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戦略記事

スタンダード・ネクステージ ~検閲しますが何か?ディミーア・ミッドレンジ~

富澤 洋平


 スタンダード・ネクステージへようこそ!本稿では先週末に開催された「ジャパンスタンダードカップ:『霊気走破』 Supported by 楽天ブックス」(以下、ジャパンスタンダードカップ)から、最新セット『霊気走破』のカードを採用したスタンダードデッキを紹介していきます。

 2月14日に公式発売日を控えた『霊気走破』、その活躍を一足先にみていこうではありませんか。

 さあ、次のスタンダード環境へ向けてエンジン全開!ギアサー……おっと失礼しました。サードではなく、速度は3でしたね。最高速度への一歩手前まで迫ってきました。スタンダード・ネクステージスタートです!

 今回はジャパンスタンダードカップでトップ8に入りましたディミーア・ミッドレンジをご紹介します。
 

スタンダード・ネクステージ:ディミーア・ミッドレンジ

伊藤 宏明 - 「ディミーア・ミッドレンジ」
ジャパンスタンダードカップ:『霊気走破』 発売記念スペシャル トップ8 / スタンダード(2025年2月9日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《
4 《闇滑りの岸
4 《不穏な浅瀬
4 《地底の大河
4 《グルームレイクの境界
1 《噴水港
-土地(25)-

4 《分派の説教者
3 《永劫の好奇心
4 《フラッドピットの溺れさせ
4 《マネドリ
4 《大洞窟のコウモリ
4 《油浸の機械巨人
-クリーチャー(23)-
3 《悪夢滅ぼし、魁渡
3 《切り崩し
1 《三歩先
2 《喉首狙い
1 《保安官を撃て
2 《苦痛ある選定
-呪文(12)-
2 《ティシャーナの潮縛り
2 《金線の酒杯
4 《強迫
2 《除霊用掃除機
1 《ギックスの命令
2 《大群への給餌
1 《萎縮させる責め苦
1 《悪意ある覆い隠し
-サイドボード(15)-

 ディミーア・ミッドレンジは攻撃的であり、防御的である可変的な動きが特徴的のトリッキーなデッキです。ざっくりとした解説になりますが、2マナ以下の軽量クリーチャーから《悪夢滅ぼし、魁渡》や《永劫の好奇心》へと繋げ、ライフを攻めつつ手札を潤していくのが前者。

 対して《切り崩し》や《喉首狙い》でクリーチャーをさばきながら、《分派の説教者》をプレイし、相手の脅威を対処し続けるのが後者です。

 もちろん引いたカードによってゲームプランは変化するため、実際はもっと複雑です。硬軟織り交ぜながらさばき、返す刀で攻撃を通すような緻密で繊細なデッキであります。

 

 ゲームの軸となるのは2マナ域の《大洞窟のコウモリ》と《喉首狙い》をはじめとした除去呪文です。前者は相手の手札から危険牌やゲームプランを崩すのに役立ち、同時に《永劫の好奇心》のためのアタッカーを確保することになります。

 後者は黒系ミッドレンジの華である単体除去呪文であり、テンポ良く相手の脅威を対処し、自身が攻勢へと転じるきっかけを演出してくれます。4マナ揃えば展開と対応を同時に行えるだけのマナが揃い、ディミーア・ミッドレンジの本領発揮といったところでしょう。

 

 アタッカーを確保したならば《永劫の好奇心》の出番であり、ライフを攻めることが同時にハンドアドバンテージへと直結します。もちろん、除去呪文を駆使して《永劫の好奇心》自身の花道を用意しても構いません。このクリーチャーが動き出したら最後、手札の差は一方的なものとなってしまいます。

 相手の脅威に対処しながら攻勢へ転じるきっかけとなるのが《分派の説教者》。接死+タフネス4のガッチリスペックに、攻撃時の誘発型能力付きです。地味ながら攻める時も受ける時も中心となるクリーチャーであり、このカードが定着するか否かでゲームプランは大きく変化します。《大洞窟のコウモリ》は《分派の説教者》を定着を補助する梅雨払いの役目もあり、事前に《抹消する稲妻》や《苦痛ある選定》などの除去カードを追放しておきましょう。

 

 さて、ここまで以前のディミーア・ミッドレンジと同様の、言わばデッキの根幹について解説してきました。ここからはディミーア・ミッドレンジのネクステージ、『霊気走破』により得た新カードについてみていきましょう!

 

 このデッキ最大の特徴といえるのがメインボードに4枚採用された《油浸の機械巨人》です。戦場に出たときに相手の手札から脅威を捨てさせ、絆魂と護法付きの4/4クリーチャーが手に入ります。除去などの対処手段を捨てさせることができれば、デメリットとしてカードを引かせてしまいますが、かなりの確率で定着が見込めるでしょう。先ほど解説した《大洞窟のコウモリ》から《分派の説教者》の動きを1枚で可能としているのです。

 また、マナ総量4とアーティファクトクリーチャーであることから、黒の単体除去に対して強い耐性を持っています。《喉首狙い》はもちろんのこと、《苦痛ある選定》、《切り崩し》といったメジャーどころでは対象にとることすらかないません。《シェオルドレッドの勅令》が思いつきますが、デッキの構成上隣にいるほかのクリーチャーを生贄に捧げられてしまうでしょう。つまり、黒いデッキに対してはプレイさえできれば致命的な存在となり得るのです。

 脅威として恐れられるのは黒ばかりではありません。赤単やグルールといった攻撃的な赤いデッキからしても絆魂付きの4/4クリーチャーは戦況の優位を決定付けるだけのパワーを秘めています。仮に《抹消する稲妻》や《焦熱の射撃》のような対処手段として残しておいたとしても、戦場に出たときの誘発型能力で捨てさせられてしまいます。《油浸の機械巨人》1枚を除去するために、特定のカードを複数枚引く必要がある時点でかなり対処困難なクリーチャーとわかるでしょう。

 《油浸の機械巨人》が定着し、無事ターンが返ってくればいよいよ攻防が入れ替わる時間です。絆魂により戦闘を有利に進めていきましょう。

 

 《油浸の機械巨人》は単体でもゲームを決め得るスペックですが、手札に《マネドリ》や《三歩先》があれば追い打ちをかけることになります。油浸の機械巨人》のコピーとしてプレイするれば、もはやゲームの主導権がどちらにあるかは明らかでしょう

 

 《油浸の機械巨人》を見て、かつての《ヴェンディリオン三人衆》を思い出したかたも多いのではないでしょうか。瞬速やスタッツなどの違いはありますが、両者とも検閲効果をもっています。

 しかしながら、《ヴェンディリオン三人衆》がコンボやコントロールに対し強かったのに対し、《油浸の機械巨人》はアグロやミッドレンジに対して効果的なクリーチャーです。クリーチャーがダメージレースの軸となるスタンダードにおいて、絆魂の二文字は強力無比なのです。

 

 《油浸の機械巨人》の比較対象としては《黙示録、シェオルドレッド》があげられます。対クリーチャー戦ではそこまで差はないように思えますが、安定性に関しては戦場に出たときの誘発型能力分《油浸の機械巨人》に軍配があがります

 《黙示録、シェオルドレッド》を定着させるには《強迫》などの露払いが必要不可欠であり、何もない場合は運を天に任せてプレイするしかありません。着地と同時に手札を攻められる《油浸の機械巨人》とは大きな違いです。

 また、手札を使いきられてしまうと無駄となってしまう《強迫》に対し、油浸の機械巨人》は自分自身を対象にとることで手札の質の向上が図れます。細かいですが、テクニックとして覚えておいて損はありません。

 新たな妨害手段にして脅威となるクリーチャーを手に入れたディミーア・ミッドレンジ、ぜひお試しあれ。

 

おわりに

 

 今回は《油浸の機械巨人》獲得によりダメージレース性能が格段に向上したディミーア・ミッドレンジをご紹介しました。色マナこそ厳しいものの、それを補って余りあるカードパワーを秘めています。特に対クリーチャー戦では戦況を決定付ける1枚となってくれるでしょう。

 次回のスタンダード・ネクステージでも最新のスタンダード情報をお届けしたいと思います。それでは!

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