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マジックフェスト・名古屋2019

インタビュー

優勝者インタビュー:柔らかい物腰に熱い心を持つ王者 熊谷 陸

Yuichi Horikawa
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 1755名。

 このグランプリ・名古屋2019に参加したプレイヤーの総数だ。

 1755の想いがぶつかり合い、ただ1人の王者を決める戦い。

 その頂点に君臨したのが、熊谷 陸選手だ。

 熊谷選手は、グランプリ・東京2016で、1度目の優勝を果たし、実に3年越しの2度目の優勝となった。

 彼は、グランプリ・東京2016の優勝をきっかけに、マジックのプロプレイヤーとしての道を歩み始めた。

 その後、殿堂プレイヤーである中村修平率いるチーム「曲者」に加わり、マジックのプロシーンでも活躍している現役バリバリのプレイヤーだ。

※チームシリーズは2018年で終了したが、今も彼らは「曲者」として交流を深めている。

 そんな優勝直後の彼にお話をうかがった。

マジックとの出会い

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――優勝おめでとうございます!

熊谷「ありがとうございます」

――グランプリの頂点に立たれましたが、マジックを始められたのはいつ頃だったんでしょうか?

熊谷「マジックをはじめたのは『ラヴニカ:ギルドの都』(2005年10月7日発売)、一番最初のラヴニカのころです」

――きっかけは、何だったんでしょうか?

熊谷「中学生ぐらいのころだったんですけれど、『コロコロコミック』という雑誌でマジック:ザ・ギャザリングをテーマにした漫画が掲載されていまして、それの影響で友達とマジックをはじめましたね」

――そのときは、カジュアルに楽しむ感じだったんでしょうか?

熊谷「そうですね。テーマデッキとかを買って、そのまま友達とワイワイ遊んでるくらいでした」

――どういったことがきっかけで、競技マジックに移っていったんでしょうか?

熊谷「『ラヴニカ:ギルドの都』のころに一緒に遊んでいた友達とは(中学校を)卒業してから遊ぶことはなくなってしまったんですけど、大学に入ってからちょうど『ゼンディカー』(2009年10月2日発売)頃に、マジックの大きな大会があるってことをはじめて知って、近くのFinalsの予選だとかに出てみようかって、のがきっかけですね」

――The Finals予選の後から、競技マジックの道を歩みはじめたんでしょうか?

熊谷「そうですね。PPTQ(プロツアー予備予選)って大会があることをはじめて知りまして、それにちょくちょく出るようになりはじめてって形ですね」

競技マジックの楽しさを知るきっかけ

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――はじめて出場したグランプリはいつだったんでしょうか?

熊谷「少し記憶があやふやなんですが、エクステンデッド(※)のグランプリ・横浜2010だったと思います。エクステンデッドでグランプリに出ましたね」

※モダン制定以前に、存在した公式フォーマット。過去4年間に発売されたブロックと基本セットに収録されたカードが使用可能なフォーマット。

――そのときは、成績はどうでしたか?

熊谷「そのときは、本当に。いかに、手に入れやすいデッキでマジックをするかってことを考えていたので、ネットで調べたもっとも手にしやすいデッキで参加しまして、普通に初日3勝3敗してしまった記憶があります」

――そこからは、ずっとグランプリに出てたんでしょうか?

熊谷「そうですね……。その次に、グランプリ・仙台(2010)が地元であったんですけれども、寝坊してしまって出れなかったんです(笑)」

――えっ!? 寝坊ですか? めっちゃ友だちとかにいろいろ言われたんじゃないですか?

熊谷「いろんな人にいろいろ言われましたね(笑)。でも、そのころは、それぐらいのモチベーションで大会に出てました。グランプリには出るんですが、遠征するっていう発想はそこまでなくて、遠くて東京ぐらいまでなら行くぐらいでした。そのころは広島でグランプリはあったんですけど、そこまでは行くっていうモチベーションは特になかったですね」

――なぜ、その後は遠征するようになったんでしょうか?

熊谷「それが、Magic Onlineをそのころにはじめたんですけども、週末にPTQ(プロツアー予選)があるんですよ。時間つぶしというか、ほとんど遊びのつもりでそれに参加していて、1回抜けたことがあったんですね。それで、はじめてプロツアーに行けたんですけど、そのプロツアー『ラヴニカへの回帰』が本当に楽しくてですね。それで、またプロツアーに出てみたいなと思いまして、その近道はやはりグランプリだと思ったからですね」

今回のグランプリへの準備について

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――今回のグランプリに向けての練習はどれぐらいされましたか?

熊谷「セット(『エルドレインの王権』)が発売されてから、ミシックチャンピオンシップに向けて、『曲者』のみんなに、こんなデッキまわしたよ?って報告しながら、ちょくちょく練習してきました。先週から、(チームで)合宿みたいなのでがっちり1週間スタンダードの練習をしてきました」

――かなり、がっつり練習されてきたんですね。ちなみに、今回のデッキはどうやってうまれたんでしょうか?

熊谷「練習してきたグランプリで使用する候補のデッキの中の1つで、MPLの八十岡さんのデッキを参考にして作ったデッキですね」

――このデッキは、練習のときはどうでしたか?

熊谷「今のスタンダードの環境は、『シミック・フード』と『スゥルタイ・フード』の2種類が異様に強い、ちょっと歪んだというか、いろんなデッキを使いたい人にはちょっと窮屈な環境に感じるんですけど。僕はそこまで、フード・ミラーの戦いってすごく技術が必要で、リミテッドみたいなテクも必要ですし、インスタント・タイミングで動くことも、まぁまぁあるので、すごい難しいですけど、それが楽しくて。対戦するデッキはどれも同じなんですけど、毎試合、毎試合ゲーム展開が違って、すごく楽しんでました」

――熊谷さんのデッキにはメインに《霊気の疾風》3枚が積まれていて特徴的ですが、これはどういった調整なんでしょうか?

熊谷「《害悪な掌握》と《霊気の疾風》は、ほとんど使用感の変わらないカードですが、(《害悪な掌握》を使うために)わざわざ黒を足すことは、必要な色マナが出ないリスクにつながりますし、わざわざ黒を足すことは無いんじゃないかなと思って、《霊気の疾風》を多くとりました」

グランプリ中の出来事について

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――今回のデッキの中で、ベストカードは何でしたか?

熊谷「《むかしむかし》ですね。《霊気の疾風》も大活躍だったんですけどね」

――なぜ、そのカードなんでしょうか?

熊谷「『シミック・フード』は土地が詰まって負けることがすごく多かったので、土地がちゃんと伸びるようにしてくれた、デッキの潤滑油みたいなカードなので、そういうカードがすごく好きなんです。ストレスなくゲームができたのもこのカードのおかげかなと、今は思います」

――グランプリを通して印象的だった試合はありますか?

熊谷「やっぱり、スイス最終ラウンドの15試合目ですね。どちらも、トップ8をかけた戦いで、地元の知り合いと当たって、和気あいあいとしながらもピリピリとした緊張感をもって、結構ギリギリの試合だったので印象的でした」

グランプリ優勝について

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――今回2度目のグランプリ優勝ですが、熊谷さんにとってグランプリ優勝の意味とはなんでしょうか?

熊谷「いわゆるプロというプロツアーや海外のグランプリをめぐる生活のきっかけになったのが、グランプリ・東京2016がきっかけだったので、新しい指針となれたのかなぁという気持ちと、ほっとする気持ちもありますね」

――ちなみに、インスタント食品1年分は、どうされますか?

熊谷「まぁ、食べるしかないですね(笑)。もちろん、応援してくれた友人に少しずつ分けていきたいなと思います」

――最後に、今優勝したお気持ちをお聞かせください。

熊谷「感無量です! ありがとうございました」

――ありがとうございます。


 非常に優しく語ってくれた熊谷選手。

 このグランプリに優勝したことをおごる様子もなく、ただ、喜びをかみしめる熊谷選手の姿は、ずっと、マジックの世界を歩み続けた者だけが放てる、王者のオーラをまとっていた。

 それは、触れるものを焦がしてしまうような、ただ熱いだけのものではなく、まるで幾度も修羅場をくぐり抜けた達人のような、優しくも水のような柔らかいオーラだった。

 彼が語ってくれた言葉の「ちょくちょく」などの時間の単位の中には、私たちが想像するよりも、遥かな時間がそこにあるのだろう。

 それを容易に感じさせられる、「凄み」が確かにそこにはあった。

 彼は、この2度目の優勝で、プロツアーに代わる、プレイヤーズツアーファイナルの舞台への切符を手にした。

 彼が、その大舞台の頂点に君臨することも、そう遠い未来ではないかもしれない。

 私は、彼の今の姿を見て、そう確信している。

 もう一度、この言葉を贈ろう!

 優勝おめでとう! グランプリ・名古屋2019の覇者、熊谷 陸選手!


 っと、ここでインタビューは終わったのだが、それを横で見ていた八十岡プロからの質問が。

八十岡「で、結局《霊気の疾風》なんで3(枚)にしたの?」

熊谷「僕は妨害枠(《厚かましい借り手》と《霊気の疾風》)を(メインデッキで)6枚にしてたんですけど、(八十岡さんのデッキは8枚だったので)間をとって7枚(《厚かましい借り手》4枚と《霊気の疾風)にしました」

八十岡「間をとって、なるほどね」

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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