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マジック25周年記念プロツアー

トピック

マジック25周年記念プロツアー・注目の出来事

Corbin Hosler and Ray "blisterguy" Walkinshaw

2018年8月5日

 

(編訳より:埋め込み動画部分は英語実況・解説のものとなります。日本語版ニコニコ生放送タイムシフト・Twitchビデオ(前半後半)もあわせてご覧ください。)

 ひとつの週末に行われるひとつの大会で25年にもわたるマジックの歴史を網羅するのはさすがに不可能というものだが、「マジック25周年記念プロツアー」にはこれぞマジックという瞬間や郷愁を感じさせる瞬間がたくさんあった。

 まず、今大会が2006年以来となるチーム戦プロツアーであることは言うまでもないだろう。

チームシリーズ

 今大会を迎えるにあたっては、チーム「Ultimate Guard Pro」がプロツアー・チームシリーズのポイント・レースで首位を保持していた。しかし今大会のトップ4チームが決まると、誰もが納得の見事な成績を収めたチーム「Hareruya Latin」が「Ultimate Guard Pro」を上回った。さらに、チーム「ChannelFireball」も大きく躍進し、優勝すれば「Ultimate Guard Pro」を抜き去るところまで来た。おそらく誰もが固唾をのんだことだろう。背景でスローモーションの爆発が起きるシーンのように。おわかりだろうか。

 準決勝で「ChannelFireball」が「Hareruya Latin」を破り、「Hotsauce Games」との最終決戦へ駒を進めるのを、「Ultimate Guard Pro」の面々は落ち着かない様子で見ていた。しかし「Hotsauce Games」が用意したデッキは「ChannelFireball」にとって不利なものばかりで、彼らのプロツアーはここで終わった。2017-2018年チームシリーズはトップ4入賞という結果だった。その結果に「Ultimate Guard Pro」が大きな安堵のため息をついたのは疑いないだろう。こうして「Ultimate Guard Pro」が、来月ラスベガスで行われる世界選手権の舞台で「Hareruya Latin」との決戦に挑むことになったのだった。

さまざまなフォーマットに訪れた革新

 この週末はまさにマジックの長い歴史を記念するものであり、採用されたフォーマットがそれを物語っている。今回はスタンダードでマジックの最先端を示すだけでなく、モダンとレガシーがこのゲームの歴史に刻まれた珠玉のカードに再び光を当てたのだ。

 そして500人に迫る参加者たちは、3つのフォーマットすべてを刺激的なものにしてくれた。スタンダードでは新たに2つのデッキが登場した。惜しくも第5位で今大会を終えたデイヴィッド・ウィリアムズ/David Williamsや殿堂顕彰者のラファエル・レヴィ/Raphaël Lévyなどが使用した革新的な「ターボ・フォグ」は、伝説的なデッキビルダーたるガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifとマーク・ハーバーホルツ/Mark Herberholzの手によるものだという。このデッキは、「赤黒アグロ」や「鉄葉ストンピィ」に満ちた現在のメタゲームに対する完璧な回答となった。フル投入された《根の罠》と《花粉のもや》から《ウルザの後継、カーン》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《運命のきずな》へつなげる動きは現在のスタンダード環境を完全に食い物にし、《ゴブリンの鎖回し》の評価を一変させたのだった。

 スタンダードにもたらされた革新はこれだけではない。今大会では多くのプレイヤーが、《霊気貯蔵器》コンボを搭載した「青単ストーム」デッキを持ち込んだ。このデッキ自体は数か月前からメタ外に存在していたのだが、《練達飛行機械職人、サイ》が一気にこのデッキの立場を押し上げたのだ。

 モダンとレガシーにも革新が見られた。モダンでは「黒赤ブリッジ・ヴァイン」が大きな活躍を見せ、レガシーでは決勝進出者のジョシュ・"Wrapter"・アター=レイトン/Josh "Wrapter" Utter-Leytonが「死の影」デッキを生み出し、一新された環境で一歩先を進んだ。レガシーの「死の影」デッキは、他にも複数のチームがこの週末で成功を収めている。

プレイヤーたちの25年

 四半世紀という長い歴史を築いたマジックは、その間に多くのプレイヤーを迎え入れ、また多くのプレイヤーを見送ってきた。しかし25周年を記念するこの特別なプロツアーには、かつての有名人たちも友人とチームを組んでお祝いに駆けつけてくれたのだ! マジック黎明期からはクリス・ピキュラ/Chris Pikulaやウィリアム・ジェンセン/William Jensen、そしてもちろんジョン・フィンケル/Jon Finkelといったレジェンドたちが集まった。1990年代から21世紀初頭に活躍したプレイヤーとしては、アントワン・ルーエル/Antoine Ruel、カイ・ブッディ/Kai Budde、藤田 剛史をはじめとして、他にも過去10年間にわたる有名プレイヤーがこぞって参戦し、最近のプロツアー王者であるワイアット・ダービー/Wyatt Darbyやルイス・サルヴァット/Luis Salvattoたちに交じって戦った。

 さまざまな世代のプレイヤーたちをつなぐのは、「マジックへの愛」に他ならない。マジックを通じて育んだ友情。マジックを通じて紡いだ物語。マジックを通じて得た人生経験。それらすべてが、25年もの時を超えて私たちをひとつにしたのだ。これからも絶対に、マジックは多くのものを私たちにもたらしてくれるだろう!

Silver Showcase

 数か月前のことだ。ウィザーズ・オブ・ザ・コースト本社の管理人のひとりが古い戸棚の裏を掃除していると、とても古いエキスパンションの未開封パックがいくつか見つかった。その多くはなんと正真正銘『ベータ版』のパックであり、他にも『アラビアンナイト』や『アンティキティー』、『レジェンド』のパックがあった。そこには本来、印刷ミスをした『Unglued』版のリス・トークンが何かのときのために隠されているはずだった。(あまりにも眉唾な話だが、まあ信じてみるのも一興だと思わないか?)

 そこで私たちは、マジック25年の歴史の中で高名なマジック・プレイヤーとゲーム・コミュニティにおける有名人を集めて、見つかった古いパックを用いたロチェスター・ドラフトのイベントを開催し、それを生中継することに決めた。せっかく出てきた古き良きパックの開封の瞬間を、世界中に共有したかったのだ。

 ドラフト自体は、人気配信者のジェイソン・"Amaz"・チャン/Jason "Amaz" Chanが最後に《シヴ山のドラゴン》を開封し、卓の全員がため息をついて終わった。だがAmazはデイヴィッド・ウィリアムズ/David Williamsとパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaを打ち倒し、決勝まで突き進んだ。決勝で相まみえるのは、プロツアー『ラヴニカへの回帰』王者のスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaだ。彼は黒赤の攻撃的なデッキをドラフトし、中村 修平とジョン・フィンケルを破ってAmazとの決勝に臨んだ。

Silver Showcase決勝で、ツィフカがAmazを破る!
 

 2012年にプロツアーで優勝したとき、ツィフカは「Eggs」と呼ばれるデッキを使用していた。そんな彼が2枚の《ルフ鳥の卵》を用いてAmazを3勝1敗で下し、Silver Showcase優勝を果たしたのは、おあつらえ向きとしか言えないだろう。なお今回のドラフトで開封されたカードは「Child's Play」に寄付され、のちにオークションに出品される予定だという。この上なく素敵なことだ。

あまりにホットな「Hotsauce」

 「マジック25周年記念プロツアー」には165チームが集まった。多くの実績を重ねたマジック界のレジェンドあり、世界の第一線で戦う現役プレイヤーあり、グランプリの常連あり、プロツアーの有名人あり……マジック25年の歴史がひとつの会場に凝縮され、そしてすべては最後の一戦に集約された。

 片方のチームは、その場にいることに誰も驚きを感じないだろう。マーティン・ジュザ/Martin Jůza、ベン・スターク/Ben Stark、ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonという3人の殿堂顕彰者によるものだ。対するは、グランプリの常連でプロツアーでの活躍もいくつか見受けられるものの、決勝の舞台は初めて体験する3人だった。グレゴリー・オレンジ/Gregory Orange、ベン・ハル/Ben Hull、アレン・ウー/Allen Wuによるチームが、対戦相手と比較して格下であることは間違いない。だが心の内に生まれた不安はうまく隠したのか、プロツアー決勝の席でも落ち着いた様子で座る3人は、チーム「ChannelFireball」の殿堂顕彰者たちを相手取る準備ができているように見えた。

 マジック25周年記念プロツアーの優勝トロフィーのゆくえを決める、3本先取の3試合が始まった。チーム「Hotsauce Games」の3人は、自分たちが格下であることを承知の上で序盤から果敢に攻め、優位を手放さなかった。するとウーが、プロツアーのフィーチャーマッチ史上最も劇的な勝利を決めた。

 その勝利はチームメイトたちに勢いを与え、そこからの彼らは負ける気がしなかった。オレンジが見事な「白青コントロール」さばきを見せ、ジュザが繰り出すカードすべてに回答をぶつけた。これで「Hotsauce Games」が1勝を獲得し、ハルが戦うモダン卓で決着の可能性が生まれた。恐るべき「アイアンワークス」を相手にしながら、ハルはこの難しい試合で落ち着いて戦った。極限の緊張の中で攻勢を続けたハルはついに殿堂顕彰者ベン・スタークを倒し、「Hotsauce Games」にプロツアー優勝トロフィーをもたらしたのだった。

 こうして、オレンジとハルとウーはマジックの歴史にその名を刻んだ。天才リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldが生み出した大発明たる「マジック:ザ・ギャザリング」の、25周年を記念するプロツアーの王者として。

 25年前の「Gen Con」で産声を上げてから、ここミネアポリスで忘れられない誕生日を迎えるまで、マジックは紆余曲折、山あり谷ありの道のりを歩み、栄えてきた。そして今、3人の素晴らしいプレイヤーが、決して忘れられない歴史の1ページを成したのだ。

 オレンジ、ハル、ウー、「マジック25周年記念プロツアー」優勝おめでとう!

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(Tr. Tetsuya Yabuki)

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