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マジック25周年記念プロツアー

観戦記事

決勝:Wu/Hull/Orange vs. Utter-Leyton/Stark/Jůza

Corbin Hosler
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2018年8月5日

 

(編訳より:埋め込み動画部分は英語実況・解説のものとなります。日本語版ニコニコ生放送タイムシフト・Twitchビデオ(前半後半)もあわせてご覧ください。)

 マジック誕生から25年の歳月が経った。その間には100を超えるプロツアーが行われ、無数のグランプリが行われた。そしてこの週末にもチーム対抗で14回戦にわたる激戦が繰り広げられ、先ほど2つの準決勝が激闘の幕を下ろした。

 25年もの歴史が、今2つのチームに集約されている。100万ドルの週末の最後を飾る、「マジック25周年記念プロツアー決勝」の舞台で対峙する2チームに。

 ひとつは、この場にいることに誰も驚きを感じないだろう。マーティン・ジュザ/Martin Jůza、ベン・スターク/Ben Stark、ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonという3人の殿堂顕彰者によるチームだ。対するは、グランプリの常連でプロツアーでの活躍もいくつか見受けられるものの、決勝の舞台は初めて体験する3人だった。グレゴリー・オレンジ/Gregory Orange、ベン・ハル/Ben Hull、アレン・ウー/Allen Wuによるチームが、対戦相手と比較して格下であることは間違いない。だが心の内に生まれた不安はうまく隠したのか、プロツアー決勝の席でも落ち着いた様子で座る3人は、チーム「ChannelFireball」の殿堂顕彰者たちを相手取る準備ができているように見えた。

 これから行われる3本先取の3試合で、マジック25周年記念プロツアーの優勝トロフィーと賞金150,000ドルのゆくえが決まる。

 試合は早速大きく動いた。オレンジの「白青コントロール」とハルの「虚ろな者」が、ジュザの「赤黒アグロ」とスタークの「アイアンワークス」を圧倒したのだ。それはあっという間の出来事だった。格下と目されたチームが、序盤のリードを奪ったのだ。

 だがアター=レイトンは相手チームに3勝目を与えなかった。時間をかけて調整と実験を繰り返した彼は、レガシー・フォーマットに革新を与える「青黒・死の影」デッキを築き上げた。それは今大会を通してチームに勝利をもたらしてくれた。そして今、ウーの「デス&タックス」との相性は悪いにも関わらず、アター=レイトンは「コンボ級」の動きでチームの全敗を食い止めたのだった。

 

 スタンダード卓ではジュザもゲームを取り返し、モダン卓のスタークとハルはメイン・デッキのまま行われる2ゲーム目に突入した。今度はスタークが複雑な「アイアンワークス」デッキを完璧に動かし、勝ち星をイーブンに戻した。

 こうして殿堂顕彰者たちは序盤につけられた差を埋めたが、それは再び広がることになる。サイドボーディング後の第3ゲーム、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の力を借りたオレンジがジュザを下した。

 

 一方レガシー卓では、アター=レイトンがウーを追い詰めていた。だがここから、歴史に残るシーソー・ゲームが繰り広げられる。「デス&タックス」は、《スレイベンの守護者、サリア》や《ちらつき鬼火》、《ルーンの母》といった、強力ながらもタフネス1の白いクリーチャーに頼る部分が大きい。それらはみな、ある弱点を抱えていた――《夜の戦慄》が1枚でも戦場に出てしまうと、対処のしようがなくなってしまうのだ。殿堂顕彰者ジョシュ・"Wrapter"・アター=レイトンは、その点において一枚上手……いや、「2枚」上手だった。

 

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の「紋章」をもってしても、この数の《夜の戦慄》を前にしては反撃の余地がない。ウーはゲームを取り返す最後の望みを託し、なんとか《殴打頭蓋》で盤面を支えた。その後《グルマグのアンコウ》を相討ちに取り、《殴打頭蓋》を手札に戻して7マナある状態で唱え直したのも、決して悪くないプレイだった。彼はその先に待ち構えているものを知らなかったのだから。

 

 《夜の戦慄》3枚に《目くらまし》3枚? ウーがここでカードを片付けたとしても、誰も彼を責められないだろう。しかしそれでも、彼は踏みとどまった。そして数ターン後、マジックで最も予測不可能なこのフォーマットにおいては、「奇跡」デッキを使わなくとも奇跡は起きるのだということを証明したのだった。

 

 この逆転劇はチーム「Hotsauce Games」に勢いを与えたに違いないが、ウー自身はいまだ1勝2敗でリードされている状況だ。それでも、彼のチームメイトたちは2勝1敗でリードしている。そして次に私たちの目に映ったのは、オレンジの見事なコントロールさばきだった。彼はジュザが繰り出すカードすべてに回答をぶつけたのだった。

 

 こうして、格下と目されたチームがプロツアーを制するまであと1ゲームまで迫り、全員の注目がモダン卓のハルとスタークに向けられた。スタークは《オパールのモックス》でマナ加速、ハルは「虚ろな者」ならではの動きで複数のクリーチャーを展開し、両プレイヤーとも力強くスタートを切った。だがハルの初動では、粘り強いことで名高い「アイアンワークス」を下すには不十分だ。序盤からプレッシャーをかけられながらも、スタークは残りのコンボ・パーツを集めにいった。

 しかしハルの攻勢はそれで終わりではなかった。彼は《信仰無き物あさり》でデッキを掘り進め、4ターン目にあるカードを叩きつけた――「アイアンワークス」に対するベスト・カード《虚空の力線》だ。

 スタークは一気に厳しい状況へ追い込まれた。彼はコンボを始動する前に《虚空の力線》を除去しなければならず、同時に襲い来る脅威にも対処しなければならない。だがこの状況で、他のどのカードでも不可能なことを成し遂げスタークの救世主となったのが、『基本セット2019』の新戦力《練達飛行機械職人、サイ》だった。ハルの攻勢は続く。それでも《練達飛行機械職人、サイ》のおかげで、何度も繰り出される猛攻からスタークは生き延びた。だがハルの《古えの遺恨》が、スタークの盤面に道を切り開いた。

 そしてチーム「Hotsauce Games」の戴冠の瞬間が訪れた。

 

 彼らはやり遂げた。世界最高のマジック・プレイヤーたちが結成したおよそ200チームの中で戦い抜き、この上ない偉業を成し遂げたのだ。決着の瞬間、ハルはただ「信じられない」という様子で天を見上げるのみだった。

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ベン・ハル、グレゴリー・オレンジ、アレン・ウー、「マジック25周年記念プロツアー」優勝おめでとう!
 

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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