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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ゴルガリ・ミッドレンジ:まだまだ現役! あの名コンビ再び(パイオニア)

岩SHOW

 これはたとえ話なのであまり大きくとらえずに聞いてほしい。

 新しいセットが出て、それがスタンダードで使用可能な期間を「現役」としよう。スポーツでもそうだが、現役を退いた選手というのは記憶や記録に残る選手もいれば、圧倒的多数はそうではない。すなわち忘れられ、記憶から姿を消してしまう……悲しいがそういう運命にあるものだ。

 ただ肉体的な限界が来たり怪我など、最良のパフォーマンスが望めなくなって引退するスポーツと違って、スタンダードを引退するというのはローテーションに起因するものである。ローテーション落ちしたカードはスタンダードではもう使えなくなってしまう。そしてその先には何があるか?

 スタンダードを引退したカードは次なるフィールドで「第2の現役」を迎えることになる。これがマジックの面白さだな。そう、スタンダード以外のもっとカードプールが広く、ローテーションの存在しないフォーマットで戦っていくことになるのだ。

 現役が終わったあとの受け皿、いわゆるセカンドライフもしっかり用意されているのでカードたちは幸せである……と言いたいところなのだが。

 たとえばスタンダード現役当時、バリバリに活躍していたカードがあったとしよう。それはカード自体が強いのもあるが、スタンダードという限られたカードプール内で立ち位置が良かった、代役が存在しなかったなどの幸運に恵まれているパターンもある。

 何が言いたいか? そう、スタンダードで強かったカードやデッキが、その先にあるフォーマットでもそのまま強いとは決して限らない。カードプールが広いということは、歴代の強力カード――真の猛者たちと相対するということである。例えばレガシー、どれだけスタンダードで使われた2色土地も、このフォーマットではデュアルランドに席を譲ることになる。残酷なようだが、スタンダードを現役引退したカードたちには、さらに厳しい環境が待ち受けている!

 スタンダードと比較的近い位置にあるパイオニアでも、活躍するのは本物のパワーカード、代役が存在しないオンリーワンの能力を持ったカードたちばかりだ。スタンダード現役当時輝いていたカードにもう一度スポットライトを浴びさせる、というのは簡単なことではないのだ。

 ただ、だからといって諦めろと言っているのではない。難しい、だからこそ燃える。こういう気概が、デッキ構築には必要だ。

 そんな思いで組まれたのかはわからないが、デッキリストを見た時に「懐かしい~」とグッと来たリストを見つけたので紹介しよう。ブラジルのパイオニアのイベント入賞デッキリストにその姿はあった。

Giovanni Santoro - 「ゴルガリ・ミッドレンジ」
Event @ Fortaleza Jogos (Brazil) ベスト8 / パイオニア (2021年11月4日)[MO] [ARENA]
4 《
3 《
4 《草むした墓
4 《森林の墓地
4 《花盛りの湿地
3 《疾病の神殿
1 《ロークスワイン城
-土地(23)-

4 《棲み家の防御者
2 《光袖会の収集者
4 《死霧の猛禽
3 《不屈の追跡者
2 《クルフィックスの狩猟者
1 《残忍な騎士
2 《探索する獣
-クリーチャー(18)-
4 《思考囲い
2 《致命的な一押し
4 《忌まわしい回収
2 《突然の衰微
1 《悪意の熟達
1 《アーク弓のレインジャー、ビビアン
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ
4 《世界を揺るがす者、ニッサ
-呪文(19)-
3 《漁る軟泥
1 《残忍な騎士
1 《探索する獣
1 《墓掘りの檻
2 《致命的な一押し
1 《失われた遺産
3 《衰滅
2 《悪意の熟達
1 《ヴラスカの侮辱
-サイドボード(15)-
mtgtop8 より引用)

 

 何が懐かしいって、このデッキに4枚マックス投入されたクリーチャーの顔ぶれだよ。《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》!

 一世を風靡した大変異コンビだ。{3}で2/2の裏向きクリーチャーとして唱え、大変異コストを支払って表向きにすれば+1/+1カウンターが置かれるという能力。これにプラスして大変異を行うことでなんらかのメリットをもたらすカードがいろいろとあったわけだが、中でも墓地のカードを拾える《棲み家の防御者》はシンプルにアドバンテージが取れるという点が強かった。また、自身のパワー以下のクリーチャーにはブロックされなくなるので、《アブザンの魔除け》などで育てて殴りに行くという動きも度々見られた光景だ。

 そしてこの防御者が表向きになると、オマケと言わんばかりに墓地から這い出てくるのが《死霧の猛禽》だった。3マナ3/3接死とバランスの良いスペックで、適当に相討ち取ったり除去されたりしたところで防御者の大変異で戦場に戻すという動きは、当時のスタンダードの鉄板ムーブ。

 ゲームを決定する力があったこのコンビだが……現役を退いたのち、他のフォーマットではその姿を見かける機会はほとんどなかった。大変異はマナのかかる動きであり、スピード勝負の世界についていくのは難しい。

 ただ、このリストを生み出したプレイヤーのように愛を持って使い続けている人々は世界のどこかに他にもいるはずだ。あるいは、諦めたプレイヤーも少なくないはず。そんな人たちに「使い続けてればいつか勝てるぞ!」と、それ以前に「好きなカード使えるパイオニアって良いぞ!」と言わんばかりのこのリストが届いてほしいなと思うね。

 黒緑2色の中速デッキで、このカラーリングの得意とするパーマネント除去で戦況をイーブン以上に保ちながら、大変異コンビ以外にも懐かしいクリーチャーやプレインズウォーカーの面々で押していく。

 注目の1枚は《忌まわしい回収》。

 《世界を揺るがす者、ニッサ》《不屈の追跡者》、そして大変異とこのデッキはマナを必要とする。このインスタントで土地を集めつつ、同時に《死霧の猛禽》を墓地に落とそうという算段だ。他にも墓地に落ちてしまったカードは、後から《棲み家の防御者》の大変異で回収したら良い。愛すべきカードを活かすための創意工夫。カードプールが広い=ライバルや強敵は多いのも事実だが、このように工夫することで活躍させられる余地があるのもまた事実だ。

 《光袖会の収集者》《不屈の追跡者》《棲み家の防御者》と手札を満たす手段を用意して、環境に並み居るデッキたちとのアドバンテージ勝負、除去合戦では負けないとしっかり作り込まれているこの「ゴルガリ・ミッドレンジ」。懐かしの防御者と猛禽がクルクルと表向きになる光景、見ようと思えば自分の手でそうすることができたんだなぁ。

 皆も現役(スタンダード)を退いてしまったカード、諦めていないでパイオニアで輝かせてみないか? カードは君を待ってるぞ。

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