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マジックフェスト・横浜2019

観戦記事

決勝:小林 崇人(東京) vs. 髙橋 哲大(茨城) ~玉座が玉座をもたらして~

Moriyasu Genki

 2019年4月21日。グランプリ・横浜2019。2日間におよんだスイスラウンド15回戦を終えて、決勝トーナメント2戦を終えて、いよいよ最終戦がはじまる。その名も、決勝戦。

 進行の都合上しばらく先に準決勝を終えていた小林は落ち着いた様子で対戦席に座り、準備を始める。つい今しがた準決勝で勝利を収めたばかりの髙橋は試合の熱気を良い意味で帯びているのだろうか、楽しそうに笑顔を浮かべながら準備をし始めていた。


髙橋 哲大(写真左) vs. 小林 崇人(写真右)

プレイヤー、デッキ紹介

小林 崇人

 この数か月、今回に向けて練習してきたという小林。主な練習環境はMagic Onlineであり、Magic Onlineでのネーム"kbr3"に由来してkbr(ケービーアール)と呼ばれ親しまれている。過去には市川ユウキらとともに「Magic Online世代」とも称され、事実Magic Onlineで開催れたプロツアー予選を幾度となく突破している実績を持つ、デジタル出身のプレイヤーだ。

 小林の経歴からMagic Onlineは切っても切り離せないものだが、テーブルトップのマジック大会とはしばらく距離を取っており、昨年末ごろからの復帰だという。

「昨年9月ごろのMagic Onlineのプロツアー予選で3没(決勝負け)して、久しぶりに負けるのが悔しいなって思って復帰しました」

 試合後のインタビューでそう語った小林。根っからの勝負師が、決勝に上り詰めてきていた。

小林 崇人 - 「鱗親和」
グランプリ・横浜2019 スイスラウンド6位 / モダン (2019年4月20~21日)[MO]
5 《
1 《地平線の梢
4 《ラノワールの再生地
2 《ペンデルヘイヴン
4 《ダークスティールの城塞
4 《墨蛾の生息地
1 《ちらつき蛾の生息地

-土地(21)-

4 《電結の働き手
4 《電結の荒廃者
1 《金属ミミック
4 《搭載歩行機械
4 《歩行バリスタ

-クリーチャー(17)-
4 《オパールのモックス
3 《溶接の壺
4 《古きものの活性
4 《活性機構
4 《硬化した鱗
3 《ゲスの玉座

-呪文(22)-
1 《呪文滑り
1 《溶接の壺
4 《自然の要求
3 《墓掘りの檻
3 《減衰球
1 《倦怠の宝珠
2 《四肢切断

-サイドボード(15)-

 その勝負師が自らの命運を託した75枚は「鱗親和」だ。最も特徴的な点は《鋼の監視者》が採用されていない点だろうか。その代わりに増量している《ゲスの玉座》は「今回一番輝いたカード」だとも話している。

髙橋 哲大

 グランプリ決勝という大一番にあって、髙橋のたたずまいは緊張を全く感じさせなかった。カードに触れる手つきも、表情も、常に柔らかくにこやかなものであった。それもそのはず、すでに髙橋は数百人規模の大会を優勝した経験をもつ熟練プレイヤーであり、モダンでも過去には「エターナルブルー」といった独自のチューン・アップをほどこしたデッキで大会を勝ち進むほど、環境も理解している。

髙橋 哲大 - 「バント・スピリット」
グランプリ・横浜2019 スイスラウンド4位 / モダン (2019年4月20~21日)[MO]
1 《平地
1 《
1 《
1 《神聖なる泉
1 《寺院の庭
1 《繁殖池
2 《溢れかえる岸辺
2 《吹きさらしの荒野
3 《霧深い雨林
1 《金属海の沿岸
1 《剃刀境の茂み
3 《地平線の梢
1 《植物の聖域
1 《魂の洞窟
1 《ムーアランドの憑依地

-土地(21)-

4 《霊廟の放浪者
4 《貴族の教主
1 《極楽鳥
4 《無私の霊魂
4 《至高の幻影
1 《幻影の像
1 《鎖鳴らし
4 《ドラグスコルの隊長
4 《呪文捕らえ
3 《拘留代理人
1 《聖トラフトの霊

-クリーチャー(31)-
2 《霊気の薬瓶
2 《流刑への道
4 《集合した中隊

-呪文(8)-
2 《秋の騎士
1 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅
2 《流刑への道
3 《減衰球
2 《安らかなる眠り
2 《石のような静寂
1 《否認
1 《統一された意思
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-

 柔らかい笑顔を支える、確かな戦績。「前から使っているんです」と語った使用デッキは、「バント・スピリット」だ。《集合した中隊》と《霊気の薬瓶》で多彩なスピリット・クリーチャーを呼び出すビートダウン・デッキだ。

 「鱗親和」とはあまり対戦経験がないとも表現していたが、実は髙橋と小林は今日、すでに1度対戦を済ませている。全勝者同士としてスイスラウンドで対決しており、その際には髙橋が勝利を収めている。

 しかしながら内情は1点差の接戦だったようで、髙橋には1勝を収めていることでの油断や慢心の気配は一切ない。

「鱗親和」対「バント・スピリット」の前評判

 +1/+1カウンターという方法かロード能力による修整かの違いはあるが、どちらもクリーチャーを並べることを基本的な勝ち筋とするデッキだ。「鱗親和」の方がサイズで勝りやすいが、「バント・スピリット」は航空戦力がほとんどで、《ちらつき蛾の生息地》や《搭載歩行機械》の飛行機械・トークン以外ではブロックされない。この特徴の差異はどちらが優勢というものではないだろう。そのうえでキーカードとなるのは、それぞれ数少ない相手へ直接干渉する手段となる《歩行バリスタ》と《拘留代理人》のようだ。

 試合直前、両者はじっくりと互いのデッキリストを読みこんでいく。デッキリスト公開制である決勝トーナメント独特の、熱い想いを抱いた2人の、静かな静かな時間が過ぎる。リストを理解・咀嚼しながら、時々小林は首をかしげ、時々髙橋はうなずく。2人の性格がにじみ出た仕草なのだろうか。

 互いに納得のいく戦い方を決めたあと、デッキリストは回収され、ついにゲームの開始の合図がかかった。

 先手は、髙橋だ。

ゲーム内容

ゲーム1

 最初に引いた7枚のカードを見た瞬間、悩む余地がないというようにマリガンを選択した髙橋。小林は7枚を何度も繰り返し見ながら、キープを宣言する。

 6枚でゲームを始めた髙橋は《地平線の梢》から《貴族の教主》をプレイ。非スピリットながら、デッキ全体の相性の良さから「バント・スピリット」自体にマスト・カードともされる1枚だ。マナを安定させて、2マナ・3マナのカードを展開していく準備を整える。2ターン目には《無私の霊魂》を出した。

fn_takahashi1.jpg

 小林は1ターン目こそ《ラノワールの再生地》のタップインだったが、2ターン目に勢い良く動き出した。《金属ミミック》をプレイし、宣言は「構築物」。そのままX=0の《歩行バリスタ》をプレイ。これが戦場に着地する際には、《金属ミミック》によって+1/+1カウンターが1個置かれた状態になる。《ラノワールの再生地》の「移植」によってさらにカウンターを置いて、0マナ・2/2の《歩行バリスタ》の完成だ。小林は即座に《貴族の教主》に1点を当ててマナ基盤を攻めていく。

 髙橋が対「鱗親和」戦にて最も懸念していた《歩行バリスタ》が早々に着地することとなった。小林はさらにX=0で《搭載歩行機械》も戦場に追加して、一気に盤面を固めていく。

 この《歩行バリスタ》には《流刑への道》を合わせることができた髙橋だったが、《貴族の教主》をすでに処理されていために1ターン中のダブル・アクションがとれずにターンを費やすこととなった。その間にも小林は次手を繰り出していく。

 まず《古きものの活性》で回収した《ゲスの玉座》を設置、次のターンには《ラノワールの再生地》を置いてから《電結の荒廃者》を展開。「移植」の解決前に《ゲスの玉座》で「増殖」すると、先に《ラノワールの再生地》のカウンターが増えてから「移植」が解決され、「弾切れ」を起こさない形となる。《活性機構》も置いて、戦線を確固たるものにしていく。

fn_kobayashi1.jpg

 着実に盤面を作っていく小林に対し、マナを伸ばした髙橋も《集合した中隊》で解決策を探しにいく。ライブラリーの上から6枚には髙橋側にとってのキーカード 《拘留代理人》と、デッキ自体の主軸となる《ドラグスコルの隊長》が含まれていた。

 この 《拘留代理人》でサイズの大きい《電結の荒廃者》を対象にとるが、対応して《ゲスの玉座》で生け贄に捧げられて、脇の《搭載歩行機械》と《金属ミミック》とが巨大になる結果となった。

 3/3の《搭載歩行機械》こそ戦闘で落とした髙橋であったが、《搭載歩行機械》の死亡誘発によって生成された飛行機械・トークンが再び《ラノワールの再生地》の「移植」を誘発させ、そのタイミングで再び《ゲスの玉座》を起動する。「増殖」の解決にともなって《活性機構》が複数誘発して、マナを支払ってトークンを生成していく。結果として小林の陣営には合計5体のトークンと《金属ミミック》による2ターン・クロックが形成されており、総打点はむしろ前ターンよりも上がっていることになる。

髙橋「負けました」

 そのトークン戦線を受けきれない髙橋。多角的なギミックを擁する「鱗親和」が得意とするうちの1つ、トークン戦法だ。「バント・スピリット」戦において《歩行バリスタ》がキーカードであることは間違いないが、これが対処されても「鱗親和」の展開の勢いは微塵も落ちる気配がなかった。

小林 1-0 髙橋

小林「テキストを、確認したいんですけど」

 サイドボーディング中、改めて互いのリストを交換しながら小林が髙橋に尋ねた。

 自ら《倦怠の宝珠》を提示しつつ「これ、1マナ1/1のやつって―…」と話を始めると、髙橋も意図を汲んで自らのデッキに手を伸ばす。

髙橋「《霊廟の放浪者》の誘発は、クリーチャーが戦場に出たときなので止まりますね。大体、《倦怠の宝珠》で止まります。《呪文捕らえ》も戦場に出たときですし、《鎖鳴らし》と、もちろん 《拘留代理人》もです」

 《倦怠の宝珠》がどのクリーチャーのどの部分に効くのか。ゲーム1を落としながらも目の前の「対戦相手」に積極的に事実を伝える髙橋からは、テキストの読み間違いや勘違いなどはなく「しっかりと実力を発揮しあえる環境」でゲームをやりたいという気持ちがあることが、この状況を見る人たちに伝わっていた。

 自らサイドインを予定している《倦怠の宝珠》を示した小林もまた、今回の試合に向けて髙橋と同じ姿勢で挑んでいるようだ。

 このグランプリ決勝という舞台において、普段通りに、そして正々堂々と戦うことをお互いが望み続けている。

 積みつづけた研鑽が報われるように。ともに練習し続けた仲間の期待に報いるように。

 デッキリストがジャッジのもとに返却され、ゲーム2が始まる。

ゲーム2

 高橋は土地1枚の手札をキープしていた。その横には《貴族の教主》と《極楽鳥》がある。少しの間なら土地を引けなくても、展開に余裕はできそうだ。

 実際、1ターン目に《貴族の教主》をプレイしたあと、2ターン目にやはりセットランドはできなかったが、2体目の《貴族の教主》と《極楽鳥》を展開した。

 小林も《ダークスティールの城塞》・《オパールのモックス》・《電結の働き手》という1ターン目から、2ターン目には《ラノワールの再生地》+《歩行バリスタ》で《貴族の教主》1体を焼きつつ《歩行バリスタ》が盤面に残る、絶好のスタートを切っている。

fn_kobayashi2.jpg

 髙橋はこの《歩行バリスタ》を 《拘留代理人》で封印しにかかり、《歩行バリスタ》はもう1体の《貴族の教主》とともに死亡することになる。この攻防でマナソースを2つ失った髙橋であったが、2枚目となる土地がちょうど引き込めており、展開を続けられそうだ。

 小林の「《搭載歩行機械》をX=1で着地させてからの《電結の荒廃者》プレイ」には合わせて《搭載歩行機械》に《流刑への道》を当てることで、後々厄介になる飛行機械・トークンを出させない。

fn_takahashi2.jpg

 着地したこの《電結の荒廃者》には、髙橋は今度は《秋の騎士》の誘発型能力を当て、小林の戦力を1体ずつ着実に潰していく。小林の戦力はすでに《墨蛾の生息地》と《電結の働き手》(2/2)のみとなったが、髙橋も積極的に高い打点のクリーチャーが展開できているわけではない。次ターンには《ドラグスコルの隊長》こそ引き込んでクロックを仕掛けるものの、後続がおらずゆっくりと2点を与えていくに留まった。

 その間に小林はドローを経て戦力を再拡大させていく。《硬化した鱗》、《搭載歩行機械》、2体目の《電結の働き手》、《ゲスの玉座》と1ターンに1枚ずつ続け、《硬化した鱗》+《ゲスの玉座》のシナジーで一気に打点を高めていく。最大打点の《搭載歩行機械》は《ゲスの玉座》が着地する前に新たな 《拘留代理人》で対処されてしまったが、2体の《電結の働き手》が4/4、6/6という数字になって髙橋のライフを一気に詰めにかかる。

 この2体の《電結の働き手》は戦闘と新たな《秋の騎士》でそれぞれ対処されるが、《電結の働き手》の死亡前に小林がクリーチャー化した《墨蛾の生息地》に接合していき、「毒10点」での勝利ルートを準備しはじめる。

 髙橋は前のターンまでアタックしていた《ドラグスコルの隊長》が墨蛾のブロックに回り、次いで引いた《無私の霊魂》もブロックに回り、2ターンをしのいだが、《墨蛾の生息地》の3度目の攻撃には受け止められる飛行・クリーチャーを用意することができなかった。

小林 2-0 髙橋

fn_last.jpg

 決着。

 結果だけを見れば「鱗親和」の完勝となった。「スイスラウンドのときには、《歩行バリスタ》引かれなかったから」と髙橋が語ったように、《歩行バリスタ》が盤面に与えた影響はゲーム1、2とも決して薄いものではなかった。実際にはどちらも返しのターンに対処こそされているが、逆を返せば展開よりも優先して必ず対処しないとならないカードということでもあり、結果して髙橋は攻め手と受け手それぞれが不足した結果を招いている。

 もちろん、小林の勝因はそれだけではない。それぞれ4枚ずつ採用した《ラノワールの再生地》《活性機構》はどちらのゲームでも大きい影響を与えており、デッキ構築という点からして小林の勝利と呼ぶべきものだろう。

 また「自分のデッキの回し方が仲間に好評だった」とも話しており、「鱗親和」は複雑なシナジーを多数抱えるデッキでありながら小林にとっては「自然に回せて、手に馴染む」デッキでもあったようだ。髙橋もトップ8プロフィールにて小林のデッキテクとプレイングが特徴的だったということを表現しているし、準々決勝で当たった細川も試合後に「うますぎる」と絶賛していた。

 展開の噛み合い、デッキ構築、サイドボーディング、プレイング。そのすべてが小林の卓越した技術を意味していた。小林は今グランプリにおいてビデオ・フィーチャー、テキスト・フィーチャーのいくつかで試合の様子を記録されている。ぜひ、そのすべてを観てほしい。

 「鱗親和マスター」小林Win!

 《ゲスの玉座》はゲスだけでなく、小林にも玉座を与えた。

 小林"kbr3"崇人、優勝おめでとう!

gpyok19_champion_kobayashi.jpg
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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