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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ネクロ・ドネイト(エクステンデッド)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ネクロ・ドネイト(エクステンデッド)

by 岩SHOW

 変形サイドボードの歴史を追ってきたこの一週間。果たして皆にとって面白いものだったのかどうか......書いている今現在はこれを伺うことができず、やや不安な側面もあるが......僕自身好きだった古いデッキと、これから多くのプレイヤーに愛されていくかもしれない最新のデッキとを紹介できたのは満足だ。

 やっぱり、変形するデッキは面白い。サイドボードという概念を持ったマジックならではのギミックで、対戦相手の驚く顔を拝見できる。何より僕は普通のサイドボーディングが苦手なので、15枚放り込んで定められたものを抜き取るだけで済む変形が楽チンだというのもある。そんな理由はさておき、やはり好みのデッキの話をするのは筆が乗る。この企画の締めは......このデッキしかない。これについて書きたいからこのテーマにした、まである。それではご覧いただこう、超絶デッキの1つ、「ネクロ・ドネイト」!

村上 裕樹 - 「ネクロ・ドネイト」
グランプリ・京都2000 準優勝 / エクステンデッド (2000年11月11~12日)[MO] [ARENA]
10 《
4 《Underground Sea
3 《Badlands
3 《地底の大河
3 《宝石鉱山

-土地(23)-


-クリーチャー(0)-
4 《モックス・ダイアモンド
4 《Demonic Consultation
4 《強迫
3 《吸血の教示者
2 《無効
2 《炎の嵐
4 《ネクロポーテンス
3 《寄付
4 《Illusions of Grandeur
3 《暴露
4 《意志の力

-呪文(37)-
4 《ファイレクシアの抹殺者
4 《紅蓮破
3 《水流破
1 《炎の嵐
3 《虐殺

-サイドボード(15)-

 エクステンデッドにて行われたグランプリ・京都2000。このトーナメントを制したのは「ネクロ・ドネイト」。決勝卓に座った二人ともが使用していたのも「ネクロ・ドネイト」だ。どんだけ強かったんだよと思うが、本当に無茶苦茶強かった。ネクロとは《ネクロポーテンス》、ドネイトとは《寄付》を指す。ネクロを《寄付》するのかって? それはちょっと違う。先に、このデッキの兄弟分のことを知っておくといいかもしれない。

 戦場に出た際に20点回復をもたらすが、戦場を離れた際には20点のライフを奪っていくエンチャント《Illusions of Grandeur》。これを貼って、対戦相手に《寄付》する。このエンチャントは累加アップキープを持っているので、いつかこのコストが払えなくなって20点ライフを失いゲームに敗北する......そんな豪快なコンボがこのデッキの目指すところ。

 それをサポートするのが......《ネクロポーテンス》だ。

 考えてもみてほしい。《Illusions of Grandeur》を貼って、20点のライフを得た。それだけで良いのかと。コンボを決めるために、このライフを有効活用できれば......無駄がなく、最高じゃないかと。そこでライフをカードに変換する《ネクロポーテンス》の出番だ。この2枚は理論上、20枚のカードをもたらしてくれる。元から持っていたライフを合わせるともっとだ。これだけ支払えばさすがに《寄付》は見つかるし、これを通すための打ち消し・手札破壊呪文合戦を制することも容易い。

 というわけで一見小学生の考えたようなコンボではあるが、ひとたび組み合わさった途端、世界をネクロで染めてしまった。それまでのエクステンデッドとその後のそれとでは別のゲームである、と言ってしまっても問題ないレベルには強かった。このデッキが暴れ散らかすのをこれ以上見ていられない、と《暗黒の儀式》《魔力の櫃》というマナ加速が禁止カードに。これで完全版「ネクロ・ドネイト」はこの世から消え去った。以後、フツーの「ネクロ・ドネイト」が猛威を振るうことになる。

 マナ加速がパワーダウンしても、デッキパワー自体が大幅にダウンしたわけではなかった。それだけ《ネクロポーテンス》の弾きだすカードアドバンテージは異常だということ。《吸血の教示者》《Demonic Consultation》もイカれていた。手札破壊で相手のプランを崩してからのサーチ&大量ドロー、ハッキリ言って頭がおかしかったね。

 それに加えて、このデッキにはアグレッシブ・サイドボードという武器もある。《ファイレクシアの抹殺者》をサイドインして、クリーチャー除去を0にしたデッキ......主に同型を微塵切りにするのだ。

 手札破壊と《意志の力》によって抹殺者を護りながら殴り勝つ、いわゆるクロック・パーミッション戦略で戦うことができたのである。このサイド後にデッキの本質をスイッチする戦法を、17年前に僕は初めて目の当たりにし、そして感激したのを覚えている。ちょっとした革命だったなぁ。またカードのチョイスが抹殺者ってのも良いんよね。僕らの世代にはたまらない。

 ちなみに......このデッキの使用者・村上は抹殺者ビートで勝ちそうなところを、《Demonic Consultation》を唱えてしまい......指定したカードがこのカードの効果により追放された6枚のカードの中にすべて含まれてしまっており、結果ライブラリーが空に。いわゆるデモコンデス!

 これによって負けそうな状況から逆転勝ち、続く3ゲーム目を制して優勝したのが......我らが殿堂のおっちゃん、ローリーさん(藤田剛史)だ。ローリーさんの優勝デッキのリストを見て、終わりとしよう。

藤田 剛史 - 「ネクロ・ドネイト」
グランプリ・京都2000 優勝 / エクステンデッド (2000年11月11~12日)[MO] [ARENA]
7 《
4 《Underground Sea
1 《地底の大河
4 《泥炭の沼地
4 《宝石鉱山
1 《真鍮の都
2 《裏切り者の都

-土地(23)-


-クリーチャー(0)-
4 《モックス・ダイアモンド
4 《Demonic Consultation
4 《強迫
3 《渦まく知識
3 《紅蓮破
3 《吸血の教示者
1 《炎の嵐
4 《ネクロポーテンス
3 《寄付
4 《Illusions of Grandeur
4 《意志の力

-呪文(37)-
4 《無効
1 《炎の嵐
1 《紅蓮破
2 《秘儀の否定
1 《赤の防御円
3 《誤った指図
3 《紅蓮操作

-サイドボード(15)-

 変形サイドはないが、メインから《紅蓮破》を採用し、《Illusions of Grandeur》を即座に破壊してタイムラグなく勝利することができる仕様となっている。土地も2マナランドを採用していたりと、さすがはローリーさんといったやり込み具合だ。

 ちなみに、「ネクロ・ドネイト」誕生前......ある夜、布団に入ったローリーさんは「トリックスに《ネクロポーテンス》入れたらめっちゃ引けるやん!」と閃いたらしい。しかし「いやー寝る前の悪ノリやな、寝よ」とそのまま寝てしまったという......

 もしここで形にしていれば、エクステンデッドの歴史はまた違ったものになっていたかもしれない......なんで寝てん!と言われないように、皆も思いついたものは形にしてから就寝しよう! 「変形サイドウィーク」らしいオチかな、アイディアは試し得!

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