READING

開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

プレイテスト

Mark Rosewater
authorpic_markrosewater.jpg

2026年8月11日

 

 『マジック』のデザインは、あらゆる他のゲーム・デザインと同様に、反復を重ねるプロセスである。つまり、アイデアを出し、それを試し、そのテストからフィードバックを得て、そのフィードバックをもとに変更を加えていく。新しいデザインをテストする主な方法が、プレイテストである。我々が作っているのはゲームなのだから、それがうまく機能しているかを理解する最善の方法は、実際にプレイしてみることだ。我々は「理論構築」と呼ばれる作業も数多く行っている。これは長年の経験をもとに、新しいカードやメカニズムがどのように機能するだろうかと議論することだが、実際にそのカードをプレイすることに代わるものはない。本日の記事では、セットがデザインのさまざまな段階を進んでいく中で、我々がどのような方法でプレイテストを行っているのかを紹介していこう。


 各段階について話す前に、まずは『マジック』のデザインにおける4つの段階を簡単に説明しよう。それぞれがどう違うのかを説明するため、家を建てることに喩えてみる。(私は比喩が大好きなのだ。)

 先行デザインとは、家を建て始める前に行う下準備である。ここでは、自分たちが正確には何を求めているのかを見極める。たとえば、どのような家が欲しいのか? どのようなデザイン様式にするのか? 大きさは? どのような素材を使うのか? どこに建てたいのか? 新しく学びたい建築技法はあるか? 特別な書類手続きが必要になるか? 参考にできる、似た家の成功例や失敗例はあるか? 家を建てるには、多くの決断が必要になる。先行デザインとは、どのような決断の可能性があるのかを探る段階なのだ。先行デザインのプロセスについて、私が最も重視しているルールは、深く掘り下げるのではなく、幅広く探ることである。チームには、これから扱う新たなデザイン空間について可能な限り多くを学んでもらい、展望デザイン・チームがセットの展望の絞り込みを始められるようにする。

 展望デザインは、建築設計に当たる。ここでは、実際に建築する人たちが作業のもとにする設計図を描く。『マジック』で言えば、主要なメカニズムやテーマを含むセットの基本構造を作り、クリエイティブ面とゲームプレイ面でそのセットがどのような雰囲気やトーンを生み出したいのかを定める段階である。その名の通り、展望デザインはセットの「展望」を作り、その後のすべての担当者がそれをもとにセットを作っていく。展望デザイン・チームはカード・ファイルを引き渡すが、そこにあるカードは、目指している全体的な雰囲気をセット・デザイン・チームに示すための概念実証という意味合いが強い。その中には最終的に残るデザインもあるかもしれないが、絶対に残さなければならないものはない。

 セット・デザインは、家を建てる側の仕事である。実際に家を建てる工程だ。セット・デザイン・チームの仕事は、渡された設計図に従ってセットを作り上げることである。しかし家を実際に建て始めると、現実の事情から設計図を変更しなければならないこともある。設計図には地下室があるのに、掘ってみたら岩盤にぶつかった、といった具合だ。セット・デザイン・チームはそうした状況に適応し、必要なら新しいメカニズム的要素を作る。セット内のカードの大半は、セット・デザイン中に作られる。

 プレイ・デザインの工程は、内装や外装のデザインに似ている。この段階では、家を可能な限り最高のものにするため、最後の仕上げをすべて行う。基本的には完成した家に小さな変更を加えるが、必要であれば大きな変更を加えることもある。デザイン工程の中で期間が重なっているのは、セット・デザインとプレイ・デザインだけである。

 この比喩による説明を終えたところで、デザイン工程の各段階でプレイテストがどのように使われているのかを見ていこう。

先行デザイン

 先行デザイン・チームの主な仕事には、「3つのバケツ」の管理がある。1つ目のバケツには、良いメカニズムが入る。これは、セットに何を入れるかを決める際に展望デザイン・チームが検討すべきものである。2つ目のバケツには、悪いメカニズムが入る。先行デザインの段階で、展望デザイン・チームが時間を割く価値はないと判断されたものだ。これは非常に重要である。何に労力を無駄遣いすべきでないかが分かれば、大幅に時間を節約できるからだ。3つ目のバケツには、改善が必要なメカニズムが入る。1つ目のバケツに入れられるほど良い状態ではないが、捨ててしまうべきでもないメカニズムである。救い出せる何かはあるが、そのためにはさらに手を加える必要がある。

 先行デザインで行うプレイテストの目的は、各メカニズムがどのバケツに属するのかを見極めることである。そのため、通常は構築デッキを作る。デッキは通常30枚か40枚で、テスト対象のメカニズムを持つカードを4~12枚ほど入れる。テスト対象以外のカードの大半は既存のカードでよく、たいていは単純なものを使う。既存カードが判断を曇らせないようにして、新しいメカニズムそのものをどう感じるか評価できるようにすることが目的である。

 基本的には、これらのデッキにアンコモンは各1枚しか入れず、コモンも同じカードは2枚までとする。この段階では通常、レアや神話レアは入れない。我々のデッキは社内のデザイン・データベースを使って作ることができる。各デザイナーには、データベース内に自分用の小さなサンドボックスがあり、そこで自分のカードを作れる。デッキは通常2色で、土地はすべてその2色の2色土地にする。そうする理由は、まともなゲームにならない対戦を減らすためだ。プレイテストに使える時間は限られているので、各プレイヤーが必要なマナを確実に得られるようにしたいのである。環境全体のバランス調整が行われるのは、セット・デザインに入ってからだ。

 典型的な先行デザインの会議では、先行デザインのリードから出されたお題に基づいて、全員が1つか2つ(場合によってはそれ以上)のデッキを持ち寄る。たとえば『ストリクスヘイヴンの秘密』の先行デザインでは、各大学をそれぞれ取り上げる会議と、大学以外のものを取り上げる会議を1回行った。

 こういった会議では、全員ができるだけ多くのデッキを使い、またできるだけ多くのデッキと対戦するよう努める。通常は自分のデッキでも2ゲームほどはプレイするが、会議中は幅広い種類のデッキをプレイすべきである。最後の15分ほどを使って、参加者は感想を話し合い、新しいメカニズムをどのバケツに入れるか決めることが多い。最初の2つのバケツのどちらかに入ったなら、そのメカニズムについての作業はそこで終わりだ。3つ目のバケツに入ったなら、そのメカニズムを直すには何が必要かを話し合う。作った本人が新しいバージョンを試すこともあれば、別の誰かが試すこともある。先行デザインは2~3か月続き、その間に可能な限り多くのプレイテストを行う。

展望デザイン

 展望デザインは通常、先行デザインから引き渡された1つ目と3つ目のバケツを調べるところから始まる。(まあ、好奇心から2つ目のバケツを覗くこともある。)それから、気に入ったメカニズムを選び、カード・ファイルに入れる。セット用のカード・ファイルが存在するのは、この段階が初めてである。コモンの枠を埋め(通常はアンコモンの枠もかなり埋める)、最初のプレイテストを行う。

 私はこれを「サンプリング・プレイテスト」と呼んでいる。その目的は、展望デザイン・チームにさまざまなメカニズムを実際にプレイしてもらい、何が好きで何が好きでないのかという感触を掴むことである。サンプリング・プレイテストは通常リミテッドで行い、チームの各メンバーには一定数の色が割り当てられる。基本は2色だが、セットのテーマによって変わることもある。たとえば3色の陣営を扱うセットなら、3色でプレイする。

 デザイナー自身に色を選ばせず、こちらから色を割り当てるのは、プレイテストの目的が「すべてのカードを誰かにプレイしてもらうこと」だからである。色を割り当てるようになる以前は、特定の色(具体的には黒と赤)が不釣り合いに多く選ばれることが分かった。初期のプレイテストはまだバランスが取れておらず、未知のメカニズムを使っていることも多いため、デッキを作る人は除去呪文の多い色に流れがちである。色を割り当てることで、すべての色がプレイテストで同じだけ触れられることを保証できる。

 サンプリング・プレイテストから得たいものは2つある。1つ目は、何を気に入り、何を気に入られなかったかを把握することだ。ここでは適切なバランスかどうかよりも、プレイした内容にどれだけ心を躍らせたかを重視する。プレイテスト後には、いくつかの重要な質問をする。楽しかったか? 楽しめる新しい相互作用やプレイ・パターンが生まれたか? そのカードをプレイしたとき、どのような感情を抱いたか?

 2つ目として、初期のシールドのプレイテストでは、各メカニズムで何ができるのかを幅広く試したいため、実装の仕方も非常に幅広くする傾向がある。そうすることで、どの形が最も気に入ったかを見極められる。気に入った実装があれば、それをもっと増やせる。気に入らなかった実装があれば、セットから取り除ける。

 展望デザイン・チームは毎週、1時間の会議を2回と、2時間の会議を1回行う。プレイテストを最もよく行うのは、この2時間の会議である。1時間半を使ってデッキを作ってプレイし、残りの時間でそこから何を学んだのかを話し合う。サンプリング・プレイテストで最も重要なのは、何をそのまま残すか、何を変更して残すか、そして何を取り除くかである。

 その次に展望デザインで行うプレイテストはシールドである。ここではもう色を割り当てない。カード・ファイルが少し固まってきて(とはいえ、まだカードの出入りはある)、チームのプレイ・デザイナーによって大まかなバランス調整がなされた後に行う。展望デザインでは、すべてのカードがリミテッドでプレイできるように設定され、互いの強さがおおむね近くなるよう、パワー・レベルを均一にする傾向がある。そうすることで、プレイテストですべてのカードを使ってもらうことができる。特定のカードを弱くしすぎると、それはまったくプレイされず、そこから何も学べなくなってしまう。

 プレイテストを重ねるにつれて、フィードバックはより細かくなっていく。たとえば、陣営を扱うセットを作っているとしよう。ある時点で、その陣営のメカニズムに満足した、と判断することになる。するとフィードバックの焦点は、そのメカニズムを最も良い形で実装する方法へと移る。どのようなタイプのカードにすれば、そのメカニズムが最も上手く機能するのか? 隣接するアーキタイプを成立させる助けになるシナジーはあるか? 通常、この段階でアンコモンの枠が埋まり、レアのカードを作り始める。

 そして4か月中の3か月目になると、ドラフトを始めることが多い。カード・ファイルがある程度固まり(そして十分な数のレアが揃い)、セットのさまざまな構成要素を結びつけるシナジーのあるカードを含め始めるまでは、ドラフトを行ってもあまり意味がない。我々の展望デザイン・チームは4~6人なので、ドラフトを始めるということは、展望デザイン・チーム外の人々をプレイテストに招き始めるということでもある。これは、セットを新鮮な目で見てもらえる最初の機会でもある。何か月もセットに取り組んでいると、初見でどう感じるかを捉えることが難しくなってくる。展望デザイン・チームが作業を始めた当初、カード・ファイルは今とはまるで違うものであり、我々はそれが時間をかけて少しずつ変化していくのをずっと見てきた。新しく参加したドラフトのプレイヤーなら、それまで何を試してきたかという先入観なしにセットを体験できる。

 展望デザイン中にも、セットの特定の要素が構築でどのようにプレイされるのかを確認したくなることがある。その場合には、先行デザインと似た方法でデッキを作るが、より高いレア度のカードも多く使用できるようにする。これは特に、リミテッド向けではないメカニズム(たとえばコモンにカードが存在しないメカニズム)や、多くのシナジーを必要とするメカニズムに有効である。

 展望デザイン・チームに残された最後のプレイテスト関連の仕事は、引継ぎにおける2つの大きな要素である。1つ目は「リーダーシップ・ドラフト」で、開発部のリーダー4人がそのセットを使って、4人で1回に2枚をピックするドラフトを行い、セット全体について大きな視点からフィードバックを出す。その中には、セット・デザインへの引き渡し前に変更を必要とするものもあるかもしれないが、大半はセット・デザイン・チームが検討すべき大局的な問題となる。

 2つ目は「展望サミット」で、セットに携わっていなかった開発部メンバーに、チームがセットを披露する場である。展望サミット用には、通常、そのセットの主要な10個のアーキタイプに焦点を当てた構築済みデッキを10種類作る。各デッキを複数用意し、展望サミットの参加者がセットのカードのかなりの枚数を実際にプレイできるようにする。招待された各人は、自分の専門分野に関連するフィードバックを提出する。

セット・デザイン

 展望デザイン・チームからファイルを受け取ったセット・デザイン・チームが最初に行うのは、ファイルをより現実的な形にするための一通りの見直しである。かなりの枚数のカードを、基本的に同じ役割を果たす新しいデザインに置き換える。また、より完成形に近い『マジック』のセットになるようマナ・コストを調整するのも、この段階が初めてである。

 見直しが完了すると、セット・デザイン・チームはドラフトのプレイテストを始める。このプレイテストは展望デザイン・チームで行うドラフトと似ているが、ここから反復のサイクルが速くなっていく。展望デザイン・チームが隔週でプレイテストを行うのに対し、セット・デザイン・チームは毎週行うことが多い。セット・デザイン・チームは週に2回、2時間の会議を行っており、どちらの会議も必要ならプレイテストに切り替えられるようになっている。

 展望デザイン・チームが大局的なフィードバックを重視するのに対し、セット・デザイン・チームはより細かなフィードバックを重視する。セット・デザイン中のプレイテストでは環境全体をより重視し、個々のカードがセットという大きなシステムや他のカードとどのように相互作用するかについてのフィードバックを求める。バランスが重要になり始めるため、マナ・コストを含む、個々のカードの具体的な実装についても意見を集め始める。

 セット・デザインでは、外部プレイテストも始まる。外部プレイテストとはチーム会議以外で行うドラフトで、ほとんどの場合、そのチームに所属していない開発部のメンバーに参加してもらう。より多くの開発部メンバーが、そのセットが何をしているのかを体験する最初の機会である。セットのリードがこうしたプレイテストに参加することも多いが、通常はプレイせず観察している。そしてプレイした全員にはアンケートが送られ、あらゆるフィードバックを書いてもらう。そのフィードバックはセット・デザインの会議で確認され、議論される。

 セット・デザイン・チームは、カードをそれほど多く入手できないプレイヤーがセットをどう体験するかを再現するため、カジュアルな構築のプレイテストも行う。各コモンは最大4枚、各アンコモンは2~3枚、レアや神話レアは同じカードは1枚までとし、それらの総枚数も少枚数に限定する。デッキは2色になることが多く、そのセットのドラフト・アーキタイプに沿ったものになる。

 先ほど述べたように、セット・デザインとプレイ・デザインは期間が重なる唯一の2つのプロセスなので、ここで次のセクションへ進むことにする。ただし、この時点ではまだセット・デザインが終わっていないことは覚えておいてほしい。

プレイ・デザイン

 リミテッドのプレイテストは、ドラフトやシールドのプレイを理解するのに適しており、それほど熱心ではないカジュアル・プレイヤーのプレイについても大まかな知見を得られる(カジュアル・プレイヤーが開封するブースターは少ないため、彼らの体験は構築よりもシールドに近い)。しかし、セットが構築戦でどのようにプレイされるのかについても、プレイテストを通じて把握し始めることが重要である。

 プレイ・デザインは、2つの異なるチームから成る。競技プレイ・デザインはドラフトとスタンダードを中心に扱いながら、その他の競技フォーマットにも目を配る。カジュアル・プレイ・デザインはコマンダーやその他のカジュアル・フォーマットを中心に扱う。

 競技プレイ・デザイン・チームには「フューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)」というものがあり、現実の環境より約1年先のスタンダードをプレイする。我々には以前、6か月先の環境をプレイする「フューチャー・リーグ」というものがあった。しかし、そこで得た教訓を反映するにはそれでは時期が遅すぎると分かったため、さらに6か月先へ飛ぶ「フューチャー・フューチャー・リーグ」を作った。開発部はFFLという響きが格好良いと思っているので、名前は今に至るまで変わっていない。

 競技プレイ・デザイナーはフューチャー・フューチャー・リーグで、その未来の時点に存在するカードからスタンダードのデッキを組んでプレイする。FFLにはトーナメントとフリー・プレイがあり、デザイナー同士が自分たちのデッキを戦わせる。また定期的に会議を開き、集めたすべてのデータについて話し合い、セット・デザイン・チームと協力して適切な変更を加えていく。

 競技プレイ・デザイン・チームでは、リミテッドのバランス調整を意識したドラフトも予定を組んで行う。プレイ・デザインの終盤には、オフィスの外で1日を丸々使って複数回のドラフトを行う会議まである。通常、このイベントを経てコストの最終調整が行われる。

 一方、セットはカジュアル・プレイ・デザイン・チームにも渡され、チームはセット内のさまざまなカードを使ってコマンダー・デッキを構築する。これは「カジュアル・プレイ・リーグ(CPL)」と呼ばれている。FFLと同様に数多くのゲームをプレイし、コマンダー向けにカードをどう改善できるかについてチームからフィードバックを出す。メインセットのカードをテストすると同時に、そのセットにコマンダー・デッキが存在する場合は、そちらもテストする。メインセットとコマンダー・デッキの間でカードを入れ替えることもある。

 通常、プレイ・デザインが始まると、FFLとCPLが作業できるようにカード・ファイルが固定されるため、セット・デザイン・チームは定例会議をいったん停止する。そのデータが集まった後、セット・デザイン・チームは競技プレイ・デザイン・チームとカジュアル・プレイ・デザイン・チームからのフィードバックを再び聞くようになる。セット・デザインのリードはそれぞれのリードと協力しながらカードを調整し、変更点について追加のプレイテストを行えるようにする。

 先行デザインの開始から、セット・デザインとプレイ・デザインが完全に作業を終える最後の瞬間まで、この全工程には約2年半かかる。その後、デザインより下流のすべてのチームが実際にセットを製造し、流通させるまでに、さらに6か月が必要となる。以上が、我々が行っているプレイテストのすべてである!


 本日は、デザインの普段とは異なる側面を興味深く見てもらえたなら幸いである。いつも通り、本日の記事についてでも、今回取り上げたさまざまな種類のプレイテストについてでも、どんなフィードバックでもぜひ聞かせてほしい。メールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週もMaking Magicでお会いしよう。

 それまで、あなたが自ら説くことを実践できますように。


(Tr. Ryuki Matsushita)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索