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プレイヤーズコンベンション千葉2025

インタビュー

デッキテク:伊藤 諒(東京)の「ジェスカイ・コントロール」

Hiroshi Okubo


 モダン環境の一角に、かつて存在感を放っていたジェスカイ・コントロール。《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《精神を刻む者、ジェイス》の登場・解禁によって一時的に隆盛していたものの、環境の高速化やデッキタイプの多様化に伴い、再び姿を消しつつあった。しかし今大会で、そのデッキタイプが再び脚光を浴びている。

 伊藤 諒(東京)は、ジェスカイ・コントロール使用者の中で唯一2日目進出を果たしたプレイヤーである。そんな彼のデッキは、チャンピオンズカップファイナルの第10回戦を終えた時点で驚異的とも言える9勝1敗の成績を叩き出していた。衰退したかに思えたアーキタイプを、ここまでの成功へと導いた伊藤 諒――果たして彼が信じるこのデッキの強さとは何なのだろうか?

伊藤 諒(東京)

 

──ジェスカイ・コントロールで勝たれていらっしゃるというのは本当にすごいですね。どういった経緯でこのデッキを選択されたのでしょうか?

伊藤「自分は長年コントロールが好きでずっと使い込んできたので、今回もコントロールを"選んだ"という認識はないですね。強いて言うなら《オアリムの詠唱》が『脱出基地』をはじめとしてエルドラージ系デッキなど環境の多くのデッキに効果的なので、《オアリムの詠唱》を有効に使えるリストにしたいと考えていました。サイドボードには《等時の王笏》を採用していて、いわゆるセプター・チャントのロックコンボが使える形になっています。エルドラージなどはパーマネント破壊をクリーチャーの能力に依存しているのでインスタントタイミングで《等時の王笏》に触れる手段が限られていて、決まれば勝ちというコンボになっています」

──メインデッキには工夫されている点はありますか?

 

伊藤「いくつかありますが、一つは《アノールの焔》が非常に強力なカードなので、それと相性のいい《瞬唱の魔道士》と、追加のウィザードとして《知りたがりの学徒、タミヨウ》を採用していることです。また、このデッキの勝ち手段である《火の怒りのタイタン、フレージ》に速攻を付与するために《栄光の闘技場》を2枚採用しています。青青も白白も必要なデッキなのでかなりマナベースには負担がかかっているのですが、《栄光の闘技場》を引くか引かないかで勝ちやすさが大きく変わってくるので、気合の採用です」

──実際に今大会でデッキを使われていて、感触はいかがでしょうか?

伊藤「今のモダンのデッキはどれも先鋭化しており非常に強固な勝ち手段を持っている反面、弱点もはっきりしているので、各デッキのウィークポイントを狙い澄ますことができればしっかり勝てるデッキになっていると思います。また、長いゲームプランを想定しているデッキが多くないというのもあり、ゲームを長引かせることができればこちらの土俵に持ち込めます。総じて、マナベースだけは少し思うところはあるものの、入れ替えたいようなカードはありませんね。なかなか悪くないデッキになっているのではないかなと思います」

──なるほど。特にデッキのベストカードを挙げるとしたらなんでしょうか?

 

伊藤「《オアリムの詠唱》と《流刑への道》でしょうか。《オアリムの詠唱》はただ強カードで、ゲームを長引かせるのにはこれ以上ないカードですし、先ほど言ったとおりサイドボード後には《等時の王笏》のコンボにも使えます。また、《流刑への道》は『エルドラージ・ランプ』の《世界を壊すもの》や『ボロス・エネルギー』がサイドボード後に入れてくる《火の怒りのタイタン、フレージ》など、環境に追放したいクリーチャーが多いので有効です。『ディミーア眼魔』なども《超能力蛙》や《忌まわしき眼魔》などが火力では除去できないので、《流刑への道》が頼りになります」

 

──《等時の王笏》を使ったコンボはメインデッキには入れないのですね

伊藤「そうですね。『脱出基地』と『エルドラージ』には強いのですが、『ボロス・エネルギー』などに対してあまり効果的ではないですし、単体で引いたときにどうしようもないのであくまでサイドボードを温めてもらうだけです」

──サイドボードには《七つの死の種父》も入っています。重いフィニッシャーとしての採用だと思いますが、このカード選択の意図をお聞かせ願えますか

 

伊藤「《外科的摘出》を取っている相手に対して《火の怒りのタイタン、フレージ》と《ストーム・ジャイアントの聖堂》だけでは勝ちきれないので追加のフィニッシャーはほしいと思っていて、試してみたら強かったから入れている、という感じですね。《栄光の闘技場》で速攻をもたせることもできますし、絆魂と警戒を持っているので殴った後の返しを心配しなくていいのもいいです」

──《記憶への放逐》もサイドボードに4枚採られているんですね

伊藤「見た目通りエルドラージに強いカードですね。エルドラージはメインの相性があまりよくないのでサイドボード後は《等時の王笏》コンボまで生き残るためにも少し厚めにサイドボードを採っています。また、最近少し増えてきている『オルゾフ・ブリンク』などに対しても有効で意外と腐りにくいカードです。他にも自分の使う《火の怒りのタイタン、フレージ》をズルして戦場に定着させることもできます」

──ありがとうございます。最後に、このデッキを使ってみたいという方にアドバイスがあれば教えてください

伊藤「とにかくゲームを長引かせることです。《知りたがりの学徒、タミヨウ》などはつい1ターン目にプレイしたくなりますが、それより《電気放出》や《流刑への道》などを構えておくのがいいです。最初の3~4ターン目までは相手の時間だと割り切って、相手の勝ち手段を捌き続けてとにかく負けないことを意識して我慢し続けましょう」

伊藤のデッキはフルフォイルとなっており、コントロールデッキへの深い愛が感じられた。

 

 伊藤 諒が操るジェスカイ・コントロールは、単に懐かしいデッキが復活しただけではない。環境に合わせた緻密な構築とメタゲームへの深い理解によって、他の強力なデッキを相手にしても引けを取らないパフォーマンスを発揮している。その中核を成す《オアリムの詠唱》や《流刑への道》は、ゲームを長引かせながらも相手の脅威を確実に排除し、最終的に確固たる勝利へと導く鍵となっていた。

 環境ごとに異なる強力なフィニッシャーやコンボの採用も、伊藤の細やかな調整力を示しており、競技シーンにおける構築力の重要性を改めて感じさせるリストであった。果たしてこのジェスカイ・コントロールがどこまで勝ち進むのか――その行方に注目だ。

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