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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:異形化ボロス(スタンダード)

岩SHOW

 今週もやってまいりました、私が見つけたクールなデッキを紹介するこのコーナー。ここでひとつ、クールなデッキ作りを目指すプレイヤーに向けて、当コラムにおいて重んじられるクールの指針を明かしておこう。

 採用カードに統一性があってビジュアルに優れていたり、独創性のあるコンボだったりと、クールに感じるものはいろいろとあるが、シンプルにわかりやすいクールさというのは「現在の競技シーンでは使われていないカードを使っている」というところにあると個人的には考えている。

 マジックのカードは膨大にある。すべてのセットと言わずとも、たとえばスタンダードのような制限された範囲でもかなりの枚数のカードがひしめき合っている。しかしながらそれらのすべて使われ、フォーマットの主要デッキとして活躍するわけではない。非情ではあるが、カードには強弱がある。より強いものが使われ、使用頻度には大きく差がつくものだ。

 ただ、強弱という点のみで見た場合フィルターから漏れてしまうカードの中にも、魅力的なものや可能性が感じられる逸材は必ずある。そういったカードを用いて、そのポテンシャルを最大限に引き出しているデッキを目の当たりにした時。その時僕は、クールだと感じてしまうんだなぁ。

 今日のデッキもそんな、あまり使われていないカードをフィーチャーしたものだ。それじゃあ、Let’s cool!!

Gonito - 「異形化ボロス」
Magic Online Standard Challenge #12242676 準優勝 / スタンダード (2021年1月2日)[MO] [ARENA]
5 《平地
4 《
3 《ラウグリンのトライオーム
4 《針縁の小道
2 《アーデンベイル城
2 《エンバレス城
4 《寓話の小道

-土地(24)-

4 《調和のアルコン

-クリーチャー(4)-
4 《火の予言
4 《メレティス誕生
2 《禁じられた友情
2 《ガラスの棺
4 《太陽の神のお告げ
4 《異形化
2 《アクロス戦争
1 《荒くれたちの笑い声
2 《エルズペス、死に打ち勝つ
2 《エメリアの呼び声
1 《髑髏砕きの一撃
2 《太陽の宿敵、エルズペス
2 《銅纏いののけ者、ルーカ

-呪文(32)-
4 《アゴナスの雄牛
2 《魂標ランタン
3 《精神迷わせの秘本
1 《荒くれたちの笑い声
1 《アクロス戦争
3 《ヘリオッドの介入
1 《太陽の宿敵、エルズペス

-サイドボード(15)-

 

このクールなデッキは?

 トークン生成カードの数々とごく少数のクリーチャーカード、そして《異形化》。

 これらを組み合わせることにより、トークンに対して《異形化》を唱えると特定のクリーチャーを狙い澄まして戦場に出せるというコンボを備えた……「ボロス異形化」とでも言おうか。4マナからインパクトのある巨大生物を降臨させられる、なかなかクールなデッキだ。

 《異形化》のみではなく《銅纏いののけ者、ルーカ》でも同様のコンボが可能で、かつては《裏切りの工作員》をルーカから引っ張ってくるコンセプトの「ジェスカイ・ルーカ」が大活躍したものだ。

 さて、肝心要のトークンが変身するクリーチャーについてだが……。

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:シブいチョイスだ執政官

 リストを見てもらえば分かるとおり、このデッキがチョイスしたのは《調和のアルコン》!

 『エルドレインの王権』の神話レアだが、これまで通常のスタンダードで使われているところを見ることはほとんどなかった。しかし、それすなわち弱いというわけでは決してないッッ。

 スペックを見てみよう。6マナ4/5飛行、カード単体で見た場合はもう少し打点が欲しいところ。しかしこの執政官(アルコン)は戦場に出た際に人間・トークンを2体生成する。6マナでパーマネント3つ分と考えればなかなか優秀だ。

 そしてさらにアルコンの能力は、執政官以外のクリーチャーの基本のパワーとタフネスを3/3にする。つまりは人間がそれぞれ3/3になり合計パワーは10。十分に強力です。このトークンを元手に《異形化》やルーカすることで6マナ揃っていないターンに繰り出したり、盤面を除去された後に速やかに立て直したりするのが狙いってわけだ。

 何より、このコンボで出さずとも6マナなので、無理なく唱えられてデッキとして破綻しないのがクールだ。トークンを生成して並べ、それらをまとめてアルコンで3/3に強化して殴り勝てるのでデッキとしても綺麗にまとまっている。こういうのがクールデッキって言うんだな。

クールポイントその2:一本気

 自作デッキを組む際に、時折ある落とし穴にハマってしまうことがある。60枚という限られたスロットに渾身のコンボ、自分だけのカードチョイスを搭載したその後……まだスペースがある。じゃあ何か他のよく使われている勝ち手段を入れてデッキを強くしよう! そんな気持ちが湧いてしまいがちだ。

 時にそれはきちんとしたデッキを生み出すこともあるが、同時に噛み合わない手札が来てしまい、デッキの持ち味が損なわれる恐れもある。この辺りの塩梅はデッキ構築に長けていないと難しい。

 このリストはその点、トークンとアルコンで勝つという手法に振り切っている。他のカードはパーマネントに対する除去くらいで、不純物を極力減らす姿勢だ。

 コントロール・デッキとしての側面を与えよう、なんてことを狙っちゃったりすると自分でトークンを出して《空の粉砕》を唱えるとかいうちぐはぐなゲーム展開になってしまう。浮気せず自分が信じたプランで勝負。クールなデッキには自信が漂っている。あれこれ狙わず素直に勝負!

 トークン戦略と噛み合う《エンバレス城》などのチョイスは実に良いね。

クールテクニック!

 《アクロス戦争》は相手のクリーチャーを一時的に奪い、除去兼ダメージ源となる優秀なエンチャント。

 このデッキではそれをより強く運用することが可能だ。コントロールを奪ったクリーチャーを《異形化》やルーカで追放しアルコンに置き換えてしまうことでコントロールが戻ることを恐れず、自陣を強固なものにできる。

 またアルコンの能力は対戦相手のクリーチャーにも適用される。《アクロス戦争》の最後の能力で、どれだけタフネスがパワーより高いクリーチャーであっても3点受けることで死亡することになるのだ。上手く絡めて一方的な戦場を作り出したい。

さらなるクールのために

 このデッキがさらにクールな存在となるか否かは『カルドハイム』次第。この原稿を書いているタイミングではまだまだほとんどカードが公開されていないのでなんとも言えないが、トークンに関するカードやデカいクリーチャー次第では大化けする可能性も。

 すでに公開されている中から、《スカルドの決戦》はこのカラーリングで大きくアドバンテージを狙いにいけるのがクール。

Showdown_of_the_Skalds_ja.png

 トークンを出すために唱えた呪文で、すでにスタンバイしているトークンを強化して殴るというのも見た目よりも強い可能性もある。『カルドハイム』、早く来てくれ~。

クールなまとめ

 スタンダードの神話レアだけで見ても、まだまだデッキを組まれていないものがわんさとある。そしてフォーマットやレアリティを拡げればその数は跳ね上がる。それらのカードに安住のデッキを見つけてやり、新たな流れを生み出すクールなデッキビルダーに……君がなるんだ。期待してるぜ。じゃあ今週はこの辺で。Stay cool! Go to the next level!

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