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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:激動サイカトグ(過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:激動サイカトグ(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 7月、夏の到来だ! 学生の皆さんは時間があると思うので、かけがえのないひと時を悔いのないように楽しんでほしい。もちろん、マジックも忘れずに楽しんでほしい。社会人の皆さんは、一緒に通勤など頑張りましょう。暑いのはもううだうだ言ってもしょうがないので、クーラーで身体なんか壊さないように気を付けよう。そして、休みの日はマジックを満喫しましょう。

 てなわけで夏である。マジック的に夏と言えば、「○○の夏」というフレーズを思い出す。今日は過去を懐かしむシリーズとして、かつて夏を染め上げたデッキを紹介しよう。「激動サイカトグ」のお出まし~。

Carlos Romao - 「激動サイカトグ」
世界選手権2002 優勝 / スタンダード (2002年8月14~17日)[MO] [ARENA]
10 《
3 《
4 《地底の大河
4 《塩の湿地
1 《ダークウォーターの地下墓地
2 《セファリッドの円形競技場

-土地(24)-

4 《夜景学院の使い魔
4 《サイカトグ

-クリーチャー(8)-
4 《対抗呪文
3 《チェイナーの布告
3 《記憶の欠落
4 《排撃
3 《堂々巡り
3 《狡猾な願い
3 《綿密な分析
3 《嘘か真か
2 《激動

-呪文(28)-
4 《強迫
3 《恐ろしい死
1 《棺の追放
1 《反論
1 《テフェリーの反応
1 《冬眠
1 《枯渇
1 《はね返り
1 《殺戮
1 《嘘か真か

-サイドボード(15)-

 それは2002年8月のある日。世界で一番マジックが強いヤツを決める場、世界選手権。その会場で支配的な使用率を誇ったのが《サイカトグ》を勝ち手段とした青黒のコントロールデッキ。3色目を採用した亜種を含めると、その使用率はなんと46%!圧倒的よのう......2回戦ゲームして、どっちも相手がサイカじゃない方が珍しい。

 打ち消し・除去・そして圧倒的なフィニッシャーを有するこのコントロールデッキを使うのか、それとも倒すのかというのが、この世界選手権2002に参加するプレイヤーにとっての命題であったが......結果、TOP8にサイカトグデッキ使用者が6名、優勝もこの「激動サイカトグ」と、サイカ一色のトーナメントになってしまった。ゆえにこの夏のマジックシーンは「サイカの夏」と呼ばれることに。

 「激動サイカトグ」はサイカトグデッキの系譜でも最もオーソドックスなものだ。青の打ち消しとドロー呪文、黒の除去で盤面をコントロールしつつ、最後は《サイカトグ》のワンパンチで勝利する。《サイカトグ》は手札からカードを1枚捨てるか、墓地のカードを2枚追放するとターン終了時まで+1/+1修整を受ける。この能力を起動しまくれば、ワンパンチ20点も夢ではない。いや夢だろう、という人のためにもこのデッキのドギツいフィニッシュブローの解説をしよう。

Step.1:9マナ貯めろ! 土地を9枚並べることを目標にプレイするべし。それまで対戦相手が仕掛けてくる《獣群の呼び声》などのラッシュを捌いて生き残れ!

Step.2:《狡猾な願い》で《枯渇》を願え! 『ジャッジメント』参入後はインスタントをゲーム外=サイドボードからサーチしてこられる《狡猾な願い》を使って、その局面で必要な除去や《嘘か真か》を手に入れる戦略が取るようになった。サイドボードに1枚挿しの《枯渇》もこの呪文でサーチするために採用されている。9マナ以上揃えたら、相手のターン終了時に《枯渇》を唱えて相手の土地をすべてタップさせてしまおう。こうすることで、続く自分のターンを安全に迎えることができるのだ。

Step.3:起こせ《激動》、呼び出せ《サイカトグ》! 相手が身動きを取れない間に土地から9マナを生み出し、6マナのソーサリーという隙だらけの呪文である《激動》を唱えよう。すべてのパーマネントがそのオーナーの手札に戻る。しかる後、無人の荒野に《サイカトグ》を投下。手札から土地を1枚戦場に出したらターン終了だ。青マナを1つ立てて《堂々巡り》を構える。対戦相手が1マナでクリーチャーを出したり除去を撃とうとしても、《サイカトグ》の能力でこのカードを捨ててマッドネスでプレイし、無慈悲にそれを阻むのだ。

Step.4:攻撃! 後はあふれる手札と墓地を《サイカトグ》の餌にしてゲームエンド。対戦相手からすべてを奪い、一撃で殴り勝つ!

 ......といった具合だ。今改めて見返すと、本当にえげつないデッキだ。《枯渇》が通ってしまうと、対戦相手はもう見ていることしかできない。事実上の決着の合図であり、同じサイカトグデッキ同士の対決はこれをめぐってのカウンター合戦が1つの見どころである。

 《激動》のコストを軽くするために入れられている《夜景学院の使い魔》も、序盤からピチピチと殴ってプレッシャーをかけていく。これをいかに除去するか・それを踏まえてどのタイミングで《サイカトグ》を出すのかなど、同型対決はプレイヤーの腕の差が如実に表れる。

 《嘘か真か》はこの時代を代表する呪文だ。4マナで、往々にして3枚以上・そうでなければ少数でも質の高いカードを引きこむことができる、最強のアドバンテージ獲得インスタントであった。これを撃たれた時にどう分けるのか、こればっかりは練習で身に着けるしかなく、回数をこなすしかない。

 《サイカトグ》を使うデッキではこの呪文に手札の増強以外にも役割が与えられている。《激動》ルートではなくコツコツと殴って勝つプランを選択した場合、《嘘か真か》をアグレッシブに自分のターンに唱えて、得たカード・墓地に落ちたカードを全部《サイカトグ》に食わせると打点が膨れ上がる。この時墓地に落ち、サイカに食わせた《嘘か真か》を《狡猾な願い》で手札に戻して使いまわすというのも1つのテクニックだった(当時のルールではゲーム外=サイドボードと今で言う追放領域を指したので、願いカードでこういった追放されたカードを回収することができた)。

 デッキを構成するカード1枚1枚に隙が無い、恐ろしいフォルムには感嘆させられる。こんなバケモン相手に戦ってきてたんだなぁとしみじみ思う。今皆が立ち向かっている「緑白トークン」や、こないだまで我が物顔でのし歩いていた「アブザン・アグロ」も、そんな思い出のデッキになる日が来るのだろう。そんな時まで、末永くこのゲームとともに歩みたいなと思った、雨上がりの午後。夏がやってくるなぁ。

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