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戦略記事

モダン・デッキテク:黒赤ブリッジ・ヴァイン

Corbin Hosler
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2018年8月4日

 

 《復讐蔦》はマジックの歴代のカードでも特にユニークな1枚だ。『エルドラージ覚醒』で登場したこのエレメンタルは、当時のスタンダード環境でも《獣相のシャーマン》とともに活躍し、それ以来力を増すばかりだった。レガシーでも第一線で戦い、その強さは《適者生存》禁止の一因となるほどだった。

 《復讐蔦》はモダンでもたびたび姿を見せてきた。スタンダード当時の「ドレッジ・ヴァイン」の再現を試みたリストが存在し、最近でも《虚ろな者》と手を組み追加の脅威として力を尽くしている。しかしたびたび姿を見せてはいても、モダンの上位戦略に食い込むことはなかった。

 そう、これまでは。

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この戦場には《復讐蔦》の姿はないが、「ブリッジ・ヴァイン」が持つ力の一端をよく示している。《黄泉からの橋》は相変わらず、早い段階で凄まじいまでの力を発揮する。
 

 中でも最も劇的な成功を収めたのは、おそらくジェイコブ・ナグロ/Jacob Nagroだろう。彼の「黒赤ブリッジ・ヴァイン」は、予選ラウンドを通して彼のチームを力強く牽引した。彼のリストは、他のチームがMagic Onlineで発見したものよりはるかに先へ進んでいたのだ。

 このデッキを実現させたのは、『基本セット2019』のカードの中でもそこまで話題に挙がらなかった《縫い師への供給者》だった。この1マナ・クリーチャーは、《復讐蔦》デッキのためにあるようなものだ。ライブラリーから墓地へカードを送り込み、序盤のブロッカーとして時間を稼ぎ、わずか1マナというコストで《復讐蔦》の能力を誘発させる助けになる。見た目は地味だが、他に準備の必要もなく燃料にもエンジンにもなってくれる《縫い師への供給者》は、このデッキの軸となる1枚なのだ。

 デッキの動きは多彩だが、最終目標は「《復讐蔦》やその他の墓地から戻ってくるクリーチャーを戦場に並べる」といういたってシンプルなものだ。それと同時に、《傲慢な新生子》や《歩行バリスタ》、《搭載歩行機械》といったクリーチャーを戦場から墓地に落とし(《歩行バリスタ》と《搭載歩行機械》はX=0で唱える)、《黄泉からの橋》の能力を誘発させる。そこへ《墓所這い》と《恐血鬼》も加われば、早ければ2ターン目という圧倒的な速度で盤面をクリーチャーで埋め尽くせるのだ。

 これだけでも十分に強力な動きだ。《復讐蔦》は速攻を持っており、その他のクリーチャーも次のターンには攻撃できるため、かなり早い段階でゲームを終わらせることになるだろう。しかしこのデッキはそれで満足しない。《ゴブリンの奇襲隊》が全軍に速攻を与え、早ければ2ターン目にして強烈な一撃を与えることができるのだ。やや都合が良すぎるように聞こえるかもしれないが、今大会では実際に多くのプレイヤーがこのデッキのさまざまなバージョンを見せており、ナグロのチームが最後の最後まで上位争いをする支えとなっていた。

 ナグロがそれほどの成功を収められたのは、彼自身の革新的なアイデアによるところが大きい。

「ネットで見つけたリストを試したところ、何枚かしっくりこないカード選択がありました。それらを抜いて、《大いなるガルガドン》などのより良いカードに変えたんです」

 《大いなるガルガドン》はこのデッキに欠かせない役割を担っている。《黄泉からの橋》の燃料となるクリーチャーを生け贄に捧げるための、追加の「サクり台」としてだけでなく(しかも《稲妻》や《流刑への道》で除去されない)、さらにパーマネントを生け贄に捧げてやれば巨大な速攻クリーチャーを繰り出せるのだ。それから、《大いなるガルガドン》の待機が解けるとクリーチャーを唱えることになるため、《復讐蔦》の墓地から戻ってくる能力の条件を満たせる点も見逃せない。

 紆余曲折を経て、このデッキは最終的に極めて洗練されたリストに仕上がった。2ターン目に瞬きをする間もなく対戦相手を打ち破れるだけでなく、粘り強く何度も蘇ってくる軍勢を止めるのは難しいだろう。このデッキは、今年ブレイクを果たした「虚ろな者」デッキと多くの点で似ている。「虚ろな者」デッキと比べて《安らかなる眠り》に弱いものの、「爆発力のあるデッキを止めるには、《安らかなる眠り》では間に合わないことが多い」とナグロは言う。

 モダン・フォーマットはいつも私たちを驚かせてくれるが、このデッキもまさに革新的な一作だろう。この週末に大いに話題になったことも、うなずけるというものだ。

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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