素晴らしいのですが、その部屋は彼らの大きさを厳密に分かっていませんでした。彼らはそのプレイ・スペースを余すところなく使いました。

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チーム「Puzzle Quest」のプロツアー『破滅の刻』への追い込み風景。

 ダンとアンドリューは、上記の結婚式の写真の中庭と。「Puzzle Quest」で満たされた京都の小さなリビングルームのどちらのマジック実績密度が高いかについて推測しています。どちらかははっきりしませんが、このプロツアーの後でより良い答えが得られるでしょう!

 ではまた次回お会いしましょう。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)

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