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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

Troll Disco(Old School)

岩SHOW

 ラスベガスを歩けば、街を行き交う人の多くがお祭り騒ぎ状態。とにかくテンションが高い。そりゃあ世界随一の娯楽都市、毎日がお祭り状態になるってなもんで。グランプリ・ラスベガス2018の会場もまさしくそんな感じで、日本では見られないような派手な格好をするプレイヤーがいたり、とにかくそこかしこで楽しそうにマジックをするプレイヤーの姿が見られた。皆、良い顔してるんだよこれが。

 中でも、嬉々としてプレイしている人が多いなと思ったのがサイドイベントの「Old School Championship」。このコラムでも過去に触れたことがある、「Old School」なるフォーマットの大型トーナメントだ。Old schoolとは古き良き時代・ものの意。マジックの黎明期を振り返るフォーマットで、マジックが世に出た1993年から1994年の間に発売されたセットのみが使用可能。禁止カードはなく、制限カードや『フォールン・エンパイア』が使用可能か否かは主催者や地域によって異なることも。古いカードのみでプレイするヴインテージ、と考えてもらえれば差し支えない。

 このOld School、往年の名カードが飛び交う本当に楽しいフォーマットである。レガシーやヴィンテージでも使用可能だが、最近のカードにパワー負けするような《Juzam Djinn》が大暴れしたり、《Tawnos's Coffin》のような激シブカードに役目が与えられたりと、古いカードによる攻防は目が離せない。

 ヴィンテージで制限を受けているようなカードが同じく使用可能ということでぶっ壊れカードパワーによる瞬殺フォーマットに思われがちだが、実は黎明期のカードプールにはこれらをそこまで悪用する手段はなく、ゲーム展開は割と落ち着いたものとなる。

 《セラの天使》や《トリスケリオン》が大活躍する古き良きマジック……そんなOld Schoolを遊ぶために、ベガスには約100名のプレイヤーが集まったのだからビックリだ。今日はこのトーナメントで活躍したデッキリストを1つ紹介しよう。

Curt Christian - 「Troll Disco」
グランプリ・ラスベガス2018併催 Old School Championship 5勝0敗 / Old School (2018年6月17日)[MO] [ARENA]
1 《
1 《
4 《Underground Sea
4 《Volcanic Island
4 《Badlands
2 《真鍮の都
4 《ミシュラの工廠
3 《露天鉱床
1 《Library of Alexandria
-土地(24)-

4 《Sedge Troll
1 《ウスデン・トロール
1 《沼地の王ソルカナー
-クリーチャー(6)-
1 《Mox Sapphire
1 《Mox Jet
1 《Mox Ruby
4 《稲妻
1 《Ancestral Recall
1 《魔力の櫃
1 《太陽の指輪
4 《対抗呪文
1 《Chaos Orb
1 《Demonic Tutor
1 《Fork
1 《マナ吸収
1 《Time Walk
1 《心霊破
1 《Wheel of Fortune
4 《ネビニラルの円盤
1 《火の玉
1 《精神錯乱
1 《魔力消沈
1 《Braingeyser
1 《回想
-呪文(30)-
2 《象牙の塔
3 《赤霊破
2 《青霊破
2 《City in a Bottle
1 《粉砕
2 《支配魔法
2 《粉砕の嵐
1 《Amnesia
-サイドボード(15)-
Curt Christian氏のTwitter より引用)
 

 《Sedge Troll》! シブすぎるクリーチャーがこのデッキの主役だ。

 3マナ2/2で《》をコントロールしていれば+1/+1、{B}で再生と、赤いクリーチャーでありながら黒いデッキでの使用を前提とした実質多色のクリーチャーだ。3マナ3/3というサイズが素晴らしく、再生により攻撃もブロックもさせやすい。このトロールを用いた、コントロール寄りの中速デッキがこの「Troll Disco」だ!

 デッキとしては青赤タッチ黒で、今風に言えばグリクシス。《Underground Sea》と《Badlands》の存在により、青赤を主としながら簡単にトロールの本気を出させることができるようになっている。

 このトロールでビートダウンしても良いが、その強さを最も発揮してくれるのはブロッカーとして運用した時。飛行クリーチャーと《剣を鍬に》さえ打ち消していれば、頑強なブロッカーとしてありとあらゆる地上クリーチャーをシャットアウトしてくれるだろう。カードプール的にトランプルを持った強力なクリーチャーがほとんどいないのもトロール的には追い風だ。

 これでがっちりと盤面を固め、対戦相手がそれを乗り越えるためにより大きなクリーチャーを複数展開してきた場合は《ネビニラルの円盤》で盤面を流し去る。トロールの再生はこの円盤リセットにも耐えられるものなのでご安心を。《Sedge Troll》だけでなく《ウスデン・トロール》まで採用されているところにこの戦術が手堅いものであることが読み取れる。ウスデンのイラスト、最高に好きだなぁ……。

 《対抗呪文》や《稲妻》などのインスタントで要所を打ち消し、除去してコントロールを物にしたら、トロールたちと《沼地の王ソルカナー》で殴ってフィニッシュ。《火の玉》《心霊破》も状況によっては対戦相手本体に叩き込んで、有利なうちにさっさとゲームを終わらせてしまおう。制限カード群により長期戦でも大きくアドバンテージ勝負を挑むことはできるが、それは相手も同じなので気を付けるべし。

 Old Schoolらしい《Chaos Orb》がデッキに入っているのも見逃せない。

 マジックがカードゲームでなくなってしまいかねない能力(空中からはじいて水平に1回以上回転させた上で狙ったパーマネントにぶつけるスキルが求められる)によりヴィンテージでさえ禁止カードにされている、こんなお茶目なカードで遊べるなんて最高だね。

 カードプールは拡張することは無くとも、だからこそありとあらゆるカードにチャンスがあるとも言える。世の中には最弱クリーチャーと名高い《Wood Elemental》を主軸としたデッキまで存在するらしい。カジュアルだからこその奥の深さを持ったフォーマット、Old School。

 何と日本でもこの夏、アジア・チャンピオンを決定するトーナメントが開催予定だ。エターナル・ウィークエンド・アジアが今から楽しみでしょうがないッ!!

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