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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第1回:清水直樹のデッキ構築劇場

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週刊デッキ構築劇場

2011.02.03

第1回:清水直樹のデッキ構築劇場

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数


 皆さんあけましておめでとうございます!

 もう2月だろ!!という突っ込みを受けてしまいそうですが、2011年も構築劇場は健在、今年もよろしくということでひとつご勘弁を・・・。

 今年の構築劇場はなんと、週刊連載!!毎週木曜日、それぞれ違った演者たちがそれぞれの「色」に合ったデッキを構築していきます。
 今年も沢山のAmbitiousなデッキたちを紹介していければと思います!


 今週末はいよいよミラディン包囲戦の発売ですね。ミラディン対ファイレクシアの戦いは更に激化し、それぞれの陣営のカードたちの強さも「激化」しています!


ミラディンの十字軍

 プロテクション(緑)(黒)は今スタンダード環境に存在する「ヴァラクート」「青黒」のどちらにも有効です!
 《原始のタイタン》《墓所のタイタン》どちらも無視して殴れるのは心強い!
 もっとも、ヴァラクートには《稲妻》もありますし、青黒には《精神を刻む者、ジェイス》もありますから完璧とは言えませんが、ちょっと《肉体と精神の剣》を与えるだけで無敵になっちゃいますね!
 おお、二段攻撃で能力が二度誘発だなんてそれだけでテンションあがっちゃいます!


ファイレクシアの十字軍

 一方こちらはプロテクション(赤)(白)。これはつまり《稲妻》《糾弾》《未達への旅》が効かない!ということです。ブロックされにくいのがライバルの特徴だったのに対し、こちらは殺されにくいのが特徴です。
 《破滅の刃》も効かないぜ!と思っていたら同じセットで《喉首狙い》という強力な除去が出てしまったのはちょっと残念ですが...。


宝物の魔道士

 たちあがれ!全国の《大建築家》たちよ!!
 《精神隷属器》《ワームとぐろエンジン》が呼んでいる!


刃砦の英雄

 単体で既に7点クロック、オトモがいればその威力は恐ろしいことに。《清浄の名誉》を使うと・・・!?


最後のトロール、スラーン

 全国の青黒ファンの悲鳴が聞こえてきそうなトンデモ生物ですね。とにかく死にません。何故か自分の呪文や能力の対象にはなるので装備品との相性の抜群です。
 まともにこいつを倒せるのは《マラキールの門番》くらいしかいませんね。マナクリーチャーから3ターン目に召喚して絶望させてやりましょう。


ボーラスの工作員、テゼレット

 そして今回、僕のデッキ構築劇場のお題となったのがこれです!

 鳴り物入りで登場した「わるいテゼレット」ですが、実はいまひとつスタンダードでは使い方が難しいカードです。
 今活躍しているスタンダードデッキにこのカードを入れてもほとんど活躍しませんし、逆に新しいデッキを作るにしてもどのアーティファクトを選択していいのか・・・というところです。
 エクステンデッドなら既に「親和」デッキがあるので居場所になりそうなんですが・・・という声もよく聞きます。

 青の4マナ域でプレインズウォーカーといえば《精神を刻む者、ジェイス》が既にその地位をほしいままにしていますし、テゼレット使うくらいならジェイス使うよね、と言われたら悲しすぎます。《ボーラスの工作員、テゼレット》はプレインズウォーカーではありますが実は結構使い方が難しいカードです。

 ならば、というわけで今回僕が提案させていただく「テゼレット」の使い方はこれです!!

 聡明なる読者の皆さんならもうお気づきでしょう。
 テゼレットの+能力で弾を補充しつつ、-1能力でこの「感染+アーティファクトクリーチャー」を強化。5/5となった感染クリーチャーは、わずか2回の攻撃でゲームの勝利をもたらします。

 特に、新鋭の《墨蛾の生息地》との相性は抜群で、5/5の飛行・感染というファイレクシア軍の切り札が完成します。
 感染持ちクリーチャーのサイズを簡単に上げてしまってはいけない、ということですね!

 ただ一つ注意して欲しいのは、この5/5になった《墨蛾の生息地》は、ルール上次のターンには感染と飛行を失った5/5になってしまいます。
 もう一度《墨蛾の生息地》自身の能力を起動すれば感染と飛行を得ることができますが、1/1に戻ってしまいます。気をつけてください! もちろん、もう一度テゼレットすればいい話なんですが。

 なお、《墨蛾の生息地》の使い方はなにも感染だけではありません。自身が土地とアーティファクトを兼ねるということで、かつての親和デッキのように「金属術」を狙っていっても面白いでしょうし、《鍛えられた鋼》で強化しても面白そうです。或いは《カルドーサの再誕》の生け贄にしてもいいでしょう。ちょうど先輩の《ちらつき蛾の生息地》が《爆片破》で投げられていたのを思い出しますね。

 他には例えば《カルドーサの鍛冶場主》で生け贄にして《荒廃鋼の巨像》を降臨させるという、想像するだけでもワクワクしてしまうような使い方もできます。或いは《新たな造形》してみてもいいかもしれません。
 とにかく使い方が多く工夫次第で大きく化ける可能性を秘めたカードなので、皆さんも色々挑戦してみてください!!

 《ボーラスの工作員、テゼレット》に関しては、今回は感染をフィーチャーしていきますが、《ダークスティールの斧》なんかをクリーチャー化しても面白いでしょう。装備品としての機能は失ってしまいますが、5/5の破壊されないクリーチャーになります。
 他には《信号の邪魔者》や《羽ばたき飛行機械》なんかも面白いと思います。

 このように、新しいテゼレットが真価を発揮するのは、ただアーティファクトをクリーチャー化するより、元々クリーチャーとして強い能力を持っているものを5/5にしたとき、というわけです!

 ちなみにこの5/5というサイズですが、《精神を刻む者、ジェイス》の+能力を使われたときの対処手段として最適です。
 クリーチャー化していなければ《精神を刻む者、ジェイス》で対処されることはありませんし、ジェイスの返しとしてテゼレットで倒す、というのは非常に良いアクションと言えます。これから青対決でよく見るようになるかもしれません。


 さて、主軸は感染+アーティファクト+テゼレット、ということに決まったので、あとはこの軸を補完していくカードを考えます。

 まず《コジレックの審問》や《強迫》が良いでしょう。《テゼレット》で-1能力を使うのに対応して《稲妻》などを撃たれてしまうと寂しいですから、その前に安全確認ができます。
 どちらも一長一短あるカードなのですが、コンセプトの補強という意味では《コジレックの審問》のほうが優れていると思います。感染クリーチャーはタフネスが低いので、適当なクリーチャーにも相打ちを取られやすいのです。《戦隊の鷹》のせいで《墨蛾の生息地》が殴れない、なんていうのは悲しすぎます。というわけで、大事な序盤でクリーチャーも落とせてリードしやすい《コジレックの審問》が合っているというわけです。

 《狡猾な火花魔道士》なんて出されてしまった日には目の前がファイレクシアになってしまいますからね。

 また、それでもクリーチャーは除去されてしまうというのは確定的に明らかなので、《死体の野犬》もいいカードです。
 テゼレットとの相性の良さは勿論のこと、デッキの息切れを防いでくれます。複数枚並べてハメる、というリミテッドでおなじみの戦略も、コントロールデッキを相手にしたときはかなり有効です。


 さて、そんなことを念頭に置きつつデッキリストです。

志々雄真実[MO] [ARENA]
9 《
1 《
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
2 《忍び寄るタール坑
1 《飛翔する海崖
4 《墨蛾の生息地

-土地(25)-

4 《胆液爪のマイア
4 《疫病のマイア
4 《ファイレクシアの十字軍
3 《死体の野犬
2 《荒廃のドラゴン、スキジリクス

-クリーチャー(17)-
4 《コジレックの審問
3 《喉首狙い
2 《伝染病の留め金
1 《肉体と精神の剣
2 《饗宴と飢餓の剣
2 《精神を刻む者、ジェイス
4 《ボーラスの工作員、テゼレット

-呪文(18)-
4 《ファイレクシアの破棄者
4 《悪性の傷
4 《呪文貫き
1 《肉体と精神の剣
2 《堕落した良心

-サイドボード(15)-


 デッキ名は、僕の友人が《ボーラスの工作員、テゼレット》を見て、某明治剣客浪漫譚の好敵手にしか見えなかったということから。きっと「あわびのロースでしょ」って言ったり、「売れんかいな」とか言ってたりするんでしょう。このネタが分かる方は必ず僕と仲良くなれるので、是非トーナメント会場で見かけたら教えてください。

 今回のデッキは前回の「忠臣蔵」に続き再び青黒なので全国のシミック国民の皆さんからブーイングが飛んでくる可能性もありますが、どうかお許しを。
 どうしても緑!というのであれば、各種フェッチランドから無理やり緑をタッチして《地うねり》などを入れてみると面白いかもしれません。

 さて、まだ紹介していないカードについていくつか解説をしていきましょう。

伝染病の留め金》は、最近ではヴァラクートでも採用率の上がっている《水蓮のコブラ》などを殺しつつ、「直接火力」のような役割も持っているうえにテゼレットで引っ張ってくることができるという、いいことずくめです。

 やっぱり採用されてしまう《精神を刻む者、ジェイス》は必須というわけではないですが、何気にテゼレットとのコンビネーションが抜群だったり、《死体の野犬》とコンボが狙えたりとデッキに合っています。まぁただ《精神を刻む者、ジェイス》が強いだけっていう説もあるんですけど。

 《肉体と精神の剣》と《饗宴と飢餓の剣》はテゼレットなしではひ弱な感染生物たちを強力にサポートします。
 特に《饗宴と飢餓の剣》と《墨蛾の生息地》との相性は抜群です。土地で殴った後にもう一度展開!というまさに贅沢。
 どちらもプロテクション緑を与えられる装備品ですから、主な地上クリーチャーを簡単に乗り越えることが出来ます。
 《ゼンディカーの報復者》だけで止まってしまっては悲しいですからね。

 《荒廃のドラゴン、スキジリクス》はどうしても長引いてしまったゲームで重宝します。《墓所のタイタン》などの返しに走らせることが出来れば最高ですね。
 《墨蛾の生息地》などの関係上どうしても土地は多めになりますから、数枚重いカードは入れておいたほうが長期戦も戦えて良い感じです。

 サイドボードの《悪性の傷》はまさにこのデッキ専用。エルフやボロスなどのタフネス1クリーチャーを倒しながら地味に毒を与えることができます。天敵の《狡猾な火花魔道士》も対処できます。

 《堕落した良心》も、除去と感染を兼ねた良いカードで、《原始のタイタン》を奪って返しで《飛翔する海崖》と友情コンボなんて夢いっぱいです。
 《堕落した良心》は、通常ではありえないサイズのクリーチャーに感染を与えることが可能なエンチャントですので、思った以上の破壊力があると思います。

 今回ヴァラクート対策としての《記憶殺し》は採用していませんが、どうしても! と言う方は《呪文貫き》に代えて投入するといいでしょう。
 ただし青黒コントロール相手にはあまり意味がないと思います。仮に《墓所のタイタン》を抜けても、こちらがクリーチャーで殴るデッキである以上、除去でコントロールされてしまったら、結局勝つことは難しいです。

 青黒では対処が難しい《聖なる秘宝の探索》は《ファイレクシアの破棄者》が食いとめます。
 《獣相のシャーマン》や《エルフの大ドルイド》なんかも止められます。《真髄の針》のようにクリーチャー化する土地を止めることはできませんが、代わりにクリーチャーのマナ能力を止めることは可能です。もちろん《精神を刻む者、ジェイス》や《ギデオン・ジュラ》なんかも! その気になれば《テゼレット》で5/5に!?


 デッキの動きですが、青黒という割には非常にシンプルです。

 毒クリーチャー展開→《ボーラスの工作員、テゼレット》があればテゼレットで強化、なければ装備品で強化→毒殺!

 ポイントはテゼレットで、忠誠値を上げながらクリーチャーや装備品を補給することができるので、テゼレットを引けるかどうかで勝率も変わってくるでしょう。
 チャンスがあれば手元のアーティファクト・感染を5/5にするのを忘れずに! ターン終了時終わらない効果なので、いつ使っても損はありません。

 理想的には、3ターン目に《疫病のマイア》経由でテゼレットの-1能力、といったところですね。-4の「奥義」はあまり使う事はないかと思いますが、どうしても自分のライフが足りない時などはお呼びがくるかもしれません。

 相手の厄介なクリーチャーは《喉首狙い》で対処しましょう。《破滅の刃》ではどうしようもなかった《カラストリアの貴人》も安心です。


 さて、今回の構築劇場はこんな感じで終わりにしたいと思います。まだ「ミラディン包囲戦」発売前の段階なので、これからどんなスタンダードデッキが現れてくるのか楽しみですね。

 強力なカードが沢山あるので、きっとこれまでのスタンダードとはまた大きく違った環境を楽しめると思います。プロツアー・パリもあることですし、これからどんどんスタンダードがアツくなることでしょう。

 そして3月にはグランプリ神戸もありますね。「包囲戦」にはエクステンデッドでも活躍が出来そうなカードが沢山ありますし、是非皆さんも新しいカードを使ってAmibitousにマジックを楽しんでください!

 それでは、Decks, be Ambitious!!

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