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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ファイアーズ、再び(スタンダード)

岩SHOW

 「ファイアーズ」というデッキを知ってるかい。長らくマジックをやっているプレイヤーならそれが自分の青春そのものだったり、かつてはそんなデッキがあったということを耳にしたことがあるだろう。

 ファイアーズとは《ヤヴィマヤの火》のこと。これを《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》で早いターンに設置し、後続のクリーチャーをすべて速攻持ちにする。しかもそれは《ブラストダーム》や、《はじける子嚢》からばら撒かれる苗木・トークンだったり、どっしりと重いパンチを誇るヘビー級の群れだ。準備が整ったら爆撃のように対戦相手のライフを削り取る、まるで殺傷本能を形にしたようなデッキだった。僕は当時カードを持っていなかったので踏み潰される側だったが、どうにか倒してやろうとあれやこれやと考えたものである。

 その「ファイアーズ」がこの2019年のスタンダードに復活したらしい。《ヤヴィマヤの火》に代わる速攻付与エンチャントなんて……あったかな?

 実は《ヤヴィマヤの火》とはベクトルの異なるカードが、その起爆剤の役目を担っている。方向性は違っても、そのカードもまた火の力を具現化したものであり、そしてデッキの勝利シーンも速攻持ちのヘビー級でガツンと一撃かますという点で、「ファイアーズ」を名乗る資格のあるデッキなのである。

 四の五の言わずにデッキを見ようか、これが現代に蘇った「ファイアーズ」の新しい形だ!

Martin Jůza - 「ジェスカイ・ファイアーズ」
MPLエルドレイン・スプリット サファイア・ディビジョン / スタンダード (2019年10月1~6日)[MO]
2 《
2 《
1 《平地
4 《蒸気孔
2 《天啓の神殿
4 《神聖なる泉
2 《聖なる鋳造所
4 《凱旋の神殿
4 《ヴァントレス城
4 《寓話の小道

-土地(29)-

4 《砕骨の巨人
4 《炎の騎兵
4 《風の騎兵
1 《パルン、ニヴ=ミゼット

-クリーチャー(13)-
3 《霊気の疾風
4 《轟音のクラリオン
4 《創案の火
3 《抽象からの抽出
4 《時を解す者、テフェリー

-呪文(18)-
3 《王国まといの巨人
3 《敬虔な命令
2 《軽蔑的な一撃
4 《神秘の論争
3 《夢を引き裂く者、アショク

-サイドボード(15)-

 

 現代に蘇った火、それは《創案の火》!

 呪文が1ターンに2回しか唱えられなくなるが、その代わりそのマナ・コストは支払わなくてもOK! 自身がコントロールしている土地の枚数が、その呪文の点数で見たマナ・コスト以上あれば、マナ・コストを支払うことなく唱えられるという、夢のような爆発力をもたらしてくれるエンチャントだ。

 『エルドレインの王権』リリース前からマニアに注目され、重いカードに偏ったり色を無視した無茶苦茶なカードの組み合わせでとにかくカードパワーで押す、というデッキを実際に考えたプレイヤーは少なくないだろう。しかしながらこんな使い方をするとは……ビックリだ。

 このデッキでコストを踏み倒すのは《炎の騎兵》と《風の騎兵》!

 これらをタダで唱えることで一体どんなことが起こるのかというと……マナが不要ということは土地がアンタップ状態である。そこから得たマナを《炎の騎兵》の起動型能力に注ぎ込んで、パワーを上げるとともに速攻をつけることができる! この2体がパワーが上昇したうえで速攻で殴れば、二桁ダメージを叩き出すってことだ。まさしく、ファイアーズ……。

 デッキとしては、まず序盤は何よりも相手の攻めに耐えねばならない。《砕骨の巨人》の《踏みつけ》や、《轟音のクラリオン》で相手のクリーチャーを積極的に除去していこう。《時を解す者、テフェリー》で時間稼ぎも有効だ。《砕骨の巨人》として出して相討ちブロックしても良い。

 そうして4ターン目を迎えたら……《創案の火》を設置。まだ相手の戦場に十分な攻め手があれば、そのままコストなしで除去を唱える。安全であれば《抽象からの抽出》で騎兵たちを探しに行く。

 そして5ターン目、騎兵たちを投下して速攻パンチドーン! 次のターンもういっちょドーン! と豪快なアタックをぶちかまして勝利するのだ。

 派手な勝ち方もさることながら、デッキリストを見るともうひとつ注目すべき特徴があることに気付くはず。そう、土地の枚数が29枚ととても多い! これはなぜか?

 《創案の火》を使う上で、この偏った構築は大変重要なことなのだ。キーカードは4マナのエンチャントで、それを可能な限りスムーズに4ターン目に設置したい。かつ、次のターンにも絶対に土地を置いて、ちゃんと5マナの騎兵をタダで唱えたい。そのためには、土地が少ないからマリガンとか、引いても引いても土地が来ないとか、そういった事故の類に遭遇してはならないのだ。少なくとも5枚目の土地までは止まらずに置き続ける、その決意がこの枚数には込められている。

 で、こうなると土地ばっかり引いちゃうんじゃないかという心配も出てくるが、そこはご安心を。29枚中4枚は《ヴァントレス城》が占めている。

 《創案の火》設置後に使い道が無くなったマナをドローの質の向上に回すことで、無駄なドローを避けようというわけだ。

 また、《風の騎兵》と相性の良い《寓話の小道》も4枚とられている。

 騎兵の能力で3枚引いて2枚戻すカードを土地にして、小道を起動してシャッフルしてライブラリーの上をリセットするのだ。

 まあこれらのように細かい工夫をせずとも、不要な土地は《炎の騎兵》で捨てて他のカードを引くという豪快な解決策もある。何にせよ、土地が余ってしまうということはないようにカードが選定されているので、安心してこれだけの量の土地を搭載することが叶ったというわけだ。

 突然圧倒的な盤面を形成し、一瞬でゲーム終了まで持っていく爆発力。その派手さに目を奪われがちだが、その裏には普通のデッキよりも土地を増やすという工夫が為されている。何か欲望を形にするには、そのための準備が必要ってことだ。

 楽しいカードを活用するデッキ構築がしたいけど、上手くいかない。そう悩んでいるプレイヤーには、このデッキの破天荒さを支える真面目さは大きなヒントになるんじゃないかな。《創案の火》はまだまだ他にもいろんな勝ち方が狙えそうなので、思い思いのデッキを組んで暴れてやろうぜ!

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