READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ターボ・ロアホールド(パイオニア)

岩SHOW

 クールとは気まぐれ。漫画や映画のクールなキャラって、一匹狼でありながらフラッと助けに来てくれたりと、風や雲のように気まぐれに描かれていることが多くないかい?

 さあ今週もやってきたよクールなデッキを紹介する金曜日。いやぁね、クールなデッキって探していない時に突然フッと気まぐれに姿を現すもんでね。マジックのイベントというものは多くの場合土日に開催される。どこの国もこのタイミングがお休みなんだね。なのでその結果がアップされる月曜日は、僕のようなデッキリストハンターにとっては収穫の日である。当コラム、デイリー・デッキで紹介するデッキを探してネットを漁るのが日課だ。

 月曜日から金曜日まで連載している関係で、なんとなく週の頭・月曜日に紹介するデッキにちょうど良いものから探していくものだが……これを書いている週も同様に、さあ月曜の始まりだ! 月曜のデッキを探しに行こう!とネットの海に出航。目についた大会結果を開くと……いきなり飛び出してきたぜ、超ド級のクールなデッキが。

 アメリカはミネソタ州にて開催されたテーブルトップ(紙のカード)でのパイオニアのトーナメント。そこで優勝したデッキは……ウーム。君はこんなクールなデッキ、組めるかな?

John Earley - 「ターボ・ロアホールド」
The Forge Pioneer 1k 優勝 / パイオニア (2022年6月25日)[MO] [ARENA]
4 《繁殖池
3 《植物の聖域
4 《樹皮路の小道
2 《花盛りの湿地
2 《湿った墓
4 《マナの合流点
1 《耐え抜くもの、母聖樹
-土地(20)-

4 《わめき騒ぐマンドリル
4 《黄金牙、タシグル
2 《ヴェロマカス・ロアホールド
-クリーチャー(10)-
4 《考慮
4 《異世界の凝視
4 《新生化
4 《テイガムの策謀
3 《有事対策
3 《災厄招来
4 《カーンの経時隔離
4 《水の帳の分離
-呪文(30)-
3 《心悪しき隠遁者
3 《自然のままに
2 《タミヨウの保管
3 《神秘の論争
4 《神聖の力線
-サイドボード(15)-
Melee より)

 

このクールなデッキは?

 パイオニアの青緑を中心とした5色のカードを扱うデッキ……かなりぶっ飛んだカードチョイスに眼がチカチカしそうなレベルだ。何せ3枚も採用されている《災厄招来》を唱えようとした場合、ほぼ青緑2色にちょろっと黒マナを捻出できる程度の土地構成では《マナの合流点》を4枚並べなければならない。

 そんなもんまかり通ってたまるか!ところがどっこいこれが通る!ってなわけでワガママを押し通す力に長けた、傲慢なまでにクールなデッキを紹介だ!

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:マンドリルとネックレス

 このデッキには印象的なクリーチャーの姿が見られる。《わめき騒ぐマンドリル》と《黄金牙、タシグル》だ。

 なんか懐かしいぜ~元気にしてたか?どちらも一時代を築いたクリーチャーだな。

 共通するのはタルキール次元の氏族、スゥルタイ群に属しているということ。この氏族は墓地利用がテーマであり、メインのメカニズムを担う「探査」はマジックの歴史上でも屈指のデンジャラスな能力とされている。墓地をマナの代わりにしてコストを軽減するという、普通のデッキでも機能するし専用に組んだデッキでは文字通り火を噴くクールなものである。

 マンドリルもタシグルも、探査でコストを軽減して最少1マナで唱えられる。スペックもそれぞれ4/4トランプル、4/5で墓地回収可能とサイズに優れたもので、これを低コストで展開できればゲームの主導権を握れるだろう。

 その探査プランをよりスピーディーに後押しするのが墓地に恵みのカードを埋める青い呪文だ。《考慮》は1マナで手札の損失なく、最大で2枚のカードを墓地に送る。

 コストパフォーマンスに優れたドロー呪文だが、手札が減ってしまっても構わないならもっと速やかに墓地を満たすインスタントやソーサリーというのはあるものだ。

 《異世界の凝視》《テイガムの策謀》《有事対策》はライブラリーを並べ替えるものであるが、その中で不要なカードを引かなくて済むように墓地に落とすことも選べるというもの。

 これらはどれもライブラリーに戻さずに全部墓地にという選択肢も取れるので、このデッキではもちろんそれを敢行。マンドリルとタシグル、探査クリーチャーが3ターン目にクールに降臨……なんてのはイージーだ。

 ちなみにタシグルは《龍王シルムガル》によって彼のネックレスにされてしまう。その悲惨な姿にクールを感じたプレイヤーたちは、いつまでもこのことをネタにし続けている。

クールポイントその2:探査からのロアホールド入学

 さて、このデッキがクールなのは単に上記の探査クリーチャーを高速展開するというデッキに留まらないからだ。それらをさらにワンランク上の怪物へと昇華させる……《新生化》を用いて。

 これはコストとして生け贄に捧げたクリーチャーのマナ総量に+1したそれを持つクリーチャーをライブラリーから戦場に出せるクールなソーサリー。奇しくもマンドリルもネックレ……失礼タシグルもマナ総量は6。どちらを生け贄に捧げてもマナ総量7のクリーチャーを引っ張ってくることができる。

 そこから出てくるのはもちろん、リストでひときわ異彩を放つ《ヴェロマカス・ロアホールド》!

 ビジュアルも能力もクールすぎるドラゴンだ。ロアホールドは速攻を持ち、攻撃するとライブラリーから7枚見て、その中からロアホールドのパワー以下のインスタントかソーサリーを唱えられる――コストの支払いは不要だ! クールすぎるマナ踏み倒しを使って、これで問題の《災厄招来》を唱えるってわけだな。

 《新生化》から出てきたロアホールドはパワー6。6マナのソーサリーとなれば、パイオニア環境ではかなり強いものが運用できてしまう。このデッキが選んだのはエンドレスな攻撃での瞬殺プラン。

 《カーンの経時隔離》《水の帳の分離》で追加ターンを連発、そのまま対戦相手にターンを返さずに毎ターンロアホールドが空襲を続けてジ・エンド!

 《災厄招来》は手札に来てしまったり墓地に落としておいた追加ターン呪文を唱えるためのオプションってわけだな。

 探査クリーチャーのマナ総量、《新生化》されたロアホールドのパワー、追加ターン呪文のマナ総量……6が3つ並ぶクールな奇跡により成立した、驚くべきコンボデッキ。これぞクールデッキと形容するに相応しい逸品だ。天晴れ!

クールなまとめ

 最近のパイオニア環境における墓地対策カードといえば《未認可霊柩車》。

 クリーチャー化することで勝ち手段も兼ねるクールな1枚ではあるのだが……一度に追放できる墓地のカードは2枚まで。このデッキであれば霊柩車で2枚追放したとて、それ以上に墓地にカードを落として探査し、《新生化》へと繋げられるだろう。

 むしろ霊柩車による墓地追放が全盛期だからこそ、正面から堂々と墓地の物量で勝負する。そんなデッキの姿勢もクールすぎて、痺れちまったよ。

 《虚空の力線》のような先出しで完封できるカードについても、今後は見直した方が良いのかもなぁ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Against the hearse!!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索