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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第40回:清水直樹のデッキ構築劇場・掘り起こす栄光

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週刊デッキ構築劇場

2011.11.28

第40回:清水直樹のデッキ構築劇場・掘り起こす栄光

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 イヤナガ君、そして日本代表チーム、優勝おめでとう!!

worlds11_mainimage02

 いやあ、平日だったので決勝戦を生中継で見られなかったのが残念でした。
 それでも優勝の報が届いた時は本当に嬉しくて、横にいたマジックとは全然関係ない友人に「日本優勝した!!!日本優勝したよ!!」と騒ぎながら話しかけてしまいました。
 さぞかし彼は対応に困ったことでしょう。

 みなさんこんにちは、清水です。
 イニストラードが発売されて、どうやら大人気なようで各地でパックが品薄になっているという噂も耳にするほどに、マジック熱はうなぎのぼりですね!!

 おそらくスタンダードについては皆さんそれぞれ煮詰まってきたころなのではないかなと思いますが、今回はモダンで構築劇場してみようと思います。

 プロツアー・フィラデルフィアが終わって、大量の禁止カードが発表され、イニストラードの参入で環境は激変しました。
 というわけで、非常に簡単ですが世界選手権の結果などからどんなデッキがあるのかを見てみたいと思います。


「Counter Cat」

 世界最強のチーム、Channel Fireballのモダンにおける傑作です。

 《野生のナカティル》《タルモゴイフ》をはじめとした強力生物。マナベースはゼンディカーのフェッチランドを利用し多色化、各色の強力カードでバックアップ。
 イニストラードからは《瞬唱の魔道士》を手に入れ、打ち消し呪文も擁するためビートダウンでありながらコンボ耐性も高いという、とてもバランスが良いデッキです。


「《欠片の双子》」

 大量の禁止カードを受けてコンボデッキたちが絶滅していくなか、生き残ったのが《欠片の双子》《詐欺師の総督》のコンボです。

 このコンボは単体除去1枚で捌けてしまうということでおそらく禁止を免れたのかと思われますが、今度は《罰する火》《燃え柳の木立ち》を搭載したことで新たな勝ち筋を得ることに成功しました。

 禁止カードの影響でクリーチャーデッキも増えているため、これまでできなかったチューンができるようになった形です。


瞬唱の魔道士》系コントロール

 イニストラードの注目株である《瞬唱の魔道士》は、カードプールが広がれば広がるほど大きなパワーを発揮します。

 世界選手権優勝のイヤナガ君も、《神秘の指導》を軸に《瞬唱の魔道士》をうまく利用していましたね。
 非常にバリエーションが豊富なため、なかなかひとくくりにはしづらいのですが、これまででは有り得なかったコントロールデッキが環境に許されるようになったのは大きいことです。


「ジャンド」

 《血編み髪のエルフ》はやっぱり強かった!

 《コジレックの審問》や《思考囲い》といったハンデス呪文、そして《ヴェールのリリアナ》も獲得したジャンドはイニストラード後のモダンではかなりの注目株です。


 こうしてもう一度モダンのデッキのラインナップを見てみると、《引き裂かれし永劫、エムラクール》が元気に滅殺していたり、突然《墨蛾の生息地》が10/1で元気に毒殺を決めてしまったり、といったプロツアー・フィラデルフィアのときのモダンに比べれば、だいぶ世界は平和になったようです。
 さすがに毎回ゲームが3ターン以内に決着してしまっては、ちょっとWizardsさんやりすぎちゃいまっか、というところですからね。

 実はモダンが発表された当時からやってみたいなーと思っていたデッキがあったのですが、禁止・イニストラード前の環境ではとてもスピードについていけなかったんですよね。

 さて、そのデッキとは何か?

 「発掘」です。


今こそ発掘のとき

 あれは2009年の秋のこと・・・。
 今をさかのぼること約2年前。
 当時はほとんど墓地の対策が無警戒。誰もが《暗黒の深部》に注目している中、《面晶体のカニ》から「発掘」デッキを完成させて見事トップ8入賞を果たすことができたわけです。
 とにかく、墓地を利用するギミックというのは他のデッキとはまったく戦いの軸が変わってきます。そのずらした軸が環境的に強いものなら、モダンに戦場を移しても必ずや力を発揮することができるでしょう。

 もはや僕にとっては過去の栄光となってしまったプロツアー・オースティン09の時から思い入れが深い「発掘」ですが、ところがどっこい、モダンではキーカードである《ゴルガリの墓トロール》と《戦慄の復活》が禁止されるという非常に悲しい目に遭っていました。

 しかしイニストラードは狼男が遠吠えするだけのセットではありません! もっともっと、墓地を活用してやろうではありませんか!

『Glory in the Past』[MO] [ARENA]
4 《霧深い雨林
4 《新緑の地下墓地
3 《繁殖池
3 《沸騰する小湖
3 《湿った墓
1 《
1 《内陸の湾港
1 《
1 《草むした墓
1 《

-土地(22)-

4 《飛び地の暗号術士
4 《面晶体のカニ
3 《緑探し
4 《骨塚のワーム
3 《ゴルガリの凶漢
3 《スカーブの殲滅者
4 《臭い草のインプ
3 《裂け木の恐怖

-クリーチャー(28)-
2 《黄泉からの橋
4 《ゾンビの横行
3 《壌土からの生命
1 《蟲の収穫

-呪文(10)-
3 《思考囲い
2 《カラスの罪
1 《黄泉からの橋
1 《地盤の際
4 《倦怠の宝珠
3 《骨までの齧りつき
1 《蟲の収穫

-サイドボード(15)-


 デッキ名も過去の栄光になってしまいました。

 さて、これまでの「発掘」といえば、発掘カードや《不可思の一瞥》で墓地を掘り進めて《ナルコメーバ》を並べて、《戦慄の復活》で《エメリアの盾、イオナ》を釣って同時に《黄泉からの橋》で場にゾンビを大量に並べて・・・といったものでしたが、《戦慄の復活》が禁止されてしまっている以上はそうしたアプローチはできません。

 そこで、今回はイニストラードからこのお三方に登場していただきました。

「やらないか」
「やらないか」
「やらないか」

 ・・・凄く・・・大きいです・・・・・・

 いくら「掘る」だからってこの台詞は流石に歪みなさすぎますね(汗)

 ま、まぁせっかく登場はしていただいたので、どんなことができるのかを紹介しましょう。

 まず《骨塚のワーム》ですが、2マナと非常に軽い上に《面晶体のカニ》から2ターン目に出れば4/4以上のサイズで出ることもあります。
 もちろんゲームが進めば、あっという間に《タルモゴイフ》もびっくりな大きさに成長します。《臭い草のインプ》を発掘したとき、あるいは《面晶体のカニ》→《霧深い雨林》のときなど、一気に暴力的なサイズになることができます。

 《裂け木の恐怖》は追加の《骨塚のワーム》です。3マナになりますが、そのアップキープの追加能力が非常にデッキとマッチしています。
 トランプルも持っているので、速やかにゲームを終わらせることができます。

 そして《スカーブの殲滅者》は、墓地から唱えることができるスグレモノです。5/6飛行というサイズも、今のモダン界では右に出る者はないでしょう。
 仮に除去されてしまっても、再び墓地から呼び戻すことができますね。


 この歪みないクリーチャーたちの特徴は、みな、「サイズ」が「大きい」ことです。

 ・・・

 あ、いや、サイズが大きいというのは当然、タフネスが高いので《罰する火》で対処されづらいということですよ。
 《罰する火》(と《燃え柳の木立ち》)はタフネス2以下のクリーチャーを根こそぎにしてしまうのが大きな特徴ですが、そのぶん、マナもかかります。
 《スカーブの殲滅者》を倒すために《罰する火》を3回撃つためには、《燃え柳の木立ち》2枚を含めて8マナも必要なのです!
 いやぁ、いつの時代も大きいことは正義ですね。

 もちろん、これを実現させるためには墓地を耕さないと話になりませんので、もはや現代の「発掘」では定番の《面晶体のカニ》に加えて、《飛び地の暗号術士》、《緑探し》、《ゾンビの横行》を採用しています。

 相変わらずシミチンは《緑探し》が好きだな、とお思いになった方、ありがとうございます。これぞ過去の栄光です。
 《溺れたルサルカ》も最初入っていたのですが、大量にライブラリを掘れる《ゴルガリの墓トロール》が無いことがかなり痛手で、《ナルコメーバ》を敢えて採っていないこのレシピでは不採用となりました。

 そうです、この「発掘」には《ナルコメーバ》が入っていません。
 もちろん採用するかどうかは考えたのですが、やはり《ゴルガリの墓トロール》がないので、ライブラリから直接墓地に落とすというアクションが以前より少ないのです。
 しかし調整過程で一度思いついた《霊の花輪》を《ナルコメーバ》につけて殴る、というのができるととても面白そうなので、発掘好きな方は是非挑戦してみてください!

 基本セット2012で復活を遂げた《ゾンビの横行》は、《壌土からの生命》との相性が抜群です!
 《壌土からの生命》は実質的に3枚のカードを引くことに等しいので、《壌土からの生命》を撃ち続ければ土地を1枚ずつ伸ばしながらゾンビを出していくことができます。
 気付いた時には地上はゾンビだらけになっていると思います。こうしたアクションは、CounterCatをはじめとしたビートダウン、そしてジャンドに有効です。
 《ゾンビの横行》といえば、かつて《ゴブリンの太守スクイー》と組み合わせていた時代もあったようです。
 これは今のモダン環境でも可能なので、Benzoという名前に聞き覚えがある方は是非試してみて下さい!

 《ゴルガリの墓トロール》禁止によりさびしくなってしまった「発掘」カードですが、それでも《臭い草のインプ》は当然の採用となります。
 一度エクステンデッドなどで「発掘」と対戦された方はご存知かと思いますが、本当にこの《臭い草のインプ》は場に出てきたときの対処しづらさが凄いんです。
 当時のZooプレイヤーたちが、泣きながら《流刑への道》を撃ってくるくらいです。

 また、《ゴルガリの凶漢》も加えました。墓地に落ちた《骨塚のワーム》を回収できるので、これもまた相手にすると意外にいやらしいカードです。

 サイドボードに目を移すと、《骨までの齧りつき》が目を引きます。

 これで、「Counter Cat」のようなビートダウンの心をへし折るのです。
 このデッキであれば、簡単に10点以上のライフをゲインすることができるでしょう。ライフさえあれば、そのうち《蟲の収穫》などで場を制圧することができるでしょう。

 そして、皆さんとっくにお気づきだと思いますが《欠片の双子》デッキにはメインボードでは完全に無策なので、とりあえず《倦怠の宝珠》を入れておきました。
 《思考囲い》と合わせれば、なんとかゲームはさせてもらえると思います。

 《カラスの罪》はコントロールデッキ対策にどうぞ。《壌土からの生命》と合わせれば、相手の手札を壊滅させることができます。
 この「カラス・ローム」のテクニックは、あの八十岡大先生も注目しているということで、今後のモダン環境では要チェックやで!!


 イニストラードが墓地を活用することをテーマとしたセットだったこともあり、発掘デッキの今後は楽しみですね。
 モダンは非常にカードプールが広いので、僕が発見できなかった強力な発掘ギミックがあるかもしれません。
 まだまだ次のエキスパンションの発売までは遠いですが、ひょっとしたら、突然「過去の栄光」が「現代の栄華」に変わる日が来るかもしれません。

 そのときまで・・・

 Decks, Be Ambtious!!

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