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プレイヤーズコンベンション千葉2025

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準々決勝:伊藤 諒(東京) vs. マ・ノア(韓国) ~タイタンを巡る戦い~

Hiroshi Okubo


 チャンピオンズカップファイナルの準々決勝は、今大会でもごく少数のプレイヤーしか使用していなかったジェスカイ・コントロールを操り見事2日目に進出した伊藤 諒(東京)と、対照的に今大会で最大勢力だったボロス・エネルギーを使い見事に勝利を重ねてきたマ・ノア(韓国)の戦いとなった。

 伊藤 諒が持ち込んだのは「ジェスカイ・コントロール」。今大会の参加者の中でも、このデッキで2日目に進出したのは伊藤ただ一人だ。コントロールデッキを愛する彼のデッキ構築については、こちらのインタビューでも紹介している。『異界月』のリリースからマジックをプレイし始めたという伊藤はこれまでに目立った実績はなかったが、今大会は彼の実力を証明する最初の舞台となるだろうか。

 一方、韓国の強豪プレイヤーであるマ・ノアが使用する「ボロス・エネルギー」は、環境最速と評されるアグロデッキだ。初動の速さだけでなく、《鏡割りの寓話》によって中盤以降も息切れしない継戦能力を持ち、攻守に隙がない。また、マは「プロツアー『モダンホライゾン3』」でトップ8に入賞した実績を持つ強豪であり、主戦場であるオンライン大会でも数多くの実績を残している。

 試合の焦点は、伊藤が相手の猛攻をコントロールしきれるか、それともマが押し切るかという一点に集約されるだろう。果たして準々決勝を制し、決勝の舞台へと駒を進めるのはどちらになるのか──?

伊藤 諒(東京) vs. マ・ノア(韓国)

 

ゲーム1

 試合が開始されると、マは《敏捷なこそ泥、ラガバン》をプレイ。第2ターンには《魂の導き手》を戦線に追加して颯爽と攻撃し始める。対する伊藤は《敏捷なこそ泥、ラガバン》を《電気放出》で除去して応戦し、序盤の攻防は一進一退といったところだ。

 3ターン目、マは土地をすべてアンタップ状態のままターンを終え、対する伊藤は《火の怒りのタイタン、フレージ》をプレイしてマの《魂の導き手》を除去。ここで一旦、伊藤が場を整えたように見えた。

 

 しかし、マは《スレイベンの魔除け》を唱えて伊藤の墓地を追放。さらに続くターンには《優雅な談話室》によってあらかじめ墓地に落としていた《火の怒りのタイタン》を《栄光の闘技場》経由で「脱出」で戦場に戻し、一気に伊藤のライフを削る。

 ならばと伊藤は《空の怒り》を唱え、盤面を再度リセット。《電気放出》によって残っていたエネルギーも使い切って《火の怒りのタイタン》を除去するが、マは攻撃の手を休めることはなく、《鏡割りの寓話》をプレイして次々に伊藤へと脅威を差し向ける。

 伊藤はここで2枚目の《火の怒りのタイタン》を展開してマのゴブリントークンを除去するが、マは《鏡割りの寓話》によるルーティングで不要なカードを捨てながら手札を充実させ、続けて《イーオスのレインジャー長》をプレイする。しかしこれには伊藤の《対抗呪文》が刺さり、盤面のさらなる制圧は防がれた。

 だがマはここで再び2マナを残した状態で《火の怒りのタイタン》を「脱出」で戦場へと戻す。無論これも《栄光の闘技場》の能力で速攻されており、一気に攻撃を仕掛けた。対する伊藤はここまでのドローでマナフラッドに陥っており、手札がかみ合わないまま防戦一方を余儀なくされていた。

 伊藤もまた《火の怒りのタイタン、フレージ》を「脱出」させてなんとかマに対抗しようとするが、マは《静牢》を使用して伊藤のタイタンを除去。さらに《鏡割りの寓話》も変身し、続くターンには《ナカティルの最下層民、アジャニ》をプレイ。《キキジキの鏡像》が猫トークンをコピーし、ターン終了時に生け贄に捧げられると《ナカティルの最下層民、アジャニ》は《ナカティルの報復者、アジャニ》へと変身する。

 伊藤がかろうじて《ストーム・ジャイアントの聖堂》で維持していた戦線も、次々に展開されるマの物量にはなすすべなく。まずはマが第1ゲームを先取した。

伊藤 0-1 マ

ゲーム2

 第2ゲーム、マは《魂の導き手》を展開し、序盤から攻撃の準備を整える。続くターンには《ナカティルの最下層民、アジャニ》を追加して、さらにプレッシャーをかけるが、伊藤はここでも慎重に対応し、土地を置くだけで相手の動きを見守る。

 3ターン目を迎えたマは総攻撃を仕掛け、伊藤はこれにも対応せずダメージを受け入れる。すると、第2メインフェイズにマは2体目の《ナカティルの最下層民、アジャニ》をプレイする。これにより、レジェンダリールールによって1体目の《ナカティルの最下層民、アジャニ》が墓地に送られ、その変身能力が誘発。《ナカティルの報復者、アジャニ》が姿を現す。

 

 ここで伊藤は《ナカティルの報復者、アジャニ》をターゲットに《天界の粛清》をプレイ。優先権の都合で0能力は使用されてしまったが、続くターンに伊藤は《空の怒り》を唱え、マの盤面を一掃することで主導権を奪い返した。

 返すマはすかさず《イーオスのレインジャー長》をプレイし、デッキから《敏捷なこそ泥、ラガバン》を手札に加える。さらに、《除霊用掃除機》を戦場に出して伊藤の墓地にも睨みを効かせるが、まだライフに余裕のある伊藤は《記憶の氾濫》を唱えて手札を充実させる。

 マは伊藤のターン終了時に《除霊用掃除機》で伊藤の《記憶の氾濫》を追放しつつ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を「疾駆」で場に送り込むと《イーオスのレインジャー長》と共に攻撃を仕掛ける。対する伊藤は《電気放出》で《敏捷なこそ泥、ラガバン》を除去し、さらに《瞬唱の魔道士》をプレイして《電気放出》を対象に取る。

 

 対応してマは《除霊用掃除機》を起動するが、伊藤は2枚目の《瞬唱の魔道士》をプレイすることで無事に《電気放出》をプレイし、《イーオスのレインジャー長》までも除去して再び盤面をクリアに戻す。

 伊藤はライフを9点残しながら盤面を完全に掌握した。マは手札からプレイした《火の怒りのタイタン、フレージ》で反撃を試み、伊藤の《瞬唱の魔道士》のうち1体を除去するも、伊藤は次のターンで《火の怒りのタイタン、フレージ》をプレイ。その誘発型能力を解決し、マのライフを詰めていく。

 さらに伊藤はマのドローステップ終了時に《外科的摘出》をプレイ。対象はマの墓地にある《火の怒りのタイタン》だ。やむなしにマは《除霊用掃除機》を起動して自身の墓地の《火の怒りのタイタン、フレージ》を追放するが、これによって伊藤の墓地にある《火の怒りのタイタン、フレージ》は野放しとなり、これが「脱出」によってプレイされる。

 

 なんとかこの《火の怒りのタイタン、フレージ》は《電気放出》で除去したマだったが、伊藤は続いて《七つの死の種父》をプレイ。第1ゲームとは打って変わって伊藤が次々に脅威を並べる展開に、マは対処が追いつかず、第2ゲームでは伊藤がゲームを掌握しきって勝利を収めた。

伊藤 1-1 マ

 

ゲーム3

 いよいよマッチは最終ゲームまでもつれこんだ。マはまず《オセロットの群れ》をプレイして攻勢を開始する。伊藤はこれを速やかに《電気放出》で除去するが、マは続くターンに2枚目の《オセロットの群れ》をプレイして再び場を固める。伊藤はこの展開に慎重な姿勢を見せ、1マナを立たせながら《知りたがりの学徒、タミヨウ》をプレイし、ひとまず《オセロットの群れ》へのブロッカーを展開する。

 しかし、マは3ターン目に《火の怒りのタイタン、フレージ》をプレイ。その能力によって《知りたがりの学徒、タミヨウ》を除去すると、《オセロットの群れ》で攻撃を行ってターン終了時に猫トークンを生成する。

 伊藤の《オセロットの群れ》を対処できないままターンを進める。一方のマは、「疾駆」で《敏捷なこそ泥、ラガバン》を追加して伊藤のライフを削り、攻撃の手を緩めない。さらに次のターンにはフェッチランドによって肥やした墓地のカードを追放しつつ、《栄光の闘技場》のマナを経由して《火の怒りのタイタン、フレージ》を「脱出」で戦場に戻し、再び「疾駆」する《敏捷なこそ泥、ラガバン》とともに畳み掛けるように攻撃を仕掛ける。

 

 伊藤はなんとか《天界の粛清》によって《火の怒りのタイタン、フレージ》を除去し、さらに《瞬唱の魔道士》をプレイして《敏捷なこそ泥、ラガバン》と相打ちさせることでマの攻勢を一時的に食い止める。

 続いて伊藤もまた《火の怒りのタイタン、フレージ》をプレイして《オセロットの群れ》を処理。ここまでの展開で《オセロットの群れ》によって猫トークン3体を並べられることにはなったが、手札には《空の怒り》もあるためこれを唱えることさえできれば再び盤面を更地に戻すことはできるだろう。

 

 だが、マがプレイしたのは《黒曜石の焦がし口》。伊藤の土地が4枚で止まっており、かつ白マナの供給源が2枚しかないことを確認すると《行き届いた書庫》を破壊。これによって伊藤は手札にあった《空の怒り》を唱えることができない状況に陥る。

 ここで伊藤は最後の望みをかけてドローを行うが、マはドロー後にすかさず《外科的摘出》をプレイ。その墓地から《火の怒りのタイタン、フレージ》を追放し、伊藤の逆転の可能性を完全に封じた。反撃の余地を失った伊藤は自らの敗北を認め、マッチの勝者であるマへと右手を差し出した。

伊藤 1-2 マ

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