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プロツアー・パリ11

読み物

準決勝: Vincent Lemoine (ベルギー) vs. Paul Rietzl (アメリカ)

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「ダブル・フィーチャーマッチ」

by Tim Willoughby / translated by Yusuke Yoshikawa



 ポール・リーツェルは、プロツアー・パリの準決勝とグランプリ・パリの第15回戦のため、フィーチャーマッチ・アリーナの席についていた。

 そう、マジック史上始めて、リーツェルはプロツアーとグランプリを同時に戦おうとしているのだ。


ポール・リーツェルはプロツアーの栄光と、グランプリでの成功・・・それらに「同時に」挑む

 ヴィンセント・レモンは初手をマリガンした。彼は「ボロス」デッキを駆ってスイスラウンをを1位でフィニッシュし、同様にこのゲームも駆け抜けるかと思われたが、これはビートダウンのミラーマッチにおいて絶大なアドバンテージ差になる。6枚でものになるかどうかだが、それはすぐに決まったようだ。

Game 1

 リーツェルの出だしは最も望むところである第1ターンの《ステップのオオヤマネコ》。一方のレモンは、《広漠なる変幻地》から入った関係で、これを第2ターンに呼び出すこととなった。

 リーツェルはオオヤマネコの2体目を第2ターンに送り込んで、フェッチランドを1枚、未使用のままターンを返す。対してレモンは《戦隊の鷹》をプレイし、デッキにある残り3枚を手札に加えた。これが、マリガン差を埋める方法だ。だが、レモンは土地2枚で止まったままで、彼の寂しげなオオヤマネコは、フェッチランドによって巨大化するリーツェルの2匹よりも働きがずっと弱い。

 フェッチランドを1枚残し、8点を叩き込むことにしたリーツェル。続けて《石鍛冶の神秘家》をキャスト、《冒険者の装具》を持ち出してターンを返した。レモンはすでにライフ10で、さらに大ダメージ源の脅威にさらされている。《電弧の痕跡》で《石鍛冶の神秘家》と《ステップのオオヤマネコ》を対象にとったものの、オオヤマネコは用意してあった《乾燥台地》で生き延びる。レモンは3枚目の土地をまだ引けなかったため、攻撃を開始しようとはしなかった。


ベルギーのヴィンセント・レモンは、
このマッチで「二面打ち」の相手に直面することになった。

 しかしながらリーツェルはレッド・ゾーンで躍動していた。《ゴブリンの先達》と《冒険者の装具》をキャストすると、このゴブリンに装具をつけ、さらなるフェッチランドをプレイと、リーツェルのすべてが上手くいっているように見えた。攻撃してライブラリトップが明かされるが意味のあるドローではない。レモンのライヒは2まで低下。

 そしてレモンの次のドローがなんであれ関係なく、リーツェルは持っていた《稲妻》でゲームを手中にしたのだった。

 リーツェル 1, レモン 0

グランプリ・Round 15

 この時点で、ウェブキャストのカメラが準決勝のもう一方の試合に行き、リーツェルのもう一方の試合が始められることとなった。対戦相手である、フランスのアーヴ・ガザー=モレルが着席し、グランプリ・パリの第2ドラフトの試合が始まった。

 ガザー=モレルはダイスロールに勝ち、先攻を選んだのだが、すぐに初手7枚を戻してマリガンすることになった。これに慌てていたのか、ガザー=モレルは間違って7枚のカードを引いてしまい、強制的にマリガンして5枚にさせられてしまう。


アーヴ・ガザー=モレルはグランプリのフィーチャーマッチでの中でも特別な試合を、
悔しいマリガンで始めることになってしまった

 初手にはたった1枚の土地、《》しかなく、このフランス人は第4ターンまで《媒介のアスプ》1枚だけと、満足な行動をすることができない。

 一方、先ほどと同じ席に座ったリーツェルは、《迫撃鞘》と《絡み森のカマキリ》を持っていた。さらには《火膨れ杖のシャーマン》が1/1を撃ち落とし、《クローンの殻》が続いた。

 ガザー=モレルがカードを片付けるまでにそう時間はかからず、結局ゲーム全体でプレイできたのは2枚の《》と《媒介のアスプ》だけであった。

 リーツェル 1, ガザー=モレル 0

 今回こそはと、ガザー=モレルは注意深く7枚のカードを数え、そしてキープした。今回も第1ターンは《媒介のアスプ》だったが、土地は《》だ。続くターンには《恐慌の呪文爆弾》、《屍気の香炉》と続けた。リーツェルの初動は第3ターンの《荒廃のマンバ》である。

 ガザー=モレルは攻撃的にプレイしていった。まずは軍勢をレッドゾーンに送ると、カウンターを使い切った《屍気の香炉》で《カルドーサの再誕》をプレイした。《モリオックの模造品》を出すものの、これは仕事を果たす前にリーツェルの《感電破》で倒れた。

 リーツェルは《迫撃鞘》を出し、トークンで《媒介のアスプ》を狙撃すると、装備を《荒廃のマンバ》に付け替えた。この《迫撃鞘》は戦闘中に《粉砕》されるものの、リーツェルはまだまだガザー=モレルの攻撃を寄せ付けない。

 そして、まずは《メリーラの守り手》が、次いで《槌のコス》が出てくるに至り、このフランス男は笑った。この神話レアの前には速攻もここまで、リーツェルはクリーチャー化したした《》を攻撃に送り込むと、ターンを返した。ガザー=モレルには何の手もない。


今日のパワー・プレイで、リーツェルは最高のゲーマーと言える高みに到達した。

 次の手として、リーツェルは《吠える絡みワーム》をキャストし、《メリーラの守り手》は悠々攻撃に出る。これでガザー=モレルのライフは12。そして続くターン、コスの『最終奥義』が火を吹き、それはゲームを終わらせるに十分であった。

 ポール・リーツェルはグランプリのマッチを2-0で制し、彼はプロツアーの準決勝に戻る。あとは、ヴィンセント・レモンとの試合に集中するだけだ。

Game 2

 双方が初手をキープして始まった第2ゲーム、初動も同じく《ステップのオオヤマネコ》同士だった。

 《ぐらつく峰》がフェッチランドのいい代役になり、まずレモンが4点のダメージを叩き出す。リーツェルはフェッチランドそのもの、《湿地の干潟》を持っており、やはり4点殴り返した。双方ともにライフは15である。リーツェルにはまだ赤マナ源がないが、《冒険者の装具》があった。これを出して、オオヤマネコに装備させる。

 レモンはまず《ステップのオオヤマネコ》で2点与え、《電弧の痕跡》でリーツェルの《ステップのオオヤマネコ》を除去しつつ2点与え、《沸騰する小湖》を残したままターンを返し、必要なときにオオヤマネコを守れるようにした。

 リーツェルにはいまだに赤マナがない。彼は《湿地の干潟》を起動し、《ミラディンの十字軍》をキャストした。この騎士のもつプロテクションはこのマッチアップには関係ないが、二段攻撃を持っているという事実は脅威であり、レッドゾーンに飛び込んでくればなおさらである。

 レモンは《広漠なる変幻地》をプレイして攻撃、さらに4点を与えると、《石鍛冶の神秘家》で《骨溜め》を持ってきた。両者ともミラディン包囲戦のパワフルなカードを手にしているようで、これらが流行していくであろうことは興味深い。

 リーツェルは《ファイレクシアの十字軍》に《冒険者の装具》をつけようとしたが、これは《稲妻》の前に倒れた。こうなると、レモンがリーツェルに止めを刺すことは容易なことだった。

 リーツェル 1, レモン 1

Game 3

 双方の初手はあまりに土地ばかりで、第3ゲームは仲良く6枚に移行した。今回はこのトップ8の試合で初めて、リーツェルが先手後手を選ぶ番が来た。彼の、昨年のプロツアー・アムステルダムの準決勝から続いていたプロツアートップ8での連勝記録は今、ついに止まったのだ。

 魔法は解けてしまったのか? 彼は2度目のマリガンをして、そして3回目をした。4枚から勝った有名なゲームと言えば、彼の友人であるところのガブリエル・ナシフが2007年、ニューヨークでの世界選手権で成し遂げたものがあり、それは最も劇的な試合のひとつとして語り継がれている。彼もそれに追いつけるのか?


多くの観衆が詰めかけ、準決勝の物語を見守る。

 4枚の初手、リーツェルは《》から始めた。レモンの第1ターンに動きはなく、第2ターンにも何もなかった。置かれた土地からは赤マナは出ない。リーツェルは《戦隊の鷹》をキャストし、即座にまともな量の手札が供給される。レモンは《沸騰する小湖》をプレイし...3連続で何もせずターンを返した。リーツェルが2体目の《戦隊の鷹》を送ってきたところで、レモンは《電弧の痕跡》の撃ちどきと見て、2体を除去した。これが1対2交換というものだが、残り2体がやってくる事実を考えれば、逆に1対2を取られているともいえる。

 リーツェルは3枚目の土地にたどり着き、《肉体と精神の剣》をキャストした。だがそれを装備させるクリーチャーは今のところいない。レモンの側も事情は同じだったが、こちらには《骨溜め》があった。現在はリーツェルの墓地に落ちた2枚の《戦隊の鷹》で2/2というサイズである。

 対処できるうちにと、リーツェルは《電弧の痕跡》を使い、《骨溜め》の細菌トークン(ジェフォリー・シロンのプロプレイヤー・カードが使われていた)を除去した。レモンはおかわりとして《ステップのオオヤマネコ》を出す。現在値2/3、加えて未使用のフェッチランドのおかげで潜在的にはもっと大きい。さらには、剣を装備しようとしたリーツェルの《ステップのオオヤマネコ》を《稲妻》で止め、《ぐらつく峰》を使って致命的なビートダウンを仕掛ける。

 いまだ土地3枚のリーツェルは深く沈み込むように考え、まず《戦隊の鷹》を、ついで《バジリスクの首輪》をキャストした。返しのレモンの攻撃で、彼のライフは5まで落ち込む。レモンはオオヤマネコでしか攻撃していないというのに、だ。

 続くターン、リーツェルは鷹に青緑剣を持たせて攻撃し、ブロッカーになる狼トークンを用意した。しかし、これに《未達への旅》が合わせられては、リーツェルは第4ゲームへのサイドボーディングに勝機を見出すほかになかった。

 リーツェル 1, レモン 2

Game 4

 後がなくなった第4ゲーム、リーツェルはキープしたが、一方のレモンはマリガンの選択をした。彼は気に入る手札に出会うには、5枚までマリガンしなければいけなかった。まずリーツェルが《ステップのオオヤマネコ》で始め、レモンは《ぐらつく峰》をプレイした。

 第2ターン、リーツェルはその初手が芳しくないものであることを明らかにしてしまった。土地を置けず、《冒険者の装具》だけでターンを返したのだ。一方、レモンは《乾燥台地》から《平地》を引き出し、《戦隊の鷹》をプレイすることで、失ったカード・アドバンテージを取り返した。

 リーツェルはドローし、2枚目の《ステップのオオヤマネコ》をプレイする。しかし土地は変わらず1枚のままだ。彼はレモンが《石鍛冶の神秘家》から《骨溜め》を持ってくるのを見て首をすくめる。レモンは今や手札に多くのカードを抱えすぎ、先ほどの《戦隊の鷹》のうち1枚を捨てなければならなかった。

 リーツェルはとうとう《沸騰する小湖》を引いた。だが、すぐにプレイしようとはせず、その意味するところと、《冒険者の装具》を装備すべきかを考えた。少しの考慮の後、彼は装備しないことにした。代わりに、《》を持ってきて《電弧の痕跡》によりレモンのクリーチャーを除去、攻撃で8点のダメージを与えた。

 レモンは《ゴブリンの先達》と《ステップのオオヤマネコ》をキャストしてターンを返す。《ゴブリンの先達》はこのミラーマッチでは興味深いカードで、攻撃的ではあるものの、相手の「上陸」を助けてしまう一面もある。この盤面を考えると、このゴブリンにリーツェルを攻撃させるのはリスクが高い。だがリーツェルが《戦隊の鷹》をキャストするのみであるのを見て、レモンは攻撃を開始。これがリーツェルに《》を与えた。

 とうとう土地3枚だ。リーツェルの手札がにわかに活気を帯び始める。《狡猾な火花魔道士》が現れて《戦隊の鷹》を撃ち落とし、攻撃でレモンのライフを一気に7にする。だが、レモンもまだ終わったわけではない。2枚目の《平地》を引くと、《コーの火歩き》をキャストした。

 だが2枚目の《狡猾な火花魔道士》がリーツェルのもとに現れ、《進化する未開地》がオオヤマネコたちに力を与えた。これではレモンもカードを片付けるしかなく、勝負は第5ゲームに持ち越されることとなった。


コーリー・バウマイスターと仲間たちが一挙手一投足に声援を送る。

 リーツェル 2, レモン 2

 勝負を分けるゲームで、レモンは土地5枚の初手を見て、これをマリガンすることに決めた。一方のリーツェルはキープ。

 「君が何回マリガンするか、オレが決断する前に分かればいいのに」とリーツェルはジョークを飛ばす。結局、レモンはシングル・マリガンにとどまった。

Game 5

 後攻のリーツェルが初動となる《ステップのオオヤマネコ》を出し、一方のレモンは《石鍛冶の神秘家》から《骨溜め》を持って売る立ち上がり。リーツェルは第2ターンにも2枚目となるオオヤマネコをを出し、あとでパンプアップできるよう、フェッチランドの起動を控えた。

 レモンは土地が詰まってしまい、《ゴブリンの先達》を出すことしかできない。一方のリーツェルは至って順調であり、攻撃前に《乾燥台地》をプレイして、潜在的なダメージをさらに大きくする。レモンが両方ともブロックしないことにすると、リーツェルはフェッチランドを1枚使って8点のダメージを与えることとした。これでレモンのライフは9だ。その後、リーツェルは《電弧の痕跡》で《石鍛冶の神秘家》を除去し、レモンにももう1点のダメージを与えた。


レモンはなんとか勝利をつかむべく奮闘する。

 レモンはいまだ土地2枚だ。その両方を使い、リーツェルのオオヤマネコの一方を《未達への旅》に送った。だがリーツェルはまだフェッチランドを持っていて、レモンに《ゴブリンの先達》でのブロックをさせつつも、まだ使用する必要がない。リーツェルは単に《戦隊の鷹》をプレイし、3枚持ってきて、ターンを返した。

 やや雑な手つきで、レモンは《電弧の痕跡》を使い、《戦隊の鷹》を除去するとともに、《ステップのオオヤマネコ》を守るためフェッチランドのうち1枚を使わせた。実に、最初のターンから数えて、リーツェルがプレイした基本土地は1枚だけであり、その他はすべてフェッチランドなのだ。これで少なくとも毎ターン4点のダメージが、《ステップのオオヤマネコ》からレモンに振りかかることになる。リーツェルは《コーの火歩き》と《狡猾な火花魔道士》を並べてターンを返した。

 レモンはもう1枚の《電弧の痕跡》を持っていて、プロテクションのないクリーチャーを除去することはできたのだが、《コーの火歩き》の攻撃は止められず、《狡猾な火花魔道士》の狙撃と合わせてライフは1になってしまった。攻撃後、何かあったときに備えて、リーツェルは3体の《戦隊の鷹》を並べた。ターンが返ってきて、レモンはカードを引き、そして握手を求めた。

 リーツェル 3, レモン 2

 こうして、ポール・リーツェルはここ最近3回のプロツアーで2回目となる決勝に進むこととなった・・・が、その前に、グランプリの第16回戦がある。大丈夫、不便のないよう、もうすぐにでも始められる用意ができている。

 ポール・リーツェルが3-2のスコアでヴィンセント・レモンをやぶり、決勝に進出!

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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