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プロツアー「テーロス」

観戦記事

決勝:特別上級クラス
Pierre Dagen(フランス) vs. Jeremy Dezani(フランス)

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Nate Price / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年10月13日


ピエール・ダジョン/Pierre Dagen(青単信心) vs. ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezani(青単信心)

 よき友であるジェレミー・デザーニに向き合って決勝のテーブルに座るダジョンは笑みを浮かべていた。「家でやってるみたいだな。パリでプレイテストしてるのと同じだよ」

 青の信心デッキが圧倒的だった週末、「レ・ブルー/Les Bleus」(訳注:フランス語で「青」の意味)が事実上のミラーマッチを決勝で演ずるのは当然と言えた。友人、そしてチームメイトである彼らは一見すると3人の青単信心デッキにとって不利に思えたこのトップ8を勝ち抜いたのだ。彼らは逆境を耐え抜き、そしてこの決勝で相見えることとなった。

 メインデッキで2枚、サイドボードで2枚だけが異なっている2つのリスト。

「ラファエル・レヴィ/Raphael Levyは《霊異種》と《分散》を入れることにしたけど、俺は入れなかったんだ。今週前半に柔術をやって絞め落とされたからね、せめてもの抵抗だよ」

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チームメイトで同国人の友人同士が、プロツアー「テーロス」の栄冠をかけて対戦する

 それらのカードの代わりにダジョンがメインデッキに入れたのは《急速混成》と、追加の《タッサの二叉槍》、そしてサイドボードには追加の《思考を築く者、ジェイス》が2枚。理論上、第1ゲームでは《思考を築く者、ジェイス》をより多く使うことができるデザーニが有利で、サイドボード後はより差はなくなるはずである。ダジョンの《急速混成》は《波使い》を破壊できるが、デザーニの《分散》は《海の神、タッサ》をバウンスできるのだ。

ゲーム展開

 マッチの序盤、流れを掴んだのはデザーニだった。《海の神、タッサ》を手に持って、最初の3ターンで青マナ・シンボルが戦場にずらり。中にはミラーマッチを打破する《夜帷の死霊》の姿もあった。ダジョンは攻撃の機会を与えずに《急速混成》でそれを除去することに成功し、デザーニを《海の神、タッサ》の求める信心に足りないところまで引き戻す。しかし、デッキに青のカードが豊富に入っているので、《海の神、タッサ》は次のターン、《潮縛りの魔道士》の登場をもって顕現した。

 一方のダジョンは、もう1枚の信心カード《波使い》に向けて進んでいた。最初は《夜帷の死霊》に対処するために少し出遅れていたが、それでも第4ターンには4体の2/1エレメンタルを呼び出した。

 両プレイヤーが《海の神、タッサ》を顕現させ、そして攻撃を始める。ダジョンは本体を狙ったが、デザーニはダジョンの戦場を片付けることを狙った。信心の上で有利になっている彼は、さらにこの優位を広げて《波使い》を致命的なものにしようというのだ。ダジョンは小型クリーチャーを犠牲にするしかなく、それによって信心が失われることで、デザーニはブロックされない《海の神、タッサ》によって即死するという危険を免れることができた。デザーニが二度の挑戦で《波使い》を出すことに成功すると、なんと8体のトークンが登場する。これにはダジョンも抗いきれず、デザーニと《波使い》が第1ゲームを制すことになった。

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ミラーマッチで強烈な《波使い》のアドバンテージを活かすデザーニ

 第2ゲームはデザーニが有利に始めたように見えた。《潮縛りの魔道士》の助けを受けて進化した《雲ヒレの猛禽》が、まだ進化していないダジョンの《雲ヒレの猛禽》を圧倒する。デザーニは《海の神、タッサ》も先んじて、強力な神を第3ターンに戦場に出した。ここまで順調だったが、突然デザーニにとって状況が悪化する。デザーニは《雲ヒレの猛禽》がいる相手に攻撃するが、リストの上で違っていたカードがここでゲームを一変させる。ダジョンは《急速混成》で0/1飛行クリーチャーを3/3にして、ブロックして破壊したのだ。ここから、このカエル・トカゲは毎ターン3点、《稲妻》のようにデザーニのライフを削り続けていく。

 デザーニは《海の神、タッサ》で毎ターン占術しているのだから何か対策カードを引けるはずだと思うかもしれない。ダジョンの方は何も戦力を増やすことができないでいるのだからなおのことだ。しかし、今回はそうはいかなかった。いくら占術してもデザーニが目にするのは土地ばかり。見る間にライフが失われていく。《変わり谷》がさらにクロックを早め、ダジョンは毎ターン5点のダメージを与えられるようになった。アドバンテージを広げるためだけにエレメンタル1体で《波使い》を出し、それで決着だ。3ターン占術したデザーニは、手札にあった4枚の《》をテーブルに広げて、そして笑った。

「俺らのデッキ、今回はひどかったな」ダジョンはそう冗談を言った。

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第2ゲームに勝ってマッチを1-1の振り出しに戻したダジョン

 第3ゲームもまた前のゲームと同じように尻すぼみになるかと思われたが、より接戦になった。ダジョンはダブルマリガンをして、デザーニと戦うための貴重なリソースをいくらか失ったのだ。デザーニも立ち上がりは遅く、デザーニの《思考を築く者、ジェイス》や《波使い》に対してダジョンもそれらを並べて立て直す機会を得ることができた。デザーニの最大のアドバンテージは、《海の神、タッサ》が戦場にいること。5/5クリーチャーとして顕現した《海の神、タッサ》は、デザーニが直接、ブロックされることなくダジョンのライフを削れる状況を作り上げた。デザーニが総攻撃を仕掛けると、ダジョンも同様の総攻撃を返してデザーニの《思考を築く者、ジェイス》を破壊する。しかしその返しでダジョンのライフは失われ、後はブロックされない《海の神、タッサ》の攻撃がゲームに幕を下ろすことになった。

 2-1で有利になって、デザーニはマッチにけりをつけに行った。《雲ヒレの猛禽》から《凍結燃焼の奇魔》や《夜帷の死霊》、そして7体で《波使い》を解き放つ。ダジョンは通常このマッチアップでは非常に優秀な《夜帷の死霊》を初手に3枚持っていたが、デザーニのデッキのぶん回りで深い穴に閉じ込められたようだった。一撃でダジョンのライフは残り8点。致命傷となる次の一撃が放たれることはなかった。状況を把握したダジョンは手札をテーブルに広げ、立ち上がり、そしてデザーニにハグをして、プロツアー「テーロス」の王者を祝福したのだった。

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おめでとう、プロツアー「テーロス」王者、ジェレミー・デザーニ!
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