早いものでもう９月の２週目だ。今週末に控えているイベント、皆は覚えているかな？ そう、2020ミシックインビテーショナルだ！

　9月10日から13日にかけて開催される、MTGアリーナを用いた世界規模でのオンライントーナメントである。優勝賞金は１万ドル！ インビテーショナルという名の通り、このイベントは招待制。誰でも参加できるわけではなく、MPLおよびライバルズ・リーグ所属選手、そして各種トーナメントで参加権利を勝ち取ったプレイヤーのみが招待される。世界中のハイレベルなプレイヤーたちが火花を散らす、最高峰の舞台というわけだ。

　日本からもこのミシックインビテーショナルに参加するプレイヤーはいるし、日本語実況・解説でお送りする放送も予定されているので、多くの人に観戦してほしいところだね。

　肝心の2020ミシックインビテーショナルのフォーマットは、ヒストリック！ MTGアリーナならではのフォーマットで、現在と過去のカードが入り混じりこのフォーマットならではのデッキが覇を競い合っている、見ていても楽しい環境だ。当コラムでも最近プッシュしているヒストリック、今週も力を入れてデッキを紹介していこう！

　ヒストリック最強のカードは何か。これがわかれば環境は理解できたも同然……というのは言いすぎだが、そこを把握しておくのは非常に重要だ。そのカードを採用したデッキと、そのカードへの対抗手段。特定のデッキを狙い撃ちにしたデッキと、観戦する際になぜそれらのカードやデッキが頻繁にみられるのかを理解できれば、よりのめり込める。

　ヒストリックの最強カード、その候補に挙がってくる１枚は間違いなく……《自然の怒りのタイタン、ウーロ》だ。

　現スタンダードでもその猛威を振るっている、非の打ち所がないパワーカードだ。３マナでカードを引き、土地を置きつつ３点回復。使えるマナを増やして、コストの重いランプ戦略において序盤に欲しいすべてが詰まっている。そして中盤から終盤には、墓地から脱出。今度は上記の恩恵を攻撃する度に受けられる、６/６のクリーチャーとして戦線を支える。まさしく天下無敵、最も頼りになるクリーチャーだ。

　これに加えて、現スタンダードでは使えない《成長のらせん》もヒストリックでは使用可能だ。さらにそのご先祖様ともいえる《探検》もある。

　これらで序盤のマナ加速を担いつつ、強烈な威力のパワーカードで圧殺する。ランプやビッグマナと呼ばれる戦略を用いるデッキは、ヒストリックでもまさしく横綱的存在として君臨しているのだ。

Vomi - 「シミック・ランプ」
MTG Arena Zone Historic Open #9 優勝 / ヒストリック (2020年8月29日)[MO] [ARENA]

11 《森》 2 《島》 4 《繁殖池》 4 《内陸の湾港》 3 《神秘の神殿》 2 《ギャレンブリグ城》 1 《オラーズカの拱門》 1 《爆発域》 -土地（28）- 3 《樹上の草食獣》 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 2 《ムル・ダヤの巫女》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー（14）-	4 《成長のらせん》 2 《探検》 4 《耕作》 2 《伝承の収集者、タミヨウ》 2 《世界を揺るがす者、ニッサ》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文（18）-	2 《漁る軟泥》 4 《変容するケラトプス》 2 《長老ガーガロス》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 3 《大食のハイドラ》 3 《墓掘りの檻》 -サイドボード（15）-

 

　ミシックインビテーショナルへの調整の場としてか、あるいは純粋にヒストリックを楽しんでいるプレイヤーが多いからか、最近はオンラインでのトーナメントが毎週のように開催されている。中には100名を超す規模のものもあり、現状のヒストリックで強いデッキを知るためのサンプルとしては十分なものだ。

　このリストもそんな100名オーバーのトーナメントで優勝したもの。青緑の２色にまとめた「シミック・ランプ」だ。ウーロ＆らせんの鉄板コンビに加えて《耕作》や《樹上の草食獣》も採用し、徹底して土地を置きまくってパワーカードに繋げるという構成になっている。分かりやすさ、◎。

　ランプ戦略を支えるカードの中でも、ヒストリックならではのカードが《ムル・ダヤの巫女》。

　土地を置ける数が１枚増えるナチュラル《探検》能力に加えて、ライブラリーの上からも土地を置けるというランプが望んでいるものが集合したかのような能力だ。これらのカードを総動員すれば、３ターン目に５マナ捻出するのも夢じゃない。実際にプレイしていて、すべてが噛み合った時には４ターン目に《精霊龍、ウギン》を降臨させることに成功した。相手からすればたまったもんじゃないな。

　上記の土地を増やすカードでとにかく盤面に土地を並べ、使えるマナを増やす。これに《世界を揺るがす者、ニッサ》のマナ加速能力を絡めれば、使えるマナの量で相手に負けるということはない。

　《精霊龍、ウギン》で盤面を洗い流して支配する、《ハイドロイド混成体》で回復・ドロー・巨大クリーチャーをまとめて確保、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で相手の重要パーマネントを圧し潰しつつ一気に攻勢に転じる……これらが目指すべきゴールだ。

　特にウギンを重視しており、これですべてまとめて除去して一気にゲームを掌握することを狙っている。

Kazuhiro Noine - 「バント・ランプ」
CFBPro Showdown / ヒストリック (2020年8月29日)[MO] [ARENA]

1 《森》 4 《繁殖池》 4 《内陸の湾港》 4 《寺院の庭》 4 《陽花弁の木立ち》 4 《神聖なる泉》 4 《氷河の城砦》 1 《ヴァントレス城》 1 《アーデンベイル城》 2 《爆発域》 -土地（29）- 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 2 《長老ガーガロス》 -クリーチャー（6）-	4 《成長のらせん》 2 《探検》 1 《物語の終わり》 3 《中和》 4 《神の怒り》 3 《サメ台風》 1 《暗記 // 記憶》 1 《スフィンクスの啓示》 2 《覆いを割く者、ナーセット》 3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 1 《エルズペス、死に打ち勝つ》 -呪文（25）-	3 《ドビンの拒否権》 2 《霊気の疾風》 2 《神秘の論争》 2 《機を見た援軍》 1 《残骸の漂着》 3 《次元の浄化》 1 《サメ台風》 1 《覆いを割く者、ナーセット》 -サイドボード（15）-

 

　ウーロ・らせん・探検パッケージをベースに３色目を足すというのもなんてことはない。このリストは白を足した形で、そしてよりコントロール寄りに仕上がっている。

　クリーチャー破壊の最古にして最良、《神の怒り》が『アモンケットリマスター』で特殊再録。これで流して《ドミナリアの英雄、テフェリー》を更地に降臨させ、彼がもたらす圧倒的なカードアドバンテージで圧殺する形だ。

　《スフィンクスの啓示》をＸ＝５とかで唱えられれば手札もライフも一気に満ちて、相手の心をへし折れる。

　《サメ台風》はサイクリングし、サメ・トークンで相手のクリーチャーをキャッチすることで除去として使いつつ、終盤はゲームを決めるフィニッシャーとなり得る。

　同じくサイクリングでドローを進めつつ、余裕がある時には打ち消しとして構えてゲームをより有利に進めるための《中和》を採用しているのも特徴的で、コントロール要素を強めている。

　打ち消し枠に《物語の終わり》を１枚採用することで、相手が先手の３ターン目に唱えてきたウーロに照準を合わせられるのが、なかなかに味のある構成だ。

　最強格の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、そしてともに土地を伸ばす《成長のらせん》と《探検》。これらで土地を伸ばすデッキは、おそらくミシックインビテーショナルでも中心的な存在となることだろう。これらのデッキを打ち崩すためにどんなデッキが現れるか、あるいはそれらをウギンやテフェリーのカードパワーでねじ伏せるのか。結果はその目で確かめてほしいね！

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